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4話

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 その後兎の解体を終わらせて今日の夕食を確保したところで、少し強い敵に挑戦することに。

 少し先に進むと、ただの草原には見合わない仰々しい階段が見つかった。

 どうやらこれが次の階層へと続く道らしい。

 階段を降り、外に出るとまた草原が広がっていた。

 しかし先程までとの場所とは違い、木々がチラホラと存在し、射線が綺麗に通らないようになっていた。

 とは言っても俺たちにはさほど影響は無いが。

「犬だな」

 見つかったのは柴犬の見た目をしたモンスターだった。

「アレは『ウィニーウルフ』だね。どう見ても犬だけど、一応狼らしいよ。ペットにしている犬とは違って野生だから凶暴で、人を見境なく襲ってくるよ。嗅覚が鋭い分兎より索敵範囲は広いから注意してね」

 リンネは入念に調べてくれていたようで、丁寧に説明をしてくれた。

「ありがとう。だけど関係ないな」

 いくら索敵範囲が広いといえど、

「ふんっ」

 それよりも遠くから攻撃してしまえば問題ない。

「む」

 確かに狙い通りの位置にブーメランは届いたのだが、銃と違ってスピードが足りていないため、飛んでいる最中に別の場所に行ってしまっていた。

「珍しい、AIMが外すなんて」

「犬の動きを考慮に入れていなかったのと、ブーメランの速度の問題だな。少し考えが甘かったらしい」

 もし動いていなかったとしても、ブーメランが接近した段階で気付かれて避けられただろう。いくら狙い通りの位置に攻撃を当てようと、狙った位置に獲物が居なければノーコンと変わらない。

