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52話
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そして15分後、
「来ないね」
「そうね。何かあったのかしら」
10分ほど待ってくれと言われていたのだが、杉内さんが一向に戻ってくる気配は無かった。
「やっぱりエラーが出たのかな」
「その可能性が高いでしょうね」
「申し訳ありません、如月さん。もう一度調査をお願いします」
「はい」
案の定検査でエラーが起こったらしく、再検査となった。
そしてまた応接室に戻り、待つこと20分。
「お待たせして申し訳ありません。こちらの方で色々と不具合が出ておりまして」
そう言って戻ってきた杉内さんは白衣の男を連れてきていた。
「そちらの方は?」
「ああ、はい。こちらはステータス測定装置の開発者です」
「どーも初めまして、相羽渉だ。ステータスに関する研究をしている。二人がさっき使った機械は俺が研究の過程で作成したものだ」
相羽と名乗ったその男は20歳くらい。身なりに関しては非常に気を使っているのか、丁寧に化粧がされておりもともと整っていたであろう顔がさらに良いものになっている。
しかし、猫背気味で声のトーンは一定であり一切の活力を感じられない。なんともアンバランスな印象を受ける。
「彼は無気力に見えるだろうけれど、仕事はとても出来る男だから安心してほしい」
「はい」
「さっさと本題に入る。如月、お前は本当にAランクの探索者なのか?」
「本当にとは……?」
「よくわかっていないようだな。とりあえず先にこの紙を見てくれ」
そう言って出してきたのは杏奈さんのステータスが書かれた紙。
紙には様々な視点から測定された杏奈さんの能力値がずらっと書かれていた。
「で、見てほしいのは上のレベルとスキルの項目だ」
そう言われたので上の方を見る。
卯月杏奈
レベル48
スキル:無
「これがどうかしたんですか?」
杏奈さんはスキルを一切取っておらず、この間のデュラハン討伐でレベル48に上がったらしいので特におかしなところは無い。
「こんな形で普通表記されるわけだ。だが如月、お前のは違う」
如月飛鳥
レベル1/1
スキル:【プログラミング『初級』】【学習】【スキル特訓】【プログラミング『中級』】【プログラミング『上級』】
「まず『/』がステータスに表記されるのがおかしい。レベル上限になったら勝手に表記されるようになってはいるんだが、上限というものは理論上存在していない。なんならAランクの探索者なのにこのレベルで表示される事がおかしい。そしてもう一つは取得しているスキルだ。どう考えても探索者が取得するスキルではないだろ」
「かもしれないですね」
実はスキルが5つしか表示されていないという点を除けばこの結果は全て正しいのだが、黙っていることにした。
「じゃあステータスはどうだと思って確認してみたんだが、レベル1の探索者と全く同じステータスだった」
「ってことは機械のエラーですか?」
「そうだと考えるのが妥当だ。だが、この機械は一切エラーが出ていない。待たせている間に何人か捕まえて調べてみたんだが、正常に結果が出た」
「そうなんですね」
「じゃあこの結果は正常で、如月が不正をしてAランクになったという線が浮上する。しかし、これまでの担当者、特にAランク昇級の時の担当者が不正を働くわけがない」
「ですね」
『師走の先』のギルドマスターと『ガーディアン』の副ギルドマスターが不正を働くほどの条件をただの一般人が出せるわけがない。
「機械は正しいが、実際に発揮されるステータスはAランク相当。ここで俺はとある可能性を思い付いた」
「とある可能性?」
「ああ。如月、お前モンスターじゃないか?」
「え!?!?」
杏奈さんからはたまに冗談で言われていたのだが、初対面の相手に全く同じことを言われるとは思っておらず、変な声をあげてしまった。
「ああいや、如月がゴブリンとかオークみたいなモンスターだって言いたいわけじゃない。如月飛鳥は紛れもなく人間だ。遺伝子とかを丁寧に調べあげてもそう結果が出るだろう」
「じゃあモンスターじゃないですよね」
「ああ、生物学上の意味ではな。俺が言いたいのは、出自がモンスターと同じなんじゃないかっていう話だ」
「出自?」
「そう、如月がダンジョンから産まれた存在なんじゃないかと俺は睨んでいる」
「俺がですか?ただの人間ですよ……?」
「そうだな。だがレベルが敵をどれだけ倒しても変わらず、レベルが同じだったとしても強さに違いがあるのはモンスターの特徴なんだ」
「モンスター……?」
「なあ如月。お前が持っているスキルは5つだけじゃないだろ」
「え?」
「なるほどな、ならほぼ確定だよ。スキルを何個でも取得できる、これがダンジョンに生息するモンスターに個体差がある原因だからな」
相羽さんは俺の表情を見て俺がスキルを無数に所持していることを見抜いてしまった。
もしかして俺は本当にモンスター……?
