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第33話
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そして当日。数多くの女性が列を作っている中、悠理は気まずそうに小野田さんと並んでいた。
「非常に初々しいですね」
「まったくだ」
当然俺たちは遠くから様子を見ていた。
「悠理は甘いものが案外好きだからこういうのは好きなはずなんだが」
黒須家の都合上頻繁に糖分を摂取することは許されていないため、あまりそういった類のものを口にするところを目にすることは無いんだが、実はかなりの甘党だ。
今は恥ずかしがって素直な反応を見せてくれないのだが、実はスマートフォンの検索履歴には世界各地のスイーツがはっきりと残っている。
「それなら大丈夫そうですね。ただ、周りの視線が……」
隣に小野田さんが居るのでカップルに間違われてもおかしくは無いのだが、そもそも慎重さがありすぎて悠理しか認識出来ずに怖がっている女性が多数いた。
「店内に入れば分かってくれるだろ」
「あ、入りましたよ」
「じゃあ行くか」
悠理たちが中に入ったことを確認した後、俺たちも列に並んで店に入った。
「ちゃんとスイーツを選んでいますね」
「じゃあまず一発目投入するか」
「はい」
俺たちは店員に頼み、悠理たちの席にカップル用のパフェを届けさせた。
そう。店員もグルなのである。
実は店長が加賀美家と関わりのある人間で、あらかじめ協力するようにお願いしていたのだ。
「さて、どうだ?」
「流石に戸惑っているようですね」
「悠理が周囲を見回し始めたな」
恐らく俺たちの犯行だということを察したのだろう。
だがしかし。今回の変装は完璧だ。普段と違う格好だし、髪色も変えてきている。どうやってもバレることは無い。顔が分からないのだからな。
「諦めて食べ始めたぞ」
結局見つけられなかったようで、大人しくカップル用のパフェを一緒に食べていた。
「お待たせしました。カップルパフェです」
そんな悠理たちを見ていると、俺たちの席にも同じものが届いた。
「ありがとうございます」
「加賀美。てめえ……」
「さあ、食べましょうか」
仕方ねえなあ。食べてやるか。
「分かったよ」
俺が素直にそう返すと、驚いた表情でこちらを見てきた。
「まさか大人しく付き合ってくれるなんて」
「そんなことどうでもいいだろ。さっさと食べるぞ」
「はい」
そのパフェは20分程で完食した。
「案外多かったな」
「そうですね。非常に美味しかったのですが、正直これ以上は十分ですかね」
「あいつらは違うらしいけどな」
二人でパフェと格闘している中、あの二人は一瞬で平らげ、追加で10皿位ケーキを食べていた。
「二宮さんがこの光景を見たら気絶しそうですね」
「確かに。筋肉が駄目になってしまうって叫びそうだな」
「なんやお前らの仕業やったんか」
突如として現れたのは二宮花。
「どうしてここに?」
「いやな。悠理はんにGPS付けとったら何故かケーキ屋に入ったって情報が来てな。緊急事態やと思って飛んできたんや」
「そしたら環はんと仲睦まじそうにパフェを食べとった」
ひとまずGPSを付けていることには触れないでおこう。
「ならあの光景はかなり不味いのではないですか?」
「正直な。でもうちの欲望の為だけに恋仲になろうと頑張っている二人の幸せな時間を邪魔するのはあかん」
この人案外常識人なんだな。
よくよく考えたらGPSを付けている時点で住所が筒抜けなわけなんだから、いつでも家に襲撃可能なのにしてないってことを考えたらそんなものなのか。
「何となくそういう関係になりそうってことは分かってたんやけどな」
「そうなんだ」
正直まったく気付いていないと思っていた。
「筋肉見れば感情の動きは大体読めるしな。特に好意は分かりやすいもんや」
まあ目の動きを見ると感情が読めるなんて心理学者が言ってたりするもんな。そう考えると普通か。
「流石ですね」
「ウチやからな。んで、お二人さんはそれにかこつけてデートをしているというわけやな。相変わらず仲のよろしいことで」
俺は加賀美が嫌いだ。という主張をしたいが面倒なことになるので抑えておく。
「あら。そう見えますか?」
「勿論や。加賀美はんからは九条はんに対する愛が凄まじい値を叩きだしているし、九条はんは九条はんでツンデレの気配を感じ取れるな」
「ツンデレじゃない!」
思わず反論してしまった。なんだその気持ち悪い結論は。
「それはどれくらい信用しても良いものですか?」
「大体80%程やな。一応かなりの人で試したんやけど、結果そんなもんやった」
「そうですかそうですか」
にやにやした表情でこちらを見てくる加賀美。
「にやにやするな」
「にしても最初の方は九条はんからは加賀美はんを嫌っているような雰囲気を出してたから心配やったわ」
そこまで気付いてやがるのか?
「ちょっと待って。見てたの?」
それよりも重大な話があったわ。なんで見てるんだ。
「それは当然そこに悠理はんがおったからや。家の中まで覗き見るのは問題やけど、学校にいる悠理はんを堪能するのは犯罪でもないし自由や」
「なるほど。全く理解が出来ないけど分かったことにしとくね」
嘘ついてもあまり意味が無いことに気付いたので正直に話す。
「ま、お二人を邪魔するのはアレやからウチは別の場所から観察するわ。じゃあ!」
二宮さんは去っていった。本当に嵐みたいな人だ。
「私の事、嫌いじゃないんですね?」
当然追及された。何故か分からないが若干暗い顔をしている。
「そんなことはねえよ。ちゃんとお前の事は嫌いだ。二宮さんも20%は外すって言ってたろ?」
「付き合いたての部分は間違いなく当たっていたのに今の部分を外しますかね?前回と正反対の予測結果になった場合って入念に調べなおすと思うんですよ。研究者気質ですしね」
確かに前よりは嫌いではない。実際にこいつと関わる中で良いところを知っていくことが出来たしな。嫌いだった原因も何となく今では分かる。
「それでも、嫌いであるという事実は変わらない」
それでも俺がこいつを好きになることはあり得ない。
「そうですか」
残念そうな言葉とは裏腹に、加賀美は満面の笑顔だった。
普通暗い顔をするもんじゃないのか?
まあいいか。気にしてもしょうがない。
「正解です」
「何か言ったか?」
「いいえ、何も」
「今からデートがしたくなりました。二人を観察するのはやめてどこかに行きましょう」
加賀美が考えていることはよく分からなかったが、良くなった機嫌を悪くするのも嫌なので付き合ってやることにした。
帰宅後、悠理から鬼の量のメールと電話の履歴が残っていたのはまた別の話。
「非常に初々しいですね」
「まったくだ」
当然俺たちは遠くから様子を見ていた。
「悠理は甘いものが案外好きだからこういうのは好きなはずなんだが」
黒須家の都合上頻繁に糖分を摂取することは許されていないため、あまりそういった類のものを口にするところを目にすることは無いんだが、実はかなりの甘党だ。
今は恥ずかしがって素直な反応を見せてくれないのだが、実はスマートフォンの検索履歴には世界各地のスイーツがはっきりと残っている。
「それなら大丈夫そうですね。ただ、周りの視線が……」
隣に小野田さんが居るのでカップルに間違われてもおかしくは無いのだが、そもそも慎重さがありすぎて悠理しか認識出来ずに怖がっている女性が多数いた。
「店内に入れば分かってくれるだろ」
「あ、入りましたよ」
「じゃあ行くか」
悠理たちが中に入ったことを確認した後、俺たちも列に並んで店に入った。
「ちゃんとスイーツを選んでいますね」
「じゃあまず一発目投入するか」
「はい」
俺たちは店員に頼み、悠理たちの席にカップル用のパフェを届けさせた。
そう。店員もグルなのである。
実は店長が加賀美家と関わりのある人間で、あらかじめ協力するようにお願いしていたのだ。
「さて、どうだ?」
「流石に戸惑っているようですね」
「悠理が周囲を見回し始めたな」
恐らく俺たちの犯行だということを察したのだろう。
だがしかし。今回の変装は完璧だ。普段と違う格好だし、髪色も変えてきている。どうやってもバレることは無い。顔が分からないのだからな。
「諦めて食べ始めたぞ」
結局見つけられなかったようで、大人しくカップル用のパフェを一緒に食べていた。
「お待たせしました。カップルパフェです」
そんな悠理たちを見ていると、俺たちの席にも同じものが届いた。
「ありがとうございます」
「加賀美。てめえ……」
「さあ、食べましょうか」
仕方ねえなあ。食べてやるか。
「分かったよ」
俺が素直にそう返すと、驚いた表情でこちらを見てきた。
「まさか大人しく付き合ってくれるなんて」
「そんなことどうでもいいだろ。さっさと食べるぞ」
「はい」
そのパフェは20分程で完食した。
「案外多かったな」
「そうですね。非常に美味しかったのですが、正直これ以上は十分ですかね」
「あいつらは違うらしいけどな」
