2 / 37
第2話
しおりを挟む
そしてその放課後。
俺と加賀美千佳はカップルらしく一緒に帰ることもなく、いつも通り悠理と帰る。
校門の時点でお別れなのだ。あまりに方向が違いすぎた。
「晴さんよお。本当に良かったのか?」
「良かったとは?」
「加賀美千佳と付き合ったことだよ」
「別に問題ないだろ。勉学どころか運動すら優秀。性格も理想的で非の打ち所がないと評判の人だぞ?寧ろ俺には勿体無いくらいだ」
「強いて言うならファンクラブからの攻撃が怖いってところか?」
「お前も結構な人気者なんだからそんな心配する必要はねえだろ⋯⋯」
「そんなことはどうでも良いんだ。お前アイツのこと大嫌いなんだろ?」
「バレたか」
「バレたか。じゃねえよ。結構俺に言ってるだろ」
「まあな」
「なら告白断れば良かったじゃねえか」
「それは俺の信条に反する。告白されたら彼女がいないのならokするんだ」
「そんな信条ねえだろ」
「現に彼女今までに20人くらいいたんだが」
「それはお前が人が好きすぎるだけだろ」
「現に大好きだがな。まあ特別な人は流石にいるが」
「度が過ぎた博愛主義者だから今までのカップルは成り立ってたが、嫌いな人間は違う筈だろ?」
「確かに嫌いな奴だったらいやだな」
「じゃあ何故okしたんだ?どうせお前から告白したわけじゃねえだろ?」
「不可解だったからだよ」
「どういう意味だ?」
「基本的に俺は好きな奴らの敵となる人間以外は嫌う事は無いんだよ」
「確かにお前が意味もなく他人を嫌うことはなかったな」
「なのに俺はアイツのことが嫌いで嫌いで仕方がない。全てが気に入らないんだ」
「外敵ではないし寧ろ味方なはずなのに」
「そういう感情を抱いたのは生まれて初めてなんだ」
「だから付き合うんだ。アイツと共に居ることでその理由を解明するんだ」
「意味不明な理由だな」
「俺も分かってる。ただ俺を理解するために必要だと思ったんだ」
「そのためにアイツを利用するのか。人の好意を弄ぶなんて人が悪いな」
「まあお前以外から見ると聖人らしいけどな」
「それは見る目がねえな」
「酷え言い草だな。まあ事実そうだけどな」
「まあ、意味もなく人を嫌いたくないとかいう心の在り方は聖人ではあるがな。その結果起こす行動は邪悪だが」
「なんか言ったか?」
「何でもねえよ。耳に変なもんでも詰まってんじゃねえか?」
「そういうことにしといてやるよ」
そして土曜日、俺と悠理は小野田環に指定された住所までたどり着いた。
そこにはあり得ないレベルの豪邸が二つ並んでいた。ヤクザが住んでいそうな和風の家と姫でも住んでそうな洋風のお城のような家だ。
「なんだこれは」
「紛れもない豪邸だな。こんな通りがあるなんて知らなかった」
「あのじゃじゃ馬はマジもんのお嬢様だったみてえだな」
俺たちは前もって言われていた通り加賀美千佳の到着を待つことにした。
待つこと数分。
加賀美千佳は洋風の豪邸から出てきた。あの豪邸の主は加賀美家だった。
「晴さん、黒須さん、こんにちは」
「おはよう、千佳さん。今日も綺麗だね」
「ありがとうございます」
こいつ綺麗だって言われ慣れてんな。なんだこいつ。
「では環の家に向かいましょう」
そう言って加賀美千佳はお隣の豪邸のチャイムを鳴らす。本当に小野田さんはお嬢様だったようだ。
「お待たせ千佳ちゃん。それにみんなも」
出てきたのは小野田環ではなかった。
「環さんのお姉さんですか?」
「そうだよ。私は小野田巴。環の姉です!」
「はいはい巴ちゃん。案内してもらえる?」
「はーい」
連れられるがまま玄関を入ると目の前には巨大な壺が鎮座していた。そしてその横はガラスが貼ってあり風流な庭が見える。
「すげえなここ」
悠理が俺にだけ聞こえるように小声で言ってきた。
「マジで住む世界が違うって感じだな」
