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80話

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 完全に死角からの攻撃だった筈なのだが、最初から俺たちの存在には気づいていたらしくイザベルさんと弥生の攻撃は魔法で出来たドームようなもので完全に防がれてしまった。

『先ほどの攻撃を見て分からなかったのですか?』

 それでも攻撃を中止しない俺たちを見た魔法使いは呆れた表情をしてドームを再展開していた。俺たちの攻撃も何も考えることなく受け止められると考えたのだろう。

『なっ!?!?』

 しかし、魔法使いのドームにはそこまでの防御力は無かったらしく、拳が当たった瞬間ドームは砕け散った。

「はっ!!」

 そして完全にノーガードになった魔法使いを麗奈さんが斬った。

『かはっ!』

 ドームは硬かったが生身の体は脆かったようで、魔法使いは杏奈さんの攻撃であっさりと倒れた。

『メア!!!』

 そのタイミングで他の『BRAVED』のメンバーは気付いたらしく、こちらを振り返ってメアという魔法使いを心配する声をあげた。

「残念だったわね。今から私たち『Oct』も参戦するわ」

「妹よ!!!!!カッコよかったぞ!!!!!」

 先ほどの奇襲に一切気づいていないフリをしていた麗奈さんが杏奈さんの名乗りを聞いて楽しそうに笑っていた。

「さっさと全員片付けるわよ!!!」

「そうだな!!!残り8人!!!」

『ディア、メロウ!俺たちで【師走の先】を食い止めるぞ!残りは後ろの敵を倒せ!強くなったようだが、5人でかかれば余裕な筈だ!!』

『『『『『了解!』』』』』

 如何にも防御力が高そうな二人と魔法使いを残して、残りの5人がこちらへと襲い掛かってきた。

 実際の職業スキルが何かは分からないが、構成は見た目だけで言えば武闘家、侍、騎士、魔法使い、弓使いの5人。

 恐らく魔王と勇者は5人の中にはおらず、『師走の先』を相手にしようとしている3人の方に居るだろう。

「皆、誰も戦闘不能にならない事を何よりも重視して戦いなさい。数的不利に陥った瞬間押し切られて負けるから。特に飛鳥、あなたは絶対に最後まで戦い続けなさい」

「うん」

 相手が全員モーリスと同じ実力だということを想定すると、攻撃が通るのは俺だけだろう。だから俺が居なくなるということは勝ち筋を完全に失ってしまう可能性が出てくるのだ。

「じゃあ行くわよ。守りは任せたわよ、健太。私たちは正面突破よ」

「おう!」

「正面突破?」

「勿論。多人数戦で敵が真正面に居るのだからそれ以外に方法は無いでしょう」

「集中砲火されない?」

「相手の遠距離攻撃は弥生とイザベルさんに防いでもらえばいいのよ。出来るわよね?」

「その程度なら問題ない」

「打ち消せはしないだろうけど逸らすことは出来るよ!」

 防御は健太に全て任せて、俺と杏奈さんは5人の元へ飛び込んだ。

『5対5じゃ勝てないからって自棄にでもなったなこりゃあ』

『そうね。これならサクッと終わりそうで良かったわ。モーリスに続けてメアがやられて何事かと思ったけれど、単に奇襲が上手くいっただけの雑魚ね』

 同人数なら絶対に勝てるという余裕からか、たった二人で突っ込んだことで油断しきっているようだ。

 前衛であろう3人はその場から一切動かず、後衛であろう魔法使いと弓使いがそれぞれ俺と杏奈さんに向けて攻撃を放った。

「はっ!」

「いっけー!!!」

 食らっても戦闘不能にはならないものの、結構なダメージを受けそうな攻撃だったが、弥生とイザベルさんの攻撃によって弾き飛ばされた。

『完全に無策というわけでは無いみたいですね。でも私の守りを突破することは不可能です』

 そう言って騎士らしき男が俺たちの前に立ち塞がり、巨大な盾を構えた。

「任せたわ。一撃で破壊しなさい」

「一撃って。相手滅茶苦茶強いんだよ……」

 防御に特化した相手を一撃で粉砕するなんて結構な無茶振りだが、侍と武闘家が横から攻撃しようと移動を始めているためやる以外の選択肢は無かった。

『それでも来るか。蛮勇だけは認めてあげましょう!ですが無駄ですよ!』

 騎士は楽しそうに笑みを浮かべ、盾を俺に向けて構え直した。

「はあっ!!!!!!」

 俺はその盾に向けて全力で正拳突きをした。

『んぐっ!!』

 盾はその一撃で大きくへこみ、騎士は衝撃によって後ろに弾き飛ばされた。

『マジかよ。防御力だけは俺たちの中でもトップなんだが』

『職業スキルが攻撃に特化しているのだろう』

『素手であんなこと出来る職業なんてあったか?』

『知らないな。だが、目の前に居るのだから仕方ない。何はともあれ、我々の攻撃を防ぐことは出来まい』

『だな!ってことで死んでくれや!!!』

 と侍と武闘家は談笑しながら俺たちに向けて左右から攻撃を仕掛けてきた。


 俺の方に来たのは侍。重い一撃を食らわせるというよりは、絶対に避けられないように広範囲に命中するように刀を横に振るってきた。

「どうにかなれ!!」

 攻撃は避けられそうになく、防御力も低くまともに食らったら耐えられそうにも無かった俺は刀を蹴り上げようと試みた。

『させん!』

 俺の行動を見抜いた侍は咄嗟に刀を引き、俺に刀を蹴られないようにした。

「そこ避けるのか」

 多分刀を折られないようにするためだろうけど、恐らく相打ちだった場合俺に大ダメージが入っていただろう。

『お主の攻撃力はイアンを吹っ飛ばした時点で異常だと分かっているからな。避けられるのにわざわざリスクを負う必要はない』

「なるほどね。なら!!」

 俺に攻撃するよりも、俺から攻撃を食らわない方を重要視しているのなら、攻撃させる暇もなくこちらが攻撃してしまえば攻撃を一切させずに済むってことだよね。

『ぐっ!!!!』

「はああああ!!!!!」

 予想通り、侍は俺に対する攻撃行動を一切止めて避けることに終始していた。

『何っ!!』

「あと一歩!」

 避けることだけに集中した侍に最初は攻撃を当てることが適わなかったが、慣れてきたのか狙いが少しずつ定まってきていた。

「これで!!!」

『やっぱり俺に戦わせろ!!!』
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