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6話

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「ブーメランは大体この位あればいいか。後はカバンだな」

 メン限配信の最中、視聴者からそんなに投げ込みをするのであればマジックバッグは必要だとアドバイスされた。視聴者曰く、普通のリュック比ではない位のアイテムを収納できるらしい。

 初心者が持つには重すぎるという弱点があるらしくリンネに教えられることはなかったが、遠距離でしか攻撃しないのならあっても良いという判断らしい。

 それにどうせ今回みたいに何時間もダンジョンに潜ってエイム練習するんだしモンスターの素材を持って帰れよってことになった。

 視聴者の一人が討伐数を数えたらしく、兎673、犬327とのこと。全部バッグに詰め込んで持って帰った場合30万くらいの儲けになると言っていた。

「結構種類があるんだな」

 単にマジックバッグと言っても様々で、リュック型や手提げ型、ポシェット型、果てはジュラルミンケース型などありとあらゆるタイプの入れ物がショーケースの中に並んでいた。

 マジックバッグは生産職の手によって作られるらしく、基本的にどんなタイプの物でも作れるためここまで種類が増えたらしい。

「マジックバッグをお探しですか?」

 余りにも種類が多いのと説明が無いことが相まって困り果てている所、店員が声を掛けてきた。

「はい。大量に物が入るマジックバッグを探していて」

 流石に配信やリンネと話す時の口調で見知らぬ人と話すほど一般常識に欠けてはいないので、ある程度丁寧な口調で対応する。

「用途は何でしょうか?」

「武器の携帯用ですね」

「持ったまま戦闘するにはかなりの重量ですが大丈夫ですか?」

「最低限歩ければ十分ですので問題ないです」

「であればこちら等いかがでしょうか」

 紹介されたのはリュックだった。

「冒険は基本的に長時間の移動となりますので、一番肉体への負担が少ないこの形がお勧めです」

 確かにこれは無難そうだ。

「これは大体どのくらい入るんですか?」

「作成者が言うには一応2tは入るらしいです」

 大体車くらいの重さか。それだけあればブーメランも1万本位入れられそうだな。調理器具も入れておけば訓練の際に軽く数日はダンジョンで過ごせそうだ。

 それに、その位の容量であればそこら辺の生き物が数十体は入るしな。

「これにします。いくらですか?」

「500万です」

 バカ高いな。いや、持っているけども。今年のFPSで稼いだ金額と大体同じくらいか。

「じゃあクレジットで」

「かしこまりました」

 俺は数秒迷った後、先ほどの狩り結果からその位簡単に稼げるだろうと判断し購入することにした。

 俺はそのまま帰宅し、リュックにブーメランを詰め込む作業を始めた。

 とはいっても入れるだけでいいので、500本程入れた割に時間はかからなかった。

 そして早速背負ってみることに。

「確かに結構重いな」

 大体大人二人分くらいの重さだろうか。先程の狩りでレベルが結構上がったこともあってどうにか動けているが、今朝の俺だったらまともに動くことすら叶わなかったに違いない。

