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85話
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『これを避けましたか。では次です』
ギリギリ避ける事が出来たが、避けた先に飛んできた氷の槍に当たってしまった。
「!!」
魔法の等級は高くない筈なのだが、氷の槍が命中した部分は完全に貫通してしまっていた。
麗奈さんの魔法どころか、弥生の魔法でもキルケーさんの魔法でもそんな芸当は不可能だ。
何故なら尋常じゃないレベルの差が必要だから。一般的に100レベルの探索者の体を貫通させるためには大体250レベルくらい必要らしい。
純粋な貫通に対する防御力は200レベル相当なので、貫通させるためには500レベル近い魔法攻撃力が必要となる。
『あまりの実力差に絶望したようですね。仕方ありません。本来魔王というのは勇者とそれに準ずる実力を持った人間が4人がかりで倒す相手なのですから。しかも今回はイブリースと違って油断していませんし、装備を奪えば勝てるというような弱点もありませんし』
そんなのどうすれば良いんだ。あの勇者ですら装備を持った状態で勝つことなんてできなかったんだぞ。
それこそ俺も勇者みたいな異常な強さの装備を持たなければ勝てないだろ。
……待てよ。勇者の装備は勇者のスキルを持ってなければ装備が許されないんだよな。
逆を言えば、勇者のスキルさえあれば俺も持てる?
だけど、持てなかった時はどうする?確実に隙を晒して死ぬ。
余裕もないのにそんなリスクを負って良いのか?
『ではさっさと終わらせましょうか。この地ごと溶けて消え去ってください』
俺が考えている隙に魔王は俺を完全に殺しきるために魔法でトラックすら簡単に飲み込める大きさの火の玉を生成し、放ってきた。
まだ結構な距離があるはずなのに既に俺の体は燃えそうなレベルで熱かった。熱に耐性もしっかりあるはずなのに。
こんなものが俺に命中してしまったらその時点で死が確定する。しかし、大きすぎて完全に躱しきることなど不可能。
「もう、迷っている時間なんて無い」
だから俺は覚悟を決め、地面に落ちている勇者の使っていた剣と盾を装備した。
「賭けには勝った。後はこの魔法を斬るだけだ」
仮説通り、勇者のスキルを持っていた俺は装備する権利があったみたいだ。学んでもいないのに理想的な剣の動き方が手に取るようにわかる。
どうやら、この巨大な火の玉は剣で斬ることが可能らしい。一応盾で魔法を無力化することも出来るようなのだが、斬撃による衝撃波で魔王に攻撃することも可能だから効率が良いらしい。
「はっ!!!」
想定通り火の玉を斬ることが出来た。
『ぐはっ!』
そして視界が遮られているので状況は分からないが、苦しむ魔王の声が聞こえてくる。
「今だ!!!」
俺はそんな魔王にとどめを刺すべく宙に浮く魔王の元へ跳んだ。
そして脳内に浮かび上がった最後の判断は剣を捨て、自らの拳で魔王を殴るというもの。
やっぱり俺は剣で攻撃するよりも拳で殴る方が強いらしい。それに、相手の武器でとどめを刺すより、自分の手で倒すのが一番だ。
「とどめだ!!!!!」
俺はその判断を受け入れ、正面から魔王をぶん殴った。
『そんな、馬鹿な……』
渾身の一撃を食らった魔王は、空の彼方へと吹き飛ばされていった。空を飛べないので追撃は不可能だが、ほぼ確実に息絶えただろう。
「これで、終わった……」
勇者と魔王。この両名を倒してしまったので、全てが完全に解決した。これ以上の敵はもう現れない。
だが、代わりに俺を守ろうとしてくれた人、そして仲間は全員居なくなってしまった。
「俺がもっと強ければ……」
正真正銘俺が世界最強だと証明されたわけだが、この程度の強さでは全然足りなかった。
勇者と魔王を一瞬で殺せるレベルじゃなければ意味が無かったんだ。
次こそは、と言いたいがもう次は無いんだ……
「お疲れ様。流石は妹の見込んだ男だな。強かったぞ」
今後何をすればいいんだと絶望に打ちひしがれていると、聞き覚えのある声が近くから聞こえてきた。
「……え?」
「これで私のギルドは正真正銘世界最強のギルドね。異世界の勇者と魔王を倒したんだもの」
「……え?」
顔を上げ、声がした方向を見ると勇者と魔王の攻撃によって消え去ってしまっていた人が全員居た。
「どうして?」
皆あの攻撃で消え去ってしまった筈じゃ……
「勇者共の攻撃を受ける直前に私が全員を連れて避難してしまったからな」
「……はい?」
俺の見る限りそんな様子なんて無かったんですが。杏奈さんたちならともかく、『師走の先』の皆さんは装備が残されていたからどう考えても食らっている筈なんですが。
「私は最高の妹の姉だからな!この程度出来なくてはな!!!」
「麗奈姉が一瞬で転移魔法を使って移動させたのよ。『師走の先』の人たちが防具を残していたのは、人間だけを移動させるという指定をしたかららしいわ」
「この間上級魔法の無詠唱の練習していませんでしたっけ?」
転移魔法って上級魔法の比にならないレベルで難しいらしいんですが。しかもあの数を同時に一瞬でって。
「練習したからな!」
「練習って。そんな簡単に……」
もうこの人分からないよ……
ギリギリ避ける事が出来たが、避けた先に飛んできた氷の槍に当たってしまった。
「!!」
魔法の等級は高くない筈なのだが、氷の槍が命中した部分は完全に貫通してしまっていた。
麗奈さんの魔法どころか、弥生の魔法でもキルケーさんの魔法でもそんな芸当は不可能だ。
何故なら尋常じゃないレベルの差が必要だから。一般的に100レベルの探索者の体を貫通させるためには大体250レベルくらい必要らしい。
純粋な貫通に対する防御力は200レベル相当なので、貫通させるためには500レベル近い魔法攻撃力が必要となる。
『あまりの実力差に絶望したようですね。仕方ありません。本来魔王というのは勇者とそれに準ずる実力を持った人間が4人がかりで倒す相手なのですから。しかも今回はイブリースと違って油断していませんし、装備を奪えば勝てるというような弱点もありませんし』
そんなのどうすれば良いんだ。あの勇者ですら装備を持った状態で勝つことなんてできなかったんだぞ。
それこそ俺も勇者みたいな異常な強さの装備を持たなければ勝てないだろ。
……待てよ。勇者の装備は勇者のスキルを持ってなければ装備が許されないんだよな。
逆を言えば、勇者のスキルさえあれば俺も持てる?
