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40話
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そう、樹を含めた俺のクラスメイトである。
樹は水晶ながめを見に来たのだろうが、他の奴らはどう考えても俺の雄姿を見に来るという名の野次馬だろ。
まあ別にそれで俺が動揺して放送事故を起こすわけが無いってのが分かっているから来てくれたのだろうが、結果として今放送事故を起こしかけている。
「……」
その理由は明確。ながめが動揺しすぎてフリーズしているからである。
俺はあいつらが九重ヤイバの正体を知っていることを知っているが、ながめはそうではない。
恐らくながめは自分の正体がバレてしまっているのではないかと勘違いしている。
本当に余計なことをしやがって。せっかく対面したんだから散々からかってやろうと思ったのに何故フォローする側に回らなければならないんだ。
「お前ら、わざわざ俺とながめのトークイベントに来てくれてありがとう。今日は楽しんでいってくれ」
『うおおおおお!!!!』
俺がそう言うと観客はより一層盛り上がっていた。
「にしてもお前らの声野太いな。なんでこんな男ばっかなんだよ。聞いてた話と全然違うぞ。もっとこう、黄色くなんねえのか?」
そんな会場に向けて俺は女が少ないと不満を言う。
すると、
『キャーヤイバ君~!!!』
『大好きよ~~!!』
『愛してる~~!!』
と男どもが裏声で黄色い声援とは程遠い声援を送ってきた。
「気持ち悪いからやめてくれ。俺が悪かった。許してくれ。吐きそうだ」
それに対して俺が白旗を上げると、会場が笑いに包まれた。
「それはそうとして、ここまで男の方が多いとは思わなかったな。俺のチャンネルの男女比が6:4で、ながめのチャンネルの男女比が8:2だったから大体女が3,4割くらいって予想してたんだがな」
イベントになると女性比率が一気に上がると聞いていたが、何故か今回のトークイベントでは男性比率が爆増し、8割以上が男だった。
「まさか、ここに居る奴ら全員がながめのファンってことは無いよな?」
「なあ質問だ、俺のファンだからここに来たって奴はどのぐらいいる?手を挙げてくれ」
と俺が質問すると会場の大体半分くらいが手を挙げる。
当然その中には樹以外のクラスメイトが混じっている。
「おいそこの裏声主導した奴。心配だからって両手を挙げなくていい。ちゃんと居ただろうが」
そしてその内の一人が人数のかさましのために両手を挙げていた。
『あ、すいませ~ん』
とそいつは軽い謝罪をしながら手を降ろした。
「まあ、男が多いのは単に偶然か」
俺は雑に結論付けながらながめの方を覗く。
見た感じ平常そうだ。
どうやら上手くいったようだな。
クラスメイトの奴らがが俺に全力で乗っかってくれたおかげであいつらが純粋に俺のファンとして来ただけだと確信できたらしい。
いや、おかげとか言ってるがそもそもフリーズさせた原因はアイツらなんだから感謝する必要は無いんだけどな。
空気が完全に冷え切ってしまう可能性がある非常に危ない橋を渡っていたが、まあクラスメイトが居たしな。乗ってくれるのは大体分かっていた。
「っと、これは俺の個人配信じゃねえんだ。ながめ、笑って見てないで何か話してくれ」
目的は完全に果たされたので話を強引に区切り、ながめに話題を振る。
「観客さんとの掛け合いが面白くて。ついつい見ちゃってたよ」
「そうか、良かったなお前ら!」
掛け合いが面白かったとながめに言われた観客は、これまでで最高の盛り上がりを見せた。
「あはは、そこまで喜ばれると照れちゃうよ。で、私達まだ自己紹介してないよね」
「する必要ってあるのか?普段の配信と違ってここに居るのは全員俺たちのファンだろ?」
「それでもだよ。私はゆめなま所属のVtuber、水晶ながめだよ!今日はよろしくね~!」
「まあ一応しとくか。俺は個人勢の九重ヤイバだ。よろしく」
何とかながめをフォローしきり、無事にトークイベントへと持って行くことに成功した。
「じゃあ質問の回収が終わるまでは運営の奴らが用意した無難な奴から答えていくぞ」
「私が一つ目を読むね。えっと、初めてオフで対面することになると思うのですが、どう思いましたか?だって」
「無難な奴では無かったな」