二人でパフェと格闘している中、あの二人は一瞬で平らげ、追加で10皿位ケーキを食べていた。
「二宮さんがこの光景を見たら気絶しそうですね」
「確かに。筋肉が駄目になってしまうって叫びそうだな」
「なんやお前らの仕業やったんか」
突如として現れたのは二宮花。
「どうしてここに?」
「いやな。悠理はんにGPS付けとったら何故かケーキ屋に入ったって情報が来てな。緊急事態やと思って飛んできたんや」
「そしたら環はんと仲睦まじそうにパフェを食べとった」
ひとまずGPSを付けていることには触れないでおこう。
「ならあの光景はかなり不味いのではないですか?」
「正直な。でもうちの欲望の為だけに恋仲になろうと頑張っている二人の幸せな時間を邪魔するのはあかん」
この人案外常識人なんだな。
よくよく考えたらGPSを付けている時点で住所が筒抜けなわけなんだから、いつでも家に襲撃可能なのにしてないってことを考えたらそんなものなのか。
「何となくそういう関係になりそうってことは分かってたんやけどな」
「そうなんだ」
正直まったく気付いていないと思っていた。
「筋肉見れば感情の動きは大体読めるしな。特に好意は分かりやすいもんや」
まあ目の動きを見ると感情が読めるなんて心理学者が言ってたりするもんな。そう考えると普通か。
「流石ですね」
「ウチやからな。んで、お二人さんはそれにかこつけてデートをしているというわけやな。相変わらず仲のよろしいことで」
俺は加賀美が嫌いだ。という主張をしたいが面倒なことになるので抑えておく。
「あら。そう見えますか?」
「勿論や。加賀美はんからは九条はんに対する愛が凄まじい値を叩きだしているし、九条はんは九条はんでツンデレの気配を感じ取れるな」
「ツンデレじゃない!」
思わず反論してしまった。なんだその気持ち悪い結論は。
「それはどれくらい信用しても良いものですか?」
「大体80%程やな。一応かなりの人で試したんやけど、結果そんなもんやった」
「そうですかそうですか」
にやにやした表情でこちらを見てくる加賀美。
「にやにやするな」
「にしても最初の方は九条はんからは加賀美はんを嫌っているような雰囲気を出してたから心配やったわ」
そこまで気付いてやがるのか?
「ちょっと待って。見てたの?」
それよりも重大な話があったわ。なんで見てるんだ。
「それは当然そこに悠理はんがおったからや。家の中まで覗き見るのは問題やけど、学校にいる悠理はんを堪能するのは犯罪でもないし自由や」
「なるほど。全く理解が出来ないけど分かったことにしとくね」
嘘ついてもあまり意味が無いことに気付いたので正直に話す。
「ま、お二人を邪魔するのはアレやからウチは別の場所から観察するわ。じゃあ!」
二宮さんは去っていった。本当に嵐みたいな人だ。
「私の事、嫌いじゃないんですね?」
当然追及された。何故か分からないが若干暗い顔をしている。
「そんなことはねえよ。ちゃんとお前の事は嫌いだ。二宮さんも20%は外すって言ってたろ?」
「付き合いたての部分は間違いなく当たっていたのに今の部分を外しますかね?前回と正反対の予測結果になった場合って入念に調べなおすと思うんですよ。研究者気質ですしね」
確かに前よりは嫌いではない。実際にこいつと関わる中で良いところを知っていくことが出来たしな。嫌いだった原因も何となく今では分かる。
「それでも、嫌いであるという事実は変わらない」
それでも俺がこいつを好きになることはあり得ない。
「そうですか」
残念そうな言葉とは裏腹に、加賀美は満面の笑顔だった。
普通暗い顔をするもんじゃないのか?
まあいいか。気にしてもしょうがない。
「正解です」
「何か言ったか?」
「いいえ、何も」
「今からデートがしたくなりました。二人を観察するのはやめてどこかに行きましょう」
加賀美が考えていることはよく分からなかったが、良くなった機嫌を悪くするのも嫌なので付き合ってやることにした。
帰宅後、悠理から鬼の量のメールと電話の履歴が残っていたのはまた別の話。
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