よろず屋ななつ星~復讐代行承ります~ 藤ノ宮女子高校死亡案件

月見里ゆずる(やまなしゆずる)

文字の大きさ
上 下
25 / 36
7章

2

しおりを挟む
「あなた達の今までの暴力・暴言。証拠がネットに残ってますからね。スクリーンショットでこちらにあります。無責任な行動でお二人の関係も露見されています。保護者及び生徒からの信用はガタ落ちです」
 前の学校で女子生徒にちょっかいをかけて懲戒を食らっていた。
 それでも先生ができたのは、田丸家の力によるものだった。
 田丸家は地域の権力者で、田丸の問題行動も全て家の力でもみ消すことができた。
 会議中や勤務中の居眠りと喫煙、場にそぐわない格好。
 授業中に少しでも意見しようものなら、張り手や蹴りを入れられる。男女問わずだ。
 藤ノ宮で佐久間校長に拾われ、後ろ盾がある安心感により、好き放題していた。
「警備員の石綿さん、佐田先生、高山先生はこのまま本校に残ってもらいます。志村真凛さん、和田紬さんもこのまま藤ノ宮女子高校で卒業してください」
「――もう一度言います。田丸俊治先生、佐久間倫子校長、今すぐ退職届の準備をしてください。もうあなた達は先生でも校長でもありません! あなた達がやったことは到底許されることではありませんお二人に藤ノ宮女子高校を辞めて頂くこと、神原さんの件で関わった人たちには……」
 学園長が話している間、保護者席からざわめきが。
「田丸先生! お話中ですよ! 着席してください!」
「何するんだ!」
「おい、あいつなんかもってんぞ!」
 警備員の一人が田丸が持ってるものに気づいた。
 ――小ぶりのカッターナイフだ。
 にちゃにちゃの笑いながら、カッターナイフのは先を出したり入れたりして学園長に近づく田丸。
「お前! 手に持ってるの捨てろ!」
 石綿が田丸に向けて注意した瞬間――。
「……っ!」
 田丸は石綿の首元にナイフを近づけてた。
 石綿は恐怖のあまり声が出ない。
「俺と倫子の処分取り消せ!! 俺を教頭か学園長にさせないなら、こいつの命はない!! 首を切る!!」
 強い語気からのねっとりした笑みを浮かべる田丸。
 体育館の空気が恐怖で支配される。
「ここにいるおめーらに告ぐ! これからは俺と佐久間倫子でこの学校を支配していく。俺たちに逆らう者はこのようにする」
 と田丸は石綿の喉笛をつく仕草をする。
 石綿は涙目になってきている。顔が真っ青になっていった。
「そうよ。これからは私たちの時代なの。生徒を力で指導する。こんなしょぼい学園長や教頭は不要よ。もう神原千夏や志村真凜やここの死に損ない警備員とかはいないの。みんな眼をさまして!」
 校長が喚いてるそばで、学園長が胸ポケットからスマホを取り出したが「あらー、学園長なんのつもりかしらー?」とサラッと取り上げる。
 田丸と校長の身勝手な行動に舞台にいる人たちは手を出せない。
  一種の脅迫だった。
 保護者達は見てるだけだった。
「神原千夏の件で処分下すことで私たちに勝ったつもりなの? ばかねぇ。この学校のスタッフは私のしもべばかりよ。あなた達に味方してくれる人なんているの?」
「私と俊治さんに逆らう人はみんな辞めてもらってるわ。適当に理由つけて。イエスマンしかいないのは楽だわー。あとはあなた達が消えればいいのよ」
「校則が厳しい? 厳しくなるようなことをしなければいいじゃない。先生が威圧的? 言う事聞かない人が悪いじゃない。全ては力で教育するの。そしたら、将来的会社に就職しても長く働けるでしょ。むしろ生ぬるいわ」
「神原千夏が死んだのも志村真凜が蹴られたのもすへ自業自得よ。むしろざまぁみやがれ。今日はご飯が美味しくなりそう」
 鼻で笑う校長。
 校長の独壇場に保護者席は開いた口が塞がらなかった。
「おめーら、もう一度言う。俺たちの処分取り消しをしなかったらこいつを……」
 その瞬間、壇上に人が数人あがってきた。
「おい、ナイフを捨てろ!」
 野太い声が響く。
 近隣の警察の方達だ。誰かが呼んだのだろうか。
「さ、さつが何だよ!」
「あんたがやってることは脅迫と殺人未遂だ。お前これで何回目だ?」
 警察官が距離をとりながら田丸に近づく。
「あらぁー警察の方ご苦労さま。何のご用で?」
 穏やかな声で尋ねる校長。
「通報があった。ナイフを突き刺されてる人がいるってな」
「うちはなにもないですよ。さあ、かえってくださいませ」
 警察官は校長の話を無視して、田丸からナイフを取り上げるタイミングを狙う。
「……くそ、余計なことしやがったやつがいるな。誰だ!!」
 田丸は石綿から離れ、誰だとナイフを振り回して暴れる。その隙に警察官が田丸を確保した。
 石綿は田丸から開放され、力を無くして座り込んだ。
「……皆様恐怖にさせてしまい申し訳ございません。改めて私から神原千夏さん、志村真凛さん、ご家族の皆様、生徒の皆様にお詫び申し上げます。図々しいかもしれませんが、今後も藤ノ宮女学院をよろしくお願いします」
 保護者の思いは色々ある。
 問題を起こした元凶がもういなくなる。
 それだけでも安心して学校生活を送ることができるのだから。
 娘を安心して学校に預けることができるのだから。