廊下を歩いていると見たこともない絵やら書やら壺やらが並んでおり、金持ちであることをありありと見せつけられた気分だ。
そして小野田環さんのいる部屋に到着した。
「思ってたよりも普通の部屋だな」
中は和風建築らしく畳が敷かれているだけの普通の女の子の部屋という感じだった。馬鹿みたいに広いということもなく、一般的な家庭サイズの部屋だった。
「入ってきて初めて口にする言葉がそれなの!?」
「今までのインパクトがでかすぎたんだよ」
「確かにこのレベルの家は中々見ませんもんね」
「あんたが言うな」
悠理の言うとおりだ。自分の豪邸を棚に上げておいて良く言うよ。なんだあのお城は。まだこっちの方が現実味あるわ。いやこっちにも無いけども。
「そんなことよりも」
「勉強を始めませんか?」
「そうだね。早いうちにぱっぱとやろう」
一人文句を言う人がいたが無事に勉強会が始まることになった。
せっかく四人いるということで各々の得意教科を教えあうことに。
俺と加賀美千佳はカップルらしく一緒に帰ることもなく、いつも通り悠理と帰る。
校門の時点でお別れなのだ。あまりに方向が違いすぎた。
「晴さんよお。本当に良かったのか?」
「良かったとは?」
「加賀美千佳と付き合ったことだよ」
「別に問題ないだろ。勉学どころか運動すら優秀。性格も理想的で非の打ち所がないと評判の人だぞ?寧ろ俺には勿体無いくらいだ」
「強いて言うならファンクラブからの攻撃が怖いってところか?」
「お前も結構な人気者なんだからそんな心配する必要はねえだろ⋯⋯」
「そんなことはどうでも良いんだ。お前アイツのこと大嫌いなんだろ?」
「バレたか」
「バレたか。じゃねえよ。結構俺に言ってるだろ」
「まあな」
「なら告白断れば良かったじゃねえか」
「それは俺の信条に反する。告白されたら彼女がいないのならokするんだ」
「そんな信条ねえだろ」
「現に彼女今までに20人くらいいたんだが」
「それはお前が人が好きすぎるだけだろ」
「現に大好きだがな。まあ特別な人は流石にいるが」
「度が過ぎた博愛主義者だから今までのカップルは成り立ってたが、嫌いな人間は違う筈だろ?」
「確かに嫌いな奴だったらいやだな」
「じゃあ何故okしたんだ?どうせお前から告白したわけじゃねえだろ?」
「不可解だったからだよ」
「どういう意味だ?」
「基本的に俺は好きな奴らの敵となる人間以外は嫌う事は無いんだよ」
「確かにお前が意味もなく他人を嫌うことはなかったな」
「なのに俺はアイツのことが嫌いで嫌いで仕方がない。全てが気に入らないんだ」
「外敵ではないし寧ろ味方なはずなのに」
「そういう感情を抱いたのは生まれて初めてなんだ」
「だから付き合うんだ。アイツと共に居ることでその理由を解明するんだ」
「意味不明な理由だな」
「俺も分かってる。ただ俺を理解するために必要だと思ったんだ」
「そのためにアイツを利用するのか。人の好意を弄ぶなんて人が悪いな」
「まあお前以外から見ると聖人らしいけどな」
「それは見る目がねえな」
「酷え言い草だな。まあ事実そうだけどな」
「まあ、意味もなく人を嫌いたくないとかいう心の在り方は聖人ではあるがな。その結果起こす行動は邪悪だが」
「なんか言ったか?」
「何でもねえよ。耳に変なもんでも詰まってんじゃねえか?」
「そういうことにしといてやるよ」
そして土曜日、俺と悠理は小野田環に指定された住所までたどり着いた。
そこにはあり得ないレベルの豪邸が二つ並んでいた。ヤクザが住んでいそうな和風の家と姫でも住んでそうな洋風のお城のような家だ。
「なんだこれは」
「紛れもない豪邸だな。こんな通りがあるなんて知らなかった」
「あのじゃじゃ馬はマジもんのお嬢様だったみてえだな」
俺たちは前もって言われていた通り加賀美千佳の到着を待つことにした。
待つこと数分。
加賀美千佳は洋風の豪邸から出てきた。あの豪邸の主は加賀美家だった。
「晴さん、黒須さん、こんにちは」
