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112話
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「服をくれる人が実はイラストレーターでね。資料として服を大量に購入しているんだよ」
「そうなんだ。でもそれを自分で着ないの?」
「うん。サイズが合わないんだって」
「え?」
「その人身長が高い上に結構ゴツくてね。自分に合うサイズのものを資料にしたら描きたいキャラに合わないんだって」
イラストレーターならサイズくらい合わせられるような気もするが、気付かないうちにサイズ感が狂っていく可能性があるから嫌なんだと。
「そうなんだ」
「で俺の体格辺りが丁度いいサイズ感らしいから服を貰っているんだよ」
「確かに普通のキャラって一真くらいの身長だね」
「そうだね」
「そっか、友達にデカいイラストレーターが居るんだ……ちなみにどんな人?」
イラストレーターについて話したらそりゃあどんな人か聞いてくるか。
「そうだね、水晶ながめの大ファンだよ。病的なレベルで」
「え、あ、そうなんだ……」
俺が樹の一番の特徴を話すと、葵は水晶ながめの名前が唐突に出てきたが、見知らぬイラストレーターは直接対面したことない人だと思っているせいかこれまでとは違い微妙な驚き方をしていた。
水晶ながめの大ファンという辺りから正体が樹だとバレる危険性はあったが、葵の反応が見たくてつい言ってしまった。
ただ、そんな様子は無い上に珍しい反応をしてくれたので結果オーライだ。
「だから最近は専ら水晶ながめのファンアートばっかり描いているから服はそんなに貰っていないね」
「そ、そっか」
「っと、食べ終わったなら俺が片付けるよ」
「良いの?ありがとう」
まだまだ葵をからかっても良かったが、今日の流れだとこちらが九重ヤイバだとバレるリスクがあるのでやめておくことにした。
「よし、って葵?」
食器と調理器具を洗って片付けてリビングに戻ると、葵がスマホを見て顔面蒼白にしていた。
「え、えっと、何かした?」
「いや、葵の様子が明らかにおかしいから。何もないわけないでしょ」
今の葵はまるでこの世の終わりが来たかのような、そんな表情だった。
つまり俺に水晶ながめであることがバレるとかの比ではない何かが起きている。
「だ、大丈夫。なんでもないから……」
「あ、葵!?」
何がともあれ事情を知らない事には始まらないので聞いてみたものの、葵はそう言って部屋に逃げ込んだ。
「葵が数分で顔面蒼白になって、俺に相談できずに部屋に引き籠る内容ってなんだ……?」
本人には聞けないから、葵があそこまでの状態になる悪い事を一旦整理して考えよう。
一つは身内や友人が事故や病気で病院に運ばれた可能性。ただこれは絶対にない。それなら俺に話せるだろうし、そもそも部屋に引き籠らずに病院に向かうだろう。
一つは全てのお金を失ってしまった場合。水晶ながめとして稼いだであろう数百万どころではない額が全て無くなったのであれば俺に相談できないし、部屋に引き籠るのは分かる。
でもこれもあまり考えにくい。ただの高校生である葵が一気にお金を溶かしたり失ったりする方法があるようには思えないのだ。
一応口座を乗っ取ればその事情は起こせるだろうが、それは顔面蒼白になるってよりは慌てて警察と銀行に連絡するだけで済む。ただ今部屋から声が聞こえてこないので違うだろう。
その他に不幸な内容は考えられるが、命とお金以外で葵があそこまで顔面蒼白になるとは思えない。
となると不幸になったのは葵ではなく水晶ながめか……?
