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58話
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『ねえ、これまでの二人はどうだった?』
メネはひとしきりこのゲームの要素を楽しんだらしく、プレイ中にそんな質問を投げかけてきた。
「そうだな、どちらも初めて見るタイプで面白くはあったぞ」
『そうなんだ』
「ああ、ミルはゲームが滅茶苦茶上手い上にやる事が派手だから俺から何もしなくても盛り上がるのが良いよな」
『分かる。ミルちゃんが使っているのって絵的に地味になりそうな武器なのに、そこらの武器より華があるよね』
「お前、普通のゲームも知っているんだな」
てっきりこういうゲームしか知らないのかと思っていた。
『普通のゲームって何さ。これだって普通のゲームだよ』
「普通のゲームはこんなにキャラクターの動きは気持ち悪くならないし、泳いでいるキャラクターが空を舞わない」
このゲームに失礼だとは分かっているが、これと同じと評価した場合それ以上に他のゲームに失礼である。
『タコ墨を撃って敵を倒すよりは普通でしょ』
「現実世界の常識と比較するな」
ゲームと比較しろ。
『まあいいや。ミルちゃんとは楽しくゲームが出来たみたいだね』
「ああ、このコラボウィークが終わったらもう一度コラボするかもな」
『おお、良いね。じゃあロクサヌちゃんは?』
「アイツか。見た目と声と話し方で誤魔化しているが、重度の厄介カプ厨だな」
『カプ厨?』
「ああ、知らないのか。カプ厨ってのはカップリング厨の略称で、男女をやたらとくっつて楽しみたがる人種の事を指す」
『付き合っている男女とか、仲良くしている男女をからかう人たちみたいなこと?』
「そういうことだ。ロクサヌはその点においてVtuber界でトップだ」
『確かにそうかもしれないね。昔からそんな所があるし』
「ロクサヌとは昔からの付き合いなのか」
『うん、そうだね。演劇部に入る前から一緒に演劇の練習をしていたよ』
「そうなのか」
前世に関する話なので言及はしないが、演劇部の奴らはクロの事務所の株主が運営する声優養成所か役者養成所から来ているらしい。確か3人と4人だったか。
で、聞いたわけでは無いがほぼ確実にメネとロクサヌは役者養成所から来たのだろう。声優がVtuberに詳しくないってのは妙な話だからな。
「なるほどな。ならアイツを叱っといてくれ。やりすぎだったってな」
『うん、言っておく。で、次コラボしたいとは思った?』
思いっきりストレートに聞いてきたな。コラボしたくないと思っていたらどうするんだ。
「前回と同じような内容だったら断る以外の選択肢は無いが、普通のコラボだったらするかもな。ただ、それ以上に配信外で個人的に話したいな。色々聞きたいことがある」
聞きたい事とは主にロールプレイについてだ。
俺もかなりキャラに成り切って配信をしているが、ロクサヌ程ではないし、そもそも生放送メインのVtuberでロクサヌ並の奴を見た事が無い。
この話を配信上でやるのは互いのブランディングに関わる為、配信外で聞きたいのだ。
『おっと、愛の告白かな?』
「違う、演劇関連の話だよ。アイツは相当凄いだろ?」
『あー。確かに。ずば抜けて上手いから私もよく教えてもらってたよ』
「そういうことだ。分かったなら炎上させるなよ、お前ら?」
こういうことですぐ炎上させたがるからな。釘を刺しておかねば。
『ちなみに、私はどう?』
「論外だな。クソゲーばかり押し付けてきやがって」
『酷い……皆、私可哀そうじゃない……?』
演劇部出身だからか、迫真の演技で自分を悲劇のヒロインに仕立て上げていた。
「皆そうは思っていないみたいだぞ」
しかし、現にクソゲーを見せられている視聴者達は『当然だろ』『甘えんな』『FPSでもやれ』等、辛辣なコメントばかりだった。
『そうだな……私に否定的なコメントは全てブロックしていこうかな!』
そう言ったメネはカチカチという音と共に何かをやっていた。
「お前……」
そして、数秒遅れで表示されるコメント削除の文字。マジでやりやがった。
『さて、もう一度質問だけど、私って可哀そうだよね?』
メネによる恐怖政治の結果、メネを可哀そうだと思うコメントがコメント欄を埋め尽くした。
それから少し経ち、ある程度コツを掴めて25m付近までは泳げるようになった頃、
『そう言えば何でこのコラボウィークを受けることにしたの?』
とメネに聞かれた。
「これって言っていいのか?」
『良いと思うよ。そういうの緩いし』
「そうか、それに経緯が経緯だしな」
依頼してきたのは事務所じゃなくてクロだし、ちゃんとした契約で行われているコラボでも無いしな。
俺は先日のイベントでクロに凸されたこと、そしてなんでも願いを聞くという公約を口実に演劇部とのコラボを命令された事を説明した。
『何と言うか、流石親分だよね』
「ああ、まさかあんな行動に出てくるとは思わなかった」
『ってことはそれが無かったら今回のコラボウィークは無かったってこと?』
「そうなるな。他の男性Vがあてがわれていたと思うぞ」
『じゃあ親分に感謝だね』
「そこは俺に感謝しろよ」
『え?』
「お前な……」
それからも雑談しながらゲームをして配信は無事終了となった。
最初はクソゲーつまらねえなって感想だったが、終えてみると案外面白いものだった。
