可愛かった幼馴染の女の子がイケメン堕ちした本当の理由に一同驚愕。演劇を始めてしまった事が理由との噂も。

僧侶A

文字の大きさ
上 下
26 / 35

26話

しおりを挟む
「というわけなんだ」

「そりゃまた変な方法を編み出してしまったね」

 と事情を聞いた幸村は苦笑いしていた。

「仕方ないだろ」

 俺も変な方法だとは自覚している。だがMIUという女優自体が変なスタイルなのだから変な方法で対応する以外ない。

「でもあんまり疲れているようには見えないね。なんなら普段よりも元気そうじゃない?」

「ああ。凪咲ちゃんと雨宮が頑張ってくれるらしい」

 事情を伝えたら作画は凪咲ちゃんが、ストーリーは雨宮が主となって作ってくれることになった。

 流石に少しは関わるが、それでも負担は少ない。持つべきものは神アシスタントだな。

「それって剛くんの漫画って言えるのかな……?」

「当然だろ。俺が作ったキャラ、舞台、ストーリーを元にしているんだぞ」

 失礼だな。俺が居なければあの漫画は生まれなかったんだぞ。

「ストーリーは剛くんが作ったとして、キャラはまんま椎名さんで、舞台はこの学校の名前以外をコピーしただけだよね」

「そ、それだけではないぞ。キャラデザも俺だ」

「……まあいいや。ってことはさ、仕事場に来る回数も減るんだよね?」

「だな」

「ってことは雨宮さんに合鍵渡したの?」

「……そうだ」

「どうしたの?」

「いや、何も無かった」

 雨宮に合鍵を渡した時に人に見せられないレベルで狂喜乱舞していたことは俺の心の中だけにとどめておくべきだよな。

「ふーん……オッケー。じゃあ僕が連れていく必要は無さそうだね」

「安心している所悪いが、その必要はあるぞ」

「どうして?」

「雨宮が所望しているからだ」

「え?」

「尊敬する先輩と一緒に仕事場に向かいたいからだそうだ」

「……はあ。分かったよ」

 確実に酷い目にあわされることを分かっていて意気消沈しつつも、後輩の願いは断れないらしい。

 流石雨宮、手慣れている。


 その日の6限目の体育はサッカーだった。

「ふん!!!」

 ドン!!

「うわああああ」

 ゴンッ

「え~~い」

 ポスッ……

「なあお前ら、もう少し頑張ってくれ」

「「「「無理です……」」」」

 クラスの男子共はMIUが事務所を辞めたショックで力を失っており、全く使い物になっていなかった。

 部屋に籠り、同じ椅子に座り続けて作業をする漫画家にとって、体育という授業によって与えられる運動の機会は健康の為に大事なんだ。もう少しまともに動いてくれ。

 これだったら小学生に混じった方がマシな運動が出来るぞ。

「これは駄目だな。幸村、付き合ってくれ」

 クラスで唯一いつも通りの幸村と二人でやるか。

「あ、ごめん無理。再来週テニスの大会があるからあんまり真面目に出来ないんだよね……」

 それならば!

「先生!こいつらが動かないのでテニスコートでテニスしても良いですか!」

 テニスなら全力を出せるってことだよな。

「駄目に決まっているでしょ」

 幸村に叩かれた。何故、完璧な案だろうが。

「テニスなら良いんじゃないのか?」

「剛くんは漫画家だから手を大事にしないといけないでしょ」

 と正論で殴ってくる幸村。だがしかし、

「今の俺は、腕の心配をしなくても良いんだ。だから問題ない」

 今月の原稿における俺の作業量は微々たるものだ。全治一か月以内なら全てセーフだ。

「確かにそうだけれどさ……」

 言葉では否定する素振りを見せているが、手がテニスラケットの握りに変わっている。あと一歩で押し切れそうだ。

「勝手に話を進めるな馬鹿たれ。駄目に決まっているだろうが」

 と言いながら体育教師の後藤が背後から迫り、頭を叩いてきた。

「痛いじゃないですか」

 いくら俺が強そうに見えても痛いものは痛いんですよ。

「痛いじゃないですか。じゃねえ。今はサッカーの授業だっていってんだろ」

「じゃあアレどうにかしてくださいよ」

 なんかさっきよりも酷くなっている。最早ゾンビだろあれ。

「仕方ねえなあ」

 そう言ってゾンビ集団の中に飛び込んだ後藤は、

「オラッ!動け!」

 ドコッ!

「会ったことすらない女優が事務所辞めただけでくよくよすんな!」

 バコッ!

「そもそも芸能界引退ってわけじゃねえだろうが!」

 ズガガガガ……

「そんな事よりもサッカーやれ!!!」

 キュイイイイイイン!!!!

「何が起こっているんだ?」

 どう考えても人間が出して良いはずの無い音と共にゾンビを蘇生しようとしていた。

「土煙が凄くてわかんない」

 是非とも何が起こっているのかを観察して今後の参考にしたいところだったが、謎の土煙のせいで何も見えない。

 非常に勿体ないな。

「よし!これで満足か?」

 土煙が晴れると、

「オッシャアヤッテヤロウゼ!」

「ホラ!オマエラモコイヨ!」

「サッカーヤロウゼ!」

 と非常にやる気満々で、活気に満ち溢れていたクラスメイトの姿がそこにはあった。

 何故か片言な事だけが気になるのだが。

「何したんですか先生……」

 その光景を見た幸村は若干ビビっていた。

「ただ普通に気合を注入してやっただけだぞ」

「ただ注入したらそんな風にはなりませんよね……」

「現になってるんだから良いだろ?」

「幸村。そんなことはどうでも良いだろ。全力でサッカーが出来るようになったんだから」

 クラスメイトの姿よりも、それが一番大事だろうが。

「いや、どうでも良くないけど」

「強情だな。まあいい。俺はサッカーしてくる」

 どの道サッカーを本気でやる気が無い幸村は放っておいてクラスメイトの群れに混じっていった。

 皆のサッカーの腕前が普段の5割増し程に成長しており、非常にやりがいのある時間だった。

 7限目も継続してやりたかったのだが、6限目の終了を知らせるチャイムの音と共に号令すらせず教室へ一目散に走っていったので叶わなかった。真面目だなお前ら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

乗り換え ~結婚したい明子の打算~

G3M
恋愛
 吉田明子は職場の後輩の四谷正敏に自分のアパートへの荷物運びを頼む。アパートの部屋で二人は肉体関係を持つ。その後、残業のたびに明子は正敏を情事に誘うようになる。ある日、明子は正敏に結婚してほしいと頼みむのだが断られてしまう。それから明子がとった解決策 は……。 <登場人物> 四谷正敏・・・・主人公、工場勤務の会社員 吉田明子・・・・正敏の職場の先輩 山本達也・・・・明子の同期 松本・・・・・・正敏と明子の上司、課長 山川・・・・・・正敏と明子の上司

処理中です...