ヤンデレ彼女は蘇生持ち

僧侶A

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7話

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 そのまま帰宅して、

「ただいま」

「お帰り、お兄ちゃん。唐突に人の家に泊まるなんて酷いよ。ご飯とかめんどくさかったんだからね!」

 仕方ないとはいえ、家事も何もかも瀬名に丸投げしていたのは事実。

「ごめん、今週は俺が代わりにやるから」

「やったー!今度からも泊まるんだったらちゃんと言ってね?」

 何とも現金な妹だ。

 そのまま瀬名はリビングでダラダラしていた。

 俺は洗濯物を畳みながら、先ほどの話について聞いてみることにした。

「人を生き返らせるって可能だと思う?」

「どういうこと?医療でってこと?流石に現代の技術じゃあ無理に決まってるよ」

「じゃあ、魔法みたいなものがあるって言ったら信じる?」

「完全に無いとは言い切れないけど、流石に信じないよ。急にどうかしたの?」

「いや、今日そういう話になったから聞いてみただけ」

「変なの」

 やっぱり、鶫や委員長のようなものは基本的に世に知られていないんだろうな。

 というより今まで知らなかったってことはそういうことなんだろうな。

 でも、意外に身近な人間がそうってことは他にもそういう人が居たりするのかもしれないな。

 そう考えると夢が広がるな。俺は広がらないけど。

 そして翌日。

「今日から転校生がこのクラスに入ってくることになった。自己紹介よろしく」

「椿乃絵です。綺羅女学院から来ました。これから仲良くしてください」

 可憐な笑顔を振りまきながらそう挨拶をした。

 ちょろいで有名なクラスの男子はともかくとして、女子の方々にも好評のようだった。

 人形のような整った顔をしてはいるが、近づきがたいという印象は無く、どちらかと言うと積極的に関わりに行って頭を撫でたいという欲に駆られる姿をしている。

 それに自然に生み出された可愛らしい声が相まって、女子の方々にもウケたのだろう。

 というわけでホームルームが終了した瞬間に人だかりが出来た。

「どうしてウチに来たの?」

「部活は何に入る?」

「趣味は?」

「付き合ってください!」

 何か告白した奴がいたぞ。

 あ、どこかに連行されていった。

「私、とある方に会うためにやってまいりましたの」

「「とある方って?」」

 皆の中に緊張感が走る。

「それは、紺野涼真さまですわ」

「「「はああああああああ!」」」

 えええええええ?

 突然遠くから様子を眺めていただけの俺に飛び火する。

 ちょっと待ってくれ鶫様。俺は何もしていない。そして俺はこの子の事を知らない。だからその手に持っている危険そうな何かをしまっておくれ。

「えっと、前にあったことはあったっけ?」

「忘れてしまったのですか?あの素晴らしく楽しかった日々を」

 まるで心当たりがない。こんなかわいい女の子と一緒に居た記憶がない。

「あの櫻田さんだけでなく椿さんまでも毒牙にかけるというのか……」

「死んでしまえばいいのに」

「こんな女の子がいたのに鶫さんに手をかけたなんて、とんだ浮気野郎ね」

「しかもこんな女の子を覚えていないだなんて、きっと色んな人に手をかけては捨てているのよ」

 一切知らない過去の日々によって俺の株がどんどんと下がっていく。

 違うんだ。本当に知らないんだ。誓って。

「えっと、本当に記憶に無いんだけど」

「それなら、私が思い出させてあげますわ」

 そう言って私の腕をがっしりとホールドする椿さん。

 あ、柔らかい。じゃなくて、そろそろ鶫様に殺されるから離してください。

「この涼真君は私のものなんだけど」

 遂に我慢できなかったのだろう鶫が手を出してきた。

「あら、彼女さんですか?」

「勿論。あなたとは違ってちゃんとした手続きを経てから付き合ったのよ」

「私は付き合っているとは言っていませんが」

「綺羅女学院では付き合ってもいない男性の腕を抱きしめても良いと教わったんですね。なんて破廉恥な学校なのでしょう。お嬢様学校と聞いていましたがそんなことは無かったようですね」

 椿さんと鶫による対決が早々に勃発してしまっていた。どうしてこうなった。

「はい、そこまで。椿さん、いい加減にしようか」

「はい」

「櫻田さんも」

 突然止めに入ったのは意外にも翔だった。

 絶対にいつもならこんな修羅場を目にしたら後ろで大爆笑しながら見ているのに。

「止めてくれたのはありがとう。ただ、どうして止めたんだ?」

「別に、お前の身が危なそうだったから」

「お前、俺の心配なんてするような奴だったっけ?寧ろ俺が引き裂かれてるの見て大爆笑するような奴だろ?」

 翔は少し嫌な顔をして、何も答えずに戻っていった。

 もしかするとこの人と何かあったりするのか?

 ただとりあえず現在の問題をどうにかしないと。

 そう思い二人の方を見ると、椿さんは再度人だかりに吸収されていた。

 ちらちらとこちらを見ているが俺の方にもう一度来ることはしばらく出来ないようだ。

 一旦危険は去った。

 ひとまず俺は鶫の機嫌を取るだけでよさそうだ。

「で、椿さんとはどういう関係なの?」

「本当に何も分からないんだ。一切記憶に無い」

「なら何であの女は涼真君に近づいたんだろうね」

 既にあの女呼び……

「記憶にはないけれど、どこかではっきりさせないといけないかな」

 正直これ以上進むと鶫にもう一回殺されてしまいそうだが、俺の心の平穏の為にも取り組むしかないだろう。

 そして昼休み。

「私、この学校の事がよく分からないんです。よろしければ私に教えてはいただけないですか?」

 真っ先に椿さんは俺の方に来て、そう頼んできた。

「委員長の方が適任じゃないかな」

「委員長に私も頼もうとしたんですけど、昔からの知り合いに案内してもらった方が気が楽なんじゃないかって」

 俺は委員長の方を見る。

 しかし知らんふりをしていた。こっちは俺に完全に丸投げして面白がってやがる。

 今度は鶫を探す、すると背後に無言で立っていた。怖い。

「だめ、ですか?」

 上目遣いでそう頼まれると断りがたい……

 でも、鶫が……

「別に案内位してやってもいいんじゃないか?別にそれくらいで何か起こるわけではないし。それに、案内をした程度で崩れる関係じゃないよね?櫻田さん」

 唐突に翔がこちらに来てそう言ってきた。

「それは勿論そうだけど……」

「ならここにいる馬鹿を信じてあげなよ」

「そうだね」

 翔が鶫を諫めたことにより無事にこの命を守りきることが出来た。

「こ、ここが図書室だよ。教室からは離れていて少し来るのが面倒だけど普通の高校よりは蔵書がしっかりしているらしいよ」

 俺は結果的に椿さんの道案内を担当することになった。

 右に満面の笑みの椿さん、左に不機嫌な鶫という形で。

「あの、鶫さん?そんなに不機嫌だとすごく辛いのですが」

「私?全然気にしていないよ」

 目が笑っていない。初めて鶫に殺された時と同じくらいの圧を感じる。

「まあまあ。本人がそう言っているのですから、そのまま続きをお願いします」

「そ、そうだね」

 このまま鶫の相手をしているとまた死にかねない気がしたので椿さんの言う通り、あえてスルーすることにした。

 さっさと済ませて教室に戻ってしまおう。

 結局鶫の圧は無くなることは無かったものの、椿さんと俺は無事に生存ルートを選択して教室に戻ることが出来た。
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