「おはよう、千佳さん。今日も綺麗だね」
「ありがとうございます」
こいつ綺麗だって言われ慣れてんな。なんだこいつ。
「では環の家に向かいましょう」
そう言って加賀美千佳はお隣の豪邸のチャイムを鳴らす。本当に小野田さんはお嬢様だったようだ。
「お待たせ千佳ちゃん。それにみんなも」
出てきたのは小野田環ではなかった。
「環さんのお姉さんですか?」
「そうだよ。私は小野田巴。環の姉です!」
「はいはい巴ちゃん。案内してもらえる?」
「はーい」
連れられるがまま玄関を入ると目の前には巨大な壺が鎮座していた。そしてその横はガラスが貼ってあり風流な庭が見える。
「すげえなここ」
悠理が俺にだけ聞こえるように小声で言ってきた。
「マジで住む世界が違うって感じだな」
廊下を歩いていると見たこともない絵やら書やら壺やらが並んでおり、金持ちであることをありありと見せつけられた気分だ。
そして小野田環さんのいる部屋に到着した。
「思ってたよりも普通の部屋だな」
中は和風建築らしく畳が敷かれているだけの普通の女の子の部屋という感じだった。馬鹿みたいに広いということもなく、一般的な家庭サイズの部屋だった。
「入ってきて初めて口にする言葉がそれなの!?」
「今までのインパクトがでかすぎたんだよ」
「確かにこのレベルの家は中々見ませんもんね」
「あんたが言うな」
悠理の言うとおりだ。自分の豪邸を棚に上げておいて良く言うよ。なんだあのお城は。まだこっちの方が現実味あるわ。いやこっちにも無いけども。
「そんなことよりも」
「勉強を始めませんか?」
「そうだね。早いうちにぱっぱとやろう」
一人文句を言う人がいたが無事に勉強会が始まることになった。
せっかく四人いるということで各々の得意教科を教えあうことに。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
管理人さんといっしょ。
桜庭かなめ
恋愛
桐生由弦は高校進学のために、学校近くのアパート「あけぼの荘」に引っ越すことに。
しかし、あけぼの荘に向かう途中、由弦と同じく進学のために引っ越す姫宮風花と二重契約になっており、既に引っ越しの作業が始まっているという連絡が来る。
風花に部屋を譲ったが、あけぼの荘に空き部屋はなく、由弦の希望する物件が近くには一切ないので、新しい住まいがなかなか見つからない。そんなとき、
「責任を取らせてください! 私と一緒に暮らしましょう」
高校2年生の管理人・白鳥美優からのそんな提案を受け、由弦と彼女と一緒に同居すると決める。こうして由弦は1学年上の女子高生との共同生活が始まった。
ご飯を食べるときも、寝るときも、家では美少女な管理人さんといつもいっしょ。優しくて温かい同居&学園ラブコメディ!
※特別編10が完結しました!(2024.6.21)
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ!
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
ニルラル公爵の令嬢カチュアは、僅か3才の時に大魔境に捨てられた。ニルラル公爵を誑かした悪女、ビエンナの仕業だった。普通なら獣に喰われて死にはずなのだが、カチュアは大陸一の強国ミルバル皇国の次期聖女で、聖獣に護られ生きていた。一方の皇国では、次期聖女を見つけることができず、当代の聖女も役目の負担で病み衰え、次期聖女発見に皇国の存亡がかかっていた。
そう言うと思ってた
mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。
※いつものように視点がバラバラします。
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる