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63話

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「はい、というわけでね。今日の参加者全員の紹介が終了した所で企画内容の説明をしていくね。とはいってもタイトルの通り、ゲストの6人がくじで決めた順番通りに告白していって、一番評価が高かった人が優勝って企画だね。告白のスタイルとか状況とかに縛りは一切無くて、完全にフリースタイルだよ。だから歌での告白とか、ヤイバくんが今いるであろう配信部屋に直接凸して告白してもOKとなっております」

「いや、ここまで来られたらこまるんですけど」

 隣の部屋で配信しているサケビと、俺の家を知っているアスカは数歩譲って分かるけど、他のメンツが来たらただのホラーだからね。

「そして、優勝者に与えられる100万円とは別に、超豪華景品として、ヤイバとのサシコラボ権と、ヤイバくんが何でも一つお願いを聞いてくれる権利を差し上げます!!!!」

「何も聞いてないんで——」

「「「「「うおおおおおおおお!!!!!!!!」」」」」

 俺のツッコミを参加者の方々が全力で掻き消してきた。

「あの、カナメさんちょっと良いですか?」

「何?」

「コラボ権は別に構わないんですけど、俺が何でも言う事を聞く権利って何なんですか」

 100万円を超豪華景品に入れずにさらっと流した事も気になるのだが、こちらの方が圧倒的に重要である。

 100万円は奏多さんのポケットマネーから出るって事だろうから直接のダメージは無いし。

「その名の通りヤイバくんが何でも言う事を聞いてくれる権利だけど」

「許可してないんですが」

「そりゃあ無許可だもん、どんな配信でも参加してくれるんだよね?」

「そんな事は言ってませんが」

 あくまで俺がOKを出したのは素を出した状態で奏多企画の配信に出る所までで、どんな命令でも聞く権利ではない。

「まあ、この配信自体のコンセプトがそれだからなあ……参加者と視聴者の期待を裏切るのかな、ヤイバ君は?」

「それを言うのはズルくないですかね。まあ、良いですよ。ただ、良識の範囲内という条件付きですよ」

「聞いたかな、皆?」

「うおおおおおおおお!!!!!!!!」

「優勝だあああああ!!!!!」

「何でも良いってことは……!!!」

 俺が正式に許可したことで、先程以上の盛り上がりを見せる参加者たち。

 確実に嵌められてはいるんだけど、配信が盛り上がるならいっか。

「というわけで、早速順番を決めるルーレットを回そうか」

 そう言って配信画面に参加者の名簿が書かれたルーレットを回した。

 結果、

 1番アスカ、2番東雲リサさん、3番サケビ、4番柊カナメさん、5番白沙フィリアさん、6番オーサキさんという順番になった。

「じゃあ1番のアスカさん、どうぞ!」

「うん!」

 そう言うと、俺とアスカ以外は全員ミュートになった。


 今回選ばれたシチュエーションは1対1でのコラボ配信終了直後で、九重ヤイバとしてではなく素の俺で居て欲しいとのこと。


「配信お疲れ、ヤイバちゃん」

「う、うん。お疲れ」

 配信後と言いつつ、ヤイバちゃん呼びなのはツッコむべきなのだろうか。

 一応やめておこう。下手に拗れるだけな気がするし。

「じゃあ、時間もあれだから——」

「待って、くれるかな?」

「どうしたの?」

「ちょっとお願いしたい事があって」

「お願い事……?」

「どうか、私と付き合ってくれませんか?」

 アスカの告白は、俺の呼び方以外は本当に起こってもおかしくないようなリアリティのあるものだった。

「……え?」

 やはり人気Vtuberなだけはあり、決めるときは決めるんだな。

「私、駄目な女だから。しっかりしているヤイバちゃんが居てくれないと困るの」

「……うん?」

 生活リズム以外はわりかししっかりしてないか?

「ヤイバちゃんが居なければ部屋の掃除も出来ないし、配信ボタンを押すことも出来ないの」

 どっちもそんなことないですよね……?

「だから、私を救うと思って。ね?その代わりに私の事を好きにしていいよ?出来る限り応えるから」

「えっと……」

 R18に一歩踏み入れかけてないかい?アスカさん。当方高校生ですよ?

「超激辛のカップ焼きそばを食べさせたり、一週間断食させたり、バンジージャンプを飛ばせたりさ」

「ん……?」

 ちょっと毛色が変わってきたぞ。何を言っているんだこの人。

「本当に、辛い企画でも何でもやるから、私の世話をしてください!本当にお願いします!どうか、どうかお願いします!だから、私の事を見捨てないで!最後まで責任を取ってください!!!!!」

「えっと……」

「これで終わりだよ」

「はい、というわけでトップバッターのアスカさんによる告白が終了しました!どうでしたか?ヤイバくん」

 ミュートを解除して戻ってきた奏多さんにそんな質問をされた。

「最初は俺の正面を向いた誠実で良い告白をされているなって思っていたんですけど、いつの間にか足元に居て縋るように懇願されてて困惑でしかないですよね。何なんですかあれ」

 正直俺は何に付き合わされているんだって思ったよね。文脈も少しおかしかったし。

「だそうですが、アスカさん」

「もし私が告白するならこうするってイメージでやったのに……馬鹿にするなんて酷いよ……」

「アスカが俺に告白するにしてもああは絶対ならないでしょ。配信ボタンが押せないわけないし、部屋は綺麗でしょうが」

「私の家知ってたっけ?」

「全く知らないけど、切り抜きで見てたら大体分かるよ」

「私の事を気にかけてくれるなんて嬉しいなあ」

「ったく。もう少し現実に寄せるとかあったでしょ」

 多分今後の事を考えてくれた結果なんだろうけど、優勝すれば100万円貰える貴重な機会なんだからさ。別に何してくれても怒らないし関係が悪化することはないよ。

「私の精一杯がアレだけど……」

「アレが精一杯なら恋愛感を一度見つめ直した方が良いと思う」

「うん!見つめ直しました!というわけで付き合ってください!」

「見つめなおせたなら配信内で告白をしないよね」

「別にこの関係はファンも好んで見てくれる公認じゃん!」

「あのさ……」

「はい!これ以上イチャイチャされると残りのファンクラブの人たちがミュート外して騒ぎに来るからやめようか」

 なんて話をしていると奏多にそうツッコまれたので強制的に終了となった。

 確かに残りの人が5人も居るのに話過ぎたのは申し訳ないです。
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