16 / 41
16話
しおりを挟む
「中々見る目があるな!その観点は無かったぞ!」
「姉弟では無いけど接する機会は多いからね~」
何故か二人は肩を組んで笑いあっていた。
「帰ってきたか!弟よ!」
「お帰り、渚くん」
「何があったの?」
姉さんは他人に対する距離がやたら近い事は知っているけれど、買い物に行って帰ってくる程度の時間でこうはならないでしょ。
「弟が居なくなったことだし、折角だからと弟について語り合うことにしたんだ。そしたら存外盛り上がってな!」
「渚くんの面白い話を聞けて楽しかったよ。いやあ、まさか、ねえ」
「何の話ですか。姉さん、何話したの」
「それは秘密だな」
「ええ……」
まあ話せる内容はここ2カ月の間に起きた事だろうから別に良いけどさ。多分大した内容じゃないし。
「まあいいや、2人とも食べ終わったみたいだけどどうする?」
いつもならそのまま帰って終わりだけど、姉さんとゆかりさんの会話が盛り上がっているのなら邪魔するのもアレだし。
「そうだな、流石に長居するのも迷惑だしお暇した方が良いだろう。医学部は勉強が大変だろうしな」
「別にそこまで気を使わなくても大丈夫だけど、ありがとう。っていうか私の学部知ってたんだね。渚くんが教えたの?」
「いや、教えてないけど。姉さん、どうして知っているの?」
俺が伝えたのはあくまで大学生ってことだけで、そこまで細かい話はしていない。
「東央大学の生徒として、全校生徒の顔と名前は全員把握しているだけだが」
「高校の生徒会長とかじゃないんだから」
高校とか中学ならまだともかくとして、大学は無理でしょ。確かあそこ3万人位居たでしょ。
姉さんなら出来なくも無いだろうけど、そんな事する意味ないでしょ。
「流石我が弟。洞察力に優れているな」
「いや、この程度誰でも分かるよ」
何を言ってるんだこの人は。
「まあ、普通同級生までしか覚えないからな。それはさておき、ゆかりは東央大学でちょっとした有名人なんだ。だから以前から知っていたのだよ」
「有名人?」
言い方的に同級生は覚えているっぽいけど、ツッコむのが面倒なので無視することにした。
「ああ。あの医学部に芸能人ですら敵わないレベルの美女が入ってきたと話題になっていてな。弟にピッタリな女性じゃないかと思って以前調べた事があったのだ」
何してるのこの人。
「そんな事があったんだ。ってかそれなら何でさっきゆかりさんが俺を貰うって話を全力で否定したのさ」
この人がお眼鏡に敵わないなんて話は無いでしょうに。
「いや、いざ面と向かって言われるとな。可愛い弟を誰にも渡したくないという気持ちが勝ってしまってつい」
「つい、じゃなくてね。まあそもそも何もかもがおかしいから関係ないんだけどさ。あとすいません、姉さんが知らない間に失礼な事をしていたみたいで」
「私自体には迷惑かかってないし、渚くんのお姉さんだから別に謝らなくても良いかな。それよりも私って有名人なの?」
本当にゆかりさんが寛大な人で良かった。そしてそこまでの評判になっていたらしいのに気づいていなかったのか。
まあゆかりさんだし気付かないか。
「私はそう聞いているぞ。ゆかりが授業に来るお陰で医学部1回生の出席率は例年よりも高く、逆に他学部の生徒はゆかりを見るために授業に忍び込んでいるせいで出席率が例年以下になっているとか」
「あ~だから。確かに聞いていた話よりも授業を受けている人が多いな~って思っていたんだよね」
ゆかりさん、もう少し危機感を持ってください。結構な大事件だよこれ。
「東央大学って一応日本一の大学だよね?」
荒れまくった高校とかならまだ分かるけど、日本一優秀な人が集まるとされる大学だよね?
