地獄の住人は科学力で神に抵抗する

僧侶A

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第6話

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 現れたのは巨大なロボットだった。

 ただし形は一般的な人型ではなく、ずんぐりとした四足歩行であり、人というよりは獣という色が強いものだった。

「テレビでしか見たことのないようなロボットまでこの世界にはあるのね」

「それに加えて性能もこっちの方が上みたいだよ」

 巨大ロボットらしく、動きは遅いのかと思いきや、これが20mを優に超えているとは思えないほどのスピードだった。

 チーターが全力疾走するような動きの速さを、その巨体で実現していた。

 見事なカメラワークによって動きをどうにかとらえられてはいるが、実際にその場にいた場合目で追うことは不可能だろう。

 神はその動きに翻弄され、ただ蹂躙されるのみだった。

 流石の神であっても、能力を完全に失った状態では、10分と持たなかった。

 そして神と神殿の残骸は消滅した。

『我々人間の勝利だ!今ここで我々は管理者から解き放たれることが出来たことを宣言する!』

 ヒトラーのその言葉と共に映像は終了した。

「終わったわね」

 何やらよく分からないままに戦争が終わってしまった。

「神様が居なくなってしまったのか。正直実感が湧かない」

「これからどうなってしまうのでしょうね」

 何も分からないままこの世界に放り出され、そしてその実行者であろう神様が消滅した。

 ただ、これで当面の危機は消失したのだ。これで安心して地獄での人生を歩んでいける。


 そんな騒動が起こってから2週間後、俺は地獄での生活にも慣れてきた。

 今は法律という元々進んできた道を再学習している。

 とは言っても法律が完全に違うため0からのスタートなのだが。

 そして高野さんはというと、歴史学の研究を行っていた。

 話によると、歴史上の人物が実在しているのでその時の事情や考えなどが全てネット上に乗っているとのこと。

 例えば本能寺の変の後織田信長はどうなったのか。何故ヒトラーはあのようなことをしでかしたのか等。

 現実世界では絶対に知りようのない裏事情を聞くことが出来て非常に楽しいとのこと。

 ちなみに私たちの関係はと言うと、

「高野さん、今日の晩御飯はどうします?」

「甘いものが食べたい気分なのでグラタンとケーキでお願いします」

「そんなカロリーの高いものばかり食べて…… 体壊すよ?」

「またまた。この体が壊れることは無いって論文があるの知っているでしょう?」

「それでも人間の頃の生活をちゃんとしておかないと。いざという時に大変だよ?将来妹がこっちに来た時に失望されても知らないよ?」

「分かりました。じゃあケーキにしておきます」

「話聞いてた?ったくもう。今日はケーキにしておくけど明日はちゃんとしたもの食べてね」

「はいはい」

 とこんな感じで、家族のような関係になっていた。

 元々年齢が離れていた為恋人同士になるなんて考えにならなかったのもあるが、それ以上に持病の関係で早死にすることを悟っていた高野さんが恋愛という感情を放棄していたことが大きな理由だ。

 そんな平和な日々を暮らしていた。

 が、前に聞いたことのある音によってそれは打ち切られることになった。

『空襲警報です。市民の皆さんは部屋に隠れていてください』

 俺たちは前回同様に窓を閉め、部屋の中で大人しくしていた。

 ただし、今回は前回と違い不安は一切無い。

 この世界について学んでいく中で、建物が一番安全な場所であることが判明したからだ。

 現世では破壊する方が圧倒的に有利だったのだが、研究が進んでいく中で防御の方が強くなっていったらしく、今ではどんな攻撃をしたとしても建物内にいる人間を外から殺すことは不可能になったらしい。

 つまり、どんな空襲が来ていたとしても、この壁を乗り越えることは出来ないということだ。

「今回は何が来るのかしら」

 高野さんは呑気に窓から外を見ていた。俺もそれに付き合う形で外を見る。

 そして見えてきたものは天使だった。先の戦争にて神を倒してしまったため、わざわざこちらに来る意義なんて無いはずなのに。

『地獄の悪しき住民たちよ。これは復讐だ』

 そうか。こいつらは神々の奴隷だった。


 天国に行く資格のある者は基本的に神様の信者だ。

 だからこそその可能性は失念していた。

 もし最も大切に思う相手を突如奪われてしまったら?

 神様が死んだところで天国の住人が俺たちを嫌っていることは重々分かっている。

 それに。

 分かりあえたとしても天使と俺達が同じ土俵で生活していくのは難しいのだ。

 天使は生命体としてのスペックが高すぎるのだ。

 かなり上手に調教され、人を一切襲わないと言われていても、それがライオンなら道を歩いている状況に耐えられないのと同じだ。

 仮に天使と共に過ごした場合、もしかしたら天使が暴走してしまうかもしれない、という恐怖を常に持ち続けることになるのだ。

 まあ、天使は元々俺たちの事を見下していたから分かりあえることなんてありえないんだがな。

「あの数は大丈夫なのかしら」

 実は、この世界が始まったとされてから、天使による大規模な侵攻は無かったのだ。

 最大とされている進攻でさえ100人も居なかったのだ。

 ただし今回は天使が全軍で攻めてきているようだ。

 更に今回の場合命を惜しむことなく攻めてくるため、こちらは確実に倒しきらなければならないのだ。
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