将来出会うかもしれないお姉さんの為に人生を捧げてきた俺は、遂にお姉さんに出会うことが出来た。しかし数があまりにも多すぎた。

僧侶A

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29話

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 それから雑談を交わしながら滅茶苦茶美味しい夕食は幕を閉じた。

「ごちそうさまでした。美味しかったです」

「それは良かった。じゃあ片付けてくるね~」

「はい、行ってらっしゃい」

 ん?片付けてくる?

 脊髄反射でゆかりさんを押し出した後、ゆかりさんの発言に対する違和感に気付いた。

 もしかして戻ってくるんですか?何をしに?いや、文句があるわけではないんですけど。

 何かあったっけ……?


「お待たせ」

 一体何を考えているのかを必死に予想していると、ゆかりさんが戻ってきた。

 手ぶらではなく、着替えと小さな棒状の何かを持って。

「はい。何ですかそれ?」

「今日は一緒にお風呂に入ろうかなって。家族だし?」

「家族じゃないですが!?!?!?」

 家族のような存在は家族じゃないんですよ!!!!

 もっと言えばこの位の年齢の姉弟でも一緒に風呂に入ることは無いんですよ!!!!!

「ほらほら、背中流してあげるから」

「いや、流されませんよ!?」

 流石に一般的な常識は守ってください。

「うーん……じゃあとりあえず別々に風呂に入るってことだね」

「当然ですが」

 あまりにも幸福な提案だけど、これを受け入れるのはNGなんですよ。

「じゃあ私は部屋に戻るね」

 そう言ってゆかりさんは再び家を出ていった。

「何を考えているんだあの人……」

 本当に大学生としてやっていけているんだろうか。気付いたら犯罪に巻き込まれてましたとか普通にあるぞ。

「とりあえずシャワー浴びようかな」

 すっかり目が冴えてしまった俺は、今の内にシャワーを浴びておくことにした。


「じゃあ寝るかな」

 と思い、ベッドに潜り込もうとした時、再びチャイムが鳴った。

 ゆかりさん、忘れ物でもしたのかな?

「じゃあもう一度お邪魔するね」

「は、はい」

 そして現れたのは寝間着姿に枕を抱えたゆかりさんだった。

「はい、ここに寝転がって~」

 そして迷いなく俺のベッドに座り、膝をぽんぽんと叩いていた。

「膝枕ですか?」

「うん、じゃないと耳かきできないでしょ」

「どうして耳かき?」

 別に耳が悪いわけでも、耳かきが苦手だなんて話をした記憶も無いんですが。

 なんなら昨日自分でしたし。

「疲れた時は耳かきが一番かなって」

「そうですか?」

「そうだよ。私、集中する時たまに音楽を聴くんだけど、耳かき音声って落ち着くんだよね~」

「ゆかりさんってそういうの聴くんですね……」

 ヒーリングミュージックを聴いて勉強するゆかりさんはギリギリ想像できるのだけど、ASMRを聴いて寝るゆかりさんは流石に予想外すぎますって。

「うん、落ち着く音楽無いかな~ってY〇UTub〇で調べてたら見つけたの。良いよねあれ」

「別に否定はしませんけど」

 俺は聴かないけど実際にASMRを好む人がたくさんいるのは事実だし、身近な人でいえば夏目先輩が重度のASMRリスナーらしいって話も知っている。

「ってことで渚くんには生で体験してもらおうかなって。風呂上りが一番丁度いいから」

「だから一緒に風呂入ろうとか言ってきたわけですか?」

「半分くらいはそうだね」

「残りの半分は?」

「弟なのに一緒に風呂に入った事無いのは変だな~って思ってたから」

「変じゃないですね。それが真っ当です」

「そんな照屋さんな渚くんも耳かきなら大丈夫でしょ?」

「まあ、そうですね」

 俺は大人しく膝枕をされることにした。

 これはあくまでドアインザフェイスという交渉術に無意識下で引っ掛かっただけで、ゆかりお姉さんの太ももを体感したかったからではありません。断じて、決して、絶対に。

 あっ、ゆかりさんの太もも柔らかい……

 そして風呂上がりのゆかりさんめっちゃいい匂いだ……

「もうこの時点で癒されてるね」

「そうですか?」

 そりゃそうでしょ。ゆかりさんそのものが癒しなんだから。接触したら一気に体力が回復するに決まっているでしょ。「顔が緩んでいるからね。普段の渚くんは基本的にしっかりしてそうな顔しているから」

「はっ!」

 あまりにも幸せ過ぎて無意識に顔が緩んでしまっていた。これじゃまるでお姉さんの太ももと匂いで興奮している変態じゃないか。そうだけども。

「とりあえず耳かきを始めるからね」

「はい」

 というわけで幸せの絶頂ともいえる時間が始まった。

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