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74話
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今回のコラボはトークよりもゲームをしている方が注目を集めるだろうからさっさと始めるべきだ。
というのも、サロメはVALPEXが相当上手いらしい。
配信上では一度もVALPEXをしておらず、配信で一切の情報を出していないので詳しい所は知らないのだが、運営側が直々にVALPEXが上手い二人でプレイしたら絶対に盛り上がるからと最後に据えてきたので信ぴょう性は高い。
だからこのコラボはかなり楽しみにしていた。
『そうだな、ではランクマッチに行くか。お互いメインキャラが違うからな』
「そうなのか、何を使うんだ?」
『私は当然ワルキューレだ』
「なるほど、確かにサロメらしいな」
ワルキューレ。俺のメインキャラである索敵に特化した攻撃的なブラドとは異なり、逃げに特化した防御的なキャラクターでキャラランクもかなり高めだ。
しかし、サロメが選んだ理由はそこではない。恐らく、いやほぼ確実にワルキューレが可愛い女だからである。
『IDをrescordで送ったから入ってきてくれ』
「ああ、分かった」
俺はrescordを確認して部屋に入った。
「マジかお前」
『どうした?まさか私の可愛い可愛いワルキューレの衣装に見とれたか?』
サロメはワルキューレの課金衣装であるメイド服を自慢してきたが、そんなことはどうでもいい。
「プレデター50位って。俺よりランクが高いじゃないか」
今の俺はプレデターの400位で、サロメには遠く及ばない。最近忙しくてランクマッチに潜れていないのもあるが、それでも50位なんて一度も取ったことが無い。
『事前に言っていただろう?私は強いと』
「それでもだろ……」
プレデターってのはなるだけで上位0.2%とかである。その一個下のマスターですら2%に満たないくらいであり、世間一般的に言えばマスターでも圧倒的強者として扱われる。
しかしサロメはそのプレデターの中でも上位10%。つまり、全体で言えば上位0.02%。
どうしてそんな人物がやってくると予想できるというのだ。
『まあ、プロの友人と共に潜っていたことも影響しているのだろうがな』
とサロメは謙遜しているが、ただプロとプレイしたからと言ってその順位に辿り着くのは不可能である。
「なあサロメ。そこまでランクを上げたのにプロではない俺と潜って構わないのか?」
Vtuberの中ではトップクラスに上手いのだが、流石にプロと勝負したら見劣りするレベルだ。そのランクを維持できるか怪しいぞ。
『配信が盛り上がるのであれば一切問題ない。それに、勝てばいいのだろう?」
「それもそうだな、今日は本気で行くぞ」
『その意気だ』
そして、配信とは思えないレベルに真剣なランクマッチが始まった。
一戦目。俺たちは初動の準備が出来ていない状態での接敵を避けるためエリアの一番端からスタートした。
「ここにニッティフとタイラインがあるぞ」
『そうか、しかし私は使わないから勝手に使ってくれ』
「分かった、ありがたく使わせてもらう」
負けるわけにはいかないので俺は配信映えのする単発銃ではなく、環境で最も強いとされている武器を持つことにしていた。
しかし、
「サロメ、もしかしてそいつらがメイン武器なのか?」
サロメが持っていた武器はサザンビークとウィングレディというネタ気味な武器だった。別に弱くは無いのだが、かなり意外だった。
高ランクを維持し続けるのであれば単発の武器ではなく連射系か散弾系の比較的命中率が担保される武器を持つイメージがあったのだ。
『ああ。プロと一緒に遊んでいたら自然とこうなった』
「なるほど、良い武器を譲り続けたんだな……」
勝つことを一番の目的とする場合、強者が最も強い武器を持つのが一番だ。サロメはそのセオリー通りに武器を譲り続けた結果、残っていたネタ要素が強い武器の使い手になったのだろう。
『そういうことだ。まあ、使っているうちにこいつらの利点も結構見えてきたから構わないんだがな』
「利点?」
『ああ、この武器を使う場合追いエイムをする必要がほとんどないからフリックショットの練習だけしていれば第一線でちゃんと争える』
「なるほどな。ではスナイパーライフル系を持たなかった理由はなんだ?」
『スコープを使うと画面の移動速度が変わるから狙いにくいのだ』
「よく分からないが、感覚的に合わないんだな」
『そういうことだ』
エイムで一番重要なのは自身の感覚だからな。強いからといって合わない武器を無理に使ってもいい結果は出ない。
「っと次の安置は結構遠いな。急ぐぞ」
『だな』
俺たちは正面からの接敵は極力避けつつ、取れるキルは確実に手に入れられるように動いていた。
その結果、
「3位か」
『人数のハンデがある割には上出来だな』
全チームの中で3位という順位を獲得することができた。
そして肝心のダメージ量は、俺が2000、サロメが1400だった。一応俺の方が高い結果にはなったが、キル数に関しては5対7と負けていたので総合的には引き分けである。
「やるな」
『そっちこそ』
一回目で判断するには早計過ぎる気もするが、この様子だと普通にランクポイントを稼げる気がする。
「やっちまったな……」
『あれは仕方ない。プロゲーマーでも打開は無理だ』
と思って挑むこと3戦、俺たちは大していい結果を出すことも出来ずポイントを溶かしていた。
「にしても、まさか俺たちのところにもやってくるとはな」
『ああ、てっきり目黒を徹底的に狙っているものだと思っていたが、私たちの元にも来るものなのだな』
俺たちの潜るランクマッチに何度もやってきたのはゴースティングチーター。
配信を見て居場所を確認することで情報戦で優位に立ち、俺たちを倒すために足りない技術をチートでカバーする。対FPS配信者において最強最悪の戦い方だ。
