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29話
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「じゃあ今日はここまで」
「ありがとうございました」
「ああ、また明日な」
「はい」
それから1時間後、時間が来たので練習を切り上げた。MIUは親が迎えに来るまで練習を続けるらしいので、そのまま一人で帰宅となった。
駅に着き、改札を通りホームで電車を待っている最中、
「MIUに実力を認められる程の役者か」
MIUが美琴の実力を褒めていた事を思い出した。
「俺も頑張らないとな」
そう思った俺は、反対側のホームに向かっていた。
仕事場に向かうために。
既に誰も居ないだろうが、どうでもいい。
反対側のホームに辿り着いたタイミングで丁度良く電車が到着し、そのまま仕事場へ。
無人の仕事場に辿り着いた俺は電気を付けて自分の席に座り、
仕事をしようと思ったが全てが終わっていた。
「……帰るか」
俺は俺のペースで仕事をしよう。
そもそも漫画は月一連載なのだから、焦ったところで仕方がない。
だから、別に今仕事が無かったとしても何も問題は無いんだ。
俺はそう言い聞かせ、ガラガラの電車に乗って家に帰った。
そんな日から約1週間後、
「これで完璧だな」
「はい。この台本があればありとあらゆる状況に対応できます」
「ああ、頑張ってくれ」
「はい、頑張ります」
MIUに向かって行われるアドリブを全部予測する作業が終了し、後は演技の完成度を高めるだけとなった。
となると演技がそこまで上手くない俺の役目はここまで。後は何か事件が起こらない限りMIUが一人で頑張るだけだ。
練習部屋を出た後、俺は今回の役目が終了したことを伝える為に咲良さんの元へ向かった。
「何やっているんですか」
咲良さんの元へ向かうと、咲良さんが真面目な顔して師匠に後ろから抱き着いており、頭の匂いをすんすんと嗅いでいた。
「栄養補給です」
「栄養なんて無いですよね」
いくら咲良さんが理知的で真面目な表情をしていたとしても、流石にその説明で納得できるわけがない。
「あります。レナミンって言うんですよ。鼻から摂取するとリラックスする上、幸せな気分になり、世界が色づいて見えるようになります」
「それどう考えても薬物と同じ効果じゃないですか」
「でも麻薬と違って体に悪影響は無いですし、寧ろ健康になります。私が若さを維持できている理由はまさにこのレナミンです。剛君もどうですか?」
そういって咲良さんはレナミンを摂取しながら手招きしてくる。
「麗奈、他の奴に迷惑をかけるんじゃねえ」
「えっ、あっうん。ごめんなさい剛君」
そんな咲良さんを師匠が制止した。いつも非常識な事ばっかりやっているあの師匠が。
「で、こんな妙なタイミングでここに来たって事は何かあるんだろ?」
そして無言で師匠の頭の匂いを嗅ぎだした咲良さんに代わり、師匠が本題に入らせてくれた。
「はい、今回の練習で俺が出来ることは全て終了しました。後はMIUが一人で練習していけば本番までには完成するはずです」
「すん、流石剛君ですね。すん、頼んだ、すん、甲斐が、すん、ありました」
「嗅ぐか話すかどっちかにしてください」
「すんすんすん……」
「そう言われて嗅ぐ方に行かないでください」
「んーー!!」
駄目だこの人。完全にトリップしている。
「この馬鹿は放っておくとして、助かった。参考までにどんな方法を使ったんだ?」
「今回の演劇でMIUに飛んでくるであろう全部のアドリブをリストアップして、全てに対してどう返すかの台本を作成しました」
「……は?」
真面目に報告した筈なのだが、師匠は何言ってんだこいつみたいな表情をしていた。
「だから全アドリブを事前に予測しただけですが」
「いや、言っていることは理解できるが、そんなこと出来るのか?」
「出来ますよ。弟子と大ファンでやったんですから」
流石に台本から作者の住んでいる地域や人となりを推測することは出来ないが、この台本を読んだ憑依系の役者がどんなアドリブを取りうるか位は俺たちでも推測できる。
「わけわかんねえ……」
「とにかく、後はUMIだけでどうにかなると思います」
「そうか」
「ただ、アドリブに初見対応できるようになったわけではないので、必要があればまた呼んでください」
「お、おう」
「では俺は帰りますね」
「ああ、またな」
「はい。さようなら」
俺は師匠に別れを告げ、清々しい気持ちで帰宅した。
それから約2週間後、無事に練習が進み、講演が始まることになったので幸村、雨宮、凪咲ちゃんと4人で見に行くことに。
「楽しみだね」
「そうですね、幸村先輩!」
「ちょっと抱き着かないで!」
「良いじゃないですか」
「美琴君が劇団で主役を張っている話は聞いていたが、一体どれほどのものなのだろうか。非常に楽しみだ」
1名趣旨が違う気がしないでもないが、全員楽しみにしているようで何よりだ。
誘った甲斐があったというものだ。
それはそれとして、
『あのMIUがここで見られるって神かよ』
『早く見たいわ……』
『元気にしているのかな……』
「何故あいつらがこんなに来ているんだ」
一般観客席にやたらウチの高校の生徒が居るのは何故なんだ。
今回MIUが出演するという情報は関係者以外には伏せてあった筈なんだがな。
「そりゃあ勿論俺が皆に知らせたからだよ」
「何故知っているんだ。そしてそれよりもどうしてお前がここに居るんだ」
