86 / 87
86話
しおりを挟む
「なあウヅキレナ」
「なんだイザベル?」
「安全な場所に一瞬で移動させられた時から思っていたのだが、ウヅキレナが本気を出したらあの勇者と魔王ですら余裕で倒せたのではないか?」
麗奈さんにあきれ果てていると、イザベルさんが麗奈さんに質問していた。
言われてみればそうだ。
攻撃が来ると分かっていても避けることが困難な攻撃を不意打ちで撃たれてから対応できるのであれば勇者と魔王位余裕で倒せたのではないか。
「そうだな。勇者の方には多少苦戦はするだろうが倒せるだろう」
「なら全て一人で解決させた方が早かったのではないか?」
「ふむ。最初に伝えていた通り、こいつらは当事者が倒さなければ意味がない。それだけでは足りぬか?」
「そうだな。根本的な解決を狙うなら一番の方法だが、代償に受けた被害が大きすぎる上、アスカが倒せるかどうかすら不確定だ。なら、十分強くなるまで保護し、今後似たような相手が現れた際に自力で解決させた方が良かったのではないか?」
「なるほどな。イザベル達の視点からみればそうなるのが正しいか。分かった、ちゃんと理由を説明しよう。だが、その前にちょっと待っててくれ」
麗奈さんはそう言うと、『師走の先』のギルドメンバーに周囲の片付けを指示していた。
「では、移動しようか」
麗奈さんが指を鳴らすと、次の瞬間には地神教の本部にある教祖である相田さんの部屋に居た。
「ああ、皆さんですか。突然どうしました?」
丁度部屋に居た相田さんは一切事情を知らなかったようだが、特に驚くことはなく普通に対応していた。
「部屋を借りたい。今は6人だが、後2人来る予定だからそのくらいの部屋を頼む」
「分かりました。では705号室を使用してください」
「助かる。では行くぞ」
麗奈さんは相田さんに例を言うと、俺たちを705号室へと連れて行った。
その道中、
「あの、卯月麗奈さん」
「どうした?健太」
「いや、俺たち一応当事者ではあると思うんですけど、この話に参加しても良いのかなって思って。『Oct』の話ですよね?」
と健太が申し訳なさそうに言った。
「ある意味ではそうだが、この話は健太と弥生にも聞いておいて欲しい。何か用事があるのであれば仕方ないが」
「いえ、そうであれば大丈夫です。用事は無いですから」
「皆に早く会いに行きたいのだろう。悪いな」
「いえ。生きているのであれば大丈夫です。いつでも会いに行けますから」
「そうか」
『ガーディアン』と『魔術師の楽園』は『BRAVED』の襲撃によって壊滅的な被害を受けたと以前ニュースになっていたはずなんだけど……
だから生きているという表現は怪しいような……
「一人だけ事情を知らないようだから説明しておくけれど、今回私たち側に死者は一人もいないわ」
「え?」
ギルド本部があれだけ盛大に破壊されているのに?『BRAVED』は全員無事だったのに?生き残っている人はいるとは知っていたけれど、全員って。
「そこら辺も含めて部屋で話そう。かなり重大な話だからな」
色々こんがらがっているが、麗奈さんがいつになく真剣な顔をしているので一旦聞きたい欲を抑え込んだ。
「というわけで全てを話そうか」
麗奈さんは一人俺たちの向かい側の席に座り、真剣な表情でそう言った。
「はい」
普段色々とぶっ飛んでいる人が真剣な表情で言う話だ。本当に重大な話なのだろう。
「まずは軽く犠牲者についての話をしよう。これは先ほども言っていた通り犠牲者は一人もいない」
「でもギルドは壊滅的な被害を受けたって」
「そうだな。実際に建物は深刻な被害を受けている。一度壊して建て直す以外に術は無いだろうな。だが、人に関しては問題ない。『ガーディアン』は私が。『魔術師の楽園』はキルケーが先ほどの戦いと同じように例の攻撃に合わせて全員救出したからな」
「そうだったんですね……」
良かった。私が両方とも救い出したとか言い出さなくて。
「今回の事件で被害者が出たら大問題だからな。解決できた問題を意図的に放置していたわけだからな。責任をもって救ったわけだ」
「それはそうですね」
「で、肝心となるどうして私たちで倒さなかったのかだが。それは飛鳥を試すためだ」
「俺を試す?」
前に受けたAランク昇格試験で麗奈さんが出てきたのは俺を試すためでしたよね?
