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25話
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「はい、勝ちましたよ」
「そんな馬鹿な!!!」
案の定国崎さんは先程のキャラを使ってきた為、3-0で俺の勝利だった。思っていた数段強かったけれど、相性の暴力で全て解決した。
「ってことで原稿を始めますよ」
俺は悔しがる国崎さんを強引に立たせ、椅子に座らせた。
「ところで渚くん。何の作業をするんだい?」
しかしこの人、作業をする気が一切無い。
「今月の次葉先生の漫画ですけど」
「それは昨日の夜の時点で終わってしまったんだな!」
「はい?」
「次葉先生が連絡したじゃん。明日は一日中楽しむぞって」
「あれって漫画の事じゃなかったんですか?」
「そんなわけないでしょ。ね、次葉先生?」
「原稿は楽しくないよね~」
「漫画家ですよね?」
描き手が楽しくないって一番あっちゃいけない状況じゃないか。
「漫画で一番楽しいのってネームだからね。将来を夢想しながら描きたいように描けるし」
と語る次葉先生。
「原稿はそれを現実にする作業。ただ目の前にある線を綺麗にして白と黒を乗っけるだけ。最高に退屈な作業だ」
それに補足をしたのは国崎さん。
「フルカラーなら感情も乗るんだけどね~」
「代償として色々な部分が終わるけどな」
「そうなんですね」
それに同調して付け加えたのが江藤さんに森園さん。本当に全員の総意らしい。
漫画家って漫画を作る工程の1から10まで全て愛していると思っていたけれど、実際の所は全くそんなことはないらしい。
なるほど、漫画家はネームと色塗りが楽しくて描いているのか。ならそれ以外の部分を強化しておかないと。
一応サンプルがここの4人しか無いので偏りはあるだろうけど、少なくともこのお姉さん方の欲求を補佐できるからね。
「ってことで遊ぼう!ほらもう一度こっちに来て!」
そして次葉先生は再び俺を膝に乗せた。
今は仕事が全てを終わっている状態と分かっているので、表情は維持しつつ、全力で堪能させていただく。
そして今度は国崎さんとのタイマンではなく、同人誌作成中の森園さんを除いた4人での戦いとなった。
積極的に勝利を収める必要が無くなった俺は、全員が丁度良く気持ちよくなれるような立ち回りに徹した。
そのお陰か、実際に場を盛り上げることには成功したし、定期的に喜びからか、背後から次葉先生に抱き着かれるというイベントも堪能できた。
しかし、盛り上がりすぎた。
もっと言えば、俺が来るからと遠慮していた筈の江藤さんまで酒を飲み始めてしまったのだ。
お陰様で全体的な距離感も縮まり、スキンシップも多くなったのだが、
「ごめん、ちょっと気持ち悪い……」
調子に乗った次葉先生が胃の中に収めていた物質を外界に放出する一歩手前まで進んでしまったのだ。
森園さんの手を煩わせるわけにはいかないので俺がお手洗いまで連れていかせた後、再び仕事部屋に戻ると、
「地面がくるくるくる~って回ってるかも~」
「私は!最強!だから!この気持ち悪さには屈しな……」
残す二人も限界一歩手前に居た。
流石にこの数は俺のキャパシティを超えている。酔っぱらいの介抱は一人当たり二人が限度。それ以上は何かを犠牲にする必要がある。
しかし、犠牲にできるものなんてこの場には存在しないわけで。
「森園さん、手伝ってくれませんか?」
1人助っ人を呼ぶことにした。
「そうだね。流石にどうにかしないとだよね」
というわけで二人がかりで三人のよっぱらいを介抱した。
「これでよし」
「そうですね、これからどうします?」
寝室にベッドを敷き、三人を寝かせた後、仕事場で二人っきりになった俺は森園さんにそう尋ねた。
「私はこれを何ページか進めて帰るかな。渚くんは?」
「俺は三人に何かあったら不味いのでしばらくは待っていようかと思ってます」
「そう、悪いね」
「いえ、悪いのはあの三人なので」
許容範囲を超えて酒を飲む馬鹿が悪いわけであって、近くでただ漫画を描いていた人が悪いわけがない。
「それもそうだね。じゃあ私は有難く作業に取り掛からせてもらうね」
「はい」
森園さんが作業に戻ったのを確認した後、俺は部屋に常設されている人を駄目にする系のソファに座った。
ああ極楽極楽。
森園さんが居るので声に出すことは無いが、ソファの柔らかさが体中に染みわたって気持ちいい。
折角金曜日に燐さんから至極のマッサージを受けたばっかりなのに、もう疲労が全身に溜まっているよ。
これだから姉という人種は複数人いると困るんだ。
確かに姉は居れば居るほど幸福度は上がっていくけど、身体的な疲労はその数に比例して爆上がりしていくんだ。
せめてそうだなあ、今の半分くらいに減ってくれませんかね。あ、でも本当に半分いなくなったら泣くので二人一組で合体する形でお願いします。
