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122話
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『というわけでね、次の質問に行きましょうか。アラサーにもなって無職の柴犬さんのことをどう思いますか?だって。いや、無職って言ってもやめたのつい最近だけど!?それに柴犬としてお金を稼いでいますが!?』
柴犬はツリッターにて仕事を辞めた事を公表していた。その時期は水晶ながめが炎上したきっかけとなる辺見の放送翌日だ。
実際に柴犬は会社員を辞めたらしいのだが、視聴者には時期的に水晶ながめを引退したと勘違いされるだろう。
クラスメイトの話によると水晶ながめの匂わせを始めた時期から会社を辞めた匂わせをしているらしいからな。
「そうだな、みっともないと思う。ちゃんと稼げているのなら良いが、専業出来るほど稼げていないだろ。現実を見ろよ」
打ち合わせの時に知った話なのだが、柴犬の今の稼ぎは月に10万円ほどらしい。
ちゃんと世の活動者より稼げているのだが、専業するには無理がある額だろう。
他の副業と違って倍働けば倍稼げる類の職業じゃないからな。頑張って1.5倍程度だろう。
まあ、だからこそ水晶ながめの乗っ取りなんて馬鹿な事をやろうとしているのだが。
『酷くない!?!?』
「酷くない。そんな世間は甘くない」
『いくら仲が良いとはいえ、男子高校生に怒られた……』
「高校生よりも碌でもないんだから怒られて当然だろ」
『……まあ、確かに客観的に見ればこの状態で専業として生きるのは難しいと思う。でもね、なんでか分からないけど最近急に視聴者が増えたんだ。ほんとになんでか分からないけど。社会人をやっているからってしょうもない理由でこのチャンスを棒に振るわけにはいかない。私はそう思ったんだ。私は柴犬としても、そうじゃない存在としても色んな仕事をしてきたけれど、柴犬として活動するのが一番楽しいから。柴犬だと誰にも縛られることなく、こうやってありのままの自分を見せて人々を楽しませられるからね』
台本より若干口悪く喋っていると、柴犬が突然台本に無いことを語り始めた。良い話にして事務所を辞めた事を美化しようとしているのか?
『それに、会社の力に頼らず、自分の力だけでどこまでやれるのかって考えるとワクワクが止まらないよ。ね、友人Y君?』
「は?なんで俺なんだよ」
なんてことを考えると突然矛先が俺に向いてきた。
『だって君も同じでしょ?本当はありのままの自分を出したいんじゃないの?裏での君は温和で優しいこと、知っているよ?』
……こいつ、俺が九重ヤイバのキャラを崩さない理由をぐるぐるターバンのせいにしようとしてやがる。
「別にそんなことは無い。これが通常運転だ。柴犬の前でそんな姿を見せた記憶は無いが」
『ははは、まあ今はそう言うしかないよね。見られてるもんね?』
柴犬は流石にぐるぐるターバンがこの配信を見ている事には気づいているらしい。
まあ、俺の配信部屋がぐるぐるターバンだと共有であることくらいは知っているだろうから特に驚くべきことではない。
「視聴者は見ているな」
が、わざわざ公開してやる意義は無いので適当にぼかす。
『あら、ガードが堅いねえ。まあ、素じゃない事は事実だよね?』
「これが素だ。ずっとそうだっただろう?」
『まあそうだけどさ、高校生がそんな口調で現実に居たら痛々しすぎるよ』
「そんなことは無い。俺だからな。そんなことより、誰にも縛られることなく自由に生きたいってのがお前の意思なのか?」
『うん。そうだよ。それを達成するために今この配信をしたと言っても過言ではないよ。で、ここからは打ち合わせの時には言ってなかった君へのお願いなんだけど、私と一緒に自由をつかみ取るために走ってくれない?』
俺への言及をどうにか避けようとしていると、唐突に俺を勧誘してきた。妙に芝居がかっていたので、ほぼ確実に台本だろうな。
「無理に決まっているだろ。友人Yとして一緒に配信に参加したものの、結局はネットで知り合った赤の他人だ。肩を預けて一緒に歩めるほどではない」
『うーん、そっか。やっぱりあの子と付き合っているからだよね?Aさんと』
「Aさん?どうしてそうなる」
Aさん。つまり雛菊アスカと俺が付き合っている?どうしてその話になるんだ?