「ああ。以前も試す目的で戦ったが、あれは妹の足を引っ張っていないかを試すのと、妹が見染めた男がどのようなものかを見てみたかったからで、そこまでしっかりしたものではない」
「は、はあ」
Aランク昇格試験って国家試験みたいなものだから何よりもしっかりしていると思うんですが。
「で、今回は何を試したのか。それは妹が作った世界で最も素晴らしいギルドのエースとしうて十分な資格を持っているのか。そして妹と一生を添い遂げる伴侶としてふさわしいかどうかを試す一次試験を行った」
「「「「「……はい?」」」」」
真剣な表情で語られる、あまりにも意味不明な理由に聞いていた全員が思わず聞き返した。
「なんだイザベル?」
「安全な場所に一瞬で移動させられた時から思っていたのだが、ウヅキレナが本気を出したらあの勇者と魔王ですら余裕で倒せたのではないか?」
麗奈さんにあきれ果てていると、イザベルさんが麗奈さんに質問していた。
言われてみればそうだ。
攻撃が来ると分かっていても避けることが困難な攻撃を不意打ちで撃たれてから対応できるのであれば勇者と魔王位余裕で倒せたのではないか。
「そうだな。勇者の方には多少苦戦はするだろうが倒せるだろう」
「なら全て一人で解決させた方が早かったのではないか?」
「ふむ。最初に伝えていた通り、こいつらは当事者が倒さなければ意味がない。それだけでは足りぬか?」
「そうだな。根本的な解決を狙うなら一番の方法だが、代償に受けた被害が大きすぎる上、アスカが倒せるかどうかすら不確定だ。なら、十分強くなるまで保護し、今後似たような相手が現れた際に自力で解決させた方が良かったのではないか?」
「なるほどな。イザベル達の視点からみればそうなるのが正しいか。分かった、ちゃんと理由を説明しよう。だが、その前にちょっと待っててくれ」
麗奈さんはそう言うと、『師走の先』のギルドメンバーに周囲の片付けを指示していた。
「では、移動しようか」
麗奈さんが指を鳴らすと、次の瞬間には地神教の本部にある教祖である相田さんの部屋に居た。
「ああ、皆さんですか。突然どうしました?」
丁度部屋に居た相田さんは一切事情を知らなかったようだが、特に驚くことはなく普通に対応していた。
「部屋を借りたい。今は6人だが、後2人来る予定だからそのくらいの部屋を頼む」
「分かりました。では705号室を使用してください」
「助かる。では行くぞ」
麗奈さんは相田さんに例を言うと、俺たちを705号室へと連れて行った。
その道中、
「あの、卯月麗奈さん」
「どうした?健太」
「いや、俺たち一応当事者ではあると思うんですけど、この話に参加しても良いのかなって思って。『Oct』の話ですよね?」
と健太が申し訳なさそうに言った。
「ある意味ではそうだが、この話は健太と弥生にも聞いておいて欲しい。何か用事があるのであれば仕方ないが」
「いえ、そうであれば大丈夫です。用事は無いですから」
「皆に早く会いに行きたいのだろう。悪いな」
「いえ。生きているのであれば大丈夫です。いつでも会いに行けますから」
「そうか」
『ガーディアン』と『魔術師の楽園』は『BRAVED』の襲撃によって壊滅的な被害を受けたと以前ニュースになっていたはずなんだけど……
だから生きているという表現は怪しいような……
「一人だけ事情を知らないようだから説明しておくけれど、今回私たち側に死者は一人もいないわ」
「え?」
ギルド本部があれだけ盛大に破壊されているのに?『BRAVED』は全員無事だったのに?生き残っている人はいるとは知っていたけれど、全員って。
「そこら辺も含めて部屋で話そう。かなり重大な話だからな」
色々こんがらがっているが、麗奈さんがいつになく真剣な顔をしているので一旦聞きたい欲を抑え込んだ。
「というわけで全てを話そうか」
麗奈さんは一人俺たちの向かい側の席に座り、真剣な表情でそう言った。
「はい」
普段色々とぶっ飛んでいる人が真剣な表情で言う話だ。本当に重大な話なのだろう。
「まずは軽く犠牲者についての話をしよう。これは先ほども言っていた通り犠牲者は一人もいない」
「でもギルドは壊滅的な被害を受けたって」
「そうだな。実際に建物は深刻な被害を受けている。一度壊して建て直す以外に術は無いだろうな。だが、人に関しては問題ない。『ガーディアン』は私が。『魔術師の楽園』はキルケーが先ほどの戦いと同じように例の攻撃に合わせて全員救出したからな」
「そうだったんですね……」
良かった。私が両方とも救い出したとか言い出さなくて。
「今回の事件で被害者が出たら大問題だからな。解決できた問題を意図的に放置していたわけだからな。責任をもって救ったわけだ」
「それはそうですね」
「で、肝心となるどうして私たちで倒さなかったのかだが。それは飛鳥を試すためだ」
「俺を試す?」
前に受けたAランク昇格試験で麗奈さんが出てきたのは俺を試すためでしたよね?
「ああ。以前も試す目的で戦ったが、あれは妹の足を引っ張っていないかを試すのと、妹が見染めた男がどのようなものかを見てみたかったからで、そこまでしっかりしたものではない」
「は、はあ」
Aランク昇格試験って国家試験みたいなものだから何よりもしっかりしていると思うんですが。
「で、今回は何を試したのか。それは妹が作った世界で最も素晴らしいギルドのエースとしうて十分な資格を持っているのか。そして妹と一生を添い遂げる伴侶としてふさわしいかどうかを試す一次試験を行った」
「「「「「……はい?」」」」」
真剣な表情で語られる、あまりにも意味不明な理由に聞いていた全員が思わず聞き返した。
0
お気に入りに追加
214
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
無能テイマーと追放されたが、無生物をテイムしたら擬人化した世界最強のヒロインたちに愛されてるので幸せです
青空あかな
ファンタジー
テイマーのアイトは、ある日突然パーティーを追放されてしまう。
その理由は、スライム一匹テイムできないから。
しかしリーダーたちはアイトをボコボコにした後、雇った本当の理由を告げた。
それは、単なるストレス解消のため。
置き去りにされたアイトは襲いくるモンスターを倒そうと、拾った石に渾身の魔力を込めた。
そのとき、アイトの真の力が明らかとなる。
アイトのテイム対象は、【無生物】だった。
さらに、アイトがテイムした物は女の子になることも判明する。
小石は石でできた美少女。
Sランクダンジョンはヤンデレ黒髪美少女。
伝説の聖剣はクーデレ銀髪長身美人。
アイトの周りには最強の美女たちが集まり、愛され幸せ生活が始まってしまう。
やがてアイトは、ギルドの危機を救ったり、捕らわれの冒険者たちを助けたりと、救世主や英雄と呼ばれるまでになる。
これは無能テイマーだったアイトが真の力に目覚め、最強の冒険者へと成り上がる物語である。
※HOTランキング6位
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
アイテム•神の本に転生しました!?〜アイテムだけど無双します!〜
ねこねこォ
ファンタジー
中学2年生の柏田紫苑─私は死んだらしい。
というのもなんか気づいたら知らない部屋にいたから、うん!
それでなんか神様っぽい人にあったんだけど、怒らせちゃった!
テヘペロ。
でなんかビンタされて視界暗転、気づいたら転生してました!
よくよく考えるとビンタの威力半端ないけど、そんな事は気にしないでとりあえず自分確認!
それで機械音に促されるままステータスを開いてみると─え、種族•アイテム?!
いやないだろ。
自分で起き上がれないし喋れねえじゃねえか。
とりあえず人化、今いる迷宮を脱出して仲間を探しにでかけますよ!
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる