魔王に召喚された勇者

魔王に召喚された勇者

俺はいつも通り学校に通い部活も終わって帰っている最中に暴走したトラックに轢かれて人生の幕を下ろした。

そのはずだったのだが、今明らかに異世界だと思われる城にいた。俺は異世界に転移してしまったようだ。

「よくぞ来てくれた！異世界の人間よ！」

そんな声が聞こえたので声の方に顔を向けると、角と尻尾が生えている人間が居た。

「あなたは誰ですか？」

「我は魔人族を統べている王の魔王のエリファだ。よろしくな。そなたの名前はなんというのだ？」

「私は沖田勇です。よろしくお願いします」

お互いに自己紹介が終わり、魔王が要件を話しだした。

「早速本題に入ろうかの。そなたには勇者として人族の王を倒してもらいたいのだ」

俺は驚いた。本来ならば魔王を倒すのが勇者というイメージがあったからだ。ひとまず驚きを抑えて平静を保った。

「どうして人族の王を倒さねばならないのでしょうか」

「そうだな。そなたはどちらかといえば人族の側の人間だものな。人族の庶民を救うことと我々魔族の身を守ることだ。本来王というものは民を守り豊かな生活を与えるために奔走する存在。民のための王である。だからこそ我はこの地位に誇りを持っておる。しかし、人族の王や貴族共はそんなことを考えておらん。自分の私利私欲を満たすために力を振るい、地位を守るために他人を平気で蹴落とす。そんなものが人の上に立つなど言語道断だ。そして今度は自分達の力を増強するために我々魔族を配下にしようとしておる。そんな暴挙を絶対に許してはいけないのだ。しかし魔王として恥ずかしいことに戦っても人族には勝てないのじゃ。個々の力ならこちらの方が圧倒的に上回っておるのだが多勢に無勢での。どうあがいても人の波に押されるのだ。だからこそ現状打破に勇者を召喚することにしたのだ」

俺は感心した。人の上に立つ人間としてここまで素晴らしい人というのは見たことが無い。俺が生きていた世界でもこんなことを考えている人間は居なかっただろう。だからこそ俺はこの魔王を助けることにした。

「分かりました。あなたの手助けを喜んでいたします」

「ありがとう。それでは早速倒しにいってもらおうと言いたいところなのだが流石にそなたはまだまだ弱い。だから強くなって貰う」

そう言って魔王は俺を強くするべく配下達に修行を任せた。

俺は配下達に武器の扱いを教えて貰いつつレベルを上げて着々と強化を進めていった。

そして半年くらい経った頃勇者としての能力も発現し十分な強さを手に入れた俺は王を倒しに向かうことになった。

魔王の作戦は俺が人族そっくりなことを利用して国の中から正面突破することだった。

その作戦は実際上手くいって、何も問題を起こさずに国に入り王の住む城の近くまで入ることが出来た。ここからが本題だ。

俺は門から正面突破を図り王の居る部屋まで入った。ここから王との真剣勝負が始まると思いきや、そんなことはなかった。王はそこまで強くなかったのである。魔法が強いらしいのだが、城の中ということもあり思うように力を振るえなかったようだった。

そして俺は狂乱の城から脱出して魔王の元に戻った。

魔王は満面の笑みで俺を歓迎した。

魔王はその後人族の王に代わり人族を支配することになった。

そして人族魔族２つの国が合体し、良き王の統べる歴代最高に平和な国が生まれた。