よろず屋ななつ星~復讐代行承ります~ 藤ノ宮女子高校死亡案件

月見里ゆずる(やまなしゆずる)

文字の大きさ
上 下
32 / 36
8章

4

しおりを挟む
 高村亜津紗たかむらあづさは七つ星駅から車で二十分のところにある墓地に来ていた。
 周りは住宅街だが、その途中になぜか墓地がある。向かいには寺がある。
 亜津紗は先祖代々の墓の手入れに来ていた。
 約一ヶ月ぶりだろうか。最近仕事が忙しく中々行く余裕がなかった。
 以前は週一回ぐらいのペースで仕事がない日に行っていた。
 それに加えて、家にある小さな仏壇にある両親と妹の遺影いえいに手を合わせるのが日課になっていた。
 地味に暑い。薄手とはいえ長袖のブラウスにして少し後悔した。七分にすれば良かった。
 ここの墓はもちろん妹と両親も入っている。
 両親は裁判の後、心労しんろうで相次いで亡くなった。
 身寄りのいない亜津紗にとって、ここが心の拠り所である。
 墓前ぼぜんに手をあわせる。
 線香の煙が雲ひとつない空に向って流れる。線香の独特の匂いが鼻腔びこうを刺激する。

 しーちゃん、かたきをとったよ!
 まさか仕事関係で絡むとは思わなかったよ。
 長かったなー。ちょっと疲れたけど。
 あとお父さんとお母さんにもよろしく。

 亜津紗が立ち上がった瞬間、奥から細身の女性が見えた。
 黒のパンツスーツ姿で花束を抱えながら亜津紗の元へやってきた。
「あっ、大屋おおやさん……」
 「すず……高村亜津紗さんがいいかしら? それとも川端理沙かわばたりささんがいい?」
「高村亜津紗でいいです」
「そう。わかった。一緒に手をあわせていい?」
 大屋は花立てにお供え用の花を生けて、手を合わせた。
 亜津紗は黙ってその姿を見ているだけだ。
「おねーさんの上司です。いつもお世話になってます。あなたのおねーさんは優秀ですよってアピールしといた」
「あ、ありがとうございます」
 はにかみながら笑う亜津紗。
「あらー照れた顔もかわいー。そうだ、今日時間ある?」
「あ、はい」
「じゃぁこれから、カフェ行きましょ。七つぼし駅のバスロータリーの近くにあるとこ」
 上司に誘われると断れない。断ったら後が面倒だ。
「はい」
 

 二人はそれぞれ駅近くの駐車場に車を止めてからバスロータリーの近くにあるカフェに向かった。
 平日なのでお客がまばらだ。学生がちらほらいるぐらいだろうか。
 穏やかなBGMが流れて来るひとをリラックスモードにさせる。
「こうしてあなたとゆっくりしゃべる機会ってなかなかなかったわ」
「はい……」
 緊張する。粗相しないようにとか気を利かせてますよアピールしなきゃとか、体が固くなる。
「そんな緊張しなくてもいいのよ。なんかあなたが最初来た時のことを思い出した。あなたが汗だくでうちにきたんだから」
「そうでしたっけ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

よろず屋ななつ星~復讐代行承ります~ マッチングアプリ美人局案件

月見里ゆずる(やまなしゆずる)
キャラ文芸
ネット特定班×復讐劇×スカッとジャパン系! 表向きは何でも屋、裏では”特定班”として、依頼人の復讐や真相解明を請け負っている『よろず屋ななつ星』 瀬川淳平はマッチングアプリ「セリバーテル」で出会った女性の”ゆあ”と半年前から付き合っていたが、ある日突然、”ゆあの夫”と名乗る男性から、不倫をしたとして慰謝料請求をされる。 淳平は”ゆあ”が既婚者であることを知らないと訴えるが、慰謝料を払ってしまう。 『よろず屋ななつ星』のすずらん、すいせん、みみずくは瀬川から真相解明と復讐を依頼される。 瀬川の相手について調べるため、セリバーテルを使ってるみみずくが接触を試みるが……。 ”ゆあ”という女性と接触を成功したみみずくだが、彼女の口から出た内容とは?! セリバーテルの実態、そして”ゆあ”の秘密にたどり着くが……瀬川同様、”ゆあの夫”と名乗る男性から「不倫した」「”ゆあ”が未成年である」ことを理由に慰謝料請求されてしまい……?! 果たして美人局危機を乗り越えることが出来るのか?!

