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2章

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「ここでいいんだよな……」
 みみずくはそわそわしながら七つ星駅の改札口近くのベンチで待つ。
 平日の昼ということもあり、買い物客で人の往来が激しい。
 上を見上げると七つ星駅と大きな黒のふち提灯ちょうちんが目に入る。
 駅のシンボルのようなもの。
 地震が起きても簡単に落ちないようにしっかり固定されている。
「なんか、落ち着かないや」
 相手に分かる様にとマッチングアプリのプロフィール写真と同じ格好で来た。
 すずらんのアドバイスで鞄は斜めがけでなくベージュのトートバッグにした。
 本当は一眼レフを持っていきたいとこだったが、大荷物になるのであきらめた。
 さっきからスマホ通知を開いては、近所のスーパーのセールやよく行っているコーヒー屋のクーポン情報と、メルマガ系か、趣味のグループチャットばかりで、落胆してしまう。
 ゆあの個人的な連絡先は昨日の夜教えてもらった。
すずらんとすいせんにその件を報告すると、そのまま続けてと言われた。
 約束は十二時。あと五分だ。
 今日の為にこの二日間夜更かしを我慢した。
 夜中にカップラーメンを食べて深夜アニメをリアタイ視聴するのが楽しみだった。
 毎食一汁一菜にし、お風呂で念入りにボディーケアして、日付変わる前に布団に入った。
 ちなみ食事のアドバイスはすいせんによるものだ。
 とはいえ、長年の不摂生な生活により、中々寝付けなかった。ベッドでスマホいじって寝落ち。結局寝たのは日付け越えた一時だ。それで目が覚めたのが六時半。
 これでもまだ早起きした方だ。
「またこれでブッチされたら泣くよ、俺……」
 以前、待ち合わせギリギリで「用事が出来たので云々」と言われ、一人でシャレオツなレストランでコース料理食べて虚しくなった。
 ふじみや女子高校じょしこうこう案件の関係者が喋ってるのを録音して、制裁できたので、それでヨシとしている。
 内容が内容だったのでつい録画してしまったが、結果的いい収穫だったと思っている。
 七つ星駅の改札口近くにある運行情報の画面には、今のところ大きな事故がないようだ。
 何せ、ここの駅は都会に繋がってるから、どこかでトラブルと全部に影響出てしまう。
 やれ人身事故だ、線路に人が立ち入ったとか、救護だのしょっちゅうトラブル起きている。
 みみずく的には線路に人が立ち入ったと聞くと、また自分と同じ趣味の人間がやらかしたのかーと暗澹あんたんたる気持ちになる。
 実際、線路の中に立ち入って、雑草を無断で刈ってる人に注意したが、逆ギレして殴られた。その時電車は超時間止まるわ、警察に色々聞かれ散々だった。
 注意するにもできないのである。
 世間の撮り鉄に対するマイナスイメージが強いので、最近は自然や星を撮っている。
「あのー、すみません、ゆうきさん、ですか?」
 一人の女性がみみずくに声かけてきた。
 ネイビーにストライプ柄ワンピースに、黒のパンプス。きちんとストッキングも履いている。
 顔はシャープで大きな目と二重。
 背中まである黒髪ロングでしなやかだ。
「あ、はい、ゆ、ゆうきです。もしかしてゆあさんですか?!」
 声が裏返るみみずく。
 アイヤー! びっじーん! まじか! こんな子とランチとか最高じゃん!
 しかも声が好み! 鈴を転がしたような感じ!
「はい、そうです。今日お会い出来て嬉しいです。では行きましょう。この近くのレストランです」
 二人は並んで歩く。七つ星駅東口のバス停方面のエスカレーターに向かう。
 降りてすぐそこにおおぐまがある。
 「ゆうきさんはこちらによく来られるんですか?」
「ええ、た、たまに……」
 どうしよう、女の子と喋ってるよ!
 しかも隣で!
 めちゃんこ緊張する! 今の俺の顔どうなってるんだろ……。
 てかこれ同級生とか知り合いに見られたくないパターンだ。
瀬戸せとのやつ女の子と一緒に真っ昼間からいた」なんて話広げられたら、親に速攻バレる。
 ぶっちゃけ一つ星町は田舎だ。田舎の口コミはネットより速いから。
 地元の同級生達や友人達が七つ星町で働いてる人もいる。

 ――とにかく知り合いや友人に見つかりませんように!

 心の中で祈るみみずくは、都合のいい時だけ神頼みする人になっていた。普段神頼みやそういうことを信じないタイプなのに。
「ここです! 丁度並んでますね!」
 ゆあはおおぐまの店を指差してはしゃぐ。
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