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19話
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「いっちゃったね……」
雨宮が部屋に連れ込まれる光景を見ていた幸村は、哀れな人を見る目をしていた。
「俺が先に説明しておけばよかった。雨宮が口調の違和感に気付かないわけがなかった」
「まあ起きてしまったものは仕方ないよ。気長に待つことにしよう」
「そうだな」
俺たちは二人が帰ってくるまで仕事をして待っていることに。
ちなみに凪咲ちゃんの口調は両親にはリーダーシップをとるために威厳の感じられる口調にしていると伝えてあるが、本当は『混沌の機械魔導』というロボットアニメに出てくる主人公の教師であるラグナリアという女キャラクターの真似である。
今頃雨宮はそんな説明を軽く受けた後、ラグナリアと彼女が乗るロボットの魅力について延々と教えられ続けていると思われる。
今回は初めての女性ということでテンションが上がっているだろうし、大体50分コースだろうか。気長に待つしかないか。
その1時間後、
「凄かったです凪咲ちゃん!まさかこの世にあんなキャラが存在するとは思ってもみませんでした」
「気に入ってもらえて私としても嬉しいよ。同じものを好きな仲間は貴重だからな!」
疲れ果てた雨宮が出てくると思いきや、入る前よりもテンションが上がった雨宮が出てきていた。
「雨宮、そんなに面白かったのか」
まさかそんなわけがと思いつつ、一応質問してみることに。
「はい!ただラグナリアさんの魅力を語っていただいたのではなく、10分程度の総集編動画や、ラグナリアさんが主役となった短編アニメ。はたまたラグナリアさんの視点でストーリーを体験するVRゲーム等、様々な方法で飽きることなく楽しませていただきました。そして、これが布教の最終到達点なんだと非常に参考になりました」
「は?」
確かに10分程度の総集編動画は見た。しかし、ラグナリアが主役の短編アニメとラグナリア視点のVRゲームってなんなんだ。
定期的に凪咲ちゃんからラグナリア情報が送られてくるが、そんな話聞いたことないぞ。
「えっと凪咲ちゃん。アニメとVRゲームって何?」
俺が困惑している中、代わりに幸村が聞いてくれた。
「当然私の自作だぞ。いやあ、大変だったが非常に有意義な時間だった」
「自作?」
「ああ。いくらラグナリアさんが素晴らしいとはいえ、そんなものが発売されるわけが無いだろう」
「まあ凪咲ちゃんならありえるか……」
凪咲ちゃんは基本的に何でも出来るので、声だけどうにかなればアニメもゲームも作ろうと思えば作れるか。
まあそんな事はどうでも良い。何をしようと自由だからな。
「で凪咲ちゃん。もしかして最近忙しかった理由は生徒会ではなくてそれですか?」
「ははは!半分くらいはそうだな!」
何か言い訳でもしてくるのかと思いきや、完全に開き直ってきた。
「はあ……」
「とは言っても最近は左程忙しくなかったのだろう?南野から聞いているぞ」
「確かにそうですけど」
一応少し前は忙しかったのだが、単に俺が小説を書いていたせいだしな。
「まあそれでも休んでいた分の補填はしないとな。なみこくん。何か仕事はあるか?」
「じゃあ巻頭カラーをお願いしても良いですか?」
「ああ、問題ない」
俺は二人が戻ってくる前に用意していた仕様書を渡した。
「え!?なみこ先生が描くんじゃないんですか!?!?」
「ああ。いつもそうだぞ」
「いつも!?!?!?」
「剛くんは背景を描くのに異常な時間がかかるのも明確な弱点なんだけど、それよりも重大な弱点があってね。色塗りが致命的に下手なんだ」
驚いていた雨宮に幸村が説明してくれた。
「え!?凪咲ちゃんが入ってくるまではどうしてたんですか?」
「剛くんが線画まで描いて、僕が色を塗っていたんだ」
「ええ……」
流石の雨宮も俺が色を塗っていないという所までは読み取れていなかったらしく、衝撃を受けていた。
「まあ漫画は白黒で描ければ十分だからな。色なんて塗れなくても良い」
「いや単行本の表紙は毎回カラーですよね!?!?」
「小さいことは気にするな」
「小さくないですけど!?!?」
何をそんなにカリカリしているんだ。別に普通だろそれくらい。
「そんなことより、凪咲ちゃんの仕事を見てみると良い」
「分かりました。ってえ?」
凪咲ちゃんはこの短時間で既に線画を終了させており、色塗りに入る所だった。
「この通り仕事が早いんだ。流石生徒会長だよな」
「早いどころのレベルじゃないですよね!?あと生徒会長関係ないですよね!?!?」
「まあまあ。それより絵の完成度の方はどうだ?」
「えっ……どう見てもなみこ先生が描いた絵そのものなんですけど……」
「だろ。俺は描く早さよりもこれが一番凄いと思っている」
今まで散々ファンレターを貰って来たが、誰一人としてカラーを描いたのが別人だと気付いた人がいなかったくらいだからな。
ちなみに幸村が色を塗っていた時期は何人かに気付かれていた。
「確かにこれなら今まで3人目に気付けなかったのも納得です……」
