可愛かった幼馴染の女の子がイケメン堕ちした本当の理由に一同驚愕。演劇を始めてしまった事が理由との噂も。

僧侶A

文字の大きさ
上 下
14 / 35

14話

しおりを挟む
「先生、どうしたんですか?」

 昼休み、メールで呼び出された雨森が教室にやってきた。別に直接呼びに行ったところで雨宮は気にしないだろうが、先輩男子二人に呼び出されたらクラスメイトと面倒なことになるのは漫画にも載っているレベルで明白だからな。

 まあ教室に美少女が訪れたことで俺たちは後で男子に問い詰められるだろうが。

 だから人の居ない放課後に呼び出したかったが、それでは美琴のキャラを観察できない可能性があるからな。

「急に呼び出してすまんな」

「いえ、別に問題はありませんよ。何かあったんですよね?」

「ああ、分かっているのなら話が早い。アレを見てくれ」

 俺は女子と飯を食っている美琴を指差す。

「ほら、ちゃんと口を開けないと食べ物が入らないよ」

「は、はいい……」

「私も私も!」

「はいはい、分かっているから」

 美琴は女子たちに頼まれたのか、自分から始めたのかは分からないが、女子たちの口に食べ物を乱雑に放り込んでいる。

 あーんするのは良い事だが、胸倉をつかんで引き寄せるのはちょっと違うだろ。

「美琴さんの新キャラですか?」

「ああ。アレを漫画に投入するとした場合、どう思う?」

「そうですね。凄く良いと思いますよ。私は面白いと思いますし、他のファンの皆さんも恐らく好きになると思います」

「お前もか……」

 俺の漫画を支える最強のブレーンすらそっち側に行ってしまったのか……

「もしかして次回あたりから登場させるんですか?」

「検討中だ……」

 そんなにキラキラした眼で見られたらそう言う以外無いだろうが……

「楽しみにしていますね!!!」

「お、おう。楽しみにしといてくれ」

 そのまま雨宮は笑顔で教室から出て行った。

「ほら言ったじゃん」

 幸村は今さっきまでの話がさも当然であるかのように語っていた。

「そんなわけが無い。でも、ここまで人気なら……」

「そこまで出したくないなら新しいのを出さなきゃ良いんじゃない?」

「それだけは出来ない。新キャラを出す事自体は確定なんだ」

 俺の信条としては出したくない。しかし、このままだと新キャラが出るのが半年後とかになてしまう。

 ここはいっそ王子要素だけ抜いて不良だけで押していくか……?

 いや、それではキャラが薄くなってしまう。ただの不良はあの漫画の中ではただのモブ以下に成り下がる。

 それでは現時点の目標であるアニメ化から遠のいてしまう。

 あと一歩、あと一歩上に行ければ視野に入ってくるというラインにまで来てそれは痛い。

「じゃあ自分で考えたら良いんじゃない?」

「そうしたいのは山々だが、多分今男キャラを作るとアレになる」

 美琴を参考にキャラを作ってきた弊害で、無意識に現在の美琴を反映させてしまうのだ。

 実際に脱美琴を掲げてキャラ作りをしてみたのだが、見事に全キャラ丸被りで南野さんにこの間のキャラと同じじゃねえかと全部没にされたんだよな。

「あー……」

 納得したかのように頷く幸村。思い当たる節があったらしい。

「とりあえず今は考えるのをやめたい。飯を食うぞ」

「そうだね」

 全ては飯が解決すると願って俺は弁当を開いた。

「なあなあ、あの子とは一体どんな関係だよ?あっこれうめえな」

 卵焼きを取ろうとしたら背後からやってきた男に奪われてしまった。

「おい、勝手に人の弁当を食うんじゃない。海翔」

 その男の正体は東条海翔。クラスで一番カッコいい男子だ。

 まあ一番カッコいいのは美琴なんだがな。

「わりいわりい、お前の弁当が美味いからつい。これやるから許してくれ」

 大して悪いとも思っていない表情で海翔は俺に飲み物の方のヨーグルトを渡してきた。

「食べ物と飲み物を等価交換するな」

「でも好きだろ?」

「ああ、許す」

 飲み物はヨーグルトこそ至高。程よい甘さと酸味が交わりあって世界一美味しいのだ。

 牛から出た液体をそのまま飲むのではなく、一度ヨーグルトという半固形物に加工した後再び液体にしようと考えた天才には敬意を表したい。

「で、さっきの女の子は誰だよ。すっげえ可愛かったじゃん。どんな関係なんだ?」

「それなら幸村が良く知ってるぞ。説明してやってくれ」

「え?僕!?」

「ああ。俺よりも仲が良いからな」

「ほうほう、幸村ちゃん。教えてくれや」

「ちゃん呼びはやめてっていつも言ってるじゃん。まあいいや、僕が説明するよ。あの子は雨宮沙希さん。1年生の子だよ」

「なるほど、1年生か!でもテニス部ってわけじゃなさそうだよな。肌白かったし」

「どこ見てるんだよ。変態か」

 真っ先に肌の白さを見るってなんだよ。

「当然だろ?肌見りゃそいつがどんなスポーツやってる子なのかとかどんな性格なのかとか分かるからな」

「うん、変態だな。幸村、サッカー部の顧問って誰だったか」

 普通肌の白さで人の性格ややっているスポーツを見極められるわけが無い。これは犯罪だ。

「えっと、確か佐藤だった気がする」

「よし、こいつを運んで連れていくぞ」

「うん」

 俺が足の方を掴み、幸村が腕を掴む。

「ちょっとまて!別にスポーツやってたら普通に習得するだろ!」

 しかし往生際の悪い海翔はじたばたと暴れて振りほどいた。

「幸村、そんなこと出来ないだろ?」

 俺は学外のクラブでテニスをやっている幸村に聞いた。

「うん、そりゃそうでしょ。だから連れていくのに付き合ったわけだし」

「だよな。誰よりも運動してるコイツが出来ないって言うんだから出来ないな」

 幸村の見た目はほぼ女だが、こう見えてテニスの大会で毎回ベスト4以上を取ってくる猛者中の猛者だ。

 そんな奴が出来ないというのであれば嘘以外ありえない。

「ちょっと待て!なあお前ら!出来るよな?助けてくれ!」

 海翔は証明するべく飯を食っていたサッカー部の連中に声を掛けた。

「出来るぞ」

「運動部として当然の嗜み」

「幸村が出来ないのは女の子だからだろ」

「ほらな!」

 まさかサッカー部の3人全員出来るとは思わなかった。

「幸村は女だし、俺は運動部ではないから出来ないのか……?」

 常識が狂っていたのは俺の方なのかもしれない。幸村という女と一緒に居た弊害かもしれない。

 まさか、あの美琴のキャラを俺だけ受け入れられないのも……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

乗り換え ~結婚したい明子の打算~

G3M
恋愛
 吉田明子は職場の後輩の四谷正敏に自分のアパートへの荷物運びを頼む。アパートの部屋で二人は肉体関係を持つ。その後、残業のたびに明子は正敏を情事に誘うようになる。ある日、明子は正敏に結婚してほしいと頼みむのだが断られてしまう。それから明子がとった解決策 は……。 <登場人物> 四谷正敏・・・・主人公、工場勤務の会社員 吉田明子・・・・正敏の職場の先輩 山本達也・・・・明子の同期 松本・・・・・・正敏と明子の上司、課長 山川・・・・・・正敏と明子の上司

処理中です...