俺は一旦スマホでツリッターを確認した。すると俺の予想通り水晶ながめが大炎上していた。
ネットで数多くの人が水晶ながめの事を叩きまくっているのだが、
「は……?」
今回水晶ながめが炎上した理由があまりにも頓珍漢な理由だった。
というのも、炎上した理由は水晶ながめの年齢詐称である。
水晶ながめは現役高校生ということで年齢は17歳になっており、大半が成人しているVtuber業界では現実的には殆どありえない年齢である。
だがしかし、水晶ながめの中身である葵は本物の現役高校生である。年齢詐称なんてしているわけがない。
一体誰がそんな嘘をバラまいたんだ……?水晶ながめの実年齢は実は28歳だなんてどこから出た話だよ。
ってかVtuberでどうやったら年齢詐称で燃えるんだよ。28歳が17歳やっていても問題ないだろ。
「そうなんだ。でもそれを自分で着ないの?」
「うん。サイズが合わないんだって」
「え?」
「その人身長が高い上に結構ゴツくてね。自分に合うサイズのものを資料にしたら描きたいキャラに合わないんだって」
イラストレーターならサイズくらい合わせられるような気もするが、気付かないうちにサイズ感が狂っていく可能性があるから嫌なんだと。
「そうなんだ」
「で俺の体格辺りが丁度いいサイズ感らしいから服を貰っているんだよ」
「確かに普通のキャラって一真くらいの身長だね」
「そうだね」
「そっか、友達にデカいイラストレーターが居るんだ……ちなみにどんな人?」
イラストレーターについて話したらそりゃあどんな人か聞いてくるか。
「そうだね、水晶ながめの大ファンだよ。病的なレベルで」
「え、あ、そうなんだ……」
俺が樹の一番の特徴を話すと、葵は水晶ながめの名前が唐突に出てきたが、見知らぬイラストレーターは直接対面したことない人だと思っているせいかこれまでとは違い微妙な驚き方をしていた。
水晶ながめの大ファンという辺りから正体が樹だとバレる危険性はあったが、葵の反応が見たくてつい言ってしまった。
ただ、そんな様子は無い上に珍しい反応をしてくれたので結果オーライだ。
「だから最近は専ら水晶ながめのファンアートばっかり描いているから服はそんなに貰っていないね」
「そ、そっか」
「っと、食べ終わったなら俺が片付けるよ」
「良いの?ありがとう」
まだまだ葵をからかっても良かったが、今日の流れだとこちらが九重ヤイバだとバレるリスクがあるのでやめておくことにした。
「よし、って葵?」
食器と調理器具を洗って片付けてリビングに戻ると、葵がスマホを見て顔面蒼白にしていた。
「え、えっと、何かした?」
「いや、葵の様子が明らかにおかしいから。何もないわけないでしょ」
今の葵はまるでこの世の終わりが来たかのような、そんな表情だった。
つまり俺に水晶ながめであることがバレるとかの比ではない何かが起きている。
「だ、大丈夫。なんでもないから……」
「あ、葵!?」
何がともあれ事情を知らない事には始まらないので聞いてみたものの、葵はそう言って部屋に逃げ込んだ。
「葵が数分で顔面蒼白になって、俺に相談できずに部屋に引き籠る内容ってなんだ……?」
本人には聞けないから、葵があそこまでの状態になる悪い事を一旦整理して考えよう。
一つは身内や友人が事故や病気で病院に運ばれた可能性。ただこれは絶対にない。それなら俺に話せるだろうし、そもそも部屋に引き籠らずに病院に向かうだろう。
一つは全てのお金を失ってしまった場合。水晶ながめとして稼いだであろう数百万どころではない額が全て無くなったのであれば俺に相談できないし、部屋に引き籠るのは分かる。
でもこれもあまり考えにくい。ただの高校生である葵が一気にお金を溶かしたり失ったりする方法があるようには思えないのだ。
一応口座を乗っ取ればその事情は起こせるだろうが、それは顔面蒼白になるってよりは慌てて警察と銀行に連絡するだけで済む。ただ今部屋から声が聞こえてこないので違うだろう。
その他に不幸な内容は考えられるが、命とお金以外で葵があそこまで顔面蒼白になるとは思えない。
となると不幸になったのは葵ではなく水晶ながめか……?
俺は一旦スマホでツリッターを確認した。すると俺の予想通り水晶ながめが大炎上していた。
ネットで数多くの人が水晶ながめの事を叩きまくっているのだが、
「は……?」
今回水晶ながめが炎上した理由があまりにも頓珍漢な理由だった。
というのも、炎上した理由は水晶ながめの年齢詐称である。
水晶ながめは現役高校生ということで年齢は17歳になっており、大半が成人しているVtuber業界では現実的には殆どありえない年齢である。
だがしかし、水晶ながめの中身である葵は本物の現役高校生である。年齢詐称なんてしているわけがない。
一体誰がそんな嘘をバラまいたんだ……?水晶ながめの実年齢は実は28歳だなんてどこから出た話だよ。
ってかVtuberでどうやったら年齢詐称で燃えるんだよ。28歳が17歳やっていても問題ないだろ。
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