ヤンデレ彼女は蘇生持ち

僧侶A

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1話

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 春も過ぎ、そろそろ梅雨に入ろうかという時期に俺にとって人生最大のイベントが発生していた。

「好きです。付き合ってください!」

 俺は目の前にいる女の子に対し、緊張しつつもちゃんと言い切った。

 そして数秒程の沈黙が訪れる。どう返事をするべきか考えているのだろう。俺にはその時間が永遠にも見えた。

 そして俺の心臓が破裂寸前になって、

「はい。私も前からあなたの事が好きでした」

 OKが貰えた。俺、紺野涼真はこうしてリア充の仲間入りとなったわけである。

「ってわけだ」

 俺はその顛末を目の前にいる優男、久世翔に話す。

「ついに涼真にも彼女ができたんだね」

 生暖かいものを見る目で俺を見てきた。

「モテ男に言われると嫌味にしか聞こえない」

「いや、まあ彼女が出来ない理由は大体察してたから別に嫌味とかじゃないって」

「おい。出来ない理由知ってたんならさっさと教えろよ」

 だったらもう少し早くに櫻田鶫と付き合えてたじゃねえか。

「いや、ね。涼真が櫻田さんの事が好きなのバレバレだったから」

 衝撃の事実が伝えられる。俺はポーカーフェイスが得意だから絶対そんなことは無いんだが。

「ね、委員長?」

 翔が偶然近くにいた委員長こと日野翼に話しかける。

「確かに分かりやすかったねえ。まあ本人には届いてなかったっぽいけど。あれじゃあ女の子も身を引いちゃうよ」

 いつも一緒にいる翔はともかく委員長まで……

「委員長まで…… ポーカーフェイスの自信あったのに……」

 自信を失ってしまった。

「軽い遊びとかだったらそうでもないけど、基本的に顔に出てるね」

 委員長が追撃をかける。俺はもう立ち直れないのかもしれない。

「目の前に丁度いい高さの窓があるから空を飛べるか試してくるわ」

「ちょっとまってちょっとまって!彼女はどうしたの!」

 流石に慌てた委員長が必死に止める。

 危ない危ない。せっかく彼女が出来たというのにその尊い命を犠牲にするところだった。

「おはよう。涼真君」

 そんな自殺未遂が起きている最中、俺の最上の彼女、櫻田鶫様が登場した。あふれ出んばかりの好きオーラを抑え、あくまで冷静に、

「おはよう。鶫」

 これは完璧。非の打ちどころのない10000点の挨拶だ。

「「おはよう」」

 先程まで話していた二人も挨拶をした。

「いやあ二人が付き合っているのって本当だったんだね」

 信じてなかったのかよ委員長さん。

「昨日から、だけどね」

 そんな可愛らしい彼女に対し、肩を組みながら、

「ついに涼真くんと付き合えたんだね。おめでとう」

 そう祝っていた。お前あっちの味方か。

「それじゃあ授業始まるから」

 鶫さんはそう言い残し、委員長と共に自分の席の方へ行った。

「隠してる風だったけど普通に顔から好きオーラが溢れかえってたぞ」

「死んでくるわ」

 俺は今日二度目の自殺を決意した。

 長い長い授業を乗り越え、昼休みとなった。

 俺は颯爽と鶫さんを誘い、屋上で飯を食べることになった。のだが、

「なんでお前らもいるんだよ」

「「面白そうだったから」」

 二人、もとい委員長と翔が笑顔でそう答えた。

「俺たちは仲良く見てるだけだからお二人はごゆっくり」

「出来るかボケ」

 スススと後ろへ下がる二人。お前ら性格悪いな……

「まあまあ、人が多いとその分楽しいから。ね?」

「鶫が言うなら……」

 可愛く二人を擁護する鶫様。いや可愛い。君が言うなら何でも許せちゃう!

「やっぱり分かりやすいね」

 そう言いながら笑うのは翔。

「うっせえ!」

 そんな会話をしていると、鶫さんが

「とりあえずご飯食べない?私涼真くんの弁当作ってきたんだ」

 現れたのは金色に輝く美味そうな弁当。

「神……?」

 これには思わず言葉が出てしまった。

「食べてくれる?」

「もちろん」

 俺は持ってきていたパンを隠し、翔に押し付けつつそう答えた。

「「「「いただきます」」」」

 さて、そのお味はとお弁当に手を付けようとすると、

「はい、あーん」

 最高の笑顔を向けながらあーんしてくれる鶫様。ああ好き。

 俺は喜びを噛みしめつつその卵焼きを口に入れた。当然美味しい。完璧か?