「多少ステータスは上がっているけど、まだ人間は辞めてないからね。手で投げる以上仕方ないよ」

 ゲームと違い、遠距離の着弾にラグが発生する。そして、機械で操作をするわけでは無いので動きが直線的ではない。

 現状ブーメランを当てるには相手の動きを完全に読み切り、死角から狙い打つ以外無さそうだ。

「とりあえず、ブーメランの弾速を上げるための手段を調べないとな」

 俺はそう結論付け、先ほど倒し逃した犬を倒すため、ブーメランを7個ほど投擲し、逃げ場のない弾幕を作ることで仕留めた。

「結局当たってるじゃん」

「そりゃああれだけ投げればな」

 リンネは凄いと思っているのだろうが、俺の目指す道は百発百中だ。7個投げて1つしか当てられない程度で凄いとは言えない。

「これからもそれで行くの?弓とかあるでしょ」

 結果に満足していない俺に対して、弓を提案してきた。

「弓はあまり好ましくないな。装填速度と射程が致命的に足りていない」

 その点において銃に勝てる未来が見えない。どれだけ弓の素材が良くなろうと、銃の素材も同等に良くなるわけで、一生差は縮まないだろう。

「じゃあそれを使い続けるんだ」

「一応な」

 現状俺の考える条件を一番満たしているのがブーメランなのだ。これを手放すことは今のところは無い。

「まあ行ける所まで行ってから考えれば良いよね。とりあえず次行こ」

 犬は大して美味くないという前情報があったので、死体を放置して次の所へ。

「よし、完璧だね」

 リンネも一切苦戦すること無く犬を倒せた。

「相変わらず接射だがな」

「ショットガンだからこっちの方がダメージ高いんだよ。それより、ボスに行こうか」

「そうだな」

 俺たちはボスが居るらしいこの層の下に向かうことに。

「いかにもボスがいるって見た目だな」

 再び階段を探し、下に降りるとあからさまにボスが居ますという風格のある扉が存在していた。

「何mくらいあるんだろ」

「10mはありそうだな」

 こんな最弱と名高いダンジョンのボス部屋にこんな立派な扉は勿体ないだろと思いつつ、開けるために手を触れた。

「めちゃくちゃ軽いな」

 重量感がある扉だったため若干力を入れて押したら、家の扉くらい軽い扉だった。思わずこけそうになったが、ギリギリの所で立て直した。

「本当に何も知らないんだね」

「随分と見ないようにしていたからな」

 当時なら覚えていた内容でも、5年たてば大体忘れるもんだ。

 扉の先には、石のような素材で出来た無機質な床、全ての光を吸収していそうな真っ黒な壁があり、中央に石でできたモンスターが3体並んでいた。

「右が兎、左が犬なのは分かる。真ん中のアレは何だ?チーターか?」

 何か分からないが、ネコ科の動物だということは分かる。しかし、体の模様が石であるため分からない。

「アレは『ウィニータイガーだね』。このダンジョンのボスモンスターだよ」

「とりあえずここから当ててみるか」

 扉の外といっても大した距離ではないため、試しに投げてみることに。

「あ…… まあいいか」

 何か言いたげな顔をしていたが、確実に命中するであろう3つのブーメランの軌道を見て言うのを辞めたらしい。

 投げたブーメランは3体それぞれの脳天に直撃し、俺の元へ帰ってきた。それを俺は一つだけキャッチに成功し、残りは背後の階段に激突して地面に転がった。

 肝心の石像は命中後石から生命を感じる肉体に変化を遂げたが、そのまま倒れ消滅した。

「何だあれ?」

「あの石像は、この扉の向こうに入ると石から普通の体になって動き出すんだよ」

「今入っていないが?」

 俺たちは扉を開けただけで中には入っていない。

「扉を開く以外の条件として、何かしらの手段で攻撃を当てるってのがあるんだよ」

「本来ならばここまで襲い掛かってくると」

「だね。ただ今回は一撃で倒しちゃったからああなったけどね」

「そこら辺は分かった。だが何で止めようとしたんだ?」

 確実に先制攻撃を出来る状況下で、しない意味など無いだろうに。

「攻撃を受けたボスたちが真っすぐこちらに向かってきて退路を塞ぐからだよ」

 確かに、階段を背後に戦うのは無理があるな。

「それに、ここから攻撃を仕掛けたらペナルティとして、ボスを倒しきるまで上のフロアがしまっちゃうんだ」

「だから止めようとしたんだな」

「そういうこと。まあ弱点に的確に当てそうだったからまあいいかってなったけど」

「今後は気をつける」

「それで良いよ。それよりもダンジョン攻略したからアイテム貰って出よう」

「そうだな」

 俺たちは消滅したモンスターの代わりに現れていた宝箱の元へ向かった。

「早速開けてみよう」

 宝箱を開くと、その中には何も書かれていない紙が二枚と、魔法陣の書かれた石板が2枚入っていた。

「何だこれ?」

「紙の方はスキルペーパーだね。破るとスキルが貰えるよ。石板の方は脱出用の石板だね。中心に触れるとこのダンジョンから追い出されるから注意してね」

「そうなのか。このスキルペーパーは何のスキルが貰えるんだ?」

 スキル素晴らしい響き。一体どんな素晴らしいものが貰えるのだろうか。

「鑑定していないから確定は出来ないけど、このダンジョンの報酬でもらえるスキルペーパーは『投擲』だよ。投げるフォームを綺麗にしてくれるんだって」

「神じゃないか」

 まさに俺が求めていたスキルと言えるだろう。ブーメランをより効率的に遠くに飛ばせるようになることが期待される。

「『投擲』って言ってもアレだよ?石投げるときにしか効果ないからね。それも手のひらサイズまでとの制限付き。完全に敵をおびき寄せる以外に用途無いよ」

 そのサイズであれば確かにブーメランを投げていた方が効率的か。

「まあ無いよりはマシだろ」

「それもそうだね」

「そういやレベル上がってないね」

「確かに」

 普通レベルが上がったのなら何かしらのアナウンスがあってもおかしくないはず。しかし今回の探索ではたった1すらレベルが上がっていなかった。

「まあ最低級のダンジョンだしな。本番は一個上からってことだろ」

「それもそうだね。とりあえず、F級ダンジョンを攻略した手続きをしないといけないから配信はここでおしまい。じゃーねー」

「またな」

 俺たちはそのままカメラを切り、配信を終了した。
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