「大学は高校と違ってどの授業を受けようが、勝手な理由で授業を休もうがルール上は問題ないからな。それに、いくら優秀な人が集まったとしても所詮はただの人だ。美人が居たら気になるし、渚を見たら好きになる」
「最後の一言はよくわからないけど、そんなもんなんだね」
「そういうことだ」
なるほど、なら別に東央大学に行ったところで一歩引かれるとかは無いのかも……?
「ねえ、じゃあ京さんの場合も似たような状況だったんじゃないの?凄く美人だし」
変なことを考えていると、ゆかりさんがそんな事を言い出した。
言われてみればそうである。なんなら姉さんの方が性格面も含めて目立ちそうだ。派手だし。
下手したら姉さんを見に集まった人達による暴動とか起きているんじゃないだろうか。
「ああ、私の場合は初回授業とテストの時以外は基本学校に行かないからな。そもそも私が東央大学の生徒だと認識している人自体が少ないんじゃないか?」
「え?それで卒業できるの?」
いくら姉さんが凄かったとしても、ルールを超越することは出来ないよね。
「問題ない。私が居る学部は基本的にテスト100%の授業しかないからな」
「そんな学部ってあるの?」
いくら姉さんの言葉とはいえ、余りにも常識を超えた発言なのでゆかりさんに裏を取ってみる。
「詳しくは知らないけど、そういう学部が何個かあるって聞いたことあるよ。でもその分難易度が凄く高いから結局皆授業に出ているらしいけど」
「あるんだ」
「そもそも私が弟に嘘を言うわけがないだろう」
「さっき嘘ついたばかりでしょ」
自分の発言に少しくらいは責任を持ってくれ。
「あはは、これは一本取られたな」
「なにがだよ」
取る一本が存在していなかったんですが。
「姉弟では無いけど接する機会は多いからね~」
何故か二人は肩を組んで笑いあっていた。
「帰ってきたか!弟よ!」
「お帰り、渚くん」
「何があったの?」
姉さんは他人に対する距離がやたら近い事は知っているけれど、買い物に行って帰ってくる程度の時間でこうはならないでしょ。
「弟が居なくなったことだし、折角だからと弟について語り合うことにしたんだ。そしたら存外盛り上がってな!」
「渚くんの面白い話を聞けて楽しかったよ。いやあ、まさか、ねえ」
「何の話ですか。姉さん、何話したの」
「それは秘密だな」
「ええ……」
まあ話せる内容はここ2カ月の間に起きた事だろうから別に良いけどさ。多分大した内容じゃないし。
「まあいいや、2人とも食べ終わったみたいだけどどうする?」
いつもならそのまま帰って終わりだけど、姉さんとゆかりさんの会話が盛り上がっているのなら邪魔するのもアレだし。
「そうだな、流石に長居するのも迷惑だしお暇した方が良いだろう。医学部は勉強が大変だろうしな」
「別にそこまで気を使わなくても大丈夫だけど、ありがとう。っていうか私の学部知ってたんだね。渚くんが教えたの?」
「いや、教えてないけど。姉さん、どうして知っているの?」
俺が伝えたのはあくまで大学生ってことだけで、そこまで細かい話はしていない。
「東央大学の生徒として、全校生徒の顔と名前は全員把握しているだけだが」
「高校の生徒会長とかじゃないんだから」
高校とか中学ならまだともかくとして、大学は無理でしょ。確かあそこ3万人位居たでしょ。
姉さんなら出来なくも無いだろうけど、そんな事する意味ないでしょ。
「流石我が弟。洞察力に優れているな」
「いや、この程度誰でも分かるよ」
何を言ってるんだこの人は。
「まあ、普通同級生までしか覚えないからな。それはさておき、ゆかりは東央大学でちょっとした有名人なんだ。だから以前から知っていたのだよ」
「有名人?」
言い方的に同級生は覚えているっぽいけど、ツッコむのが面倒なので無視することにした。
「ああ。あの医学部に芸能人ですら敵わないレベルの美女が入ってきたと話題になっていてな。弟にピッタリな女性じゃないかと思って以前調べた事があったのだ」
何してるのこの人。
