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63話

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「ダンジョンが失われる?」

「方法に関しては言えませんがね。とにかく、ダンジョンを存続させ続けるためにあなたたちの存在が邪魔なのです」

 口ぶり的に地神教の関係者ではないようだが、敵であることは同じらしい。

『どんな話し合いを経てもこいつらとは分かり合えないらしい。ということで戦うぞ』

「そうだね」

「分かったわ」

「皆さん、始めなさい!!」

 俺たちが戦闘態勢に入ったことを確認したリーダー格の男は、全員に日本語で指示をした。

 すると武装した外国人たちは俺たちに向かって一斉に銃を乱射してきた。

 田舎だから数自体は少ないが、確実に人は存在している。なのに白昼堂々銃を撃ってくるのか。

「行くわよ、飛鳥!」

「うん!」

『いや、今回は私に任せてくれ』

 接近して戦うしか方法の無い俺たちは正面から突っ込もうとしたのだが、イザベルさんに遮られた。

 そしてイザベルさんが一番前に立ち、

『ガード』

 と言うと、俺たちの目の前に透明な障壁が現れた。その障壁はいとも簡単に大量に放たれる銃弾を全て防ぎ切っていた。

『残念だが、死んでもらおうか』

 そのままイザベルさんは矢を放った。イザベルさんの放った矢は障壁をすり抜け、外国人たちの頭や心臓に綺麗に命中していた。

 外国人たちが矢を受けて倒れる中、リーダー格の男だけは矢を素手で弾いて無事だった。

「思っていた以上に強いですね。今日のところは引かせていただきましょう」

 だから一人攻撃を仕掛けてくるのではと思ったのだが、男は何もせず他の外国人を放置して去っていった。



「とりあえずありがとう。助かったよ」

『ああ、気にするな。勝手にやったことだ』

「ねえ、イザベルさん。ダンジョンを存続させるためにあなたたち二人が邪魔ってのはどういう意味なのかしら?」

『それは分からない。分かっていないからこそ私はこの世界に来ることになってしまったのだから』

「俺も分からないよ」

「そう。で、イザベルさん。何か伝えなければならない事があるんじゃないかしら?」

 杏奈さんは突然イザベルさんに対してそんな事を言った。一瞬カマを掛けているのかとでも思ったが、確信めいた表情を見るに何かしらの根拠があるらしい。

『日本語で話していたようだから二人は気づかなかっただろうが、あのリーダー格の男は私や飛鳥と同じ異世界出身だ』

「そうなの?」

『ああ、あの男の言葉が全て理解できてしまったからな』

「じゃあどうして日本語だったんだろう?」

「自分が異世界人だと部下に気取られないためじゃないかしら。異世界人を倒してダンジョンを守るという都合上自身が異世界人だとバレる事は都合悪いだろうから」

 日本語と相手の国の言語で普通に会話していたら部下に違和感を持たれるからってことか。

「でもどうして異世界人が俺たちを……?」

 異世界人同士で潰しあう意味なんて無いと思うんだけど……

『自分より強い人間が産まれるのを阻止するためという線が一番強いだろうな。異世界人はこの世界だと普通の人間より強くなりやすいからな』

「なるほど……」

「ということは世界でもトップクラスの探索者の中に異世界出身の人間が居たりするのかしらね」

『かもしれないな。と考えると今後も私たちの命を狙う異世界人は多数現れるだろう。だから今すぐに強くならないといけないな』

「そうだね」


 早急に強くならなければならなくなった俺たちは、1日のほとんどをダンジョン探索にかけるようになっていた。


 そして3週間が経ち、Aランクのダンジョンを40個程制覇したことで俺も杏奈さんも試験自体は受けていないもののSランクとしてやっていけるくらいの強さを手に入れていた。

「今日からSランクダンジョンに潜ってみないか?」

 家を出る前に今日はどのダンジョンに潜るかの話し合いをしていた時に、長期間の滞在を経て日本語を話せるようになっていたイザベルさんがそんな提案をした。

「そうしましょう。急ぎ強くならなければならないのだから」

「俺も賛成」

「じゃあ決まりだ。今から出発し——」

 Sランクに挑むという結論が出たタイミングで、玄関のチャイムが鳴った。

「ちょっと出てくるわ」

 それに対応するべく家主の杏奈さんが玄関に向かった。

「テレビ局か新聞の契約だろうか」

「かなあ」

 朝早くから家に押しかけてくるとなればそこくらいしか思い当たる節が無い。まあ、そうでなかったとしても大した用ではないだろう。

「今のうちにSランクダンジョンを探しておくか」

「そうだね」

「二人とも来なさい!」

 ダンジョン情報を調べるべくパソコンを起動したタイミングで、玄関に居る杏奈さんに呼ばれた。

「何だろう」

「とりあえず行ってみよう」

 良く分からないまま玄関に向かった。


「どうも、地神教の田中光義です」

「地神教!?」

 玄関で杏奈さんと話していたのは40代くらいの地神教の教徒だった。

「いやいや、今日は戦いに来たわけでは無いんです。一つお願いをしに来たのです」

「お願い?」

「はい。皆さんには今から地神教の教祖である相田彰彦様にお会いしていただきたいのです」

「ということらしいわ」
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