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53話
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「そんな……」
「だからといって如月が過去に犯罪歴があるわけではないし、戸籍もしっかり存在する。俺としては何かしらの措置を如月に取る必要は無いと考えている。それよりも俺が大事だと考えているのは、ダンジョンで人間の子供が生まれているという事実をどう扱うのかという話だろう」
「そうかもしれませんね」
「今後、俺の部署で如月が生まれたであろう地域のダンジョンをめぐり、赤子が見つからないか探してみようと思う。ってことで杉内、許可を貰えるか?っていないのか」
相羽さんが杉内さんに許可を取ろうと話しかけたが、既にこの場にはいなかった。
「杉内さんなら話の途中で静かに部屋から出ていきました」
「次の仕事でもあったんだろう。本来1時間前くらいには今回の調査は終了していたはずらしいしな。俺たちの邪魔をしないように配慮して黙って出ていったのだろう」
「それもそうですね」
結構重めな話だったし、真剣な空気を壊すわけにはいかないよね。
「とりあえず今日はこれで終了だ。もう帰ってもらっても構わない」
「分かりました」
「じゃあ帰ります」
「連絡先はこれだ。もし何かあったらここから連絡するから応答してくれると助かる」
「はい」
そして俺たちは相羽さんから連絡先を受け取ってから家に帰った。
「にしても、本当にあなたがモンスターだったとはね」
昼食を食べながら、杏奈さんはそんな風に言った。
「ちゃんと人間だけどね」
「まあ、あなたがここまでのスピードで強くなった理由が分かって良かったわ」
「それもそうだね」
なんて話をのんびりとテレビを見ながらしていると、
『次のニュースです。地神教が本日記者会見を緊急で開いて声明を発表するとのことです。今回の声明はこれまでのものとは一線を画すとても重要なものだと主張しております。地神教はこれまでダンジョン探索に多大な貢献を世間にもたらしてきたため、注目が高まります』
というニュースが流れてきた。
「地神教ね。やっていること自体はただの社会貢献なのだけれど、思想がかなり過激だからあまり関わりたくないのよね。『師走の先』に布教に来たときは本当にうんざりしたわ」
「ダンジョンを親の仇のように見ていて、それを人々に強要してくるからね……」
地神教、これはダンジョンが地球上に現れてから1年ほど経ってから出てきた宗教だ。
神は地球にしか存在せず、その他の存在は神ではなく邪の者だから神の為に人々は邪の者を全て排除しなければならないという考えの元動いている宗教だ。
他にもいろいろと細かいルールや教義等が存在するらしいが、外から認識できるのはこれくらいだ。
そんな地神教はダンジョンを邪の者が地球に信仰するための足掛かりにしていると考え、日々ダンジョンからモンスターを大量に狩っては人々に配っている。
邪の者が作り出したダンジョンから素材を獲得して活用するのはどうなのかと思わなくも無いのだが、邪の者が送り出す戦力であるモンスターを排除することが一番重要らしく、そこらへんは問題ないらしい。
「まあ、現状世界でトップクラスに信者が多い宗教だから、増長するのは仕方ないと言えばそうなのだけれど」
「そうだね」
現在この宗教を信じる人は世界でも5億人くらい居るとされており、世間でも結構受け入れられている。
この宗教が広く受け入れられている理由は信条はともかくとして地神教が行っている活動は単なる慈善活動であること、ダンジョンが地球に生まれたことによる不安があったことで宗教誕生時に結構な人が入信して土台を築けたこと等、様々な理由が挙げられるが一番は他の宗教と同時に信仰していても問題が無かった点だろう。
地神教はキリストや仏陀など宗教を象徴する神が存在せず、ただ地球に存在する神を信仰するという宗教だから他の神の存在は一切否定していないのだ。
そのため既存の宗教の信者が改宗ではなく、兼宗という形で多数在籍している。
その点を鑑みると単一の宗教というよりは様々な宗教が手を取り合った巨大なギルドといった方が正しいのかもしれない。
「十中八九関係ない話だとは思うけれど、一応重大な報告らしいから時間になったら確認してみましょう」
「うん」
「というわけで今日は軽く潜るだけにしておきましょう」
「オッケー」
地神教による発表が6時からという事だったので、Aランクダンジョンに潜るみたいなことはせず、家から一番近いダンジョンであるCランクのダンジョンに潜った。
圧倒的に格下のダンジョンだったのでそこまで攻略に時間がかからず、2時に家を出て5時半には戻ってこられた。
そして待つこと30分、
「そろそろね」
6時になったのでテレビを着けると、地神教の人たちが記者会見の席に丁度ついたタイミングだった。
「何話すんだろう。ダンジョンを消滅させる方法でも見つかったのかな」
現状、ダンジョンを消滅させる方法は見つかっていない。何度攻略をしてもボスの素材が得られるだけで、ダンジョン自体に変化は起こらない。
今回その方法が見つかるのであれば、ダンジョンによって奪われた孤児院を復活させられるのでありがたいのだけれど。
『こんにちは、地神教の教祖の相田彰彦です。本日は私どもの報告の為にこれほどの場所を用意していただいてありがとうございます。今回は緊急を要する問題でしたので、早々に報告に入らせていただこうと思います』
-----------------------------