 保護者会の後、警察から話を聞きたいと教頭や学園長たちが呼ばれた。
 暴れた田丸と唆した佐久間は逮捕。そこで学園長から懲戒解雇処分を正式に告げられた。

 学校のホームページに田丸と佐久間校長のことがすぐに更新された。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

よろず屋ななつ星~復讐代行承ります~ マッチングアプリ美人局案件

月見里ゆずる(やまなしゆずる)
キャラ文芸
ネット特定班×復讐劇×スカッとジャパン系! 表向きは何でも屋、裏では”特定班”として、依頼人の復讐や真相解明を請け負っている『よろず屋ななつ星』 瀬川淳平はマッチングアプリ「セリバーテル」で出会った女性の”ゆあ”と半年前から付き合っていたが、ある日突然、”ゆあの夫”と名乗る男性から、不倫をしたとして慰謝料請求をされる。 淳平は”ゆあ”が既婚者であることを知らないと訴えるが、慰謝料を払ってしまう。 『よろず屋ななつ星』のすずらん、すいせん、みみずくは瀬川から真相解明と復讐を依頼される。 瀬川の相手について調べるため、セリバーテルを使ってるみみずくが接触を試みるが……。 ”ゆあ”という女性と接触を成功したみみずくだが、彼女の口から出た内容とは?! セリバーテルの実態、そして”ゆあ”の秘密にたどり着くが……瀬川同様、”ゆあの夫”と名乗る男性から「不倫した」「”ゆあ”が未成年である」ことを理由に慰謝料請求されてしまい……?! 果たして美人局危機を乗り越えることが出来るのか?!

隣の家に住むイクメンの正体は龍神様でした~社無しの神とちびっ子神使候補たち

鳴澤うた
キャラ文芸
失恋にストーカー。 心身ともにボロボロになった姉崎菜緒は、とうとう道端で倒れるように寝てしまって……。 悪夢にうなされる菜緒を夢の中で救ってくれたのはなんとお隣のイクメン、藤村辰巳だった。 辰巳と辰巳が世話する子供たちとなんだかんだと交流を深めていくけれど、子供たちはどこか不可思議だ。 それもそのはず、人の姿をとっているけれど辰巳も子供たちも人じゃない。 社を持たない龍神様とこれから神使となるため勉強中の動物たちだったのだ! 食に対し、こだわりの強い辰巳に神使候補の子供たちや見守っている神様たちはご不満で、今の現状を打破しようと菜緒を仲間に入れようと画策していて…… 神様と作る二十四節気ごはんを召し上がれ!

