~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A

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55話

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『おっと、如月さんではなくギルドマスターの方が出てきましたね。少し話を聞いてみましょうか。お願いします』

『ずっと仲間だと思っていた男が地球の敵であるモンスターだったと知った時はどんなお気持ちでしたか?』

 そして家を映していた教徒が杏奈さんの元に近づき、教祖の音声をスピーカーを使って聞かせていた。

『何もあるわけがないじゃない。確かにレベルは上がらないし、スキルを無数に獲得できるというモンスターのような特徴があるかもしれない。だけれど飛鳥はれっきとした人間であり地球の敵ではない。断言するわ』

 杏奈さんはそんな教徒に対し、堂々とそう言い切ってくれた。

『なるほど、そう洗脳されてしまっているのですね。分かりました。私たちはそんなあなたを救ってあげたい』

 その様子を見ていた教祖は可哀そうな相手を見る表情でそんなことを話していた。

『何を言っているのよ。飛鳥はただの人間よ。それにアレが地球の敵だったらお粗末すぎるわ。スキルが無数に取れるという自分の特性を知ったのは半年前で、それに気づかず探索者としての道を諦めかけていたのよ。もし敵なら強くなる方法は知っているだろうし、もう少し普通の探索者になりすますわよ』

 そんな教祖に対し、杏奈さんはあくまで理性的に答えていた。

『なるほど、確かにそういう考えもありますね。悪意を持って攻めてきているのならもう少しやりようがあっただろう、と。確かに会見前に彼の行動を調べていたのですが、悪意を持って行動している人間だとは考えにくい』

 それでも敵は敵だと言い張りそうだなと思っていたが、意外にもあっさり敵だと判定するのは難しいという結論を下していた。

『そう言われると経過観察をしたくなるのですが、彼の強くなるペースを鑑みるとそう判断するのは危険です。だからこそ私たちは手を打たないといけない』

『相容れないわね。私はあくまで彼を守るつもりよ』

『仕方ないですね。行きなさい』

 教祖が指示すると、突如として20人ほどの教徒が現れて家を囲っていた。

『なんのつもりかしら?』

『実力行使ですよ。大義の為には多少の犠牲は致し方ないのです。一応忠告しておきますが、抵抗はやめた方が良いですよ。最低でもAランク以上の教徒を集めてきましたから』

『大義、ね。そもそもこの行為はテレビ局や政府等には許可を取ってあるのかしら?日本中にこの光景が見られていると思うのだけれど』

『テレビ局は買収してあるので問題なく放送は出来ます。ただ、こんな非人道的行為を政府が許すわけがないでしょう』

『なるほど、なら時間を稼ぎさえすれば助けが来るということなのね。飛鳥!』

 杏奈さんは玄関口から俺の名前を呼んだ。

 どうやら本格的に人と戦わなければならないみたいだ。

 俺はすぐに皮の鎧を着用し、戦闘準備を済ませて家を出た。

「お待たせ、杏奈さん」

「そうね、もう少し準備を早くして頂戴」

『ついに出てきましたか。諸悪の根源が。実際には悪ではない可能性もあるのですが、疑わしきは罰せよです。行きなさい!』

 教祖がそう指示すると、教徒である探索者たちが一斉に襲い掛かってきた。

「なるほど、魔法使いとかは居ないわけね」

 ざっと敵を確認したところ、誰一人として魔法を使いそうな人はおらず、全員が剣や槍、斧などの近接武器使いだった。恐らく周囲への被害を考えて遠距離武器を避けたのだろう。

 この人数差だと遠距離攻撃の対処が不可能だったので、ラッキーだと言える。

 ただ今の状況は全然ラッキーじゃないんだけど。

「一旦道路に出て家から離れるわよ」

「そうだね」

 敵の家の破損なんて一切考慮されるわけがないので、家を守るべく後ろに俺たちの家があるという状況を避けることにした。

「卑怯だぞ!!」

 そして戦いを始めようとしたら、教徒の一人が突然そんなことを言ってきた。

「卑怯なのはそっちでしょう」

「卑怯なのはお前たちだ!無関係の民家を盾にして!!!」

「ああ、そういう……」

 ここら辺は住宅街なので、俺たちの家を離れてもすぐ近くに別の家がある。実際、俺たちの背後にも誰が住んでいるのかは分からないが民家が存在している状態だ。

 単に自分の家から離れただけなのだが、教徒は背後に民家を置くことで全力で攻撃しにくい状況をわざと作ったと考えたのだろう。

「そもそもこんな大人数で二人と戦う時点であなたたちが卑怯なのよ」

「私たちは大義の為に動いている。だから卑怯という概念は存在しない!」

 どう考えてもあちらの方が卑怯者なのだが、自己陶酔しているらしく聞く耳を持たない。

 まあそもそも聞く耳を持っているのであれば最初からこんなことにはなっていないんだけれど。

「時間を稼がれたら面倒なことになる。さっさと捕まえて逃げるぞ」

「そうだな。では行くぞ!」

「ちっ、時間稼ぎは出来ないみたいね」

 杏奈さんはどうやら時間稼ぎの意味も兼ねてこの人たちと話していたようだった。

「建物の破壊とかあまり気にせずに行くよ!」

「勿論。緊急避難で無罪放免になる予定だから一切気にせずに戦っていいわよ」

「緊急避難?オッケー!」

 言葉の意味はいまいち理解できなかったが、俺たちの家以外が破壊されても大丈夫だということだけ分かれば良い。

 というわけで俺は杏奈さんよりも前に立ち、正面から襲い掛かってくる教徒たちに真っ向から立ち向かう。

「はっ!!!!」

 真っすぐこちらの方に向かってきた7人がほぼ同時のタイミングで逃げ場の無いように攻撃を仕掛けてきた。

 それに対して俺は体を全力で回転させ、その勢いを利用した回し蹴りで教徒を右からまとめて蹴り飛ばそうとした。

「うっ!!!」

 その蹴り一発で5人までは吹き飛ばすことが出来たのだが、左側に居た2人にまで吹き飛ばせるほどの威力ではなかった。

 俺の攻撃力が高いことまで知っていたのか、5人が俺の攻撃に気づいた瞬間に攻撃の手を止め、受け流しに徹することで1人でも攻撃が通るようにしたのである。

 結果、吹き飛ばせた5人も左程大きなダメージは受けていない上に剣士2人の攻撃を無防備に近い状況で受けてしまったのでかなり痛い。

 杏奈さんとの訓練のお陰で痛覚耐性や純粋な防御力が高まったこともあって問題なく動ける範囲ではあるが、あの一撃の代償だと考えると非常に不味い。

 今回のような戦い方をしていると結局全員倒すことも叶わず中途半端に終わってしまう。

 だから戦い方を変えたいのだが、一対多の戦いは初めてで勝手が分からない。どうするのが正解なのだろうか。

「正義の鉄槌をくらえ!」

 分からないけれど、攻撃をくらいながら反撃する戦法だけは完全に無いな。

 ということで画期的な方法を思いつくまでは極力被弾を避けることを最重要視して戦うことにしよう。

「こっちに来い!」

 俺は正面から飛んでくる攻撃を避けながら徐々に民家の方に近づき、タイミングを見計らって民家の屋根に飛び移った。
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