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78話
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俺は強くなっている事を悟られないように極力スピードを落としてモーリスの前に近づいた。
「代表者は君か。てっきり奥で弓を構えているダークエルフが攻撃するものだと思っていたのですが。まあどっちでも変わらないんですがね」
「攻撃力なら自信がありましてね、はっ!!」
完全に油断しきっているモーリスに対し、全力の右ストレートを放った。
「え!?」
はずだったのだが、目の前に殴られている筈のモーリスが居ない。
「想定以上に威力が高そうですね。ってことはこの数か月、攻撃力だけ鍛え続けたみたいですね」
背後から声が聞こえたので咄嗟に振り返る。どうやら最初から攻撃を受ける気なんて無かったらしい。
「騙しましたね」
「私は占い師なんだから当然じゃないですか。たとえあなた方が弱かったとしても全力の一撃を食らったら流石に痛いんですから」
思いっきり嘘をついていたモーリスは悪びれもせずに言った。
「というわけでキサラギさん、孤立しましたね」
「なっ!?」
モーリスが何かしらの魔法を使おうとしていると気づいたときには既に遅かった。
「これは……?」
出来るだけ被害を抑えようと防御の構えを取ったが、攻撃が飛んでくることは無かった。
その代わりに、周囲に半透明なドームが現れていた。
「これはマジックドーム。私を倒さなければあなたはここから出ることが出来ません」
「そんなわけ……!」
俺の知る限りそんな魔法は無い。そう思いドームを破壊しようと殴りかかったが、すり抜けてしまった。
しかし脱出できたわけではなく、すり抜けた先はドームの反対側だった。
「分かりましたか?どれだけ一撃の威力が高かろうと当てられるものがなければ無意味です」
「ってことは一騎打ち……」
「はい。ですから攻撃力だけのあなたには勝ち目はありません。おとなしく死んでください」
そう言ってモーリスは杖から真っ黒なビームを放ってきた。
「っ!!!」
ビームが当たった地面はグズグズに腐りきっていた。距離があったのでぎりぎり避けられたが、当たっていたら一発で終わりだっただろう。
「避けましたか。まあ、偶然でしょう」
一撃で死んでしまいそうな攻撃をモーリスは連発してくる。
実体のある氷の弾とかであれば殴り飛ばしながら近づけたが、これを殴り飛ばすというのは流石に不可能だ。
俺は一旦回避に徹し、接近できそうな隙を伺うことにした。
「ほら、避けているだけでは何もできませんよ?決死の覚悟で飛び込んできてはいかがですか?魔法に対する耐性が一切ないあなたは一瞬で腐ってしまいますが」
モーリスは逃げ回る俺を高笑いしながら攻撃してきていた。
「くっ!」
杖から攻撃が来ると分かっているので集中すれば避けられるのだが、このままではジリ貧だ。
魔力切れを狙いたいところだが、魔法が当たった部分以外に被害が無い所を見るに一番位の低いものである可能性が高い。
もし位の高い魔法であれば、既に地面全てが腐りきっている筈。
これは完全な推測だが、モーリスが使用できるこれより強い魔法は氷の弾のように拳で対処できる可能性があるのだと思われる。
「早く来なさい!」
でなければ攻撃が当たっていない今の状況に苛立っている筈がない。
「せめて遠距離攻撃の手段があれば……」
相手の狙いを一瞬でも逸れさせることが出来れば、その隙に接近して倒しきることが出来るのに。
遠距離は完全にイザベルさんと弥生に任せてしまっていた為、攻撃手段は一切持ち合わせていなかった。
「ほら、死になさい!!!」
一応地面を抉って投げるという選択肢はあるのだが、抉ろうとした時には地面が腐っていて硬さを失っているし、そもそもそんな余裕が無い。
と困り果てていると、外に居る杏奈さんが何かを言いながら物を飲む動作をしている姿がちらっと見えた。
「そうか!!!」
俺はエリクサーが入ったペットボトルを取り出し、エリクサーを飲みながら接近した。
「何を考えているかは分かりませんが、遂に来ましたね!!」
待ってましたと言わんばかりにビームを乱射するモーリス。
ビームが当たった部位は当然真っ黒に腐ってしまうが、エリクサーを飲んでいるため一瞬で元に戻っていた。
「なっ!!!」
「食らえ!!!!!」
俺は左手でエリクサーを飲みながら、右手でモーリスを殴り飛ばした。
「ぐはっ!!!!」
モーリスは見事に吹き飛ばされたが、まだマジックドームは消えておらず、モーリスが反対側からすり抜けて飛んできたので再び殴り飛ばした。
そんな事を5回程繰り返すと、マジックドームは完全に消滅した。どうやら倒しきれたようだ。
「よし。これからこの人どうします?」
「体を縛り上げて装備を奪ってからから適当なSSSランクダンジョンに放り投げておきましょう。運が良ければ生きて帰って来られるでしょう」
「それ生きて返す気なくない?」
装備も何もかも奪った上で体も縛ってSSSランクダンジョンに放置って。俺みたいな素手で戦う人間ならともかく遠距離攻撃を主体で戦うモーリスだったら絶対に生きて帰れないよね。
「別に生きて帰ってもらう必要なんてないもの。これは危険物の処理よ」
「それはそうかもしれないけれど……」
救いようのない悪人だし、SSSランクの探索者を凌駕する実力を持つ上に魔法が使えるから無力化が出来ないせいで捕えておくことが難しいけれども。
「じゃあ私がダンジョンに置いてくるぞ」
「頼んだわ」
