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第8話
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飯も食い終わったところで、デザートとしてスイカを食べる訳だが、スイカ割りで割ることに。
今回スイカを割るのは小野田さん。こういうのをやったことが無いらしく、自ら立候補していた。
目隠しをされ、スイカから離れたところに立たされた。
「右ですよ右」
「そこから30度左に向いて直進だ」
俺たちは別々に指示を出す。別に連携が取れているわけではないので各々が考えた道筋が混ざり合い小野田さんは変な方向へと進んでいく。
「そっちは行きすぎだから戻って!」
バーベキューのセットが置いてあるところに行こうとしたので慌てて引き留めようとした。
しかし迷わずに進み続けていた為間に合わず衝突寸前に
「大丈夫か?お前バーベキューセットにぶつかるところだったんだぞ」
悠理が飛び込み、身を挺して庇った。
「あ、ありがとう。悠理くんは大丈夫?」
小野田さんは状況を理解できてはいないが、助けられたということだけは理解しているようだった。
「問題ねえよ。俺は体が丈夫だからな。この程度じゃ傷一つつかねえよ」
傷はつかないが痛みは感じるだろうに。
「流石だね」
小野田さんは顔を赤らめながら言った。
実の所バーベキューセットは火も完全に消えているのでぶつかったところで大怪我するなんてことはなかったのだが。
それでもああいう助けられ方したらそんなことも忘れてしまうか。
「大好きな小野田さんが悠理に奪われてしまうかもね」
俺はそれを傍目に加賀美千佳にそう話しかけた。
「それは少し残念ですが、小野田さんが幸せならそれが良いですね。それに」
「黒須さんはとても良い方なのでしょう?」
「そうだな。それだけは保証できる」
「まあ小野田さんを奪われる以前にあなたに私が奪われているのですけどね」
「それは盲点だった」
なんかキザなことを言われてしまったがまあ良いだろう。
「逆に環から黒須さんが取られることは大丈夫なのですが?」
「はっ!確かに!」
「なんて別にどうもないよ。小野田さんは良い人だし」
あんたと違って悠理に依存していないんだよ。
それに小野田環であれば問題も起きなさそうだしね。
結婚するとか言い出さなければ。
こんなことがあったので加賀美千佳はスイカ割りを中止しようとしたが悠理が阻止した。
恐らくこれで中止になったら小野田さんが引け目を感じるからだろう。
それに元々大怪我に発展することでも無かったしな。単に体が勝手に動いただけだ。
一応ぶつかりそうなものを更に遠くに離し再開した。
その後のスイカ割りは大して見所があるわけでもなくあっさりと割れた。
強いて言うならば加賀美千佳が割ったやつは力が強すぎて粉々になって食べられなかったくらいか。
よくもまあ視界が塞がれている中全力で振れるものだ。流石小野田さんに対して全肯定なだけはある。
その後海で再度遊び、日が沈みだす頃に加賀美千佳の提案で2手に別れることになった。
当然俺と加賀美千佳、悠理と小野田さんの組み合わせだ。
いわく2人っきりの時間が欲しいとのこと。
「あの2人は仲良くなれますかね」
「2人っきりになりたいとか言ってたのに開口一番がそれですか」
「最初から分かっていたでしょう?」
「それはそうだけど」
こいつの目的は悠理達の中を縮めようというものだ。
じゃなきゃ俺が大人しく2人っきりになるわけないだろ。
「心配ではありますが尾行も出来ませんし、こちらはこちらで楽しみましょう」
尾行が出来るならしたいところだが、2人とも野生の勘が働くのかそういうことをすると絶対にバレる。
それに元々小野田さんは悠理に懐いていたし恐らく大丈夫だ。
「そうだね」
それよりも問題はこっちだ。
出来るだけ避けていた二人っきりの状況が生まれた。いやな奴と二人でいることほどしんどいものは無い。
しかもそう感じているのは俺だけだというのが余計にたちが悪い。
お互いに嫌な場合自然と離れるものだがそうはいかない。
それに向けられる好意を邪険に扱うのは俺が一番嫌なことだから丁寧に対応する。
まあ今回に関しては距離が縮まったあいつらを二人っきりにするように誘導してくれた例もあるしな。
俺だと口実が悠理にとっては不自然になるからな。
今回はそれに免じてってのもな。
そもそも俺はこいつが嫌いな理由を見つけないといけないんだから。