ここは関係者席だぞ。この劇団に全く関係ないだろ。
「ありがとうございました」
「ああ、また明日な」
「はい」
それから1時間後、時間が来たので練習を切り上げた。MIUは親が迎えに来るまで練習を続けるらしいので、そのまま一人で帰宅となった。
駅に着き、改札を通りホームで電車を待っている最中、
「MIUに実力を認められる程の役者か」
MIUが美琴の実力を褒めていた事を思い出した。
「俺も頑張らないとな」
そう思った俺は、反対側のホームに向かっていた。
仕事場に向かうために。
既に誰も居ないだろうが、どうでもいい。
反対側のホームに辿り着いたタイミングで丁度良く電車が到着し、そのまま仕事場へ。
無人の仕事場に辿り着いた俺は電気を付けて自分の席に座り、
仕事をしようと思ったが全てが終わっていた。
「……帰るか」
俺は俺のペースで仕事をしよう。
そもそも漫画は月一連載なのだから、焦ったところで仕方がない。
だから、別に今仕事が無かったとしても何も問題は無いんだ。
俺はそう言い聞かせ、ガラガラの電車に乗って家に帰った。
そんな日から約1週間後、
「これで完璧だな」
「はい。この台本があればありとあらゆる状況に対応できます」
「ああ、頑張ってくれ」
「はい、頑張ります」
MIUに向かって行われるアドリブを全部予測する作業が終了し、後は演技の完成度を高めるだけとなった。
となると演技がそこまで上手くない俺の役目はここまで。後は何か事件が起こらない限りMIUが一人で頑張るだけだ。
練習部屋を出た後、俺は今回の役目が終了したことを伝える為に咲良さんの元へ向かった。
「何やっているんですか」
咲良さんの元へ向かうと、咲良さんが真面目な顔して師匠に後ろから抱き着いており、頭の匂いをすんすんと嗅いでいた。
「栄養補給です」
「栄養なんて無いですよね」
いくら咲良さんが理知的で真面目な表情をしていたとしても、流石にその説明で納得できるわけがない。
「あります。レナミンって言うんですよ。鼻から摂取するとリラックスする上、幸せな気分になり、世界が色づいて見えるようになります」
「それどう考えても薬物と同じ効果じゃないですか」
「でも麻薬と違って体に悪影響は無いですし、寧ろ健康になります。私が若さを維持できている理由はまさにこのレナミンです。剛君もどうですか?」
そういって咲良さんはレナミンを摂取しながら手招きしてくる。
「麗奈、他の奴に迷惑をかけるんじゃねえ」
「えっ、あっうん。ごめんなさい剛君」
そんな咲良さんを師匠が制止した。いつも非常識な事ばっかりやっているあの師匠が。
「で、こんな妙なタイミングでここに来たって事は何かあるんだろ?」
そして無言で師匠の頭の匂いを嗅ぎだした咲良さんに代わり、師匠が本題に入らせてくれた。
「はい、今回の練習で俺が出来ることは全て終了しました。後はMIUが一人で練習していけば本番までには完成するはずです」
「すん、流石剛君ですね。すん、頼んだ、すん、甲斐が、すん、ありました」
「嗅ぐか話すかどっちかにしてください」
「すんすんすん……」
「そう言われて嗅ぐ方に行かないでください」
「んーー!!」
駄目だこの人。完全にトリップしている。
「この馬鹿は放っておくとして、助かった。参考までにどんな方法を使ったんだ?」
「今回の演劇でMIUに飛んでくるであろう全部のアドリブをリストアップして、全てに対してどう返すかの台本を作成しました」
「……は?」
真面目に報告した筈なのだが、師匠は何言ってんだこいつみたいな表情をしていた。
「だから全アドリブを事前に予測しただけですが」
「いや、言っていることは理解できるが、そんなこと出来るのか?」
「出来ますよ。弟子と大ファンでやったんですから」
流石に台本から作者の住んでいる地域や人となりを推測することは出来ないが、この台本を読んだ憑依系の役者がどんなアドリブを取りうるか位は俺たちでも推測できる。
「わけわかんねえ……」
「とにかく、後はUMIだけでどうにかなると思います」
「そうか」
「ただ、アドリブに初見対応できるようになったわけではないので、必要があればまた呼んでください」
「お、おう」
「では俺は帰りますね」
「ああ、またな」
「はい。さようなら」
俺は師匠に別れを告げ、清々しい気持ちで帰宅した。
それから約2週間後、無事に練習が進み、講演が始まることになったので幸村、雨宮、凪咲ちゃんと4人で見に行くことに。
「楽しみだね」
「そうですね、幸村先輩!」
「ちょっと抱き着かないで!」
「良いじゃないですか」
「美琴君が劇団で主役を張っている話は聞いていたが、一体どれほどのものなのだろうか。非常に楽しみだ」
1名趣旨が違う気がしないでもないが、全員楽しみにしているようで何よりだ。
誘った甲斐があったというものだ。
それはそれとして、
『あのMIUがここで見られるって神かよ』
『早く見たいわ……』
『元気にしているのかな……』
「何故あいつらがこんなに来ているんだ」
一般観客席にやたらウチの高校の生徒が居るのは何故なんだ。
今回MIUが出演するという情報は関係者以外には伏せてあった筈なんだがな。
「そりゃあ勿論俺が皆に知らせたからだよ」
「何故知っているんだ。そしてそれよりもどうしてお前がここに居るんだ」
ここは関係者席だぞ。この劇団に全く関係ないだろ。
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