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46話
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「あなたは……?」
「良いから逃げろ!」
「お仲間なのでしょう?自己紹介くらいさせてくださいよ」
そういって僕の方へ意識が向いたルーシーさんをこっちの方へ吹き飛ばしてきた。
僕は壁に激突しないように優しく受け止める。
中々の衝撃だったが、大したダメージは無い。
「ったく。巻き込みたくねえから俺だけで片付けようとしたのによ」
どういっても引き下がる様子のない僕を見て呆れたように話すルーシーさん。
「何を言っているんですか。既に巻き込まれまくっているじゃないですか。今更です」
僕たちの身を案ずるのであれば最初から自分だけでやってろって話だ。
「はあ……しゃーねえな」
「で、あの方は何者なんです?」
大天使であることには間違いないが、これまで見てきた方々とはまるでレベルが違う。
「私は天使教の現教皇であり、全ての天使を開放せんと活動する大天使のミカエルです」
教皇だって?天使は天使教のことを忌み嫌っているのではないのか?
「いやあ、天使教の方々は上手く働いてくれましたよ。でなければここまでルーシーにバレずに計画を進めることは叶わなかった」
堂々と天使教を利用したと宣言したミカエルの表情はとても穏やかだった。それを悪い事だと感じておらず、さもそれが天使教として当然あるべき姿と言わんばかりに。
「それは不完全な計画だって何度も言っているだろうが!少量の成功例の為に大量の天使を破滅させて何になるんだ!」
ルーシーは相当怒っていた。しかしそれは敵に対する怒りというよりは、道を踏み外した友を引き留めるような怒りだった。
「素晴らしき世界に犠牲はつきものだよ。何度も言っているだろう?」
その言葉には聞き覚えがあった。
「まさか、これまでの事件はあなたが大天使を操っていたんですか?」
レイモンドさん以外の大天使が全員、堕天使のリスクを簡単に受け入れていた。しかも一部は明確に自分の意思と矛盾していたのにだ。
それが全て操られていたせいだと考えれば全てがしっくりくる。
「操っていたとは言い方が悪い。私はただ大天使になった子達に私の考えている理想を埋め込んであげただけだよ」
「それを操っていると言うんですよ!」
「それはどうだろう。私の考えが間違っていると思うのなら、自分の意思でしっかりと拒むことだって出来たはずだよ」
駄目だ、根本的に思考が違いすぎる。自分の行いが全て正しいと思っているせいで、会話が通じない。
「そうですか。であなたはどんな素晴らしき世を作ろうと考えているのですか?」
でも話を続ける必要がある。
「全ての人間、天使が欲望を開放したとしても、何かに困る事なく自由に生きられる理想の世界の実現だよ。今はその前段階として天使達だけを対象としているんだ」
「言いたいことは分かりました、天使がどうしてそこまでする必要があるんですか?」
別に天使だけを対象とする必要は無いじゃないか。それなら別に人間を対象としたところで大差は無い。どうしてそこまで同種族だけを犠牲にする必要があるんだ?
「それは、天使は人間にとって理想とする世界を作り出す為に神からこの世界に産み落とされた存在だからだよ」
「神から産み落とされた……?」
「ああ、そうだよ。今から大体500年程前だね」
500年前。それは天使教が生まれた時代と殆ど同時期だ。
「ってことは天使教って……」
「天使がこの世に産み落とされた時に人間の皆が新しく作り直した宗教だよ」
だからデザイア教が歴史から跡形も無く消え去ってしまっていたのか。
神を崇めるのではなく、神が人々を救うために産み落とした天使に頼り、崇める。
それが神の意思なのは明確だったから。
「でも天使って基本的に人間と変わらないんじゃ……?」
人より多少運動神経が良くて、多少見た目が良い傾向にあるだけだったはず。実際今まで出会った天使が露骨に人間離れしているみたいな事は無かった。
大天使ならともかく、ただの天使が人間に混じった所で何も変わらないんじゃないか?
「そうだね。天使達は基本的にスペック上で人間と違いは無い。だけど、神から直接産み落とされた天使は優れた知識を持っていた。当時を生きていた人間を圧倒的に凌駕するレベルのね」
少し前に受けた天使教に関する講義の事を思い出した。
あの教授による仮説は事実だったのか。
「まあそういうわけだよ。回復は済んだかい、ルーシー?」
「ああ、お陰さまでな」
どうやら僕の魂胆は最初からバレてしまっていたらしい。単に余裕だったから見逃してくれただけだ。
「じゃあ、二回戦といこうか!」
「ああ!」
そして再びルーシーさんとミカエルは戦い始めた。
自分の時を戻すことで、ダメージや疲労が完全に抜けたルーシーさんは絶え間なく攻撃を浴びせていた。
ミカエルもそれに対応し、的確に剣で防御しているが、流石に全てを受け止めることは出来ないようで、わずかではあるが、体で剣を受ける機会が増えてきていた。
これならいける!
「ぐっ!」
「おらよ!!」
そして剣が腕にクリーンヒットし、大きくよろめくミカエルに対し大きく剣を振りかぶる。
「残念、ルーシー」
「かはっ!」
しかし攻撃はミカエルの体を引き裂くことは叶わず、返しに足蹴りを食らったルーシーさんが大ダメージを負うことになった。
「ルーシーさん!」
「くそっ!てめえ!」
それでも即座に立ち上がったルーシーさんは反撃を試みる。
「無駄だよ」
しかし大ダメージを負ったことで精彩を欠いており、攻撃は当たることは無かった。
「ルーシーさん!」
これでは勝てないと判断した僕は、ミカエルの攻撃からルーシーさんを守るべく間に立ち塞がった。
ここで死なせたらそれこそ一巻の終わりだ。
「邪魔をしないでもらえるかな?これは天使と天使の戦いだ」
すると攻撃をしようと剣を振りかざしたミカエルが動きを止めた。
予想通り人間には手を出すことが出来ないみたいだ。
「そんなこと知りません。ルーシーさんは僕たちの仲間です、これ以上手出しはさせません」
もう一度時間を稼いで、回復を待ってから逃げるんだ。
「ねえ君。私が人間の為に生きているからって人間を攻撃出来ないと思っているのかい?」
「違うんですか?」
大天使には強大な力の代わりにある程度の誓約があることを知っている。
人間の為に生きるミカエルであれば、人間を攻撃することは出来ないはず。
「違うよ。だって私は」
「危ねえ!」
僕はルーシーさんに突然大きく吹き飛ばされた。
「それを一番の欲望としているわけじゃないんだから」
振り返ると、僕が居たはずの場所に剣が振り下ろされ、ルーシーさんが無残にも切り裂かれていた。
「とどめだ」
「ルーシーさん!」
ミカエルが剣をルーシーさんの心臓に突き刺そうとした瞬間、
「させぬわ!」
という大声と共に建物の壁が爆発し、その爆風でルーシーさんが僕の元まで飛ばされてきた。
爆発による煙が晴れ、そこに現れたのは両手に身長程ある大きな筆を持ち、両肩から大きな翼を生やしたマルティンさんだった。
「マルティンさん!?」
「説明は後でする!さっさと連れて逃げるんじゃ!」
「はい!」
何故マルティンさんがここにいるのか。そしてマルティンさんが大天使となっているのか。聞きたいことは色々あるけれど、ひとまずは後回しだ。
「大丈夫ですか?」
ひとまず家に連れ帰った僕はルーシーさんの部屋に入り、ベッドに寝かせた。
「良いから逃げろ!」
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そういって僕の方へ意識が向いたルーシーさんをこっちの方へ吹き飛ばしてきた。
僕は壁に激突しないように優しく受け止める。
中々の衝撃だったが、大したダメージは無い。
「ったく。巻き込みたくねえから俺だけで片付けようとしたのによ」
どういっても引き下がる様子のない僕を見て呆れたように話すルーシーさん。
「何を言っているんですか。既に巻き込まれまくっているじゃないですか。今更です」
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「で、あの方は何者なんです?」
大天使であることには間違いないが、これまで見てきた方々とはまるでレベルが違う。
「私は天使教の現教皇であり、全ての天使を開放せんと活動する大天使のミカエルです」
教皇だって?天使は天使教のことを忌み嫌っているのではないのか?
「いやあ、天使教の方々は上手く働いてくれましたよ。でなければここまでルーシーにバレずに計画を進めることは叶わなかった」
堂々と天使教を利用したと宣言したミカエルの表情はとても穏やかだった。それを悪い事だと感じておらず、さもそれが天使教として当然あるべき姿と言わんばかりに。
「それは不完全な計画だって何度も言っているだろうが!少量の成功例の為に大量の天使を破滅させて何になるんだ!」
ルーシーは相当怒っていた。しかしそれは敵に対する怒りというよりは、道を踏み外した友を引き留めるような怒りだった。
「素晴らしき世界に犠牲はつきものだよ。何度も言っているだろう?」
その言葉には聞き覚えがあった。
「まさか、これまでの事件はあなたが大天使を操っていたんですか?」
レイモンドさん以外の大天使が全員、堕天使のリスクを簡単に受け入れていた。しかも一部は明確に自分の意思と矛盾していたのにだ。
それが全て操られていたせいだと考えれば全てがしっくりくる。
「操っていたとは言い方が悪い。私はただ大天使になった子達に私の考えている理想を埋め込んであげただけだよ」
「それを操っていると言うんですよ!」
「それはどうだろう。私の考えが間違っていると思うのなら、自分の意思でしっかりと拒むことだって出来たはずだよ」
駄目だ、根本的に思考が違いすぎる。自分の行いが全て正しいと思っているせいで、会話が通じない。
「そうですか。であなたはどんな素晴らしき世を作ろうと考えているのですか?」
でも話を続ける必要がある。
「全ての人間、天使が欲望を開放したとしても、何かに困る事なく自由に生きられる理想の世界の実現だよ。今はその前段階として天使達だけを対象としているんだ」
「言いたいことは分かりました、天使がどうしてそこまでする必要があるんですか?」
別に天使だけを対象とする必要は無いじゃないか。それなら別に人間を対象としたところで大差は無い。どうしてそこまで同種族だけを犠牲にする必要があるんだ?
「それは、天使は人間にとって理想とする世界を作り出す為に神からこの世界に産み落とされた存在だからだよ」
「神から産み落とされた……?」
「ああ、そうだよ。今から大体500年程前だね」
500年前。それは天使教が生まれた時代と殆ど同時期だ。
「ってことは天使教って……」
「天使がこの世に産み落とされた時に人間の皆が新しく作り直した宗教だよ」
だからデザイア教が歴史から跡形も無く消え去ってしまっていたのか。
神を崇めるのではなく、神が人々を救うために産み落とした天使に頼り、崇める。
それが神の意思なのは明確だったから。
「でも天使って基本的に人間と変わらないんじゃ……?」
人より多少運動神経が良くて、多少見た目が良い傾向にあるだけだったはず。実際今まで出会った天使が露骨に人間離れしているみたいな事は無かった。
大天使ならともかく、ただの天使が人間に混じった所で何も変わらないんじゃないか?
「そうだね。天使達は基本的にスペック上で人間と違いは無い。だけど、神から直接産み落とされた天使は優れた知識を持っていた。当時を生きていた人間を圧倒的に凌駕するレベルのね」
少し前に受けた天使教に関する講義の事を思い出した。
あの教授による仮説は事実だったのか。
「まあそういうわけだよ。回復は済んだかい、ルーシー?」
「ああ、お陰さまでな」
どうやら僕の魂胆は最初からバレてしまっていたらしい。単に余裕だったから見逃してくれただけだ。
「じゃあ、二回戦といこうか!」
「ああ!」
そして再びルーシーさんとミカエルは戦い始めた。
自分の時を戻すことで、ダメージや疲労が完全に抜けたルーシーさんは絶え間なく攻撃を浴びせていた。
ミカエルもそれに対応し、的確に剣で防御しているが、流石に全てを受け止めることは出来ないようで、わずかではあるが、体で剣を受ける機会が増えてきていた。
これならいける!
「ぐっ!」
「おらよ!!」
そして剣が腕にクリーンヒットし、大きくよろめくミカエルに対し大きく剣を振りかぶる。
「残念、ルーシー」
「かはっ!」
しかし攻撃はミカエルの体を引き裂くことは叶わず、返しに足蹴りを食らったルーシーさんが大ダメージを負うことになった。
「ルーシーさん!」
「くそっ!てめえ!」
それでも即座に立ち上がったルーシーさんは反撃を試みる。
「無駄だよ」
しかし大ダメージを負ったことで精彩を欠いており、攻撃は当たることは無かった。
「ルーシーさん!」
これでは勝てないと判断した僕は、ミカエルの攻撃からルーシーさんを守るべく間に立ち塞がった。
ここで死なせたらそれこそ一巻の終わりだ。
「邪魔をしないでもらえるかな?これは天使と天使の戦いだ」
すると攻撃をしようと剣を振りかざしたミカエルが動きを止めた。
予想通り人間には手を出すことが出来ないみたいだ。
「そんなこと知りません。ルーシーさんは僕たちの仲間です、これ以上手出しはさせません」
もう一度時間を稼いで、回復を待ってから逃げるんだ。
「ねえ君。私が人間の為に生きているからって人間を攻撃出来ないと思っているのかい?」
「違うんですか?」
大天使には強大な力の代わりにある程度の誓約があることを知っている。
人間の為に生きるミカエルであれば、人間を攻撃することは出来ないはず。
「違うよ。だって私は」
「危ねえ!」
僕はルーシーさんに突然大きく吹き飛ばされた。
「それを一番の欲望としているわけじゃないんだから」
振り返ると、僕が居たはずの場所に剣が振り下ろされ、ルーシーさんが無残にも切り裂かれていた。
「とどめだ」
「ルーシーさん!」
ミカエルが剣をルーシーさんの心臓に突き刺そうとした瞬間、
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「マルティンさん!?」
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「はい!」
何故マルティンさんがここにいるのか。そしてマルティンさんが大天使となっているのか。聞きたいことは色々あるけれど、ひとまずは後回しだ。
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