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44話
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男女に別れ、それぞれ更衣室へと向かった。
私と冴木は男同士かつそこまで関係値が深いわけではないので特に何があるわけでもなかった。
強いて言えば冴木が私の腹筋を見て驚いていたことだろうか。
同業の配信者は体を鍛えている人が少なかったから珍しいんだろうな。
「悪いね、ちょっと時間がかかっちゃったよ」
私たちが着替えから出て数分後、次葉とサキが出てきた。
「やっぱり着替えてきて良いですか?」
次葉は堂々としているが、サキは何故か恥ずかしそうに次葉の裏に隠れていた。
「似合っているんだから堂々とすればよいじゃないか」
肌面積が少なめなフリルのついたピンクのビキニという中々にハードルが高い水着ではあるが、似合っているのであれば恥ずかしがる意味も無いだろうに。
「そういう問題じゃなくてね……」
まあそんな単純な話ではないか。カメラ越しか生かで見られる感覚は結構違うしな。
「私はどうかな?」
「似合っているに決まっている」
「ありがとう。優斗君も似合っているよ」
「海パンだけなのに似合っているも何も……って急になんだ」
「早く行くよ」
突然私をお姫様抱っこしてきた次葉は砂浜を走り出した。
「はい!」
「は?」
そして何故か用意されていたパラソルの中に入り、私を座らせて次葉がうつ伏せで寝た。
「当然やることは分かっているよね?」
「これか」
近くにはこれをやれと言わんばかりに多種多様な日焼け止めが配置されていた。
「じゃあ任せたよ」
「分かったよ」
これは断っても無駄だろうな。やるしかないか。
「とりあえずこれか……?」
日焼け止めについては流石に詳しくないので、とにかく肌に優しくて効果が高そうなものを選ぶことにした。
そこらの男と比べても次葉は強く大きく育ったが、昔は虚弱で病気がちだったからな。気を使うに越したことはないだろう。
「んっ……塗るなら塗るって言ってよ……」
「ああ、すまない。冷たかったな」
「うん……」
手に出した日焼け止めを伸ばしてからそのまま塗ったら次葉に怒られた。
「気を取り直して、今から塗るぞ……」
「分かったよ。んっ……」
予告したところで一切反応が変わっていない気はするが気にせず進めていく。
「相変わらず肌綺麗だな」
イラストの仕事で毎日忙しくてケアにそこまで時間を掛けられていない筈なのだが、次葉の肌は毎日ケアを欠かしていない美容系のOurTuberに負けず劣らずの透き通った肌をしている。
「しっかり栄養のある食事をとって、適度に運動して適度に睡眠をとっているからね」
「それで綺麗な肌を維持できるものなのか……?」
「健康が一番のスキンケアだからね。まあ髪については美容院で定期的にケアしてもらってるけど」
「そういうものなんだな……」
私も健康にはそこそこ気を使っている方なのだが、恐らく次葉ほどではないのだろうな。
「そういうこと。にしても優斗君にも苦手なものがあったんだね」
「そうか?」
確かに日焼け止めを塗る作業は初めてだったが、別に下手だとは思わないんだが。
「うん。日焼け止めを塗るのにやけに時間がかかっているし、力も入っているよ?」
「それは次葉を気遣った結果なんだが」
「私?」
「ああ。手早く適度な力で塗っていたら会話出来ないくらいにくすぐったがっていただろ」
冷たい事が声をあげていた主な原因だが、くすぐられる事への耐性の無さも結構あっただろ。
「別に大丈夫だよ?ちゃんと耐えられるから」
「耐えるって言っている時点で駄目だろ」
大丈夫なら感じないからと答えてくれ。
「まあ、一旦これで終了だ」
「ありがとう。じゃあ次は優斗君の番だね」
「私は別に良いが」
日焼けは特に気にしていないしな。
「そういう問題じゃないんだよ。ほら」
「おい」
次葉はやたら慣れた手つきで私をうつ伏せに寝かせ、私の太ももの上に座って脱出を封じてきた。
「ほら、されるがままにした方が楽だからね」
「あのな……」
「はいはい、楽しみに待っていてね。どれにしようかな……」