「メネさんとの掛け合いも面白かったし、ゲームの内容に目を瞑れば今日は結構好評じゃないかな……」
と思いエゴサーチをしてみると、今回もちゃんと好評を得られていたようだった。
メネはひとしきりこのゲームの要素を楽しんだらしく、プレイ中にそんな質問を投げかけてきた。
「そうだな、どちらも初めて見るタイプで面白くはあったぞ」
『そうなんだ』
「ああ、ミルはゲームが滅茶苦茶上手い上にやる事が派手だから俺から何もしなくても盛り上がるのが良いよな」
『分かる。ミルちゃんが使っているのって絵的に地味になりそうな武器なのに、そこらの武器より華があるよね』
「お前、普通のゲームも知っているんだな」
てっきりこういうゲームしか知らないのかと思っていた。
『普通のゲームって何さ。これだって普通のゲームだよ』
「普通のゲームはこんなにキャラクターの動きは気持ち悪くならないし、泳いでいるキャラクターが空を舞わない」
このゲームに失礼だとは分かっているが、これと同じと評価した場合それ以上に他のゲームに失礼である。
『タコ墨を撃って敵を倒すよりは普通でしょ』
「現実世界の常識と比較するな」
ゲームと比較しろ。
『まあいいや。ミルちゃんとは楽しくゲームが出来たみたいだね』
「ああ、このコラボウィークが終わったらもう一度コラボするかもな」
『おお、良いね。じゃあロクサヌちゃんは?』
「アイツか。見た目と声と話し方で誤魔化しているが、重度の厄介カプ厨だな」
『カプ厨?』
「ああ、知らないのか。カプ厨ってのはカップリング厨の略称で、男女をやたらとくっつて楽しみたがる人種の事を指す」
『付き合っている男女とか、仲良くしている男女をからかう人たちみたいなこと?』
「そういうことだ。ロクサヌはその点においてVtuber界でトップだ」
『確かにそうかもしれないね。昔からそんな所があるし』
「ロクサヌとは昔からの付き合いなのか」
『うん、そうだね。演劇部に入る前から一緒に演劇の練習をしていたよ』
「そうなのか」
前世に関する話なので言及はしないが、演劇部の奴らはクロの事務所の株主が運営する声優養成所か役者養成所から来ているらしい。確か3人と4人だったか。
で、聞いたわけでは無いがほぼ確実にメネとロクサヌは役者養成所から来たのだろう。声優がVtuberに詳しくないってのは妙な話だからな。
「なるほどな。ならアイツを叱っといてくれ。やりすぎだったってな」
『うん、言っておく。で、次コラボしたいとは思った?』
思いっきりストレートに聞いてきたな。コラボしたくないと思っていたらどうするんだ。
「前回と同じような内容だったら断る以外の選択肢は無いが、普通のコラボだったらするかもな。ただ、それ以上に配信外で個人的に話したいな。色々聞きたいことがある」
聞きたい事とは主にロールプレイについてだ。
俺もかなりキャラに成り切って配信をしているが、ロクサヌ程ではないし、そもそも生放送メインのVtuberでロクサヌ並の奴を見た事が無い。
この話を配信上でやるのは互いのブランディングに関わる為、配信外で聞きたいのだ。
『おっと、愛の告白かな?』
「違う、演劇関連の話だよ。アイツは相当凄いだろ?」
『あー。確かに。ずば抜けて上手いから私もよく教えてもらってたよ』
「そういうことだ。分かったなら炎上させるなよ、お前ら?」
こういうことですぐ炎上させたがるからな。釘を刺しておかねば。
『ちなみに、私はどう?』
「論外だな。クソゲーばかり押し付けてきやがって」
『酷い……皆、私可哀そうじゃない……?』
演劇部出身だからか、迫真の演技で自分を悲劇のヒロインに仕立て上げていた。
「皆そうは思っていないみたいだぞ」
しかし、現にクソゲーを見せられている視聴者達は『当然だろ』『甘えんな』『FPSでもやれ』等、辛辣なコメントばかりだった。
『そうだな……私に否定的なコメントは全てブロックしていこうかな!』
そう言ったメネはカチカチという音と共に何かをやっていた。
「お前……」
そして、数秒遅れで表示されるコメント削除の文字。マジでやりやがった。
『さて、もう一度質問だけど、私って可哀そうだよね?』
メネによる恐怖政治の結果、メネを可哀そうだと思うコメントがコメント欄を埋め尽くした。
それから少し経ち、ある程度コツを掴めて25m付近までは泳げるようになった頃、
『そう言えば何でこのコラボウィークを受けることにしたの?』
とメネに聞かれた。
「これって言っていいのか?」
『良いと思うよ。そういうの緩いし』
「そうか、それに経緯が経緯だしな」
依頼してきたのは事務所じゃなくてクロだし、ちゃんとした契約で行われているコラボでも無いしな。
俺は先日のイベントでクロに凸されたこと、そしてなんでも願いを聞くという公約を口実に演劇部とのコラボを命令された事を説明した。
『何と言うか、流石親分だよね』
「ああ、まさかあんな行動に出てくるとは思わなかった」
『ってことはそれが無かったら今回のコラボウィークは無かったってこと?』
「そうなるな。他の男性Vがあてがわれていたと思うぞ」
『じゃあ親分に感謝だね』
「そこは俺に感謝しろよ」
『え?』
「お前な……」
それからも雑談しながらゲームをして配信は無事終了となった。
最初はクソゲーつまらねえなって感想だったが、終えてみると案外面白いものだった。
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