いつまでも逃げるわけにもいかない。
「私が好きな場所があるんです。そこに行きましょう」
今回スイカを割るのは小野田さん。こういうのをやったことが無いらしく、自ら立候補していた。
目隠しをされ、スイカから離れたところに立たされた。
「右ですよ右」
「そこから30度左に向いて直進だ」
俺たちは別々に指示を出す。別に連携が取れているわけではないので各々が考えた道筋が混ざり合い小野田さんは変な方向へと進んでいく。
「そっちは行きすぎだから戻って!」
バーベキューのセットが置いてあるところに行こうとしたので慌てて引き留めようとした。
しかし迷わずに進み続けていた為間に合わず衝突寸前に
「大丈夫か?お前バーベキューセットにぶつかるところだったんだぞ」
悠理が飛び込み、身を挺して庇った。
「あ、ありがとう。悠理くんは大丈夫?」
小野田さんは状況を理解できてはいないが、助けられたということだけは理解しているようだった。
「問題ねえよ。俺は体が丈夫だからな。この程度じゃ傷一つつかねえよ」
傷はつかないが痛みは感じるだろうに。
「流石だね」
小野田さんは顔を赤らめながら言った。
実の所バーベキューセットは火も完全に消えているのでぶつかったところで大怪我するなんてことはなかったのだが。
それでもああいう助けられ方したらそんなことも忘れてしまうか。
「大好きな小野田さんが悠理に奪われてしまうかもね」
俺はそれを傍目に加賀美千佳にそう話しかけた。
「それは少し残念ですが、小野田さんが幸せならそれが良いですね。それに」
「黒須さんはとても良い方なのでしょう?」
「そうだな。それだけは保証できる」
「まあ小野田さんを奪われる以前にあなたに私が奪われているのですけどね」
「それは盲点だった」
なんかキザなことを言われてしまったがまあ良いだろう。
「逆に環から黒須さんが取られることは大丈夫なのですが?」
「はっ!確かに!」
「なんて別にどうもないよ。小野田さんは良い人だし」
あんたと違って悠理に依存していないんだよ。
それに小野田環であれば問題も起きなさそうだしね。
結婚するとか言い出さなければ。
こんなことがあったので加賀美千佳はスイカ割りを中止しようとしたが悠理が阻止した。
恐らくこれで中止になったら小野田さんが引け目を感じるからだろう。
それに元々大怪我に発展することでも無かったしな。単に体が勝手に動いただけだ。
一応ぶつかりそうなものを更に遠くに離し再開した。
その後のスイカ割りは大して見所があるわけでもなくあっさりと割れた。
強いて言うならば加賀美千佳が割ったやつは力が強すぎて粉々になって食べられなかったくらいか。
よくもまあ視界が塞がれている中全力で振れるものだ。流石小野田さんに対して全肯定なだけはある。
その後海で再度遊び、日が沈みだす頃に加賀美千佳の提案で2手に別れることになった。
当然俺と加賀美千佳、悠理と小野田さんの組み合わせだ。
いわく2人っきりの時間が欲しいとのこと。
「あの2人は仲良くなれますかね」
「2人っきりになりたいとか言ってたのに開口一番がそれですか」
「最初から分かっていたでしょう?」
「それはそうだけど」
こいつの目的は悠理達の中を縮めようというものだ。
じゃなきゃ俺が大人しく2人っきりになるわけないだろ。
「心配ではありますが尾行も出来ませんし、こちらはこちらで楽しみましょう」
尾行が出来るならしたいところだが、2人とも野生の勘が働くのかそういうことをすると絶対にバレる。
それに元々小野田さんは悠理に懐いていたし恐らく大丈夫だ。
「そうだね」
それよりも問題はこっちだ。
出来るだけ避けていた二人っきりの状況が生まれた。いやな奴と二人でいることほどしんどいものは無い。
しかもそう感じているのは俺だけだというのが余計にたちが悪い。
お互いに嫌な場合自然と離れるものだがそうはいかない。
それに向けられる好意を邪険に扱うのは俺が一番嫌なことだから丁寧に対応する。
まあ今回に関しては距離が縮まったあいつらを二人っきりにするように誘導してくれた例もあるしな。
俺だと口実が悠理にとっては不自然になるからな。
今回はそれに免じてってのもな。
そもそも俺はこいつが嫌いな理由を見つけないといけないんだから。
いつまでも逃げるわけにもいかない。
「私が好きな場所があるんです。そこに行きましょう」
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