VALPEXだと目黒秋の配信に現れることがほとんどなのだが、まさか俺たちの元に来るとは。
というのも、サロメはVALPEXが相当上手いらしい。
配信上では一度もVALPEXをしておらず、配信で一切の情報を出していないので詳しい所は知らないのだが、運営側が直々にVALPEXが上手い二人でプレイしたら絶対に盛り上がるからと最後に据えてきたので信ぴょう性は高い。
だからこのコラボはかなり楽しみにしていた。
『そうだな、ではランクマッチに行くか。お互いメインキャラが違うからな』
「そうなのか、何を使うんだ?」
『私は当然ワルキューレだ』
「なるほど、確かにサロメらしいな」
ワルキューレ。俺のメインキャラである索敵に特化した攻撃的なブラドとは異なり、逃げに特化した防御的なキャラクターでキャラランクもかなり高めだ。
しかし、サロメが選んだ理由はそこではない。恐らく、いやほぼ確実にワルキューレが可愛い女だからである。
『IDをrescordで送ったから入ってきてくれ』
「ああ、分かった」
俺はrescordを確認して部屋に入った。
「マジかお前」
『どうした?まさか私の可愛い可愛いワルキューレの衣装に見とれたか?』
サロメはワルキューレの課金衣装であるメイド服を自慢してきたが、そんなことはどうでもいい。
「プレデター50位って。俺よりランクが高いじゃないか」
今の俺はプレデターの400位で、サロメには遠く及ばない。最近忙しくてランクマッチに潜れていないのもあるが、それでも50位なんて一度も取ったことが無い。
『事前に言っていただろう?私は強いと』
「それでもだろ……」
プレデターってのはなるだけで上位0.2%とかである。その一個下のマスターですら2%に満たないくらいであり、世間一般的に言えばマスターでも圧倒的強者として扱われる。
しかしサロメはそのプレデターの中でも上位10%。つまり、全体で言えば上位0.02%。
どうしてそんな人物がやってくると予想できるというのだ。
『まあ、プロの友人と共に潜っていたことも影響しているのだろうがな』
とサロメは謙遜しているが、ただプロとプレイしたからと言ってその順位に辿り着くのは不可能である。
「なあサロメ。そこまでランクを上げたのにプロではない俺と潜って構わないのか?」
Vtuberの中ではトップクラスに上手いのだが、流石にプロと勝負したら見劣りするレベルだ。そのランクを維持できるか怪しいぞ。
『配信が盛り上がるのであれば一切問題ない。それに、勝てばいいのだろう?」
「それもそうだな、今日は本気で行くぞ」
『その意気だ』
そして、配信とは思えないレベルに真剣なランクマッチが始まった。
一戦目。俺たちは初動の準備が出来ていない状態での接敵を避けるためエリアの一番端からスタートした。
「ここにニッティフとタイラインがあるぞ」
『そうか、しかし私は使わないから勝手に使ってくれ』
「分かった、ありがたく使わせてもらう」
負けるわけにはいかないので俺は配信映えのする単発銃ではなく、環境で最も強いとされている武器を持つことにしていた。
しかし、
「サロメ、もしかしてそいつらがメイン武器なのか?」
サロメが持っていた武器はサザンビークとウィングレディというネタ気味な武器だった。別に弱くは無いのだが、かなり意外だった。
高ランクを維持し続けるのであれば単発の武器ではなく連射系か散弾系の比較的命中率が担保される武器を持つイメージがあったのだ。
『ああ。プロと一緒に遊んでいたら自然とこうなった』
「なるほど、良い武器を譲り続けたんだな……」
勝つことを一番の目的とする場合、強者が最も強い武器を持つのが一番だ。サロメはそのセオリー通りに武器を譲り続けた結果、残っていたネタ要素が強い武器の使い手になったのだろう。
『そういうことだ。まあ、使っているうちにこいつらの利点も結構見えてきたから構わないんだがな』
「利点?」
『ああ、この武器を使う場合追いエイムをする必要がほとんどないからフリックショットの練習だけしていれば第一線でちゃんと争える』
「なるほどな。ではスナイパーライフル系を持たなかった理由はなんだ?」
『スコープを使うと画面の移動速度が変わるから狙いにくいのだ』
「よく分からないが、感覚的に合わないんだな」
『そういうことだ』
エイムで一番重要なのは自身の感覚だからな。強いからといって合わない武器を無理に使ってもいい結果は出ない。
「っと次の安置は結構遠いな。急ぐぞ」
『だな』
俺たちは正面からの接敵は極力避けつつ、取れるキルは確実に手に入れられるように動いていた。
その結果、
「3位か」
『人数のハンデがある割には上出来だな』
全チームの中で3位という順位を獲得することができた。
そして肝心のダメージ量は、俺が2000、サロメが1400だった。一応俺の方が高い結果にはなったが、キル数に関しては5対7と負けていたので総合的には引き分けである。
「やるな」
『そっちこそ』
一回目で判断するには早計過ぎる気もするが、この様子だと普通にランクポイントを稼げる気がする。
「やっちまったな……」
『あれは仕方ない。プロゲーマーでも打開は無理だ』
と思って挑むこと3戦、俺たちは大していい結果を出すことも出来ずポイントを溶かしていた。
「にしても、まさか俺たちのところにもやってくるとはな」
『ああ、てっきり目黒を徹底的に狙っているものだと思っていたが、私たちの元にも来るものなのだな』
俺たちの潜るランクマッチに何度もやってきたのはゴースティングチーター。
配信を見て居場所を確認することで情報戦で優位に立ち、俺たちを倒すために足りない技術をチートでカバーする。対FPS配信者において最強最悪の戦い方だ。
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