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最終話
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さて、本命の奥様はどうでしょうか。
実は引っ越していった家を知っているので訪れてみることにしました。
『ピンポーン』
流石に居るだろうという時間に押し掛けてみました。しかし待てど暮らせど出てくる雰囲気はありません。
しかし、留守という雰囲気ではありません。どちらかといえばこの家に人は住んでいないような。
偶然出会った隣人の方に聞いてみたのですが、引っ越して数日もたたずにこの家を去ったとのこと。
恐らく私が引っ越し先を容易に特定できると分かっていたからなのでしょうか。実際に訪れる宣言をしていましたしね。
ただ、一度家を経由してまた別の家に引っ越したとなると特定が途端に難しくなるんですよね。
まあ奥様が嫌がるのであれば仕方ないと帰ろうと思ったら、奥様が住んでいたはずの家のポストに手紙が刺さっていました。
宛先も無く、クリップで留められた黒い便せん。もしかすると私宛でしょうか。開けてみましょう。
『この家に来るということはあなただということは分かっています。代行屋さん。
ひとまずはありがとう。お陰で無事に縁を切ることが出来たわ。本当に感謝しかないわ。ただ、ここから先はついてこないで。プライバシーの侵害だから夫の方を覗いてなさい』
そして二枚目の紙には旦那様の現在住んでいる駅までのチケットが添付されていた。しかも今日の分が。
そしてもう一つ。小切手が入っていました。とんでもない額でした。
「まさか」
彼女は12,3年程前、史上最高の天才として有名な少女でした。
しかしとある時期を境にその彼女の話題がピタッとやみまして。テレビで一切その話題が口に出されることが無くなったのです。
ネットでは死亡説等彼女に関する様々なうわさや予測が流れていましたが全てが間違いで、偶然出会った現在の旦那様と出会ったことで表舞台に出ることを辞めていただけのようです。
まあ旦那様はそんなことは知らずに付き合っていたのですが。あまりテレビを見られる方ではないようです。
幸せを得るために十分な金を稼いだから、今後は旦那様との生活に全てを尽くす。
彼女が良くテレビなどで言っていた、「自分が幸せになるために自由に生きることが人間に唯一あたえられた義務」というセリフ通りの生き方です。
だからこそ彼女はあの年齢から金の亡者キャラでした。理由もはっきりしていましたし年齢も大層若かったこともありそれが人気に拍車をかけていました。
それなのに小切手を私に託したのは—
「幸せになるための縁切り代行屋なのにどうして貴方はこんなことを」
私は目の前の女性に小切手を見せながら言いました。
本当に探すのに手間がかかりました。道具も能力もかなり使いましたし一週間位依頼は受けられませんね。そもそも来ないでしょうけど!
「別に幸せになるためになんて実際に会社のキャッチコピーとしたことは無いでしょう?」
「確かにそうですが。わざわざ縁切り後のケアまで考えて仕事してるのがその証明でしょう?」
じゃなきゃ旦那様の縁切って終了。金ください!ですよ。
「こちらに伝えられてない以上、依頼者にとってはそんなことは関係ないのよ」
これは痛いところを突かれてしまいました。一人で切り盛りしてるのでそういった不備は仕方ないんですよ……
「それでもこんな結末だけは辞めていただきたい」
私達がいるのは人里離れた海の近く。崖の上です。
「残念ながらそれには答えられないわ。これが天才少女である私の最後の回答なの」
私にはどうしようもなさそうです。そりゃあ出会って数日程度の人間と話したところで意見は変わりませんね。
「本当に後悔はないのですね?」
「——後悔しかないわ。でも未来のことを考えるのならこれが1番なの」
少し返答を迷った後にそう言いました。恐らく本音なのでしょう。
「そうですか」
「じゃあね。親切な縁切り屋さん」
私が瞬きをした次の瞬間には既に彼女の姿はありませんでした。
実は引っ越していった家を知っているので訪れてみることにしました。
『ピンポーン』
流石に居るだろうという時間に押し掛けてみました。しかし待てど暮らせど出てくる雰囲気はありません。
しかし、留守という雰囲気ではありません。どちらかといえばこの家に人は住んでいないような。
偶然出会った隣人の方に聞いてみたのですが、引っ越して数日もたたずにこの家を去ったとのこと。
恐らく私が引っ越し先を容易に特定できると分かっていたからなのでしょうか。実際に訪れる宣言をしていましたしね。
ただ、一度家を経由してまた別の家に引っ越したとなると特定が途端に難しくなるんですよね。
まあ奥様が嫌がるのであれば仕方ないと帰ろうと思ったら、奥様が住んでいたはずの家のポストに手紙が刺さっていました。
宛先も無く、クリップで留められた黒い便せん。もしかすると私宛でしょうか。開けてみましょう。
『この家に来るということはあなただということは分かっています。代行屋さん。
ひとまずはありがとう。お陰で無事に縁を切ることが出来たわ。本当に感謝しかないわ。ただ、ここから先はついてこないで。プライバシーの侵害だから夫の方を覗いてなさい』
そして二枚目の紙には旦那様の現在住んでいる駅までのチケットが添付されていた。しかも今日の分が。
そしてもう一つ。小切手が入っていました。とんでもない額でした。
「まさか」
彼女は12,3年程前、史上最高の天才として有名な少女でした。
しかしとある時期を境にその彼女の話題がピタッとやみまして。テレビで一切その話題が口に出されることが無くなったのです。
ネットでは死亡説等彼女に関する様々なうわさや予測が流れていましたが全てが間違いで、偶然出会った現在の旦那様と出会ったことで表舞台に出ることを辞めていただけのようです。
まあ旦那様はそんなことは知らずに付き合っていたのですが。あまりテレビを見られる方ではないようです。
幸せを得るために十分な金を稼いだから、今後は旦那様との生活に全てを尽くす。
彼女が良くテレビなどで言っていた、「自分が幸せになるために自由に生きることが人間に唯一あたえられた義務」というセリフ通りの生き方です。
だからこそ彼女はあの年齢から金の亡者キャラでした。理由もはっきりしていましたし年齢も大層若かったこともありそれが人気に拍車をかけていました。
それなのに小切手を私に託したのは—
「幸せになるための縁切り代行屋なのにどうして貴方はこんなことを」
私は目の前の女性に小切手を見せながら言いました。
本当に探すのに手間がかかりました。道具も能力もかなり使いましたし一週間位依頼は受けられませんね。そもそも来ないでしょうけど!
「別に幸せになるためになんて実際に会社のキャッチコピーとしたことは無いでしょう?」
「確かにそうですが。わざわざ縁切り後のケアまで考えて仕事してるのがその証明でしょう?」
じゃなきゃ旦那様の縁切って終了。金ください!ですよ。
「こちらに伝えられてない以上、依頼者にとってはそんなことは関係ないのよ」
これは痛いところを突かれてしまいました。一人で切り盛りしてるのでそういった不備は仕方ないんですよ……
「それでもこんな結末だけは辞めていただきたい」
私達がいるのは人里離れた海の近く。崖の上です。
「残念ながらそれには答えられないわ。これが天才少女である私の最後の回答なの」
私にはどうしようもなさそうです。そりゃあ出会って数日程度の人間と話したところで意見は変わりませんね。
「本当に後悔はないのですね?」
「——後悔しかないわ。でも未来のことを考えるのならこれが1番なの」
少し返答を迷った後にそう言いました。恐らく本音なのでしょう。
「そうですか」
「じゃあね。親切な縁切り屋さん」
私が瞬きをした次の瞬間には既に彼女の姿はありませんでした。
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