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27話
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「——というのが今回紹介していただくゲームとなります」
「2対2で協力するカードゲームですか……」
今回の案件はPSIGAMESが新しくサービスを開始するデジタルTCGゲームの紹介だった。
従来のカードゲームは1対1が基本なのだが、今回はあえて2対2という新境地に挑戦してみようということらしい。
プレイするために3倍の人数を集めないといけないという事情によりハードルが若干上がっているが、デジタルであれば簡単に集められるから問題ないとのこと。
「はい。今回は2対2ということで、普段からコラボをされていて仲の良いお二人に依頼をさせていただいたというわけです」
「協力の楽しさを視聴者に見てもらう、ということですね」
オンラインで協力相手を見繕う事は可能だから一応1人でも案件をこなすことは出来るだろうが、協力して盛り上がるシーンを見せるのは難しいだろうしな。
「はい、その通りです」
「ありがたいんですが、私カードゲームなんてやったことないですよ?」
と案件について考えていると、サキが申し訳なさそうに言った。
確かに、カードゲームの経験がない人間がカードゲームの案件をやるのは実力的にも視聴者層的にも不安か。
「それに関しては問題ありません。今回案件を依頼した方々は全員カードゲームの経験が無さそうな人ばかりですから。全員初心者です」
「案件を依頼した方々ってことは他にもいるんですか……?」
「はい、そうですね。まだ誰が受けるか確定はしていませんが今回はお二人を含めて計8組のペアに案件を依頼することになっております」
「となると8組でトーナメントを行うということになるのでしょうか」
「はい、優斗さんの言う通りです。最終的には8組で1位を争い、優勝者には追加で景品をお送りしようと考えております」
「それは面白そうですね。景品ですか」
是非ともサキと共に優勝したいところだな。
「はい。出来る限り豪華なものにしようと考えております。ぜひ楽しみにしていただければと」
「分かりました。絶対に優勝させていただきます」
「優斗さん!?」
「大丈夫だ、サキ。カードゲームの経験は無いが、私が居れば優勝できる。大船に乗った気持ちで構えていてくれ」
天才の頭脳があれば初心者を出し抜くことなど容易だ。サキをMVPに出来るような勝ち方を届けてみせる。
「絶対に優勝するとは流石は天才配信者ですね。今回依頼して本当に良かったです」
「そう言っていただけるとありがたいです」
「細かいルールに関しましては後日お送りします。次はコラボの日程についてお話ししましょうか——」
それから私たちは今後の予定について話し合い、特に何事もなく終了した。
それから1週間後。
『が、がんばりましょう』
「そうだな。サキ、相当緊張しているようだが大丈夫か?」
『だだだだ大丈夫ででですすすす』
「駄目そうだな」
『だって初めての案件なんですよ……』
「そうだったな」
活動歴がそこそこ長くて登録者もちゃんといるサキなのだが、実は案件を受けたのは今回が初めてらしい。
理由を聞いたところ、一人でこなせる自信が無かったからとのこと。配信上のサキとは違って普段のサキは自分にそこまで自信がないからそう考えても仕方ないか。
「だが、今回は私たちだけの配信だ。普段のコラボ配信のように配信すれば問題ない」
PSIGAMESからもらった案件は1回きりの配信というわけではなく、ペアだけでゲームに慣れて実際に遊ぶだけの第一回、第一回の最後に決めたデッキを使って他の配信者とトーナメントの第二回と計二回行われる。
『でも、視聴者の皆にゲームの魅力を伝えないと……』
「そこらへんはあまり気にしない方が良いぞ。普通に楽しんでいる姿を見せられれば十分だ」
『そうですかね?』
「ゲームの魅力が一番伝わる方法は、楽しんでいる姿を見せることだからな」
推しが楽しんでいるゲームはやりたくなってしまうのがファンだからな。
『分かりました。全力で楽しみます』
「ああ。楽しもう」