 俺をいじろうという邪悪な精神をもっていた二人もこれにはニッコリ。

「眼福だと思いますがそこの所どうでしょうか翔さん」

「はい。可愛い女の子×恥じらい×手作り弁当のあーんは環境トップだと思われます。ただ、涼真選手のあのだらしない顔はマイナス点だと考えております。翼さん」

「そうですね。この素晴らしい映像から後加工で涼真選手を削除した動画を作成しようと思います」

「最高ですね。それはおいくらで販売されるのでしょうか?」

「メーカー希望小売価格は3000円からを予定しております」

「翼先輩。最高です。予約させていただきたいと思います」

 俺が喜びに打ち震えている中、そんな会話というか実況が繰り広げられていた。

「お前ら何やってんだよ。というかなんだそのマイクと実況台」

「はっ!つい心の中の実況者が現実世界に……」

 翔お前何やってんだよ…… そもそも心の中の実況者ってなんだよ。

「でも面白いね」

 まあ鶫さんが笑っているならそれでいいか。

 その後は普通に4人で仲良く飯を食べた。

 翔がいつもより昼飯の量が多かったということで吐きそうになっていたのはまた別のお話。

 そして放課後。いつも通り部活動を終え、帰宅することとなった。

 しかしいつもと違うことが。

「お待たせ」

「じゃあ帰ろうか」

 そう。一緒に帰る奴が翔ではなく鶫様だということ。

 それだけで下校が華々しいものになるというものだ。

 ちなみにあいつは同じ部活の奴と共に帰るとのこと。

「鶫って休日って何してるの?」

「動画見たりとか、ぬいぐるみ作ったりとかかな」

「ぬいぐるみか。凄いね。どういうのを作ってるの?」

「えっと、動物とか好きな生き物とかかな」

 かわいいかよ。これは国宝認定されていても可笑しくない。というか俺が成し遂げてみせる。

「逆に涼真くんは休みの日ってどうしてるの?」

「外で妹と運動したり、家で漫画読んだりしてるかな」

「涼真くんって妹さんいるの?」

 目をキラキラさせて食いついてきた。

「1人だけね。2個下で今は中学三年生だよ」

「へー。会ってみたいな」

「じゃあ今度の土曜日とか一緒に遊ぶ?ちょっとハードかもしれないけど」

「体力には自信あるから。任せて」

 鶫さんって体力あるんだ。文芸部だからそういったイメージは無かったから意外。

 そんな他愛のない話をする人生で一番幸せな時間を過ごしていると、いつの間にか駅に着いていた。俺たちは帰る方向が逆なのでここで残念ながらお別れだった。

「じゃあまた明日ね」

「うん。またね」



 紺野涼真と櫻田鶫のあまあまなカップルの帰宅中、背後からそれを覗く者たちがいた。

 そう。久世翔率いるクラス男子連合(一部)と、日野翼(率いる)クラス女子連合だった。

「翼さんたちもやっぱり来たんだ」

「「「勿論」」」

 当然といわんばかりに笑顔を見せる女子の方々。鶫の可愛い姿が見れると集まったとのこと。

 ちなみに男子は涼真の醜態をカメラに収めたい、という口実で集まっているが、大半は鶫ちゃんの可愛いところを合法的に見れるからという理由だ。

 女子にも実際バレバレだったが女子は鶫ちゃんの世界的可愛さを理解しているので何も言わなかった。

「じゃあ帰ろうかって…… キザっぽく振る舞ってやんの……」

 男子軍団の一人、野球部の郷田辰巳が涼真の発言に対し笑い死にしていた。

 一方で女子軍団の一人は

「お待たせって…… いじらしすぎでしょほんと可愛い」

 と悶え死んでいた。ついでに男子生徒が数人。

「学校を出てすらいないのにこの破壊力……」

 流石鶫と涼真である。

 学校を出た二人を追いかける団体様二つは、即興とは思えないほどのコンビネーションで上手にストーキングを続けていた。

 しかしその中で、鶫が涼真と手を繋ごうと頑張っている姿や、それに気付いた涼真の反応に様々な形で続々と脱落者が出ていた。
「私はもうだめ。私の代わりにみんなが見届けて」

 尊さに耐えきれず脱落する女子。

「お前らの意思は受け継いだぞ!行くぞ皆!うっ」

 男子も奮起するものの鶫の魅力には勝てないようだった。

 残るのは面白い涼真を見に来た久世翔、仲がよく一緒に過ごすので鶫耐性がかなり高い日野翼。そして実は翔が好きなテニス部田中香澄。実は翼派な小野明の4名だけが残っていた。

 この人数ともなると別チームで行動する理由も無くなり、4人は纏まって移動していた。

「雑談の内容が無難すぎて面白い」

 隠れつつも涼真のチョイスに笑い転げている翔。

「いやあ青春してるなあ」

 委員長は委員長で平静を保ってはいるが鶫の新たな一面が見れてにっこにこである。

 そして残る二人はというと、

 カップルを見守っている二人の幸せそうな姿を間近で見れて仲良くガッツポーズをしていた。

「駅の中に入っていくよ」

 そんなことは一切知らない二人が駅の中にすっと入っていくのを見届けた4人は、これ以上はリスキーだということで解散する運びとなった。
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