私の声は一切聞き入れる様子はないらしく、楽しそうに日焼け止めを選んでいた。せめて早くしてくれ。
「じゃあ始めるね……」
私と冴木は男同士かつそこまで関係値が深いわけではないので特に何があるわけでもなかった。
強いて言えば冴木が私の腹筋を見て驚いていたことだろうか。
同業の配信者は体を鍛えている人が少なかったから珍しいんだろうな。
「悪いね、ちょっと時間がかかっちゃったよ」
私たちが着替えから出て数分後、次葉とサキが出てきた。
「やっぱり着替えてきて良いですか?」
次葉は堂々としているが、サキは何故か恥ずかしそうに次葉の裏に隠れていた。
「似合っているんだから堂々とすればよいじゃないか」
肌面積が少なめなフリルのついたピンクのビキニという中々にハードルが高い水着ではあるが、似合っているのであれば恥ずかしがる意味も無いだろうに。
「そういう問題じゃなくてね……」
まあそんな単純な話ではないか。カメラ越しか生かで見られる感覚は結構違うしな。
「私はどうかな?」
「似合っているに決まっている」
「ありがとう。優斗君も似合っているよ」
「海パンだけなのに似合っているも何も……って急になんだ」
「早く行くよ」
突然私をお姫様抱っこしてきた次葉は砂浜を走り出した。
「はい!」
「は?」
そして何故か用意されていたパラソルの中に入り、私を座らせて次葉がうつ伏せで寝た。
「当然やることは分かっているよね?」
「これか」
近くにはこれをやれと言わんばかりに多種多様な日焼け止めが配置されていた。
「じゃあ任せたよ」
「分かったよ」
これは断っても無駄だろうな。やるしかないか。
「とりあえずこれか……?」
日焼け止めについては流石に詳しくないので、とにかく肌に優しくて効果が高そうなものを選ぶことにした。
そこらの男と比べても次葉は強く大きく育ったが、昔は虚弱で病気がちだったからな。気を使うに越したことはないだろう。
「んっ……塗るなら塗るって言ってよ……」
「ああ、すまない。冷たかったな」
「うん……」
手に出した日焼け止めを伸ばしてからそのまま塗ったら次葉に怒られた。
「気を取り直して、今から塗るぞ……」
「分かったよ。んっ……」
予告したところで一切反応が変わっていない気はするが気にせず進めていく。
「相変わらず肌綺麗だな」
イラストの仕事で毎日忙しくてケアにそこまで時間を掛けられていない筈なのだが、次葉の肌は毎日ケアを欠かしていない美容系のOurTuberに負けず劣らずの透き通った肌をしている。
「しっかり栄養のある食事をとって、適度に運動して適度に睡眠をとっているからね」
「それで綺麗な肌を維持できるものなのか……?」
「健康が一番のスキンケアだからね。まあ髪については美容院で定期的にケアしてもらってるけど」
「そういうものなんだな……」
私も健康にはそこそこ気を使っている方なのだが、恐らく次葉ほどではないのだろうな。
「そういうこと。にしても優斗君にも苦手なものがあったんだね」
「そうか?」
確かに日焼け止めを塗る作業は初めてだったが、別に下手だとは思わないんだが。
「うん。日焼け止めを塗るのにやけに時間がかかっているし、力も入っているよ?」
「それは次葉を気遣った結果なんだが」
「私?」
「ああ。手早く適度な力で塗っていたら会話出来ないくらいにくすぐったがっていただろ」
冷たい事が声をあげていた主な原因だが、くすぐられる事への耐性の無さも結構あっただろ。
「別に大丈夫だよ?ちゃんと耐えられるから」
「耐えるって言っている時点で駄目だろ」
大丈夫なら感じないからと答えてくれ。
「まあ、一旦これで終了だ」
「ありがとう。じゃあ次は優斗君の番だね」
「私は別に良いが」
日焼けは特に気にしていないしな。
「そういう問題じゃないんだよ。ほら」
「おい」
次葉はやたら慣れた手つきで私をうつ伏せに寝かせ、私の太ももの上に座って脱出を封じてきた。
「ほら、されるがままにした方が楽だからね」
「あのな……」
「はいはい、楽しみに待っていてね。どれにしようかな……」
私の声は一切聞き入れる様子はないらしく、楽しそうに日焼け止めを選んでいた。せめて早くしてくれ。
「じゃあ始めるね……」
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