隣の家に住むイクメンの正体は龍神様でした~社無しの神とちびっ子神使候補たち

鳴澤うた
キャラ文芸
失恋にストーカー。 心身ともにボロボロになった姉崎菜緒は、とうとう道端で倒れるように寝てしまって……。 悪夢にうなされる菜緒を夢の中で救ってくれたのはなんとお隣のイクメン、藤村辰巳だった。 辰巳と辰巳が世話する子供たちとなんだかんだと交流を深めていくけれど、子供たちはどこか不可思議だ。 それもそのはず、人の姿をとっているけれど辰巳も子供たちも人じゃない。 社を持たない龍神様とこれから神使となるため勉強中の動物たちだったのだ! 食に対し、こだわりの強い辰巳に神使候補の子供たちや見守っている神様たちはご不満で、今の現状を打破しようと菜緒を仲間に入れようと画策していて…… 神様と作る二十四節気ごはんを召し上がれ!

ハイブリッド・ブレイン

青木ぬかり
ミステリー
「人とアリ、命の永さは同じだよ。……たぶん」  14歳女子の死、その理由に迫る物語です。

卑屈令嬢と甘い蜜月

永久保セツナ
キャラ文芸
【全31話(幕間3話あり)・完結まで毎日20:10更新】 葦原コノハ(旧姓:高天原コノハ)は、二言目には「ごめんなさい」が口癖の卑屈令嬢。 妹の悪意で顔に火傷を負い、家族からも「醜い」と冷遇されて生きてきた。 18歳になった誕生日、父親から結婚を強制される。 いわゆる政略結婚であり、しかもその相手は呪われた目――『魔眼』を持っている縁切りの神様だという。 会ってみるとその男、葦原ミコトは白髪で狐面をつけており、異様な雰囲気を持った人物だった。 実家から厄介払いされ、葦原家に嫁入りしたコノハ。 しかしその日から、夫にめちゃくちゃ自己肯定感を上げられる蜜月が始まるのであった――! 「私みたいな女と結婚する羽目になってごめんなさい……」 「私にとって貴女は何者にも代えがたい宝物です。結婚できて幸せです」 「はわ……」 卑屈令嬢が夫との幸せを掴むまでの和風シンデレラストーリー。 表紙絵:かわせかわを 様(@kawawowow)

【完結】孤独な少年の心を癒した神社のあやかし達

フェア
キャラ文芸
小学校でいじめに遭って不登校になったショウが、中学入学後に両親が交通事故に遭ったことをきっかけに山奥の神社に預けられる。心優しい神主のタカヒロと奇妙奇天烈な妖怪達との交流で少しずつ心の傷を癒やしていく、ハートフルな物語。 *丁寧に描きすぎて、なかなか神社にたどり着いてないです。

付喪神、子どもを拾う。

真鳥カノ
キャラ文芸
旧題:あやかし父さんのおいしい日和 3/13 書籍1巻刊行しました! 8/18 書籍2巻刊行しました!  【第4回キャラ文芸大賞 奨励賞】頂きました!皆様のおかげです!ありがとうございます! おいしいは、嬉しい。 おいしいは、温かい。 おいしいは、いとおしい。 料理人であり”あやかし”の「剣」は、ある日痩せこけて瀕死の人間の少女を拾う。 少女にとって、剣の作るご飯はすべてが宝物のようだった。 剣は、そんな少女にもっとご飯を作ってあげたいと思うようになる。 人間に「おいしい」を届けたいと思うあやかし。 あやかしに「おいしい」を教わる人間。 これは、そんな二人が織りなす、心温まるふれあいの物語。 ※この作品はエブリスタにも掲載しております。

後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符

washusatomi
キャラ文芸
西域の女商人白蘭は、董王朝の皇太后の護符の行方を追う。皇帝に自分の有能さを認めさせ、後宮出入りの女商人として生きていくために――。 そして奮闘する白蘭は、無骨な禁軍将軍と心を通わせるようになり……。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...