だけど、持てなかった時はどうする?確実に隙を晒して死ぬ。
余裕もないのにそんなリスクを負って良いのか?
『ではさっさと終わらせましょうか。この地ごと溶けて消え去ってください』
俺が考えている隙に魔王は俺を完全に殺しきるために魔法でトラックすら簡単に飲み込める大きさの火の玉を生成し、放ってきた。
まだ結構な距離があるはずなのに既に俺の体は燃えそうなレベルで熱かった。熱に耐性もしっかりあるはずなのに。
こんなものが俺に命中してしまったらその時点で死が確定する。しかし、大きすぎて完全に躱しきることなど不可能。
「もう、迷っている時間なんて無い」
だから俺は覚悟を決め、地面に落ちている勇者の使っていた剣と盾を装備した。
「賭けには勝った。後はこの魔法を斬るだけだ」
仮説通り、勇者のスキルを持っていた俺は装備する権利があったみたいだ。学んでもいないのに理想的な剣の動き方が手に取るようにわかる。
どうやら、この巨大な火の玉は剣で斬ることが可能らしい。一応盾で魔法を無力化することも出来るようなのだが、斬撃による衝撃波で魔王に攻撃することも可能だから効率が良いらしい。
「はっ!!!」
想定通り火の玉を斬ることが出来た。
『ぐはっ!』
そして視界が遮られているので状況は分からないが、苦しむ魔王の声が聞こえてくる。
「今だ!!!」
俺はそんな魔王にとどめを刺すべく宙に浮く魔王の元へ跳んだ。
そして脳内に浮かび上がった最後の判断は剣を捨て、自らの拳で魔王を殴るというもの。
やっぱり俺は剣で攻撃するよりも拳で殴る方が強いらしい。それに、相手の武器でとどめを刺すより、自分の手で倒すのが一番だ。
「とどめだ!!!!!」
俺はその判断を受け入れ、正面から魔王をぶん殴った。
『そんな、馬鹿な……』
渾身の一撃を食らった魔王は、空の彼方へと吹き飛ばされていった。空を飛べないので追撃は不可能だが、ほぼ確実に息絶えただろう。
「これで、終わった……」
勇者と魔王。この両名を倒してしまったので、全てが完全に解決した。これ以上の敵はもう現れない。
だが、代わりに俺を守ろうとしてくれた人、そして仲間は全員居なくなってしまった。
「俺がもっと強ければ……」
正真正銘俺が世界最強だと証明されたわけだが、この程度の強さでは全然足りなかった。
勇者と魔王を一瞬で殺せるレベルじゃなければ意味が無かったんだ。
次こそは、と言いたいがもう次は無いんだ……
「お疲れ様。流石は妹の見込んだ男だな。強かったぞ」
今後何をすればいいんだと絶望に打ちひしがれていると、聞き覚えのある声が近くから聞こえてきた。
「……え?」
「これで私のギルドは正真正銘世界最強のギルドね。異世界の勇者と魔王を倒したんだもの」
「……え?」
顔を上げ、声がした方向を見ると勇者と魔王の攻撃によって消え去ってしまっていた人が全員居た。
「どうして?」
皆あの攻撃で消え去ってしまった筈じゃ……
「勇者共の攻撃を受ける直前に私が全員を連れて避難してしまったからな」
「……はい?」
俺の見る限りそんな様子なんて無かったんですが。杏奈さんたちならともかく、『師走の先』の皆さんは装備が残されていたからどう考えても食らっている筈なんですが。
「私は最高の妹の姉だからな!この程度出来なくてはな!!!」
「麗奈姉が一瞬で転移魔法を使って移動させたのよ。『師走の先』の人たちが防具を残していたのは、人間だけを移動させるという指定をしたかららしいわ」
「この間上級魔法の無詠唱の練習していませんでしたっけ?」
転移魔法って上級魔法の比にならないレベルで難しいらしいんですが。しかもあの数を同時に一瞬でって。
「練習したからな!」
「練習って。そんな簡単に……」
もうこの人分からないよ……
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