私の止めようとするいじめは不可解である。

本編

その後

白井君と話をしてから少し日が経った後、大勢のマスコミがうちに駆けつけてきた。

白井君達の目論見は上手くいったようだった。

いじめを放置していたこと、そしていじめを解決するための話し合いの場で白井君に責任があるなど、いじめられている側が完全に悪いという口ぶりで責め立てたことについて言及させられていた。

ボイスレコーダーで録音した内容は動画投稿サイトに投稿されており、いつでも聞けるようになっていた。

私はマスコミが来た時にそのことを知り、ようやく実際の話を聞けたのだが、予想よりも遥かに酷いものだった。

山中君も全く同じ状況だったのだろうと思うと鬱になって自殺してしまったのも頷ける。

最初は学校に対しての非難が大きかったが、徐々にいじめに関与した生徒への批判の声が上がるようになった。

そのタイミングで白井君達はこのいじめは自演であることを公表した。

山中君が死んだことに対する復讐のためのいじめだったと。

一度矛先が別の方向に向かったが再び高校へ矛先が戻った。

山中君の件に関しては命が関わっているためにより一層燃え上がった。

その間も学校はいつも通りやっているわけだが、職員室にはクレームの電話が鳴り続けていた。

生徒達にその事件により不信感が募り、ボイコットする生徒もいた。

その後火消しをするためなのか教育委員会までもが出てきて謝罪会見が行われた。

その中で、良和高校の教員には懲戒解雇などの厳しい罰が与えられた。見て見ぬ振りをした教員も1年の減俸が課せられた。

普通の罰則と比べても明らかに強めのものだった。

人ごとのように言っているが、私も良和高校の教員である。しかし、白井君達による弁護のおかげか、一切のお咎めは無かった。

本人曰く、高校があんな状況の中1人助けようとしてくれたのだから非難されるべきではなく、寧ろ素晴らしい教師で賞賛されるべきとのことだった。

そんなことがあり良和高校の教師は私だけになった。

そのため成り行きで校長になった私は全く覚悟もしていなかった仕事を任されることになった。

そして白井君達はというといじめの自演の件を謝罪しクラスの輪に入っていった。

目的は達成した彼らはこの後どうするのかというと、山中君をいじめていた人を探し出し相応の報いを受けさせるなんてことを言っていた。

高校教師と違って探すのは大変だろう。

しかし彼らのことだから上手いこと探し出すのだろう。

マスコミもこの事件にお熱だから意外と今年中に解決するかもしれない。

不謹慎だが彼らの復讐に期待といった感じだ。

まあ一般論的には復讐は褒められたものではないかもしれない。

実際に復讐は良くないと白井君達の行動にケチをつけた人もいる。

まあそれも１つの考えだ。皆こんな考えだったらこの世は地獄だろうしな。

しかし悪事を犯した人間が一切の報いを受けずにのうのうと生きていくことの方がおかしいと私は思う。

罪には罰が必要だ。