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128話
しおりを挟む「ってわけです」
逃げ道がなくなった俺は九重ヤイバの正体が斎藤一真であること、水晶ながめの正体が幼馴染の羽柴葵であることを随分前から知っていたことを正直に告げた。
当然葵が九重ヤイバのファンだという事や、葵の正体が水晶ながめだということを利用して揶揄いまくっていたことは伏せている。
バレなきゃ犯罪じゃないからな。
「か、一真!!!どうして言ってくれなかったのさ!!!!」
俺の話を受けたながめは、自身のこれまでの行動を思い返して顔を真っ赤にして怒っていた。
「面白いからの一択でしかないけど」
どうやら樹を除いた男性陣と一色は俺の気持ちを理解してくれているようで、葵の後ろで腹を抱えて笑っている。そうだよね、同じ立場だったらそうするよね。
ただし村上さんは違うだろ。あんたマネージャーでしょうが。
ちなみに樹と華山さんはズルいと言わんばかりにそれぞれ俺とながめを睨みつけていた。
「ひどい!!!先に言ってよ!!!!!!!!!!!!!ってあれ?ってことはもしかして……」
「何?」
「推し活って全部バレてるってこと……?」
どうやら葵は自分が九重ヤイバに対して行った行動の数々を思い出したらしい。
「九重ヤイバに対して行った行動は全部バレてるね。なんならたまに九重ヤイバの話を聞いたりしてたからそれ以外の行動もある程度は知ってるし」
「ああ……」
俺がとどめを刺してみると葵は既に座っているのに膝から崩れ落ちていた。
「流石ヤイバきゅん。攻撃に余念がないね」
「多分最後だからね。やれるところまでやろうと思うよ」
「別に最後じゃないと思うけどね。多分今後もこんな感じじゃない?」
「そうかな。すぐに整理ついちゃうでしょ」
もしかすると次の配信までは揶揄えるかもしれないが、1年、2年と楽しめるわけじゃない事は確かである。
やりすぎると俺が葵の事を好きすぎる男子的な立ち位置になってしまいこちらが揶揄われる立場へと追いやられるだろうからね。
「ってことでさ、良い写真があるんだけど皆見ます?」
「え、何々?見る!!!!!」
「見せてくれ!!!!!!」
「見たい!!!!」
葵に見せるつもりで言ったのだが、何故かアスカとオーサキと奏多が食いついた。
「分かりました。これはリアルイベントの時の写真なんですけ「恥ずかしいからやめて!!!!!!」
「えっと、止められちゃいましたけどどうします?見たいですよね?」
「ああ」
「あそこまで恥ずかしがるってことはかなり面白い心あたりがあるってことだからね」
「幼馴染が良いって言う写真なんて最高に素晴らしいでしょ。だってながめちゃんの写真なんだからね」
「そうですよね。どうしましょうか」
と悩む素振りを見せつつ葵の事を見ていた。
顔を見せないように滅茶苦茶な変装をしていた時の写真を見せられることを想像しているのか、九重ヤイバと葵として話すために全力でおしゃれした時の写真を想像しているのか分からないが、顔を真っ赤にして震えている。
凄く楽しいな。
「しばらく夕飯担当は私がやるから、許して……」
……恥ずかしいと言っても耐えられるくらいのレベルだと思っていたが、まさか交換条件を差し出す程とは思わなかった。
「そっか……でもそれは流石になあ……」
俺は恥ずかしがったり照れたりしている葵の姿を見たいだけであって別に苦しんでいる姿とかを見たいとか優位に立ちたいとかいうわけじゃないからなあ……
「僭越ながら、私に良い案があります」
と写真の取り扱いを迷っていると先ほどまで笑い転げていた筈の村上さんがまるでマネージャーのような真面目な表情で手を挙げていた。
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