「でも投げることには支障が無さそうだな」

 寧ろ今まで使っていたカバンと違い荷物が落ちることを考慮しなくてよくなった分投げやすくなったと考えても良いだろう。

「とりあえず明日だな」

 明日はリンネとのE級ダンジョン巡りの配信をする予定があるため、早めに就寝した。

「それじゃあE級ダンジョン巡り、やっていきましょう!」

「そうだな」

 俺たちはD級ダンジョンに潜れるようになるためにE級ダンジョンを攻略するのが今日の目的だ。

 F級からE級に上がる際は一つのダンジョンで良かったが、E級からD級に上がるためには2つのダンジョンの踏破が必須となってくる。

 前回の二人での配信と比べ、長期戦が予想される。

「まずは世田谷からだな」

「オッケー」

 一番近いという理由で、昨日練習場所にしていた世田谷ダンジョンから攻略することに。

「ここを下ればボスがいる」

 とは言っても昨日散々潜ったこともあり構造をほとんど把握していたので、30分くらいでボス部屋に来ていた。

「じゃあ早速開けるぞ」

 ボスも五反田より数が増えただけで大した強さではないことが分かっていたので、何の躊躇もせずに開いた。

 中には前回と同様に犬と兎と虎の石像が中央に配置されていた。ぱっと数えた感じそれぞれ4体ずつのようだ。

「じゃあ前衛やるね」

 リンネはショットガンとライトマシンガンを両手に構え、敵の固まっている場所に飛び込んでいった。

 俺はリンネに当たらないよう横に広がるようにブーメランを投げた。

 それは的確にリンネの横にいるモンスターに直撃し、俺の元に戻ってくる。

 正面に居る敵はリンネが銃を乱射することで次々と倒されていった。

 結果3分程で討伐が完了するという何とも見どころの無いダンジョン攻略だった。

 俺たちは倒したモンスターの死体を俺のマジックバッグに収納した後、宝箱に入っていた武器を回収し共に入っていた石板で脱出した。

 一旦配信を終了した後、出張所で戦利品の清算をしてから次のダンジョンへ向かった。

「次は椎名ダンジョンです!」

 やってきたのは椎名ダンジョン。敵が兎、犬などの動物だった先程のダンジョンとは違い、植物のモンスターが生息しているダンジョンだ。

 リンネは昨日個人練習で練馬ダンジョンに潜っていたようでそっちに行こうと提案したのだが、虫は視聴者が嫌がるとのことで却下となった。

「めちゃくちゃ綺麗だな」

「そりゃあ冒険者のPV撮影も行われるような場所だからね」

 椎名ダンジョンは植物系のモンスターのみのダンジョンということもあり、自然豊かなダンジョンだ。

 特に第一層のコンセプトは花畑であり、綺麗な花々が一面に咲き誇っている。

 それに加えてE級ということもあり、比較的安全な撮影所という扱いになっていた。

 ただそれはレベルの高い有名冒険者の話であり、新米の俺たちは気を抜いて攻撃を食らえる程強くないので気を付けないといけないが。

「アレが敵、かな?」

「ただのヒマワリにしか見えないが」

 リンネが指差した先にあるのは、どうみても普通のヒマワリだ。

「調べてきたんだけど、普通のヒマワリはこの階にはいないんだって。アレはパラサイトサンフラワーっていうモンスターだね」

「寄生ヒマワリとは恐ろしい名前だな」

「実際攻撃の代わりに種を飛ばして取りついた先の物を破壊しようとしてくるからね」

「流石にそんなものに近寄りたくはないな」

 俺はヒマワリを刈り取るためにリュックからブーメランを取り出し、そのまま投げた。

 完全に止まっているため、当然のように命中したのだが、

「ん?」

 ブーメランによって刈り取られることは無く、ヒマワリの茎が綺麗にしなっただけだった。

 狙いどころに問題があったのかもしれないと次々と投げてみたが、結果は同じ。俺はヒマワリを刈るどころか傷つけることすら叶わなかった。

「じゃあ僕が倒すしかないみたいだね」

 リンネはライトマシンガンを担ぎ、種が届かなさそうな10m離れた地点から銃を乱射する。

 するとその一部がヒマワリに命中したようで、種を収納していたであろう場所が地面に落下した。

 そのまま落ちたものを回収するためにその地点へ向かった。

「確かにこれは俺の使っているブーメランでは厳しいな」

 回収した後原因を確かめるために茎の部分に触れてみた所、普通の花の茎と比較しても相当柔らかかった。

「このブーメランは鈍器に近いもんね」

「俺はこの階層は何の役にも立たなさそうだ」

 俺はリンネにモンスターの討伐を任せ、この階層の攻略を進めた。

「やっとあったな」

「そうだね」

 探す事1時間、ようやく俺たちは次の階層への階段を見つけることが出来た。
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