柴犬はツリッターにて仕事を辞めた事を公表していた。その時期は水晶ながめが炎上したきっかけとなる辺見の放送翌日だ。
実際に柴犬は会社員を辞めたらしいのだが、視聴者には時期的に水晶ながめを引退したと勘違いされるだろう。
クラスメイトの話によると水晶ながめの匂わせを始めた時期から会社を辞めた匂わせをしているらしいからな。
「そうだな、みっともないと思う。ちゃんと稼げているのなら良いが、専業出来るほど稼げていないだろ。現実を見ろよ」
打ち合わせの時に知った話なのだが、柴犬の今の稼ぎは月に10万円ほどらしい。
ちゃんと世の活動者より稼げているのだが、専業するには無理がある額だろう。
他の副業と違って倍働けば倍稼げる類の職業じゃないからな。頑張って1.5倍程度だろう。
まあ、だからこそ水晶ながめの乗っ取りなんて馬鹿な事をやろうとしているのだが。
『酷くない!?!?』
「酷くない。そんな世間は甘くない」
『いくら仲が良いとはいえ、男子高校生に怒られた……』
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『……まあ、確かに客観的に見ればこの状態で専業として生きるのは難しいと思う。でもね、なんでか分からないけど最近急に視聴者が増えたんだ。ほんとになんでか分からないけど。社会人をやっているからってしょうもない理由でこのチャンスを棒に振るわけにはいかない。私はそう思ったんだ。私は柴犬としても、そうじゃない存在としても色んな仕事をしてきたけれど、柴犬として活動するのが一番楽しいから。柴犬だと誰にも縛られることなく、こうやってありのままの自分を見せて人々を楽しませられるからね』
台本より若干口悪く喋っていると、柴犬が突然台本に無いことを語り始めた。良い話にして事務所を辞めた事を美化しようとしているのか?
『それに、会社の力に頼らず、自分の力だけでどこまでやれるのかって考えるとワクワクが止まらないよ。ね、友人Y君?』
「は?なんで俺なんだよ」
なんてことを考えると突然矛先が俺に向いてきた。
『だって君も同じでしょ?本当はありのままの自分を出したいんじゃないの?裏での君は温和で優しいこと、知っているよ?』
……こいつ、俺が九重ヤイバのキャラを崩さない理由をぐるぐるターバンのせいにしようとしてやがる。
「別にそんなことは無い。これが通常運転だ。柴犬の前でそんな姿を見せた記憶は無いが」
『ははは、まあ今はそう言うしかないよね。見られてるもんね?』
柴犬は流石にぐるぐるターバンがこの配信を見ている事には気づいているらしい。
まあ、俺の配信部屋がぐるぐるターバンだと共有であることくらいは知っているだろうから特に驚くべきことではない。
「視聴者は見ているな」
が、わざわざ公開してやる意義は無いので適当にぼかす。
『あら、ガードが堅いねえ。まあ、素じゃない事は事実だよね?』
「これが素だ。ずっとそうだっただろう?」
『まあそうだけどさ、高校生がそんな口調で現実に居たら痛々しすぎるよ』
「そんなことは無い。俺だからな。そんなことより、誰にも縛られることなく自由に生きたいってのがお前の意思なのか?」
『うん。そうだよ。それを達成するために今この配信をしたと言っても過言ではないよ。で、ここからは打ち合わせの時には言ってなかった君へのお願いなんだけど、私と一緒に自由をつかみ取るために走ってくれない?』
俺への言及をどうにか避けようとしていると、唐突に俺を勧誘してきた。妙に芝居がかっていたので、ほぼ確実に台本だろうな。
「無理に決まっているだろ。友人Yとして一緒に配信に参加したものの、結局はネットで知り合った赤の他人だ。肩を預けて一緒に歩めるほどではない」
『うーん、そっか。やっぱりあの子と付き合っているからだよね?Aさんと』
「Aさん?どうしてそうなる」
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