「でも、モンスターならダンジョンから出られないのでは?」
しかし杏奈さんが指摘した通り、モンスターは原則としてダンジョンから出られない。
「まあな、でも例外が二つ存在する。一つは元々ダンジョンボスだった奴がダンジョン内のモンスターに敗北し、座を追い出された場合だ」
これはイザベルさんが言っていたので知っている。
「しかし、これに関しては年齢的にありえない。どれだけ弱いダンジョンだったとしても、小学生にすら満たない人間の子供がボスになることは不可能に近い。ダンジョン発生のタイミングで生まれたモンスターの中で最も基礎ステータスが高いモンスターが24時間後にボス部屋に押し込まれる仕様らしいからな」
だから最も強いイザベルさんがボスじゃなかったのか。身体能力だけで言えば元ボスモンスターの方が高かったのだろう。
「で、もう一つの方が肝心だ。生後半年以内のモンスターはダンジョンから出られないという制限を受けないというものがある。如月、お前が孤児院に拾われたのは何歳のころだ?」
「それは不明ですが、推定0歳だって聞いています」
「半年過ぎている可能性も無いことも無いが、条件に当てはまっている」
「ですね……」
「その状況証拠から、如月はダンジョンから産まれたモンスターの人間だと推定する」
「来ないね」
「そうね。何かあったのかしら」
10分ほど待ってくれと言われていたのだが、杉内さんが一向に戻ってくる気配は無かった。
「やっぱりエラーが出たのかな」
「その可能性が高いでしょうね」
「申し訳ありません、如月さん。もう一度調査をお願いします」
「はい」
案の定検査でエラーが起こったらしく、再検査となった。
そしてまた応接室に戻り、待つこと20分。
「お待たせして申し訳ありません。こちらの方で色々と不具合が出ておりまして」
そう言って戻ってきた杉内さんは白衣の男を連れてきていた。
「そちらの方は?」
「ああ、はい。こちらはステータス測定装置の開発者です」
「どーも初めまして、相羽渉だ。ステータスに関する研究をしている。二人がさっき使った機械は俺が研究の過程で作成したものだ」
相羽と名乗ったその男は20歳くらい。身なりに関しては非常に気を使っているのか、丁寧に化粧がされておりもともと整っていたであろう顔がさらに良いものになっている。
しかし、猫背気味で声のトーンは一定であり一切の活力を感じられない。なんともアンバランスな印象を受ける。
「彼は無気力に見えるだろうけれど、仕事はとても出来る男だから安心してほしい」
「はい」
「さっさと本題に入る。如月、お前は本当にAランクの探索者なのか?」
「本当にとは……?」
「よくわかっていないようだな。とりあえず先にこの紙を見てくれ」
そう言って出してきたのは杏奈さんのステータスが書かれた紙。
紙には様々な視点から測定された杏奈さんの能力値がずらっと書かれていた。
「で、見てほしいのは上のレベルとスキルの項目だ」
そう言われたので上の方を見る。
卯月杏奈
レベル48
スキル:無
「これがどうかしたんですか?」
杏奈さんはスキルを一切取っておらず、この間のデュラハン討伐でレベル48に上がったらしいので特におかしなところは無い。
「こんな形で普通表記されるわけだ。だが如月、お前のは違う」
如月飛鳥
レベル1/1
スキル:【プログラミング『初級』】【学習】【スキル特訓】【プログラミング『中級』】【プログラミング『上級』】
「まず『/』がステータスに表記されるのがおかしい。レベル上限になったら勝手に表記されるようになってはいるんだが、上限というものは理論上存在していない。なんならAランクの探索者なのにこのレベルで表示される事がおかしい。そしてもう一つは取得しているスキルだ。どう考えても探索者が取得するスキルではないだろ」
