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99話

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 それから集中して問題を解き進めること早30分、

『よし、出来た』
『私も!』

 ほぼ同時に奏多さんと一色さんは問題を解き終わったようで、休憩に入りだした。

 まだ50分くらい時間が残っているんですけど。頭の良さそうな奏多さんはともかく一色さん。あなた面倒になったから途中で切り上げたでしょ。

『別にあの2人が解き終わったからって焦る必要ないからね』

「分かってます」

 流石にこの問題を30分で解き終える2人が正常じゃないことは分かっているので特に焦ることはなかった。



 結果、俺は70分程で問題を解き終えた。大体5割くらいだと思う。

 俺が大学受験生だったらもう少し高得点を取るべきなのかもがしれないが、高校2年生ということを考えると十分だろう。

 別に日本一の大学を目指しているわけじゃないしな。


 その後も半分くらいの時間で2人がテストを終えてどこかに行くこと以外におかしな出来事はなく無事に終了した。


「本当に疲れた⋯⋯」

 一応本当の二次試験と比べて短縮されているのだが、全てを1日でやる分こっちの方が大きかった。


 これが日曜日だったら確実に月曜日は学校を休んでたわ。

 とりあえず今日は疲れたし家に帰って寝るか⋯⋯



 そして翌日、

『じゃあ放送を始めるね』

 Vtuberの配信にしては珍しく1時間前から入念なリハーサルをした後、配信が始まった。



『始まりました、本日の配信は大好評企画の最Vaka決定戦!!!!今回は第10回記念ということでこのようなゲストに来ていただきました。では自己紹介をどうぞ!!!まずはアメサンジ所属の奏多さんからどうぞ!』

 やたらとテンションが高い稲盛ばけるに促され、一人一人自己紹介していった。


 今回の参加者は俺、水晶ながめ、奏多、南一色、修士、荒川サロメ、シリウス・W・エンジュ、シュカに主催者の稲盛ばけるを含めた計9名だ。

 今回初対面なのはシリウスとシュカの2名だ。

 シリウスは全身真っ白なタキシードを着た金髪の男で、男だけの事務所『Alphaplanet』の一員だ。『Alpha』とつくだけあって全員のミドルネームにアルファベットが付くシステムらしい。

 推す時に判別しやすいようにしているのかと思ったのだが、まだ事務所は5人しかいないのにSが2人居る。

 そしてシュカは銀髪ゴスロリで高身長なのが特徴の個人勢Vtuberだ。

 樹が化け物と評するほどに絵が上手いらしく、配信で絵を描いたり添削をしたりするのがメインコンテンツらしい。


「九重ヤイバだ。今日は俺の天才ぶりを見せつけてやる」


『はい、ありがとうございました!!じゃあ早速答え合わせに入りましょう!!!まずは国語!!!』



 まずは国語から答え合わせが始まった。他の教科よりも難易度は低めに設定されていたみたいだが、記述がやたら多かった。珍回答とか出るのか⋯⋯?

『国語の平均点は100点満点中の50点でした!頭良さそうな人たちを今回は集めたから80点は余裕かなって思ったんだけど、皆には難しかったみたい』


 あの問題で80点取れは無茶があるだろとは思いつつも、それに言い返すと自分はバカですと宣言することと同義なので誰も何も言えなかった。

『ってことで問題を見ていこうか。今回は頭脳派集団なこともあって珍回答連発ってわけじゃないんだけど、あった!』


『大問1の問4、この時の主人公の気持ちを答えよって問題だね。じゃあ修士くんの回答を見ていこうか』

 そして画面に表示された回答は、

『辛い、辞めたいという切実な思いを逃げたらどうなるかという現実を想像して押さえつけながら、自分の所属している職場は素晴らしいものだと作り上げた完璧な笑みを絶やしていないかを心配する気持ち』
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