立ち回りを捨て、全てをエイムに捧げてきた元プロゲーマーは現実でもエイムに全振りして無双する

僧侶A

文字の大きさ
上 下
10 / 36

10話

しおりを挟む
 周囲を見渡してみると、四方から大量のゾンビがやってきていた。

「D級ってそういうことか。こいつら多分銃声に反応したんだと思う」

「なるほど。大きな音を出してはいけなかったってわけだ」

「うかつだったよ。ごめん」

「問題ない。あいつらの動きは遅い上に距離はかなり離れている」

 まだ到達するにはかなりの時間がかかる。その間に叩ければどうにかなるはずだ。

「とりあえず高台に上ろう」

「分かった」

 俺たちは有利に戦闘を運ぶべく近くにあったビルの最上階に上った。

「やるぞ」

「うん」

 各々二方向を担当し、それぞれが攻撃を始めた。

 俺は持てる全てのブーメランを総動員し、ただひたすらに投げ続けた。

 一体、また一体と次々にゾンビたちの頭は吹き飛び、切断されていった。

 後ろからもけたたましい銃声が鳴り響き、ゾンビの体が破壊されていることが伝わってくる。

 順調に敵を倒し続けているため、進行は確実に防げているのだが中々終わりが見えない。

「どんだけ居るんだよ!」

 俺は多少苛立ちつつもブーメランを投げ続ける。

「ごめん、弾が足りないかもしれない」

 リンネは申し訳なさそうに、俺たちの窮地を告げた。

「俺が全部やらないといけないのか。しかもこの量を」

 ゾンビの群れの全容が見え、明確な終わりが見えたのは良いが、残っている敵は倒した分の2倍はあるようだ。

 つまり俺は今の4倍の敵を倒す必要がある。

 このままでは全滅を狙うのはほぼほぼ不可能。いくら命中率が100%だとしても、一秒間に何発も連射出来るわけではないのだ。

「やっぱり無理だよね」

 俺の攻撃速度を把握しているリンネは察していたらしい。

「ああ。どう頑張っても半分は残る」

「分かった。それで作戦を組み立ててみる。数秒待って」

「了解」

 リンネはゾンビの群れが良く見える位置に立ち、作戦を考え始めた。

 ならば俺がすることはただ一つ。倒せるだけ敵を倒すことだ。

 俺は的確に一匹一匹ゾンビを打ち抜きつつ、より効率的に数を減らす方法が無いかを考える。

「なるほど」

 俺はブーメランの軌道がより大きくなるようにブーメランを放つ。

 一投で複数の敵を倒すことは出来るが、軌道が大きくなった分タイムロスがあるな。

 しかし、ある程度効率的にはなった。

「これならば3匹同時に倒せる」

 その大きな軌道は、中心の1匹を首から、2匹を耳から切断する軌道だった。

 それからはその軌道に変更し、今までの倍程度の効率で敵を打ち抜く。

 しかしそれで全てが解決、という美味い話ではなく。

 若干死期を引き延ばしただけである。

「AIM、4方に居る敵の中で一番奥のゾンビをそれぞれ攻撃して!」

 AIMはそう指示した。

「手前ではなくか?」

「そう。早く!」

 俺はリンネの指示に従い、4方にいる最も遠い敵を狙撃した。いずれも外すことなく命中。

「それを続けて!」

「分かった」

 理由は分からないが、言われた通りに最後方の敵のみを集中して狙う。

 後方の敵は俺の的確な狙撃によって吹き飛ばされていくが、何ら変わった様子は見えない。

 依然として敵は大量に残っている。

「何も変わっていないじゃないか」

 俺は指示通りにブーメランを投げつつリンネに文句を言う。これは遊びではなく生死を分けた戦いなんだぞ。

「何も変わっていないから成功なんだよ」

「どういうことだ?」

「攻撃を当てた時からピンチ度合いが変わっていないよね?」

「言われてみればゾンビの動きが非常に遅くなっているな」

 明らかに敵の動きは鈍っている。ボスのような存在感を見せるゾンビは居なかったはず。一体どういうことだ?

「多分ゾンビは倒された位置を共有しているんだ。突然背後のゾンビが倒されたことで敵の位置が移動したんじゃないかって錯覚しているんだと思う」

「どうして分かったんだ?」

「AIMが三体同時に頭を吹っ飛ばした時だね。ゾンビの挙動が少し倒された3体の方に寄ったんだ」

「なるほど」

「というわけでAIMが後ろの敵を倒し続ければ群れは終了。今はただのボーナスタイムだよ」

「働くのは俺だけか……」

 それから1時間程リンネの指示のもとブーメランをひたすら投げ続け、無事にゾンビを壊滅させることに成功した。

「俺はもう疲れた。アイテム回収は任せる」

 俺はブーメランを全てマジックバッグに収納した後、その場に寝転んだ。

「分かったよ。ただマジックバッグ貸して」

「おう」

 俺は念のためにブーメランを3個ほど取り出した後、リンネに手渡した。

「結構重いねこれ。じゃあ行ってくる」

「任せた」

 それから1時間程休憩し、体力も戻ってきたのでリンネを手伝うことに。

「どれくらい終わった?」

「丁度4分の1かな」

 異常な程に集まったゾンビは、倒すだけでなく回収にも時間がかかるらしい。

「とりあえずやれるだけやるぞ」

 それから3時間、累計にして4時間と討伐の4倍ほどの時間をかけて回収を終わらせた俺たちは、流石に帰宅することになった。


 その後エゴサーチで知ったことだが、あの異常な量のゾンビの発生理由は一度に倒しすぎたことでは無く、俺が余りにも遠距離からゾンビを殲滅したことらしい。

 通常はあのレベルでゾンビが集結することは無いらしく、俺の素晴らしいエイム力の為した罪だった。

 流石に申し訳なかったのでリンネに謝罪したが、帰ってきた返事は良い稼ぎになったからまたやろうとの事。

 確かに今回だけで500万程の収入はあったが、もう一度アレをやるのか?

 ただ今回は俺が原因である以上、謝罪の意味も込めてやる以外の選択肢は無かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

処理中です...