教祖の名前を変更させていただきました。
「だからといって如月が過去に犯罪歴があるわけではないし、戸籍もしっかり存在する。俺としては何かしらの措置を如月に取る必要は無いと考えている。それよりも俺が大事だと考えているのは、ダンジョンで人間の子供が生まれているという事実をどう扱うのかという話だろう」
「そうかもしれませんね」
「今後、俺の部署で如月が生まれたであろう地域のダンジョンをめぐり、赤子が見つからないか探してみようと思う。ってことで杉内、許可を貰えるか?っていないのか」
相羽さんが杉内さんに許可を取ろうと話しかけたが、既にこの場にはいなかった。
「杉内さんなら話の途中で静かに部屋から出ていきました」
「次の仕事でもあったんだろう。本来1時間前くらいには今回の調査は終了していたはずらしいしな。俺たちの邪魔をしないように配慮して黙って出ていったのだろう」
「それもそうですね」
結構重めな話だったし、真剣な空気を壊すわけにはいかないよね。
「とりあえず今日はこれで終了だ。もう帰ってもらっても構わない」
「分かりました」
「じゃあ帰ります」
「連絡先はこれだ。もし何かあったらここから連絡するから応答してくれると助かる」
「はい」
そして俺たちは相羽さんから連絡先を受け取ってから家に帰った。
「にしても、本当にあなたがモンスターだったとはね」
昼食を食べながら、杏奈さんはそんな風に言った。
「ちゃんと人間だけどね」
「まあ、あなたがここまでのスピードで強くなった理由が分かって良かったわ」
「それもそうだね」
なんて話をのんびりとテレビを見ながらしていると、
『次のニュースです。地神教が本日記者会見を緊急で開いて声明を発表するとのことです。今回の声明はこれまでのものとは一線を画すとても重要なものだと主張しております。地神教はこれまでダンジョン探索に多大な貢献を世間にもたらしてきたため、注目が高まります』
というニュースが流れてきた。
「地神教ね。やっていること自体はただの社会貢献なのだけれど、思想がかなり過激だからあまり関わりたくないのよね。『師走の先』に布教に来たときは本当にうんざりしたわ」
「ダンジョンを親の仇のように見ていて、それを人々に強要してくるからね……」
地神教、これはダンジョンが地球上に現れてから1年ほど経ってから出てきた宗教だ。
神は地球にしか存在せず、その他の存在は神ではなく邪の者だから神の為に人々は邪の者を全て排除しなければならないという考えの元動いている宗教だ。
他にもいろいろと細かいルールや教義等が存在するらしいが、外から認識できるのはこれくらいだ。
そんな地神教はダンジョンを邪の者が地球に信仰するための足掛かりにしていると考え、日々ダンジョンからモンスターを大量に狩っては人々に配っている。
邪の者が作り出したダンジョンから素材を獲得して活用するのはどうなのかと思わなくも無いのだが、邪の者が送り出す戦力であるモンスターを排除することが一番重要らしく、そこらへんは問題ないらしい。
「まあ、現状世界でトップクラスに信者が多い宗教だから、増長するのは仕方ないと言えばそうなのだけれど」
「そうだね」
現在この宗教を信じる人は世界でも5億人くらい居るとされており、世間でも結構受け入れられている。
この宗教が広く受け入れられている理由は信条はともかくとして地神教が行っている活動は単なる慈善活動であること、ダンジョンが地球に生まれたことによる不安があったことで宗教誕生時に結構な人が入信して土台を築けたこと等、様々な理由が挙げられるが一番は他の宗教と同時に信仰していても問題が無かった点だろう。
地神教はキリストや仏陀など宗教を象徴する神が存在せず、ただ地球に存在する神を信仰するという宗教だから他の神の存在は一切否定していないのだ。
そのため既存の宗教の信者が改宗ではなく、兼宗という形で多数在籍している。
その点を鑑みると単一の宗教というよりは様々な宗教が手を取り合った巨大なギルドといった方が正しいのかもしれない。
「十中八九関係ない話だとは思うけれど、一応重大な報告らしいから時間になったら確認してみましょう」
「うん」
「というわけで今日は軽く潜るだけにしておきましょう」
「オッケー」
地神教による発表が6時からという事だったので、Aランクダンジョンに潜るみたいなことはせず、家から一番近いダンジョンであるCランクのダンジョンに潜った。
圧倒的に格下のダンジョンだったのでそこまで攻略に時間がかからず、2時に家を出て5時半には戻ってこられた。
そして待つこと30分、
「そろそろね」
6時になったのでテレビを着けると、地神教の人たちが記者会見の席に丁度ついたタイミングだった。
「何話すんだろう。ダンジョンを消滅させる方法でも見つかったのかな」
現状、ダンジョンを消滅させる方法は見つかっていない。何度攻略をしてもボスの素材が得られるだけで、ダンジョン自体に変化は起こらない。
今回その方法が見つかるのであれば、ダンジョンによって奪われた孤児院を復活させられるのでありがたいのだけれど。
『こんにちは、地神教の教祖の相田彰彦です。本日は私どもの報告の為にこれほどの場所を用意していただいてありがとうございます。今回は緊急を要する問題でしたので、早々に報告に入らせていただこうと思います』
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教祖の名前を変更させていただきました。
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