卑屈令嬢と甘い蜜月

永久保セツナ
キャラ文芸
【全31話(幕間3話あり)・完結まで毎日20:10更新】 葦原コノハ(旧姓:高天原コノハ)は、二言目には「ごめんなさい」が口癖の卑屈令嬢。 妹の悪意で顔に火傷を負い、家族からも「醜い」と冷遇されて生きてきた。 18歳になった誕生日、父親から結婚を強制される。 いわゆる政略結婚であり、しかもその相手は呪われた目――『魔眼』を持っている縁切りの神様だという。 会ってみるとその男、葦原ミコトは白髪で狐面をつけており、異様な雰囲気を持った人物だった。 実家から厄介払いされ、葦原家に嫁入りしたコノハ。 しかしその日から、夫にめちゃくちゃ自己肯定感を上げられる蜜月が始まるのであった――! 「私みたいな女と結婚する羽目になってごめんなさい……」 「私にとって貴女は何者にも代えがたい宝物です。結婚できて幸せです」 「はわ……」 卑屈令嬢が夫との幸せを掴むまでの和風シンデレラストーリー。 表紙絵:かわせかわを 様(@kawawowow)

【完結】孤独な少年の心を癒した神社のあやかし達

フェア
キャラ文芸
小学校でいじめに遭って不登校になったショウが、中学入学後に両親が交通事故に遭ったことをきっかけに山奥の神社に預けられる。心優しい神主のタカヒロと奇妙奇天烈な妖怪達との交流で少しずつ心の傷を癒やしていく、ハートフルな物語。 *丁寧に描きすぎて、なかなか神社にたどり着いてないです。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

わかりあえない、わかれたい・5

茜琉ぴーたん
恋愛
 好きあって付き合ったのに、縁あって巡り逢ったのに。  人格・趣味・思考…分かり合えないならサヨナラするしかない。  振ったり振られたり、恋人と別れて前に進む女性の話。  5・幼馴染みマウントを取られて、試合を降りた女性の話。 (6話+後日談2話) *シリーズ全話、独立した話です。

黒神と忌み子のはつ恋

遠野まさみ
キャラ文芸
神の力で守られているその国には、人々を妖魔から守る破妖の家系があった。 そのうちの一つ・蓮平の娘、香月は、身の内に妖魔の色とされる黒の血が流れていた為、 家族の破妖の仕事の際に、妖魔をおびき寄せる餌として、日々使われていた。 その日は二十年に一度の『神渡り』の日とされていて、破妖の武具に神さまから力を授かる日だった。 新しい力を得てしまえば、餌などでおびき寄せずとも妖魔を根こそぎ斬れるとして、 家族は用済みになる香月を斬ってしまう。 しかしその神渡りの神事の際に家族の前に現れたのは、武具に力を授けてくれる神・黒神と、その腕に抱かれた香月だった。 香月は黒神とある契約をしたため、黒神に助けられたのだ。 そして香月は黒神との契約を果たすために、彼の為に行動することになるが?

帝都の守護鬼は離縁前提の花嫁を求める

緋村燐
キャラ文芸
家の取り決めにより、五つのころから帝都を守護する鬼の花嫁となっていた櫻井琴子。 十六の年、しきたり通り一度も会ったことのない鬼との離縁の儀に臨む。 鬼の妖力を受けた櫻井の娘は強い異能持ちを産むと重宝されていたため、琴子も異能持ちの華族の家に嫁ぐ予定だったのだが……。 「幾星霜の年月……ずっと待っていた」 離縁するために初めて会った鬼・朱縁は琴子を望み、離縁しないと告げた。

処理中です...