雨宮が感心しながら凪咲ちゃんの仕事を見ること10分。
雨宮が部屋に連れ込まれる光景を見ていた幸村は、哀れな人を見る目をしていた。
「俺が先に説明しておけばよかった。雨宮が口調の違和感に気付かないわけがなかった」
「まあ起きてしまったものは仕方ないよ。気長に待つことにしよう」
「そうだな」
俺たちは二人が帰ってくるまで仕事をして待っていることに。
ちなみに凪咲ちゃんの口調は両親にはリーダーシップをとるために威厳の感じられる口調にしていると伝えてあるが、本当は『混沌の機械魔導』というロボットアニメに出てくる主人公の教師であるラグナリアという女キャラクターの真似である。
今頃雨宮はそんな説明を軽く受けた後、ラグナリアと彼女が乗るロボットの魅力について延々と教えられ続けていると思われる。
今回は初めての女性ということでテンションが上がっているだろうし、大体50分コースだろうか。気長に待つしかないか。
その1時間後、
「凄かったです凪咲ちゃん!まさかこの世にあんなキャラが存在するとは思ってもみませんでした」
「気に入ってもらえて私としても嬉しいよ。同じものを好きな仲間は貴重だからな!」
疲れ果てた雨宮が出てくると思いきや、入る前よりもテンションが上がった雨宮が出てきていた。
「雨宮、そんなに面白かったのか」
まさかそんなわけがと思いつつ、一応質問してみることに。
「はい!ただラグナリアさんの魅力を語っていただいたのではなく、10分程度の総集編動画や、ラグナリアさんが主役となった短編アニメ。はたまたラグナリアさんの視点でストーリーを体験するVRゲーム等、様々な方法で飽きることなく楽しませていただきました。そして、これが布教の最終到達点なんだと非常に参考になりました」
「は?」
確かに10分程度の総集編動画は見た。しかし、ラグナリアが主役の短編アニメとラグナリア視点のVRゲームってなんなんだ。
定期的に凪咲ちゃんからラグナリア情報が送られてくるが、そんな話聞いたことないぞ。
「えっと凪咲ちゃん。アニメとVRゲームって何?」
俺が困惑している中、代わりに幸村が聞いてくれた。
「当然私の自作だぞ。いやあ、大変だったが非常に有意義な時間だった」
「自作?」
「ああ。いくらラグナリアさんが素晴らしいとはいえ、そんなものが発売されるわけが無いだろう」
「まあ凪咲ちゃんならありえるか……」
凪咲ちゃんは基本的に何でも出来るので、声だけどうにかなればアニメもゲームも作ろうと思えば作れるか。
まあそんな事はどうでも良い。何をしようと自由だからな。
「で凪咲ちゃん。もしかして最近忙しかった理由は生徒会ではなくてそれですか?」
「ははは!半分くらいはそうだな!」
何か言い訳でもしてくるのかと思いきや、完全に開き直ってきた。
「はあ……」
「とは言っても最近は左程忙しくなかったのだろう?南野から聞いているぞ」
「確かにそうですけど」
一応少し前は忙しかったのだが、単に俺が小説を書いていたせいだしな。
「まあそれでも休んでいた分の補填はしないとな。なみこくん。何か仕事はあるか?」
「じゃあ巻頭カラーをお願いしても良いですか?」
「ああ、問題ない」
俺は二人が戻ってくる前に用意していた仕様書を渡した。
「え!?なみこ先生が描くんじゃないんですか!?!?」
「ああ。いつもそうだぞ」
「いつも!?!?!?」
「剛くんは背景を描くのに異常な時間がかかるのも明確な弱点なんだけど、それよりも重大な弱点があってね。色塗りが致命的に下手なんだ」
驚いていた雨宮に幸村が説明してくれた。
「え!?凪咲ちゃんが入ってくるまではどうしてたんですか?」
「剛くんが線画まで描いて、僕が色を塗っていたんだ」
「ええ……」
流石の雨宮も俺が色を塗っていないという所までは読み取れていなかったらしく、衝撃を受けていた。
「まあ漫画は白黒で描ければ十分だからな。色なんて塗れなくても良い」
「いや単行本の表紙は毎回カラーですよね!?!?」
「小さいことは気にするな」
「小さくないですけど!?!?」
何をそんなにカリカリしているんだ。別に普通だろそれくらい。
「そんなことより、凪咲ちゃんの仕事を見てみると良い」
「分かりました。ってえ?」
凪咲ちゃんはこの短時間で既に線画を終了させており、色塗りに入る所だった。
「この通り仕事が早いんだ。流石生徒会長だよな」
「早いどころのレベルじゃないですよね!?あと生徒会長関係ないですよね!?!?」
「まあまあ。それより絵の完成度の方はどうだ?」
「えっ……どう見てもなみこ先生が描いた絵そのものなんですけど……」
「だろ。俺は描く早さよりもこれが一番凄いと思っている」
今まで散々ファンレターを貰って来たが、誰一人としてカラーを描いたのが別人だと気付いた人がいなかったくらいだからな。
ちなみに幸村が色を塗っていた時期は何人かに気付かれていた。
「確かにこれなら今まで3人目に気付けなかったのも納得です……」
雨宮が感心しながら凪咲ちゃんの仕事を見ること10分。
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