上 下
35 / 130

35話

しおりを挟む
 そうだな、どうしようか。

 常日頃料理をしていますか?って質問なわけだが、素直に答えるとYesになるのは別に問題ではない。

 葵に料理を作っている話をするのかという点。

 当然話すわけが無いのだが、二日に一回のペースで幼馴染に料理を作っているという話をしたら葵はどういう反応をするのかを少しだけ見てみたい。

 幼馴染が居るという事くらいは言っても大したことは無いしな……

「私は二日に一回位のペースでしてるよ」

 最初に答えたのは葵こと水晶ながめ。私生活をあっさり暴露したが、普通に高校生ならある話だからだろう。

「二日に一回か。ながめちゃんは現役高校生だし家に家族が居るから?」

「いや、幼馴染の子が居てね。その人と当番制で作ってる」

 リラの質問に何の躊躇いも無く私生活を暴露したながめ。

 俺は思わず頭を抱えた。馬鹿かお前は……

「あー、幼馴染って配信でたまに話している男の子のこと?」

「そうだね。お互い夜に両親が居ないから毎日かわりばんこにしてるよ」

 はあ!?

 俺は思わず机に頭をぶつけかけた。アイドル売りをしようとしてんだろうが。なんで幼馴染が男って所まで配信で言ってんだ。そしてもっと身バレの事を気にしてくれ!

「幼馴染君!今配信を見ていたら是非私と変わってください。給料の半分あげるから!!」

 ネタだとしても何言ってんだリラは。

「じゃあ次は俺が話す。俺も大体1週間に3日か4日くらいの頻度でやっている」

 これ以上話すと色々と不味そうなので強引にぶった切ることにした。

 そして幼馴染の話も中止した。流石に全く同じ話をするのは不味い。

「いやあ最近の高校生は偉いね。ちなみに腕前はどのくらいかな?」

 俺の料理話に食いついてきたのは秋村ヘスト。敵か味方かの判別がしたいというよりは純粋な興味で聞いてきている気がする。

「恐らく学年で12を争う位には出来るぞ」

 1年の頃にやった調理実習の様子を見る限り俺並みに料理が出来ていたのは葵だけだった。

「それは流石だねえ。今度見せてくれるかい?僕も見せてあげるからさ」

「別に構わないが、あまり期待はするなよ」

 出来るとは言っても家庭料理レベルだからな。ヘストは何を考えているんだ?

「じゃあ俺も行かせてくれ!」

「良いよ。配信が終わったら日程とか色々決めようか」

「やったぜ!」

 ハヤサカはその集まりに参加できてかなり嬉しそうにしている。ヘストは料理が上手なんだろうな。

「ついでに俺も答えとくか!俺は当然金で解決しているぞ!」

「だよね~」

「家行った時何も無かったですもんね」

 ハヤサカが自信満々に料理をしていないと宣言したのに対し、奏多と修士が半ば呆れたかのように反応した。

「うるさいな。お前らはどうなんだよ!」

「僕?やってないけど。出前イーツ一択でしょ」

「私にそんな時間があるとお思いですか?」

「ならなんでお前らは俺を揶揄ったんだよ!」

「まあまあ、そんなにカッカしないで」

「奏多が言うんじゃねえ!」

『はいはーい、もう議論の時間は終了です。それでは少数派の狼が誰か考えてください』

 とハヤサカが奏多にキレたタイミングで話し合いが終了した。

 何も分からん……

 もしかしたら他の奴らの配信や切り抜きを少しでも見ていたら誰が犯人なのか分かるのかもしれないが、そんな事を後悔しても意味が無い。

 とりあえず消去法で消していこう。

 まずながめは違う。二日に一回アイツがやっているのは料理とアニメンツ通いだけだ。

 そして光と星見リラもだな。風野タツマキの料理じゃなければあんな会話が成立するわけがない。

 そして奏多もだな。でなければ出前イーツという料理のデリバリーサービスを名指しするわけがない。

 となると可能性が残っているのは風野タツマキ、アゼリアハル、ハヤサカ、秋村ヘスト、修士の4人か。

 となると風野タツマキだろうか。

 あんなゲテモノ料理を作っておいて料理に自信があるだなんて流石に言えないか。

 料理下手すぎて料理が下手なのを自覚出来ていないと勘違いしていた。

 結局俺は風野タツマキと入力した。


『はい投票が全て集まりました。今回は誰が疑われていたのでしょうか。結果は……』

『アゼリアハルさんに4票、風野タツマキさんに3票、星見リラさんに1票、奏多さんに1票、九重ヤイバさんに1票。というわけでアゼリアハルさん、お題は何でしょうか?』

「料理配信だよ」

『はい、というわけで少数派である奏多さんの勝利です!お題をどうぞ!』

「僕は飲酒配信だよ。残念でした!」

 少数派はまさかの奏多だった。出前イーツはブラフだったのか……

「え……」

「絶対に奏多さんだけは無いと思ってた」

「負けちゃったかあ」

「これは完敗だねえ」

「やっぱりそうかあ……!」

 外した皆が驚いている中、ハヤサカだけは何かを勘付いていたらしく悔しがっていた。

「僕に投票したのってハヤサカだよね」

「ああ。初っ端の質問だよな?」

「うん、そうだよ。それで全てを理解したから」

 最初の質問?

 確かこの配信が好きかって奴だったか。

「ああ、だからハヤサカさんに質問したんですね」

 それを聞いた修士は納得したかのように頷いた。

「そういうこと。飲酒配信はハヤサカが大好きな配信だからね」

 なるほどな。ハヤサカの反応が微妙だったので見切りをつけたってわけだ。

 それは俺に分かるわけが無い。ハヤサカが酒好きなんて知らないんだから。

『私は誰が少数派かを知っていたので見ていて凄く面白かったです。流石は嘘に定評がある奏多さんでした』

『というわけで最後のお題となります!スタッフの皆さんお願いします!』

 そして最後のお題が配られた。

 次はFPSか。他のVtuberについてよく分からなくても話せるお題で助かった。

 対抗はTPSと言いたい所だが、流石にそうでは無いだろう。

『それでは確認しましたね?早速始めましょう!』

 そして最後のゲームが始まった。
しおりを挟む

処理中です...