と、そんな神システムの話はどうでもよくて、姉三人は大丈夫だろうか。ちゃんと無事に寝ているだろうか。
「そんな馬鹿な!!!」
案の定国崎さんは先程のキャラを使ってきた為、3-0で俺の勝利だった。思っていた数段強かったけれど、相性の暴力で全て解決した。
「ってことで原稿を始めますよ」
俺は悔しがる国崎さんを強引に立たせ、椅子に座らせた。
「ところで渚くん。何の作業をするんだい?」
しかしこの人、作業をする気が一切無い。
「今月の次葉先生の漫画ですけど」
「それは昨日の夜の時点で終わってしまったんだな!」
「はい?」
「次葉先生が連絡したじゃん。明日は一日中楽しむぞって」
「あれって漫画の事じゃなかったんですか?」
「そんなわけないでしょ。ね、次葉先生?」
「原稿は楽しくないよね~」
「漫画家ですよね?」
描き手が楽しくないって一番あっちゃいけない状況じゃないか。
「漫画で一番楽しいのってネームだからね。将来を夢想しながら描きたいように描けるし」
と語る次葉先生。
「原稿はそれを現実にする作業。ただ目の前にある線を綺麗にして白と黒を乗っけるだけ。最高に退屈な作業だ」
それに補足をしたのは国崎さん。
「フルカラーなら感情も乗るんだけどね~」
「代償として色々な部分が終わるけどな」
「そうなんですね」
それに同調して付け加えたのが江藤さんに森園さん。本当に全員の総意らしい。
漫画家って漫画を作る工程の1から10まで全て愛していると思っていたけれど、実際の所は全くそんなことはないらしい。
なるほど、漫画家はネームと色塗りが楽しくて描いているのか。ならそれ以外の部分を強化しておかないと。
一応サンプルがここの4人しか無いので偏りはあるだろうけど、少なくともこのお姉さん方の欲求を補佐できるからね。
「ってことで遊ぼう!ほらもう一度こっちに来て!」
そして次葉先生は再び俺を膝に乗せた。
今は仕事が全てを終わっている状態と分かっているので、表情は維持しつつ、全力で堪能させていただく。
そして今度は国崎さんとのタイマンではなく、同人誌作成中の森園さんを除いた4人での戦いとなった。
積極的に勝利を収める必要が無くなった俺は、全員が丁度良く気持ちよくなれるような立ち回りに徹した。
そのお陰か、実際に場を盛り上げることには成功したし、定期的に喜びからか、背後から次葉先生に抱き着かれるというイベントも堪能できた。
しかし、盛り上がりすぎた。
もっと言えば、俺が来るからと遠慮していた筈の江藤さんまで酒を飲み始めてしまったのだ。
お陰様で全体的な距離感も縮まり、スキンシップも多くなったのだが、
「ごめん、ちょっと気持ち悪い……」
調子に乗った次葉先生が胃の中に収めていた物質を外界に放出する一歩手前まで進んでしまったのだ。
森園さんの手を煩わせるわけにはいかないので俺がお手洗いまで連れていかせた後、再び仕事部屋に戻ると、
「地面がくるくるくる~って回ってるかも~」
「私は!最強!だから!この気持ち悪さには屈しな……」
残す二人も限界一歩手前に居た。
流石にこの数は俺のキャパシティを超えている。酔っぱらいの介抱は一人当たり二人が限度。それ以上は何かを犠牲にする必要がある。
しかし、犠牲にできるものなんてこの場には存在しないわけで。
「森園さん、手伝ってくれませんか?」
1人助っ人を呼ぶことにした。
「そうだね。流石にどうにかしないとだよね」
というわけで二人がかりで三人のよっぱらいを介抱した。
「これでよし」
「そうですね、これからどうします?」
寝室にベッドを敷き、三人を寝かせた後、仕事場で二人っきりになった俺は森園さんにそう尋ねた。
「私はこれを何ページか進めて帰るかな。渚くんは?」
「俺は三人に何かあったら不味いのでしばらくは待っていようかと思ってます」
「そう、悪いね」
「いえ、悪いのはあの三人なので」
許容範囲を超えて酒を飲む馬鹿が悪いわけであって、近くでただ漫画を描いていた人が悪いわけがない。
「それもそうだね。じゃあ私は有難く作業に取り掛からせてもらうね」
「はい」
森園さんが作業に戻ったのを確認した後、俺は部屋に常設されている人を駄目にする系のソファに座った。
ああ極楽極楽。
森園さんが居るので声に出すことは無いが、ソファの柔らかさが体中に染みわたって気持ちいい。
折角金曜日に燐さんから至極のマッサージを受けたばっかりなのに、もう疲労が全身に溜まっているよ。
これだから姉という人種は複数人いると困るんだ。
確かに姉は居れば居るほど幸福度は上がっていくけど、身体的な疲労はその数に比例して爆上がりしていくんだ。
せめてそうだなあ、今の半分くらいに減ってくれませんかね。あ、でも本当に半分いなくなったら泣くので二人一組で合体する形でお願いします。
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