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79話
しおりを挟む『で、二つ目はどうしようかな。やっぱり私専用ボイスじゃないかな?』
「アスカ専用?」
『うん。この間のボイス収録は誰でも聞けるように作ったものだったけど、今回は私の為だけにボイスを収録してもらいます』
「お前とかでごまかしていた部分が全てアスカになるってことか?」
『そういうこと。良いでしょ?』
「分量、内容とそのボイスの使用用途によるがな」
『分量は一般的なボイスよりは短いくらいかな。内容は当然全年齢で、配信に乗せても大丈夫なくらい。ただ内容が私向けってだけ。使用用途は当然私が個人的に楽しむためだよね。毎日聞きます』
「そうか、それなら……」
この前ボイスを作ってもらったしお礼と考えればまあ許されるか。それに収録した音声が一つの配信になるだろうしな。精神以外は特に損は無いか。
『決定!皆、聞いてたよね?ヤイバちゃんの圧力でここらへんが消えても誤魔化せないように切り抜いてね!』
「切り抜かなくて良いぞ。確実に伸びないから」
俺がアスカの為のボイスを収録することを決めた言質の切り抜きなんて誰が見て面白いんだよ。
『絶対に伸びるって。九重ヤイバが遂に雛菊アスカにデレる?って感じで』
「偏向報道だろ」
『別に偏向報道じゃないでしょ。配信外だとアスカちゃん大好き~って甘えてくれるじゃん』
「適当な事を言うな。何も変わらないだろうが」
『いやいやいや、結構違うよ。ヤイバちゃんと配信外で絡んだことがある人は全員口を揃えて言うよ。礼儀正しい好青年だったって』
「おい、適当な事を言うな。配信外でも俺は俺だ」
九重ヤイバのブランディングに関わってくるだろうが。流石にそれはやりすぎだぞ。
『って冗談は置いておくとして、ヤイバちゃんに配信後にやってもらうのはこの二つだね』
「はあ……分かったよ」
『というわけで今日やらないといけないことは終わったので、残り40分くらいは事前に集めた質問に答えていくよ!ヤイバちゃんが!』
「は?」
どの媒体でも集めてなかった気がするんだが?
『というわけで一つ目の質問!雛菊アスカさんからの質問だね。ぶっちゃけ、雛菊さんの事はどう思いますか?やっぱり魅力的ですか?そして今後彼女にする予定とかありますか?』
「そういうことか……」
それから配信が終わるまで、事前に集めた質問という体でアスカが作成したラインギリギリの質問に延々と答えさせられた。
「はあ、終わった……」
配信のノリ的に炎上にはならないのは分かっていたが、それでも本当に疲れた。危うく配信上で素が出そうになったのは本当にヤバかった。
『お疲れ様、ヤイバきゅん。かっこよかったよ』
「いくら仲が良かったとしても限度はあると思うんですよ」
アスカだからぎりぎり許せたけど、正直他の人がこんなことをやってきたら途中でブチギレて配信中断まであったからね。
『だね。でもヤイバきゅんが悪いんだよ』
「俺が悪い……?」
突然テンションが普段通りくらいに戻ったので少々面食らいつつそう答えた。
『うん。一応2週間コラボしないこと自体ははお互いに忙しいから別に仕方ない。そもそも長期間コラボしないなんて普通にあるしね』
「そうだね」
テスト期間、案件、他の人とのコラボが重なったせいで3週間近くコラボしなかった時もあったっけ。
あの時は視聴者に早くコラボしてほしいってめちゃくちゃ言われたなあ。
『だけど、その期間に色んなの女の子とコラボしまくっているってなると話は別だよね』
「別?」
『そうだよ。ヤイバきゅんの事だから絶対に違うってのは分かるんだけど、あの後コラボに一切誘われなかったら演劇部の女の子の方が気に入っちゃったから私から乗り換えようって考えているのかなって思ったりするんだよ。あの子たちが今後伸びていくのはほぼ確定だろうし』
「そんなわけ……」
デビュー当初から一緒にコラボし続けている相手だぞ。どうして裏切ろうなんて考えるんだよ。
『だから私は分かっているって言ったでしょ?長い付き合いなんだから分かっているよ。でも、とある女の子はそうじゃないんだよ。ミルさんとかサロメさんと本当に相性良かったよね……って今も落ち込んでいるんだよ』
「とある女の子……?」
『直接誰って言っちゃうとその子に悪いから伏せたけど、誰って人は想像つくんじゃない?滅茶苦茶仲のいい女の子ってレベルまでいくとそんなに多いわけじゃないんだし』
「ああ……」
多分葵だな。だから最近機嫌悪かったのか。
コラボウィークの時は普通にテンションが高くてご飯の時もこの子とヤイバ君の相性が滅茶苦茶良かったとかそういう感想しかなかったから気づかなかった。
『だから、その子に声を掛けてあげること。そしてコラボ依頼をヤイバきゅん自らすること。わかった?』
「うん、そうするよ」
とりあえず水晶ながめに対してコラボ依頼することは決定した。
だがしかしその前にやることがあるよな。
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