サキの緊張がある程度ほぐれてきたタイミングで配信の時間がやってきたので、配信ボタンを押した。
「2対2で協力するカードゲームですか……」
今回の案件はPSIGAMESが新しくサービスを開始するデジタルTCGゲームの紹介だった。
従来のカードゲームは1対1が基本なのだが、今回はあえて2対2という新境地に挑戦してみようということらしい。
プレイするために3倍の人数を集めないといけないという事情によりハードルが若干上がっているが、デジタルであれば簡単に集められるから問題ないとのこと。
「はい。今回は2対2ということで、普段からコラボをされていて仲の良いお二人に依頼をさせていただいたというわけです」
「協力の楽しさを視聴者に見てもらう、ということですね」
オンラインで協力相手を見繕う事は可能だから一応1人でも案件をこなすことは出来るだろうが、協力して盛り上がるシーンを見せるのは難しいだろうしな。
「はい、その通りです」
「ありがたいんですが、私カードゲームなんてやったことないですよ?」
と案件について考えていると、サキが申し訳なさそうに言った。
確かに、カードゲームの経験がない人間がカードゲームの案件をやるのは実力的にも視聴者層的にも不安か。
「それに関しては問題ありません。今回案件を依頼した方々は全員カードゲームの経験が無さそうな人ばかりですから。全員初心者です」
「案件を依頼した方々ってことは他にもいるんですか……?」
「はい、そうですね。まだ誰が受けるか確定はしていませんが今回はお二人を含めて計8組のペアに案件を依頼することになっております」
「となると8組でトーナメントを行うということになるのでしょうか」
「はい、優斗さんの言う通りです。最終的には8組で1位を争い、優勝者には追加で景品をお送りしようと考えております」
「それは面白そうですね。景品ですか」
是非ともサキと共に優勝したいところだな。
「はい。出来る限り豪華なものにしようと考えております。ぜひ楽しみにしていただければと」
「分かりました。絶対に優勝させていただきます」
「優斗さん!?」
「大丈夫だ、サキ。カードゲームの経験は無いが、私が居れば優勝できる。大船に乗った気持ちで構えていてくれ」
天才の頭脳があれば初心者を出し抜くことなど容易だ。サキをMVPに出来るような勝ち方を届けてみせる。
「絶対に優勝するとは流石は天才配信者ですね。今回依頼して本当に良かったです」
「そう言っていただけるとありがたいです」
「細かいルールに関しましては後日お送りします。次はコラボの日程についてお話ししましょうか——」
それから私たちは今後の予定について話し合い、特に何事もなく終了した。
それから1週間後。
『が、がんばりましょう』
「そうだな。サキ、相当緊張しているようだが大丈夫か?」
『だだだだ大丈夫ででですすすす』
「駄目そうだな」
『だって初めての案件なんですよ……』
「そうだったな」
活動歴がそこそこ長くて登録者もちゃんといるサキなのだが、実は案件を受けたのは今回が初めてらしい。
理由を聞いたところ、一人でこなせる自信が無かったからとのこと。配信上のサキとは違って普段のサキは自分にそこまで自信がないからそう考えても仕方ないか。
「だが、今回は私たちだけの配信だ。普段のコラボ配信のように配信すれば問題ない」
PSIGAMESからもらった案件は1回きりの配信というわけではなく、ペアだけでゲームに慣れて実際に遊ぶだけの第一回、第一回の最後に決めたデッキを使って他の配信者とトーナメントの第二回と計二回行われる。
『でも、視聴者の皆にゲームの魅力を伝えないと……』
「そこらへんはあまり気にしない方が良いぞ。普通に楽しんでいる姿を見せられれば十分だ」
『そうですかね?』
「ゲームの魅力が一番伝わる方法は、楽しんでいる姿を見せることだからな」
推しが楽しんでいるゲームはやりたくなってしまうのがファンだからな。
『分かりました。全力で楽しみます』
「ああ。楽しもう」
サキの緊張がある程度ほぐれてきたタイミングで配信の時間がやってきたので、配信ボタンを押した。
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