冷静に考えたらこいつらワードウルフで変なお題を投入してくるようなやつらだった。
「でも読んでしまったからには答えないといけないよね」
「だな」
別にそのまま適当な話題に変えてしまっても良いのだが、下っ端であろうスタッフの切実な顔に免じて答えてやることにする。
「私はそうだなあ、よく分からないってのが正直な感想かな」
「分からない?」
「だってマスク着けっぱなしで顔が全く見えないし、今の今まで会話出来なかったから」
「マスクはそういう衣装だから仕方ないだろ。会話してないのはまあ、お互いのスケジュールの問題だな」
ながめはそう言っているが、一番はこの青い髪の毛のせいだろうな。チラチラ視線を感じるし。
高校生だって言っているのに思いっきり染めていたら気になるよな。
「そもそも何でその衣装にしたの。イベント事だし通常衣装で良かったんじゃないの?」
髪色の説明をしないのならせめてマスクを外せってことか。だが無理な話だ。
「気分だ」
「えー……」
まあ、髪の方は説明してやるか。
「ちなみに、お前らが見ている立派な黒髪はカツラで、本当は綺麗な青色だ」
「それツッコんで良かったんだ」
「別に隠す程のことでも無いしな」
何も説明せずにVtuberの間だけで広まったら色々と厄介だからな。
「そっか。ヤイバ君って高校生だよね?学校のルール的にどうなの?」
「完全にアウトだ。これで学校に行ったら間違いなく坊主だろうな」
「ええ……」
「まあ安心しろ。この色は髪を洗えば問題なくとれる」
「何でそんなことしたの?」
流石のながめでもこの奇行をスルーしてくれなかった。ワンチャン「へ~」で終わるかと思ったんだが。
「マスクを付けて髪を真っ青に染めた男が九重ヤイバとして座っていたらながめやスタッフはどう反応するのかが気になってな」
「普通にヤイバ君だ~で終わっちゃってたよ」
「だろうな。ここにやってきたながめの方が余程不審者だったからな。どこのVtuberがマスク着けて真っ黒なサングラス掛けてくるんだよ。不審者二名が向かい合う奇妙な場が出来たじゃねえか」
「それはごめん……」
「そもそも何故ながめはあんなに顔を厳重に覆ってここまで来たんだよ」
本来の理由はファンとして九重ヤイバと交流する前に顔を見せたくないからだが、絶対に言えないよな。ながめはどう返す?
樹は水晶ながめを見に来たのだろうが、他の奴らはどう考えても俺の雄姿を見に来るという名の野次馬だろ。
まあ別にそれで俺が動揺して放送事故を起こすわけが無いってのが分かっているから来てくれたのだろうが、結果として今放送事故を起こしかけている。
「……」
その理由は明確。ながめが動揺しすぎてフリーズしているからである。
俺はあいつらが九重ヤイバの正体を知っていることを知っているが、ながめはそうではない。
恐らくながめは自分の正体がバレてしまっているのではないかと勘違いしている。
本当に余計なことをしやがって。せっかく対面したんだから散々からかってやろうと思ったのに何故フォローする側に回らなければならないんだ。
「お前ら、わざわざ俺とながめのトークイベントに来てくれてありがとう。今日は楽しんでいってくれ」
『うおおおおお!!!!』
俺がそう言うと観客はより一層盛り上がっていた。
「にしてもお前らの声野太いな。なんでこんな男ばっかなんだよ。聞いてた話と全然違うぞ。もっとこう、黄色くなんねえのか?」
そんな会場に向けて俺は女が少ないと不満を言う。
すると、
『キャーヤイバ君~!!!』
『大好きよ~~!!』
『愛してる~~!!』
と男どもが裏声で黄色い声援とは程遠い声援を送ってきた。
「気持ち悪いからやめてくれ。俺が悪かった。許してくれ。吐きそうだ」
それに対して俺が白旗を上げると、会場が笑いに包まれた。
「それはそうとして、ここまで男の方が多いとは思わなかったな。俺のチャンネルの男女比が6:4で、ながめのチャンネルの男女比が8:2だったから大体女が3,4割くらいって予想してたんだがな」
イベントになると女性比率が一気に上がると聞いていたが、何故か今回のトークイベントでは男性比率が爆増し、8割以上が男だった。
「まさか、ここに居る奴ら全員がながめのファンってことは無いよな?」
「なあ質問だ、俺のファンだからここに来たって奴はどのぐらいいる?手を挙げてくれ」
と俺が質問すると会場の大体半分くらいが手を挙げる。
当然その中には樹以外のクラスメイトが混じっている。
「おいそこの裏声主導した奴。心配だからって両手を挙げなくていい。ちゃんと居ただろうが」
そしてその内の一人が人数のかさましのために両手を挙げていた。
『あ、すいませ~ん』
とそいつは軽い謝罪をしながら手を降ろした。
「まあ、男が多いのは単に偶然か」
俺は雑に結論付けながらながめの方を覗く。
見た感じ平常そうだ。
どうやら上手くいったようだな。
クラスメイトの奴らがが俺に全力で乗っかってくれたおかげであいつらが純粋に俺のファンとして来ただけだと確信できたらしい。
いや、おかげとか言ってるがそもそもフリーズさせた原因はアイツらなんだから感謝する必要は無いんだけどな。
空気が完全に冷え切ってしまう可能性がある非常に危ない橋を渡っていたが、まあクラスメイトが居たしな。乗ってくれるのは大体分かっていた。
「っと、これは俺の個人配信じゃねえんだ。ながめ、笑って見てないで何か話してくれ」
目的は完全に果たされたので話を強引に区切り、ながめに話題を振る。
「観客さんとの掛け合いが面白くて。ついつい見ちゃってたよ」
「そうか、良かったなお前ら!」
掛け合いが面白かったとながめに言われた観客は、これまでで最高の盛り上がりを見せた。
「あはは、そこまで喜ばれると照れちゃうよ。で、私達まだ自己紹介してないよね」
「する必要ってあるのか?普段の配信と違ってここに居るのは全員俺たちのファンだろ?」
「それでもだよ。私はゆめなま所属のVtuber、水晶ながめだよ!今日はよろしくね~!」
「まあ一応しとくか。俺は個人勢の九重ヤイバだ。よろしく」
何とかながめをフォローしきり、無事にトークイベントへと持って行くことに成功した。
「じゃあ質問の回収が終わるまでは運営の奴らが用意した無難な奴から答えていくぞ」
「私が一つ目を読むね。えっと、初めてオフで対面することになると思うのですが、どう思いましたか?だって」
「無難な奴では無かったな」
冷静に考えたらこいつらワードウルフで変なお題を投入してくるようなやつらだった。
「でも読んでしまったからには答えないといけないよね」
「だな」
別にそのまま適当な話題に変えてしまっても良いのだが、下っ端であろうスタッフの切実な顔に免じて答えてやることにする。
「私はそうだなあ、よく分からないってのが正直な感想かな」
「分からない?」
「だってマスク着けっぱなしで顔が全く見えないし、今の今まで会話出来なかったから」
「マスクはそういう衣装だから仕方ないだろ。会話してないのはまあ、お互いのスケジュールの問題だな」
ながめはそう言っているが、一番はこの青い髪の毛のせいだろうな。チラチラ視線を感じるし。
高校生だって言っているのに思いっきり染めていたら気になるよな。
「そもそも何でその衣装にしたの。イベント事だし通常衣装で良かったんじゃないの?」
髪色の説明をしないのならせめてマスクを外せってことか。だが無理な話だ。
「気分だ」
「えー……」
まあ、髪の方は説明してやるか。
「ちなみに、お前らが見ている立派な黒髪はカツラで、本当は綺麗な青色だ」
「それツッコんで良かったんだ」
「別に隠す程のことでも無いしな」
何も説明せずにVtuberの間だけで広まったら色々と厄介だからな。
「そっか。ヤイバ君って高校生だよね?学校のルール的にどうなの?」
「完全にアウトだ。これで学校に行ったら間違いなく坊主だろうな」
「ええ……」
「まあ安心しろ。この色は髪を洗えば問題なくとれる」
「何でそんなことしたの?」
流石のながめでもこの奇行をスルーしてくれなかった。ワンチャン「へ~」で終わるかと思ったんだが。
「マスクを付けて髪を真っ青に染めた男が九重ヤイバとして座っていたらながめやスタッフはどう反応するのかが気になってな」
「普通にヤイバ君だ~で終わっちゃってたよ」
「だろうな。ここにやってきたながめの方が余程不審者だったからな。どこのVtuberがマスク着けて真っ黒なサングラス掛けてくるんだよ。不審者二名が向かい合う奇妙な場が出来たじゃねえか」
「それはごめん……」
「そもそも何故ながめはあんなに顔を厳重に覆ってここまで来たんだよ」
本来の理由はファンとして九重ヤイバと交流する前に顔を見せたくないからだが、絶対に言えないよな。ながめはどう返す?
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