上 下
97 / 130

97話

しおりを挟む
「え?」

 葵も出るの?アレに?

 まさかと思い先程のサムネを見てみると、水晶ながめの姿があった。

「水晶ながめちゃんって実はゆめなま屈指の頭脳派Vtuberなんだよ?」

 ……これ大丈夫か?面白くならないだろこれ。俺も葵も高得点確定枠だぞ?

「疑いの目を向けているみたいだね。このサムネを見てみよ!」

 と企画の面白さを考えていると葵は俺が水晶ながめが馬鹿なんじゃないかと疑っているように見えたらしく、とある切り抜き動画を見せてきた。

「何これ、『水晶ながめ天才集』?」

「うん。時間があったら見てみると良いよ」

「滅茶苦茶馬鹿っぽそうだけど」

 タイトルだけ見ると頭良いのかもしれないと思えるのだが、サムネを見ると馬鹿にしか見えない。

 ドヤ顔の水晶ながめに金色ででかでかと書かれた『天才』の文字の組み合わせはどう考えても馬鹿でしょ。

「そんなことないよ。この頭良さそうな顔が分からないの?」

「分からないよ。誰がどう見ても馬鹿丸出しだよ」

 水晶ながめであることを俺に隠している葵がここまで言うのであれば本当に頭が良い瞬間を切り抜いてきた動画なのだろうが、サムネはどうにかならなかったのか。悪意しか無いだろこれ。

「いやいやいや。こことかこことかさ……」

 それでも諦めずに葵はサムネの水晶ながめが知的であることをアピールしていた。

 何を言ってるんだこいつ、と思いながら適当に聞き流していると、とある事実に気付いた。


「これ公式じゃん」

「そうだよ?」

 そう。この動画、水晶ながめのチャンネルであがった正真正銘公式の動画だったのである。

 このサムネのセンス、お前か……

「うん、色々分かった」

 俺は改めて葵の成績の良さとポンコツさを再確認したのだった。



 その翌日、

「どういうこと?」

 脳内で宣言した通りに樹を処していた。

「いや、これはですね……」

「どうせ俺が断ると思ったから勝手に受けたんでしょ?」

「はい……」

「何を貰った?」

「Vtuber、『諏訪ラト』様のサイン色紙です……」

「なるほどね。返してくるよ」

「そんな、けったいな!!!!」

 どうやら樹は『諏訪ラト』に釣られて俺を差し出したらしい。

「これ返せば今からでもコラボ断れるからね。急用が入ったとか言えば」

 俺は生憎Vtuber専業ではなく、高校生でもあるのだ。多少文句は言われるだろうが、高校の方が優先だと言い張れば誰も言い返せまい。

「それは無駄だ。既に俺が九重ヤイバとしてテストを受けているからなあ!!!!!」

「なっ!つまり……!!!」

「一真はテストを受けるしか無いってわけだ」

「こいつ……」

 樹は俺や葵と同じ高校に通っているとは思えないレベルで馬鹿である。

 前回のテストでは学年最下位は取らなかったものの、しっかりクラス最下位だし。

 イラストレーターとして忙しくなってきたからだということは分かっているのだが、それを抜きにしても悪すぎである。

 本人曰く入学当時は学年で真ん中位だと言っているのだが、正直疑わしい。別にイラストが忙しかったとしてもなんだかんだで学校には来ている事が多いし。

 授業さえ聞いていれば馬鹿みたいに成績は下がらないだろ。ウチの高校は全員が全員真面目に勉強し続けているわけじゃないし。

 とそんなこいつの成績が落ちた理由はどうでも良い。問題は九重ヤイバの代わりにそんな馬鹿がテストを受けたという事実だ。

 テストの中身が何であれ、異次元の馬鹿だと世間にデマが広まってしまう事は確実である。

 それは九重ヤイバのブランディングとしてあってはならない。こいつはそれを分かっておいてやらかしやがった。

「はあ、受けるよ。それはそれとして返してくる」

 というわけで受けるしかなかったが、癪なので樹が交渉で得た利益は全て没収することにした。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

高校では誰とも関わらず平穏に過ごしたい陰キャぼっち、美少女たちのせいで実はハイスペックなことが発覚して成りあがってしまう

電脳ピエロ
恋愛
中学時代の経験から、五十嵐 純二は高校では誰とも関わらず陰キャぼっちとして学校生活を送りたいと思っていた。 そのため入学試験でも実力を隠し、最底辺としてスタートした高校生活。 しかし純二の周りには彼の実力隠しを疑う同級生の美少女や、真の実力を知る謎の美人教師など、平穏を脅かす存在が現れ始め……。 「俺は絶対に平穏な高校生活を守り抜く」 そんな純二の願いも虚しく、彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。 やがて純二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。 実力を隠して平穏に過ごしたい実はハイスペックな陰キャぼっち VS 彼の真の実力を暴きたい美少女たち。 彼らの心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

ぼっち陰キャはモテ属性らしいぞ

みずがめ
恋愛
 俺、室井和也。高校二年生。ぼっちで陰キャだけど、自由な一人暮らしで高校生活を穏やかに過ごしていた。  そんなある日、何気なく訪れた深夜のコンビニでクラスの美少女二人に目をつけられてしまう。  渡会アスカ。金髪にピアスというギャル系美少女。そして巨乳。  桐生紗良。黒髪に色白の清楚系美少女。こちらも巨乳。  俺が一人暮らしをしていると知った二人は、ちょっと甘えれば家を自由に使えるとでも考えたのだろう。過激なアプローチをしてくるが、紳士な俺は美少女の誘惑に屈しなかった。  ……でも、アスカさんも紗良さんも、ただ遊び場所が欲しいだけで俺を頼ってくるわけではなかった。  これは問題を抱えた俺達三人が、互いを支えたくてしょうがなくなった関係の話。

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...