可愛かった幼馴染の女の子がイケメン堕ちした本当の理由に一同驚愕。演劇を始めてしまった事が理由との噂も。

僧侶A

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5話

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「こんなに貰っても良いんですか!?」

「勿論だ」

 一応世のアシスタントと同じくらいの給料なのだが、働いたことの無い雨宮にとっては大金に映ったようだ。

「じゃあこのお金で『ヒメざかり!』のグッズを買い占めますね!」

「別にそんなことはしなくても良い。編集部からいくらでも届くからな」

「でも、やっぱり自分のお金で買うのがファンだと思うんですよ」

 本当にいいファンだな……

「よし、給料の方を上げるか。とりあえず2倍でどうだ?」

「え、なみこ先生!?!?!?!?」

「日常生活に使うならそれくらい必要だろ?」

「いや、良いですから!分かりましたから!!!」

「そうか」

 割と本気だったんだけどな。

「じゃあ次は仕事内容だな。さっきも話した通り、ストーリー作成の手伝いがメインの仕事となる」

「でもそれだと下手したら月に2,3日くらいしか仕事無いですよね?」

「そうだな。ということでそれ以外の日はトーン貼り等の雑用をやってもらう予定だ。完全に初心者のようだから最初は簡単な所だけだがな」

「はい」

「とりあえずこれで以上だ。質問があれば随時聞いてくれ!」

「了解です!」

 と説明が終わったタイミングでインターホンが鳴った。

「おっとこんな時間だったか。雨宮はリビングかここのどちらかで寛いでいてくれ」

 俺は雨宮にそう指示し、玄関へ急いだ。

「わりい、遅くなった」

 扉を開けるとそこに居たのは南野敦さん。俺の編集担当だ。

 ちゃんとしていればカッコいいのだが、楽だからという理由でヨレヨレのTシャツにサンダルというだらしない恰好をしている。

「別に構いませんよ、こちらもすることがあったので」

 最初の方は社会人としてどうなのかと疑問を持っていたが、別に仕事に支障が出るわけでもないのでどうでも良くなった。

「じゃあ邪魔するぜ」

「はい」

 俺は南野さんをリビングに招き入れた。

「よお幸村、とそちらの女の子は?」

「こんにちは。雨宮です」

「おいまさか、剛?」

 南野さんがまたかとも言いたげな表情でこちらを見てくる。

「はい、新しいアシスタントです」

「雨宮さんは絵を描けるのか?」

「いえ」

「じゃあベタやトーン貼りの経験は?」

「無いです」

「またド素人を連れて来たのかお前は!?それだけはやめろっつったよな?」

「今回は大丈夫ですから」

「見る限り高校生だから親戚の小学生とかお前のばあちゃんとかよりはマシだろうよ。けど、素人だよな?」

「はい」

「はあ……」

「そんなカッカしないで下さいよ。とりあえず今月分のネームです」

「カッカすんなってお前のせいだろ…… まあ見るけどさ。席借りるぞ」

 ネームを受け取った南野さんは仕事モードに入ったのか真剣な表情でネームを読み始めた。


 数分後、

「とりあえず読んだ限りは問題なさそうだな。このまま仕上げてもらって構わない」

「はい。分かりました」

「んでだ、話を戻そうか」

「いえ、次はこちらを読んでください」

 俺は雨宮が考えた再来月分の話を文字起こしした紙を手渡した。

「文章?ああ、再来月のやつか。お前そんなに仕事早かったか?そもそも何で文字だけなんだ?」

 とかなんとか言いながら再度読み始める南野さん。


 そしてまた数分後、

「このままネームに起こしても大丈夫なくらい良い出来だな。ただ、再来月は巻頭カラーになったんだ。だから序盤を少し変えて欲しい。これだとカラーとしては勿体ない」

「だそうだ。雨宮」

「編集さんに認めてもらえるだなんて感激です!」

「は?」

 南野さんは事情を呑み込めておらず、大はしゃぎしている雨宮に困惑していた。

「これ、雨宮が全て書いたんですよ。俺がこんな時期に再来月分の話まで書いているわけがないじゃないですか」

「はあ!?これをこの女の子が?」

「はい!」

「え、マジかよ」

 南野さんは雨宮の真っ直ぐな笑顔を見てようやく本当だと理解したらしい。

「彼女の実力を理解していただけましたか?」

「ああ。こんなこと出来る奴なら俺としても食い止める理由はねえ。疑ってすまなかったな」

「いえ。なみこ先生の事を思ってのことだと理解していますので」

「で、こんな子をお前はどこから見つけて来たんだ?」

「それはですね——」

 俺はざっくりと雨宮を採用することになった経緯を話した。

「なんだそれ……」

 南野さんは雨宮に若干引いていた。

「でも実力も愛も本物ですから」

 雨宮がいれば漫画を作るのがもっと楽に、ではなくもっといい話を作れるようになるのだ。

 多少おかしくても受け入れた方が良い。

「まあ剛が良いって言うんなら良いか。あ、そうだ。ちゃんと雇用契約書は作っているよな?」

「勿論です」

 詳しいことは知らないが、南野さん曰く過去それでトラブルを起こした漫画家がいたらしく、どれだけ信頼できる相手にでも雇用契約書はちゃんと作っておけと口煩く言われていた。

「なら良し。というわけで雨宮さん、これからこいつらをよろしく頼むぞ」

「はい!」

「というわけで寝室借りても良いか?そろそろ野球の試合が始まるんだ」

「良いですよ」

「ありがとう!恩に着るぜ!」

 そう言い残して南野さんは楽しそうに寝室に入った。

「え、南野さんって社会人ですよね。こんなことして大丈夫なんですか?」

 先程とは逆で雨宮が南野さんの行動に若干引いていた。

「別に大丈夫なんじゃないか?一応定時は過ぎているから」

 時計は17時30分を指していた。

「そういうものなんですかね……」

「まあ仕事はちゃんとしているんだから良いんじゃないか?」

 噂によると、見た目は有能そうなのに仕事をしないどころか漫画家に仕事を押し付ける編集なんてものが居るらしいからな。

 それよりはしっかりと仕事してくれる南野さんの方が万倍マシだ。



「寝室がやけに静かですね。あの人は野球観戦をしているんですよね?」

 雨宮は俺が仕事を教えている最中に、そんなことを呟いた。

「寝室は防音設備バッチリだからな」

「防音?どうしてですか?」

「見てみれば分かるぞ」

「ちょっと、剛くん!やめてよ!」

 俺が雨宮にそう唆すと、幸村は本当に嫌そうな顔で止めにかかった。

「本当に何かあるんですね」

「ああ。こういうのは見ておくと今後の為になるかもな」

「あのさあ、剛くん。そういうのは良くないからね?」

 そう言いつつ幸村は外に出て行った。

「え?本当に何かあるんですか?」

「何だろうな」

「でもここまでされたら俄然興味が湧いてきますね。開けてみます」

「ああ」

 雨宮は覚悟を決めたようで、恐る恐る扉を開いた。

「いっけーー!!!!回れ回れ回れ回れ!!!!!良し!!!落とした!!!ホームに突っ込め!!いけいけいけいけ!!!!!!!」

 扉を開けた瞬間、リビングにまで叫び声が響き渡る。

 雨宮はそれを目撃した瞬間に扉を閉じた。

「なるほど。そういうことですか」

 雨宮の口調は冷静だが、顔は騒音で大きく歪んでいた。

「そういうことだ。幸村を呼んでくる」
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