「そんな事があったんだ。ってかそれなら何でさっきゆかりさんが俺を貰うって話を全力で否定したのさ」
この人がお眼鏡に敵わないなんて話は無いでしょうに。
「いや、いざ面と向かって言われるとな。可愛い弟を誰にも渡したくないという気持ちが勝ってしまってつい」
「つい、じゃなくてね。まあそもそも何もかもがおかしいから関係ないんだけどさ。あとすいません、姉さんが知らない間に失礼な事をしていたみたいで」
「私自体には迷惑かかってないし、渚くんのお姉さんだから別に謝らなくても良いかな。それよりも私って有名人なの?」
本当にゆかりさんが寛大な人で良かった。そしてそこまでの評判になっていたらしいのに気づいていなかったのか。
まあゆかりさんだし気付かないか。
「私はそう聞いているぞ。ゆかりが授業に来るお陰で医学部1回生の出席率は例年よりも高く、逆に他学部の生徒はゆかりを見るために授業に忍び込んでいるせいで出席率が例年以下になっているとか」
「あ~だから。確かに聞いていた話よりも授業を受けている人が多いな~って思っていたんだよね」
ゆかりさん、もう少し危機感を持ってください。結構な大事件だよこれ。
「東央大学って一応日本一の大学だよね?」
荒れまくった高校とかならまだ分かるけど、日本一優秀な人が集まるとされる大学だよね?
「大学は高校と違ってどの授業を受けようが、勝手な理由で授業を休もうがルール上は問題ないからな。それに、いくら優秀な人が集まったとしても所詮はただの人だ。美人が居たら気になるし、渚を見たら好きになる」
「最後の一言はよくわからないけど、そんなもんなんだね」
「そういうことだ」
なるほど、なら別に東央大学に行ったところで一歩引かれるとかは無いのかも……?
「ねえ、じゃあ京さんの場合も似たような状況だったんじゃないの?凄く美人だし」
変なことを考えていると、ゆかりさんがそんな事を言い出した。
言われてみればそうである。なんなら姉さんの方が性格面も含めて目立ちそうだ。派手だし。
下手したら姉さんを見に集まった人達による暴動とか起きているんじゃないだろうか。
「ああ、私の場合は初回授業とテストの時以外は基本学校に行かないからな。そもそも私が東央大学の生徒だと認識している人自体が少ないんじゃないか?」
「え?それで卒業できるの?」
いくら姉さんが凄かったとしても、ルールを超越することは出来ないよね。
「問題ない。私が居る学部は基本的にテスト100%の授業しかないからな」
「そんな学部ってあるの?」
いくら姉さんの言葉とはいえ、余りにも常識を超えた発言なのでゆかりさんに裏を取ってみる。
「詳しくは知らないけど、そういう学部が何個かあるって聞いたことあるよ。でもその分難易度が凄く高いから結局皆授業に出ているらしいけど」
「あるんだ」
「そもそも私が弟に嘘を言うわけがないだろう」
「さっき嘘ついたばかりでしょ」
自分の発言に少しくらいは責任を持ってくれ。
「あはは、これは一本取られたな」
「なにがだよ」
取る一本が存在していなかったんですが。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

夫達の裏切りに復讐心で一杯だった私は、死の間際に本当の願いを見つけ幸せになれました。
Nao*
恋愛
家庭を顧みず、外泊も増えた夫ダリス。
それを寂しく思う私だったが、庭師のサムとその息子のシャルに癒される日々を送って居た。
そして私達は、三人であるバラの苗を庭に植える。
しかしその後…夫と親友のエリザによって、私は酷い裏切りを受ける事に─。
命の危機が迫る中、私の心は二人への復讐心で一杯になるが…駆けつけたシャルとサムを前に、本当の願いを見つけて─?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)


手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる