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21話
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「ねえヤイバ君は現役高校生なんでしょ?」
「そうだな。そこの山田と同じ2年生だ」
「そっかあ、今どんな所勉強しているの?」
「化学は今基礎から化学にようやく入った所で、数学だと今は複素数平面をやっているな」
「化学に入ったってことはやっぱり理系なんだね」
「まあな、山田も同級生だったよな。今はどこら辺習っているんだ?」
高校2年生だけど確実に高校2年生じゃない山田に聞いてみた。
「や、ヤイバと同じくらいだな」
「そうか。山田の高校はかなり頭が良い所なんだな。2年生の段階で数3までやっているとは。俺はまだベクトルに入ったぐらいだぞ」
「えっ」
めちゃくちゃ綺麗に嵌ったな。流石に数3は変だってことには気付いてくれよ。
今の高2がどこら辺をやっているか分からなくて困っている様をお届けしようかと思ったがそう来たか。
「流石紅葉ちゃん。頭良いんだね!」
どうやら察して騙す側に回っていたらしいクロは楽しそうに紅葉を追い込みに入った。
「そうだ。こいつよりは頭良いからな!」
見栄張るなあこいつ。
確かVtuber学力テストで数学最下位とかだったろ山田。
高校どころか小学校の分野すら怪しかっただろ。
「そうだな。じゃあ今度複素数平面を教えてくれ、勿論配信でな」
「は?なんで私が教えてやらなきゃなんねーんだよ」
「もしかして分からないのか?」
「分かるに決まってるだろ」
「じゃあ教えられるだろ?分からないのを隠しているだけじゃないのか?」
「あ?」
「敵だよ!」
良い所で邪魔が入ってしまった。
あと少しで見栄張っていたことを自白させられたんだがな。
「一人ノックダウンさせた!ヘルプ頼む!」
「しゃあねえなあ!待ってろ!」
「やられちゃった。助けて」
「分かった」
「別パきやがった!」
「すまん、やられた!」
最初に見つけた1パーティを倒すことが出来たのは良いものの、後からやってきたパーティに倒されてしまい、残念ながら7位という結果に終わってしまった。
だが初めて組んだにしては良いコンビネーションだったとは思う。
その後は他のパーティの活躍を観戦していたが、流石に数学の話題に戻ることは無かった。
結果としてはアスカの居るパーティが1位を取った。
「じゃあありがとうね、2人とも。楽しかったよ!」
「ああ。俺も非常に楽しかった」
「覚えとけよ!」
「もしかして紅葉ちゃんは楽しくなかった?」
「いえ楽しかったです!」
「なら良かった。えっと、このまま配信は終わる形かな?じゃあそれぞれ告知をして——」
全てが終了した俺は、パソコンの電源を切って一息ついた。
結局クロに隙は一切見当たらず、山田だけに集中狙いをする形でしか逃れることは出来なかったが、キャラをしっかりと保ったままカスタムを終えることが出来たから十分な成果と言えるだろう。
「ちょっとやりすぎたかな……」
いくらキャラを守るためとは言え、初対面の人を散々煽ったのは色々と失礼だったかもしれない。
あれでもVtuberの時代を作る立役者となった大先輩だからな。
念のため山田に今回の配信についてヤイバのキャラを残したまま詫びを入れておく。
すると数分で返信が来た。
『謝るな!私がもっとみじめになってくるだろうが!』
どうやら大丈夫みたいだ。
これ以上やることも無いので俺は帰宅し、そのまま就寝した。
翌日、一応大きなイベントだったので炎上していないことを確認してから学校に向かった。
教室に入ると、何故か男子の数人が俺の方を向いた。
「ちょっと来てくれ」
俺はそう耳打ちされ、荷物を持ったまま人の居ない空き教室まで腕を掴んで連れていかれた。
抵抗しようかと考えたが、何やら真剣な表情なのでやめておくことにした。
何か変な事でもしたか?最近宮崎さんと仲良くしている事だろうか。それとも葵とのことか?
いや、もしかして図書室の本に挟まっていた手紙を偶然見てしまったことか?
「なあお前、凄かったんだな!」
「めっちゃ上手だったよ。しびれたぜ!」
「なんのこと?」
何かお前らにそんなことしたか?
「そりゃあ勿論九重ヤイバの配信に決まってるだろ!!!」
「は?」
待て待て待て待て。九重ヤイバの声は普通俺だと判別出来ないはずだ。これに関しては九重ヤイバ=俺という事を知っている人全員がそう言っているのだから間違いない。最近バレた宮崎さんもそう言っていたしな。かなり信ぴょう性の高い話だ。
だからこんなに大勢にバレることはあり得ない。
「とぼけんなって。あの声は一真が配信用に作った声なんだろ?」
「どうしてそうなるのさ」
皆やたらと確信めいた言い方だが、バレる要素は皆無な筈だろ。
「「聞きゃあ分かるだろ」」
「は?」
何故そこでハモれるんだよ。
「確かに声は変えていたし話し方も違った。普通なら全く別人に聞こえるだろうな」
それはそうだ。めちゃくちゃ気を遣っているんだから。
「でもな?聞いた瞬間分かってしまったんだ。これは俺たちの学校に居る斎藤一真の声だと」
「理由になってないけど」
つまりただの直感じゃねえか。
まだ話し方やイントネーションが俺そのものだったとかふとした時に出る声が俺そのものとかだったなら分かる。けどな、それは認められない。おかしいだろ。
「そんな隠すこと無いって。別に取って食おうとか脅そうとかしているわけじゃねえんだ。単に俺たちは応援したくて集まっただけだよ」
けどここまで確信を持たれていて隠すのは無理だよな……
「そうだよ。俺が九重ヤイバだよ」
「おう!応援してるぜ!」
「絶対100万人行けよ!」
「困った時があったら俺たちを頼っても良いからな!」
俺が白状すると、皆応援の言葉をくれた。
「ありがとう」
Vtuberである都合上、ファンは基本的にネット越しでしか応援できないため、こうやって直接応援されるのは少しむず痒い。
「そういえば、昨日の配信でこれ以外に思った事ある?」
俺の配信を見ていたってことは水晶ながめの声をずっと聞いていたってことになるからな。
「別に?一真やたら上手いなってくらいだけど」
「あ、アスカって人にちゃん付けされてるの少し良いなって思った」
「分かる!ってか一真がアスカさん対面でボイス収録したって配信で言っていなかった?」
「確かに!年上の女性と二人っきりかあ。どうだった?九重ヤイバとしてじゃなくて一真としての感想を聞かせてくれよ」
「ああ、それね……」
俺は配信で言っても怒られないレベルの感想を話しながら、内心嘆いていた。
どうしてそのまんまの声のアイツはバレず、配慮している俺だけがバレるんだよ!!!!!!!!
ちなみにあれから色々探りを入れてみた所、樹がVtuber兼イラストレーターをやっている事すらバレておらず、見知らぬ中学の同級生なんだと思われたのでまた心で強く嘆いた。
「そうだな。そこの山田と同じ2年生だ」
「そっかあ、今どんな所勉強しているの?」
「化学は今基礎から化学にようやく入った所で、数学だと今は複素数平面をやっているな」
「化学に入ったってことはやっぱり理系なんだね」
「まあな、山田も同級生だったよな。今はどこら辺習っているんだ?」
高校2年生だけど確実に高校2年生じゃない山田に聞いてみた。
「や、ヤイバと同じくらいだな」
「そうか。山田の高校はかなり頭が良い所なんだな。2年生の段階で数3までやっているとは。俺はまだベクトルに入ったぐらいだぞ」
「えっ」
めちゃくちゃ綺麗に嵌ったな。流石に数3は変だってことには気付いてくれよ。
今の高2がどこら辺をやっているか分からなくて困っている様をお届けしようかと思ったがそう来たか。
「流石紅葉ちゃん。頭良いんだね!」
どうやら察して騙す側に回っていたらしいクロは楽しそうに紅葉を追い込みに入った。
「そうだ。こいつよりは頭良いからな!」
見栄張るなあこいつ。
確かVtuber学力テストで数学最下位とかだったろ山田。
高校どころか小学校の分野すら怪しかっただろ。
「そうだな。じゃあ今度複素数平面を教えてくれ、勿論配信でな」
「は?なんで私が教えてやらなきゃなんねーんだよ」
「もしかして分からないのか?」
「分かるに決まってるだろ」
「じゃあ教えられるだろ?分からないのを隠しているだけじゃないのか?」
「あ?」
「敵だよ!」
良い所で邪魔が入ってしまった。
あと少しで見栄張っていたことを自白させられたんだがな。
「一人ノックダウンさせた!ヘルプ頼む!」
「しゃあねえなあ!待ってろ!」
「やられちゃった。助けて」
「分かった」
「別パきやがった!」
「すまん、やられた!」
最初に見つけた1パーティを倒すことが出来たのは良いものの、後からやってきたパーティに倒されてしまい、残念ながら7位という結果に終わってしまった。
だが初めて組んだにしては良いコンビネーションだったとは思う。
その後は他のパーティの活躍を観戦していたが、流石に数学の話題に戻ることは無かった。
結果としてはアスカの居るパーティが1位を取った。
「じゃあありがとうね、2人とも。楽しかったよ!」
「ああ。俺も非常に楽しかった」
「覚えとけよ!」
「もしかして紅葉ちゃんは楽しくなかった?」
「いえ楽しかったです!」
「なら良かった。えっと、このまま配信は終わる形かな?じゃあそれぞれ告知をして——」
全てが終了した俺は、パソコンの電源を切って一息ついた。
結局クロに隙は一切見当たらず、山田だけに集中狙いをする形でしか逃れることは出来なかったが、キャラをしっかりと保ったままカスタムを終えることが出来たから十分な成果と言えるだろう。
「ちょっとやりすぎたかな……」
いくらキャラを守るためとは言え、初対面の人を散々煽ったのは色々と失礼だったかもしれない。
あれでもVtuberの時代を作る立役者となった大先輩だからな。
念のため山田に今回の配信についてヤイバのキャラを残したまま詫びを入れておく。
すると数分で返信が来た。
『謝るな!私がもっとみじめになってくるだろうが!』
どうやら大丈夫みたいだ。
これ以上やることも無いので俺は帰宅し、そのまま就寝した。
翌日、一応大きなイベントだったので炎上していないことを確認してから学校に向かった。
教室に入ると、何故か男子の数人が俺の方を向いた。
「ちょっと来てくれ」
俺はそう耳打ちされ、荷物を持ったまま人の居ない空き教室まで腕を掴んで連れていかれた。
抵抗しようかと考えたが、何やら真剣な表情なのでやめておくことにした。
何か変な事でもしたか?最近宮崎さんと仲良くしている事だろうか。それとも葵とのことか?
いや、もしかして図書室の本に挟まっていた手紙を偶然見てしまったことか?
「なあお前、凄かったんだな!」
「めっちゃ上手だったよ。しびれたぜ!」
「なんのこと?」
何かお前らにそんなことしたか?
「そりゃあ勿論九重ヤイバの配信に決まってるだろ!!!」
「は?」
待て待て待て待て。九重ヤイバの声は普通俺だと判別出来ないはずだ。これに関しては九重ヤイバ=俺という事を知っている人全員がそう言っているのだから間違いない。最近バレた宮崎さんもそう言っていたしな。かなり信ぴょう性の高い話だ。
だからこんなに大勢にバレることはあり得ない。
「とぼけんなって。あの声は一真が配信用に作った声なんだろ?」
「どうしてそうなるのさ」
皆やたらと確信めいた言い方だが、バレる要素は皆無な筈だろ。
「「聞きゃあ分かるだろ」」
「は?」
何故そこでハモれるんだよ。
「確かに声は変えていたし話し方も違った。普通なら全く別人に聞こえるだろうな」
それはそうだ。めちゃくちゃ気を遣っているんだから。
「でもな?聞いた瞬間分かってしまったんだ。これは俺たちの学校に居る斎藤一真の声だと」
「理由になってないけど」
つまりただの直感じゃねえか。
まだ話し方やイントネーションが俺そのものだったとかふとした時に出る声が俺そのものとかだったなら分かる。けどな、それは認められない。おかしいだろ。
「そんな隠すこと無いって。別に取って食おうとか脅そうとかしているわけじゃねえんだ。単に俺たちは応援したくて集まっただけだよ」
けどここまで確信を持たれていて隠すのは無理だよな……
「そうだよ。俺が九重ヤイバだよ」
「おう!応援してるぜ!」
「絶対100万人行けよ!」
「困った時があったら俺たちを頼っても良いからな!」
俺が白状すると、皆応援の言葉をくれた。
「ありがとう」
Vtuberである都合上、ファンは基本的にネット越しでしか応援できないため、こうやって直接応援されるのは少しむず痒い。
「そういえば、昨日の配信でこれ以外に思った事ある?」
俺の配信を見ていたってことは水晶ながめの声をずっと聞いていたってことになるからな。
「別に?一真やたら上手いなってくらいだけど」
「あ、アスカって人にちゃん付けされてるの少し良いなって思った」
「分かる!ってか一真がアスカさん対面でボイス収録したって配信で言っていなかった?」
「確かに!年上の女性と二人っきりかあ。どうだった?九重ヤイバとしてじゃなくて一真としての感想を聞かせてくれよ」
「ああ、それね……」
俺は配信で言っても怒られないレベルの感想を話しながら、内心嘆いていた。
どうしてそのまんまの声のアイツはバレず、配慮している俺だけがバレるんだよ!!!!!!!!
ちなみにあれから色々探りを入れてみた所、樹がVtuber兼イラストレーターをやっている事すらバレておらず、見知らぬ中学の同級生なんだと思われたのでまた心で強く嘆いた。
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