ヤンデレ彼女は蘇生持ち

僧侶A

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最終話

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 委員長はいつも通りの明るく、乃絵にそう言った。鶫の様子を見て、場を上手く収めようとしてくれたのだろう。

「といっても何をすれば……お金では返しきれない事件ですし」

「めちゃくちゃ簡単な話だよ。翔君と付き合って」

 委員長は、そんな結論を出した。

「はい?」

 委員長らしい結論ではあるが、ここまでの規模の事件の罪滅ぼしでその条件が来るとは思っていなかったらしい。

「良いよね?」

 二人に対して笑顔で圧をかける委員長。

「は、はい」

 乃絵にとっては悪い条件ではないため、あっさりと受け入れた。

 翔も断る雰囲気は無かった。

「なら良し」

 委員長は二人には気取らせないようにしていたが、若干にやついていた。

「それで罰になっているの?」

 それを聞いていた鶫は、当然納得できないとお怒りだ。

「椿ちゃん、二人の結婚式の費用を出してあげて。後、在学中に二人で住むための家も」

「え」

 俺たちは結婚することが決定してしまった。

「それくらいなら問題ないですが、年齢は大丈夫なのですか?」

 結婚は女性の方は16歳からだから問題は無いが、男は18歳以上という制限がある。そのため、高校2年生の俺が結婚することは現状不可能だ。

「大丈夫!誕生日早いでしょ?」

「早いけどあと8カ月くらいあるよ」

 いくら3年生になってすぐに18になるといっても今は8月だ。4月生まれでもかなり気が早すぎる。

「それでも結婚式を挙げるのは結婚ではないから大丈夫大丈夫!ドラマとかでも実際にはしない人との結婚式のシーンとかあるし」

 確かに、式自体はいつ開いても問題ない?

「それなら満足。謝罪を受け入れます」

 まあ鶫が嬉しそうだし、細かいことは良いか。問題だったとしても乃絵がお金の力で解決してくれるだろうし。

「それに瀬名が居るから引っ越しは厳しい」

 両親は今家に居ない。そんな中妹を置いて出て行くのは色々と問題がある。鏡花の家に預けるという手もあるが、それはあまりにも無責任だ。

「それなら涼真様の実家のお隣に家を建てますね」

 そうあっさりと結論付けた。確かに隣は空き地だけど……

「それなら完璧だね!良いよね、涼真君!」

 まあどこか家と離れた所に移り住むよりは真っ当な選択肢か。

「じゃあこれで事件は解決!あとは事後処理をしましょう」

「とりあえず俺と翔の記憶を正した後、SPとして連れてきた人達にこれまでの記憶を無かったことにしてあげて」

 本来ならば全員にそれぞれ謝罪をするべきなのだろうが、数が多くいくら乃絵でもキャパシティの限界があるし、そもそも今回の事件の説明のしようがない。何も知らない人に記憶を操作して操っていましたなんて話をしても絶対信じるわけが無いんだよな。それに犯罪に近いため正直に話すと逮捕されかねない。

「多分それが一番無難かな」

「はい」

 翔が最初に同意し、他も否定する気は無さそうだったので、この提案で進めることになった。


 今回の事件は何かのくじに当たった結果、大きめなパーティに招待されてここにやってきたという筋書きになった。

 一応信ぴょう性を持たせるために椿家の財力を用いてそこそこの規模のパーティを行い、満足して帰っていただいた。

 椿さんによって俺と翔に植え付けられていた記憶は無事に取り除かれたようで、俺たちはもうどんな記憶だったのかを一切思い出すことは出来ない。

 そんな感じでこの事件は幕を迎えた。

「新郎涼真、あなたは鶫を妻とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

 俺たちはあの事件から4カ月ほど経った12月26日、クリスマスの翌日に結婚式を挙げることになった。

「はい、誓います」

「私も誓います」

 とは言っても両親や親戚にちゃんと話したわけではなく、参列者はクラスメイトの方々と瀬名と鏡花のみだ。

 それでも結婚式は結婚式であり、正式な手続きを踏んで進んでいく。

「それでは指輪の交換を」

 あの事件の後、急いで金を貯めた俺は、結婚式の直前で指輪を渡していた。

 高校生が用意した物なので大したものではないが、高校生なりに精一杯の者を出したつもりだ。

 その指輪を俺たちはお互いの左手の薬指に入れる。

「それでは誓いのキスを」

 鶫は顔にかかっていたベールを丁寧に上げる。

 そこにはいつもの鶫とは違う、少し大人な鶫がいた。プロの方に化粧をしてもらったのだろう。純白に染まったウエディングドレスと相まって、鶫の魅力である清楚さ、純真さを一層引き立たせていた。

「よろしくね、鶫」

「うん、涼真君」

 俺たちは、夫婦として初めてキスをした。

 正直緊張のあまり感想なんて一切出てこないが、幸せであったことだけは確実だ。

 本来ならばここから結婚証明書を書くらしいが、まだその年齢に至っていないので省略しその式は終了した。

 その後、2次会としてパーティが始まった。

 当然ながらクラスメイトには散々弄られたが、鶫のあまりの幸せそうな顔に癒されていたので大したダメージを負うことは無かった。

 それにクラスメイトも鶫に癒されていたのであまりキレが無かった。

 そのご数時間バカ騒ぎをした後、そのまま解散となった。

 その帰り道、

「いやあ寂しくなるね。お兄ちゃんが家を出ちゃうのか~」

「もうあんまり会えなくなるね」

 帰り道が近いので、瀬名、鏡花、鶫と4人でタクシーに乗って帰ることになったのだが、

「しんみりした風を出すな。俺がどこに行くってんだよ。家の真横じゃねえか」

 二人は結婚式の間ずっと大人していた反動か、散々俺で遊んでやがる。

「といっても、ねえ」

「ねえ」

 瀬名と鏡花が顔を見合わせて、何か言いたげだった。

「別に来たいならいつでも来ればいいだろ。鶫、良いよね?」

「勿論。涼真君の妹と瀬名ちゃんの幼馴染なんだから。拒む理由なんて一つも無いよ」

「やった」

「やったー!」

 二人は上手くいったとハイタッチをした。

 どうやら、この二人はそれが目的だったらしい。

「あの家二人で住むにしてはかなり広いもんなあ……」

 椿さんが建ててくれたあの家だが、一軒家にありがちな2階建てではない。

 驚異の3階建て+地下付きだ。

 確かにあの土地は狭かった。しかし、二人で暮らすには2階建てで十分な広さなんだ。

 しかし椿さんにその事を話すとその位の広さは必要ですよね?とさも当然のように言ってのけたから金持ちってものは恐ろしい。

 そんな家だからこそ、二人はここまで来たがるのだと思う。

 正直俺も誰かがそんな家建てたって聞いたら真っ先に行かせろと要求すると思う。

「でも今日は駄目だからね。引っ越して初めての日なんだから」

「勿論」

「それは分かってる」

 そんな会話をしているうちに家に辿り着いた。

「じゃあね、お兄ちゃん!鶫さん!」

「それじゃあまた、涼真、鶫さん」

「またね」

「またな」

 俺たちは別れの挨拶をして、それぞれの家へと帰宅した。

「それじゃあ入ろうか」

「そうだね」

 結婚式の際に椿さんから渡された鍵を使って家へと入る。

「「ただいま」」

 俺たちはこれから、新婚生活が始まる。
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