~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A

文字の大きさ
上 下
39 / 87

39話

しおりを挟む
 その日、杏奈さんの指示を受けて二人でエリクサー入り飲料を作ってから就寝した。

 翌朝、

「行くわよ」

「朝4時だよ……」

 杏奈さんが俺の部屋に入ってきて起こしてきたのだが、時間があまりにも常識外れだった。

 昨日寝たのが12時くらいなので滅茶苦茶眠い。俺は抗議の念を込めて掛け布団を顔まで被って文句を言った。

「問題ないわ、あのエリクサーを飲めば元気になれるから。今からでも飲むかしら?」

「起きます!!!」

 眠いかどうかだけでエリクサーを使うわけにはいかないので、慌てて起きて支度を始めた。



「で、どこに行くんですか?」

 しっかりと準備をして杏奈さんのバイクに跨ったまでは良いものの、これからどこに何をしに行くのかを一切聞いていない。

「私たちが行ったことのある場所よ」

「俺が……?」

「着けばわかるわ」


 それだけ言われて杏奈さんの荒すぎる運転に身を委ねること小一時間、

「ああ……」

 辿り着いたのは『師走の先』の研究所だった。どうやら今回の目的は俺のスキル強化らしい。

「じゃあ行くわよ」

「今は杏奈さんの攻撃力を上げる方が先決じゃないの?」

 確かに俺を強くすることはギルドを強くすることにもつながるから理由はよくわかる。しかし、今は杏奈さんがA級に入ることが最優先では無いだろうか。

「当然よ。だからここに来たのよ」

「え……?」

 だってここはスキルを研究する場所で、スキルを手に入れるための設備が整っているわけで……

「当然よ。外で鍛えなくても今や別にダンジョンに潜っていても強くなれるあなたをわざわざここにきて育成する必要がどこにあるのよ」

「だよね。ってことは杏奈さんがスキルを……?」

「違うに決まっているでしょう。あなたと違ってスキルを得たところで強くなれるわけがないもの」

「じゃあ何故……?」


「着いたわよ」

 杏奈さんの意図が掴めないまま辿り着いたのは巨大な武道場。壁にはありとあらゆる武器がびっしりと並べられており、武器系のスキルを開放する際にかなりお世話になった場所だった。

「戦うの……?」

 ここに二人で来たということは戦う以外に無い気がする。あれかな、杏奈さんの新武器を探しに来たのかな。

「とりあえず着替えなさい」

 そう言って渡されたのは防具ではなくただのジャージだった。

「これ?」

 ジャージで武器を使って戦闘したら一瞬で服が破けて使えなくなる気がするんですが。

「そうよ、着替えてきなさい。私も着替えてくるから」

「分かったよ」

 ただ、そんなことを杏奈さんが理解していないわけがないので、何か別に意図があるのだろう。



「着替えてきたわね」

「杏奈さん……?」

 私服からジャージに着替えた俺とは違い、杏奈さんは今からダンジョンに潜りますと言わんばかりに防具を身に着けていた。

 武器はダンジョンで使っているものではなく武道場にあったただ丈夫なだけで切れ味悪めな剣だったけれど、防具の有無を考えると誤差である。

「じゃあ、私が一方的に攻撃し続けるからあなたはサンドバッグになりなさい」

「どういう意味でしょうか」

「そのままの意味よ。あなたは私の攻撃を受け続ける、それだけ」

「またサンドバッグ役ですか……?」

「私は初めてだけど」

「杏奈さんは初めてだったとしても、俺は最近やらされた出来事なんですよ」

 しかも前回の千堂とは違い、あなたの攻撃は結構痛いんですよ。

「まあいいじゃない。あなたは攻撃を受けて喜んでしまう男なんだから」

「そんなことは……」

「あら、この間は同級生から一方的に攻撃されるのを楽しんでいたように見えたけれど?」

「え……?」

「顔が笑っていたわよ」

「まさか、見えていたんですか……?」

 スキルの事しか考えていなかったので自覚は無いけれど、笑っていたかもしれない……

「見ているわけないじゃない。まあ、その様子を見るに本当に楽しんでいたみたいね」

 嵌められた……!

「あれはスキルを得られるからで、一方的に攻撃されることを楽しんでいたわけじゃ……」

「とにかく、私の攻撃を受けなさい。そして私の攻撃力を上げる礎となりなさい」

「あの、せめて防具をいただけませんか?」

「エリクサー入りドリンクがあるから怪我とかの心配はいらないわ。覚悟しなさい!!」

「えっ、ちょっ!!!」

 杏奈さんはこちらに有無を言わせず襲い掛かってきた。

 一切の小細工なしで正面から向かってきているので反撃も出来なくは無いけれど、後で面倒なことになるのは間違いないので受けるしかなかった。

「うっ!!!」

 昨日と変わらず、一発当たりの威力はレベルにしては低いけれど、手数があまりにも多すぎてダメージは結構大きい。

「威力はどうかしら?」

「まだ低いです」

「ならもっと大振りで攻撃してみようかしら。ほら!!」

 杏奈さんは威力の高さを聞くときですら攻撃の手を一切緩めることは無く、延々と俺の体を傷めつけてきていた。

 あまりにも痛いので嘘をついてでも威力を落としてもらおうと一瞬だけ考えたが、そうなると目的と外れてしまうので、我慢せざるを得なかった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

スキルは見るだけ簡単入手! ~ローグの冒険譚~

夜夢
ファンタジー
剣と魔法の世界に生まれた主人公は、子供の頃から何の取り柄もない平凡な村人だった。 盗賊が村を襲うまでは…。 成長したある日、狩りに出掛けた森で不思議な子供と出会った。助けてあげると、不思議な子供からこれまた不思議な力を貰った。 不思議な力を貰った主人公は、両親と親友を救う旅に出ることにした。 王道ファンタジー物語。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

処理中です...