「かもしれないですね」
実はスキルが5つしか表示されていないという点を除けばこの結果は全て正しいのだが、黙っていることにした。
「じゃあステータスはどうだと思って確認してみたんだが、レベル1の探索者と全く同じステータスだった」
「ってことは機械のエラーですか?」
「そうだと考えるのが妥当だ。だが、この機械は一切エラーが出ていない。待たせている間に何人か捕まえて調べてみたんだが、正常に結果が出た」
「そうなんですね」
「じゃあこの結果は正常で、如月が不正をしてAランクになったという線が浮上する。しかし、これまでの担当者、特にAランク昇級の時の担当者が不正を働くわけがない」
「ですね」
『師走の先』のギルドマスターと『ガーディアン』の副ギルドマスターが不正を働くほどの条件をただの一般人が出せるわけがない。
「機械は正しいが、実際に発揮されるステータスはAランク相当。ここで俺はとある可能性を思い付いた」
「とある可能性?」
「ああ。如月、お前モンスターじゃないか?」
「え!?!?」
杏奈さんからはたまに冗談で言われていたのだが、初対面の相手に全く同じことを言われるとは思っておらず、変な声をあげてしまった。
「ああいや、如月がゴブリンとかオークみたいなモンスターだって言いたいわけじゃない。如月飛鳥は紛れもなく人間だ。遺伝子とかを丁寧に調べあげてもそう結果が出るだろう」
「じゃあモンスターじゃないですよね」
「ああ、生物学上の意味ではな。俺が言いたいのは、出自がモンスターと同じなんじゃないかっていう話だ」
「出自?」
「そう、如月がダンジョンから産まれた存在なんじゃないかと俺は睨んでいる」
「俺がですか?ただの人間ですよ……?」
「そうだな。だがレベルが敵をどれだけ倒しても変わらず、レベルが同じだったとしても強さに違いがあるのはモンスターの特徴なんだ」
「モンスター……?」
「なあ如月。お前が持っているスキルは5つだけじゃないだろ」
「え?」
「なるほどな、ならほぼ確定だよ。スキルを何個でも取得できる、これがダンジョンに生息するモンスターに個体差がある原因だからな」
相羽さんは俺の表情を見て俺がスキルを無数に所持していることを見抜いてしまった。
もしかして俺は本当にモンスター……?
「でも、モンスターならダンジョンから出られないのでは?」
しかし杏奈さんが指摘した通り、モンスターは原則としてダンジョンから出られない。
「まあな、でも例外が二つ存在する。一つは元々ダンジョンボスだった奴がダンジョン内のモンスターに敗北し、座を追い出された場合だ」
これはイザベルさんが言っていたので知っている。
「しかし、これに関しては年齢的にありえない。どれだけ弱いダンジョンだったとしても、小学生にすら満たない人間の子供がボスになることは不可能に近い。ダンジョン発生のタイミングで生まれたモンスターの中で最も基礎ステータスが高いモンスターが24時間後にボス部屋に押し込まれる仕様らしいからな」
だから最も強いイザベルさんがボスじゃなかったのか。身体能力だけで言えば元ボスモンスターの方が高かったのだろう。
「で、もう一つの方が肝心だ。生後半年以内のモンスターはダンジョンから出られないという制限を受けないというものがある。如月、お前が孤児院に拾われたのは何歳のころだ?」
「それは不明ですが、推定0歳だって聞いています」
「半年過ぎている可能性も無いことも無いが、条件に当てはまっている」
「ですね……」
「その状況証拠から、如月はダンジョンから産まれたモンスターの人間だと推定する」
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