「お願いします」
イザベルさんが先ほどまで潜っていたダンジョンに戻り、モーリスを置いてきてくれた。
「代表者は君か。てっきり奥で弓を構えているダークエルフが攻撃するものだと思っていたのですが。まあどっちでも変わらないんですがね」
「攻撃力なら自信がありましてね、はっ!!」
完全に油断しきっているモーリスに対し、全力の右ストレートを放った。
「え!?」
はずだったのだが、目の前に殴られている筈のモーリスが居ない。
「想定以上に威力が高そうですね。ってことはこの数か月、攻撃力だけ鍛え続けたみたいですね」
背後から声が聞こえたので咄嗟に振り返る。どうやら最初から攻撃を受ける気なんて無かったらしい。
「騙しましたね」
「私は占い師なんだから当然じゃないですか。たとえあなた方が弱かったとしても全力の一撃を食らったら流石に痛いんですから」
思いっきり嘘をついていたモーリスは悪びれもせずに言った。
「というわけでキサラギさん、孤立しましたね」
「なっ!?」
モーリスが何かしらの魔法を使おうとしていると気づいたときには既に遅かった。
「これは……?」
出来るだけ被害を抑えようと防御の構えを取ったが、攻撃が飛んでくることは無かった。
その代わりに、周囲に半透明なドームが現れていた。
「これはマジックドーム。私を倒さなければあなたはここから出ることが出来ません」
「そんなわけ……!」
俺の知る限りそんな魔法は無い。そう思いドームを破壊しようと殴りかかったが、すり抜けてしまった。
しかし脱出できたわけではなく、すり抜けた先はドームの反対側だった。
「分かりましたか?どれだけ一撃の威力が高かろうと当てられるものがなければ無意味です」
「ってことは一騎打ち……」
「はい。ですから攻撃力だけのあなたには勝ち目はありません。おとなしく死んでください」
そう言ってモーリスは杖から真っ黒なビームを放ってきた。
「っ!!!」
ビームが当たった地面はグズグズに腐りきっていた。距離があったのでぎりぎり避けられたが、当たっていたら一発で終わりだっただろう。
「避けましたか。まあ、偶然でしょう」
一撃で死んでしまいそうな攻撃をモーリスは連発してくる。
実体のある氷の弾とかであれば殴り飛ばしながら近づけたが、これを殴り飛ばすというのは流石に不可能だ。
俺は一旦回避に徹し、接近できそうな隙を伺うことにした。
「ほら、避けているだけでは何もできませんよ?決死の覚悟で飛び込んできてはいかがですか?魔法に対する耐性が一切ないあなたは一瞬で腐ってしまいますが」
モーリスは逃げ回る俺を高笑いしながら攻撃してきていた。
「くっ!」
杖から攻撃が来ると分かっているので集中すれば避けられるのだが、このままではジリ貧だ。
魔力切れを狙いたいところだが、魔法が当たった部分以外に被害が無い所を見るに一番位の低いものである可能性が高い。
もし位の高い魔法であれば、既に地面全てが腐りきっている筈。
これは完全な推測だが、モーリスが使用できるこれより強い魔法は氷の弾のように拳で対処できる可能性があるのだと思われる。
「早く来なさい!」
でなければ攻撃が当たっていない今の状況に苛立っている筈がない。
「せめて遠距離攻撃の手段があれば……」
相手の狙いを一瞬でも逸れさせることが出来れば、その隙に接近して倒しきることが出来るのに。
遠距離は完全にイザベルさんと弥生に任せてしまっていた為、攻撃手段は一切持ち合わせていなかった。
「ほら、死になさい!!!」
一応地面を抉って投げるという選択肢はあるのだが、抉ろうとした時には地面が腐っていて硬さを失っているし、そもそもそんな余裕が無い。
と困り果てていると、外に居る杏奈さんが何かを言いながら物を飲む動作をしている姿がちらっと見えた。
「そうか!!!」
俺はエリクサーが入ったペットボトルを取り出し、エリクサーを飲みながら接近した。
「何を考えているかは分かりませんが、遂に来ましたね!!」
待ってましたと言わんばかりにビームを乱射するモーリス。
ビームが当たった部位は当然真っ黒に腐ってしまうが、エリクサーを飲んでいるため一瞬で元に戻っていた。
「なっ!!!」
「食らえ!!!!!」
俺は左手でエリクサーを飲みながら、右手でモーリスを殴り飛ばした。
「ぐはっ!!!!」
モーリスは見事に吹き飛ばされたが、まだマジックドームは消えておらず、モーリスが反対側からすり抜けて飛んできたので再び殴り飛ばした。
そんな事を5回程繰り返すと、マジックドームは完全に消滅した。どうやら倒しきれたようだ。
「よし。これからこの人どうします?」
「体を縛り上げて装備を奪ってからから適当なSSSランクダンジョンに放り投げておきましょう。運が良ければ生きて帰って来られるでしょう」
「それ生きて返す気なくない?」
装備も何もかも奪った上で体も縛ってSSSランクダンジョンに放置って。俺みたいな素手で戦う人間ならともかく遠距離攻撃を主体で戦うモーリスだったら絶対に生きて帰れないよね。
「別に生きて帰ってもらう必要なんてないもの。これは危険物の処理よ」
「それはそうかもしれないけれど……」
救いようのない悪人だし、SSSランクの探索者を凌駕する実力を持つ上に魔法が使えるから無力化が出来ないせいで捕えておくことが難しいけれども。
「じゃあ私がダンジョンに置いてくるぞ」
「頼んだわ」
「お願いします」
イザベルさんが先ほどまで潜っていたダンジョンに戻り、モーリスを置いてきてくれた。
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