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38話
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「うわあっ!!!」
すると壁に支えられることは無くすり抜けたため、体勢を崩してこけてしまった。
「何やっているのよ」
「いや、覚悟を決めて壁にぶつかったのに何も無かったから」
「そりゃあそうよ。これは蜃気楼の壁だもの」
「蜃気楼の壁……?」
「そう。ダンジョン産のアイテムで、設置するとそこに本当に壁があるように見せかけることが出来るのよ」
「そんなものがあるんだ」
「世界的にも珍しい試みとして有名な建物なのだけれど、知らないの?」
「世間には疎いもので……」
杏奈さんのギルドに入るまではネットどころかテレビすらほとんど見ることが出来なかったので。
「じゃあここがどんな建物なのか知らないのね」
「うん」
「ここは、実在する液体を片っ端からかき集めた液体専門店、『オアシス』よ」
「液体専門店……」
確かに、今ここから見える限りは瓶に入った入れ物以外見えない。
「というわけでショッピングを始めるわよ」
そう言って杏奈さんは俺に家具を販売している店くらいでしか見たことの無い巨大なカートを押し付け、真っ先に向かったのはジュース売り場。
「そうね……今日はここら辺かしら」
杏奈さんは吟味してそうな口調で500mlの飲料を片っ端から入れていた。そこに法則性は無く、ただ500mlだからという理由だけで投入されていた。
「これも飲むの……?」
そのため、杏奈さんは明らかにゲテモノと思われるものも何本か投入していた。
特に目についたものの一つに、コーラのケチャップ味というものがあった。
ピザとかでコーラとケチャップが食卓の中で同居することはよくあるけれど、同時に摂取する類の食べ物ではないと思います。
「当然、もしかしたら美味しいかもしれないんだから。開拓は大事よ」
杏奈さんって意外と飲み物オタクなのかな……
結局累計で40本ほどカートに入れたのちに次の場所へと移動した。
「液体専門店ってことは確かにこれはあるよね」
辿り着いた先はポーション売り場。様々な種類、性能のポーションが多数並んでいた。
ただ、今日は探索者関係なく好きな飲み物を買って終わりかなと思っていたので意外だった。
「今回はこれにしましょうか」
杏奈さんは色んな企業が出している回復用のポーションの中から最も色が怪しいものを選び、50本ほどカートに入れた。
「大丈夫なのそれ……?」
効果は強そうなだけれど、えげつない副作用が出そう。そしてエキセントリックな味がしそう。ダンジョン内でこれを渡されるのは嫌だよ。
「大丈夫じゃない?店で実際に売っているわけだし」
「それだけでは……」
それだけじゃ薄いよ。この世にはジュースなのにゲロマズい飲み物が多数現れては消えていっているんだから。
そんな救いの無い世界には飲んだら副作用がある飲み物だって売っているに決まっている。『オアシス』は見た限りでは手当たり次第に飲み物を収集しているっぽいし。
「最悪あなたの毒耐性を作るための糧になるだけだから」
「毒耐性って。そりゃあ必要になるかもしれないけどさ……」
と抗議を続けるも杏奈さんは気にせず次の場所へ歩き始めた。いくらギルドマスターだからって横暴すぎませんかね。
「エリクサーを10本お願いします」
「10本ですか?承知しました」
次にやってきたのはダンジョン探索用超高級飲料売り場。エリクサーをはじめとした超高級飲料が多数並んでいた。値段は最低でも1千万から。庶民では絶対に手が出ない額だった。
「10本って何に使うのさ」
1本あれば失った手足がいとも簡単に再生し、2本あれば吹き飛んだ下半身が全て吹っ飛んでいても再生するため、どんな大きなギルドでも3本常備されていたら十分とされるのだが、杏奈さんはその3倍を優に超える10本も買っていた。
金額は合計でなんと5億。2人での今までの稼ぎを合計してようやくたどり着くかどうかの額だ。
「そりゃあ飲み物に混ぜて飲むのよ。エナジードリンクと違って副作用は一切ない上に効果は比べ物にならないほど高い。あなたも効果は分かっているでしょう?」
「確かにあれは凄かったなあ……」
全く寝てないし、ずっと動き続けていて疲れ果てるはずだったのに、エリクサー入りコーヒーを飲んだら全てが吹っ飛んで元気になっていた。
「エリクサー1本でそれを200本以上作れるのよ。そう考えると価値がわかるかしら?」
「確かに……200本なら……」
一本でそれだけの元気が得られると考えたら安い方なのかもしれない。
「まあ、今回作る飲料だと100本行かない可能性もあるけれど」
「杏奈さん!?!?」
100本行かないってことは1本当たり50万の飲料ってことですよね。何に使うのかなそんな飲料。
「流石に全部は使わないから安心しなさい。半分は予備よ」
「5本も使うんですか……?」
「そうね。とりあえずそのくらいを予定しているわ。ただ私たちの頑張りしだいでは数は減っていくけど」
「よくわからないけど頑張ります」
頑張って減らすごとに5000万浮くんだ。そりゃあ全力を尽くすしかないじゃないか。
それから数分後、店員が店の奥から厳重な箱に入ったエリクサーを10本持ってきたので、杏奈さんは他の飲料とまとめて会計を済ませ、収納シートにしまった。
「スキル解放のきっかけになるかもしれないから持ちなさい。帰るわよ」
「分かったよ」
杏奈さんから荷物を受け取り、俺たちは家まで帰った。
ちなみに、その間に『運搬(収納シート)【初級】』をきっちりと手に入れました。
すると壁に支えられることは無くすり抜けたため、体勢を崩してこけてしまった。
「何やっているのよ」
「いや、覚悟を決めて壁にぶつかったのに何も無かったから」
「そりゃあそうよ。これは蜃気楼の壁だもの」
「蜃気楼の壁……?」
「そう。ダンジョン産のアイテムで、設置するとそこに本当に壁があるように見せかけることが出来るのよ」
「そんなものがあるんだ」
「世界的にも珍しい試みとして有名な建物なのだけれど、知らないの?」
「世間には疎いもので……」
杏奈さんのギルドに入るまではネットどころかテレビすらほとんど見ることが出来なかったので。
「じゃあここがどんな建物なのか知らないのね」
「うん」
「ここは、実在する液体を片っ端からかき集めた液体専門店、『オアシス』よ」
「液体専門店……」
確かに、今ここから見える限りは瓶に入った入れ物以外見えない。
「というわけでショッピングを始めるわよ」
そう言って杏奈さんは俺に家具を販売している店くらいでしか見たことの無い巨大なカートを押し付け、真っ先に向かったのはジュース売り場。
「そうね……今日はここら辺かしら」
杏奈さんは吟味してそうな口調で500mlの飲料を片っ端から入れていた。そこに法則性は無く、ただ500mlだからという理由だけで投入されていた。
「これも飲むの……?」
そのため、杏奈さんは明らかにゲテモノと思われるものも何本か投入していた。
特に目についたものの一つに、コーラのケチャップ味というものがあった。
ピザとかでコーラとケチャップが食卓の中で同居することはよくあるけれど、同時に摂取する類の食べ物ではないと思います。
「当然、もしかしたら美味しいかもしれないんだから。開拓は大事よ」
杏奈さんって意外と飲み物オタクなのかな……
結局累計で40本ほどカートに入れたのちに次の場所へと移動した。
「液体専門店ってことは確かにこれはあるよね」
辿り着いた先はポーション売り場。様々な種類、性能のポーションが多数並んでいた。
ただ、今日は探索者関係なく好きな飲み物を買って終わりかなと思っていたので意外だった。
「今回はこれにしましょうか」
杏奈さんは色んな企業が出している回復用のポーションの中から最も色が怪しいものを選び、50本ほどカートに入れた。
「大丈夫なのそれ……?」
効果は強そうなだけれど、えげつない副作用が出そう。そしてエキセントリックな味がしそう。ダンジョン内でこれを渡されるのは嫌だよ。
「大丈夫じゃない?店で実際に売っているわけだし」
「それだけでは……」
それだけじゃ薄いよ。この世にはジュースなのにゲロマズい飲み物が多数現れては消えていっているんだから。
そんな救いの無い世界には飲んだら副作用がある飲み物だって売っているに決まっている。『オアシス』は見た限りでは手当たり次第に飲み物を収集しているっぽいし。
「最悪あなたの毒耐性を作るための糧になるだけだから」
「毒耐性って。そりゃあ必要になるかもしれないけどさ……」
と抗議を続けるも杏奈さんは気にせず次の場所へ歩き始めた。いくらギルドマスターだからって横暴すぎませんかね。
「エリクサーを10本お願いします」
「10本ですか?承知しました」
次にやってきたのはダンジョン探索用超高級飲料売り場。エリクサーをはじめとした超高級飲料が多数並んでいた。値段は最低でも1千万から。庶民では絶対に手が出ない額だった。
「10本って何に使うのさ」
1本あれば失った手足がいとも簡単に再生し、2本あれば吹き飛んだ下半身が全て吹っ飛んでいても再生するため、どんな大きなギルドでも3本常備されていたら十分とされるのだが、杏奈さんはその3倍を優に超える10本も買っていた。
金額は合計でなんと5億。2人での今までの稼ぎを合計してようやくたどり着くかどうかの額だ。
「そりゃあ飲み物に混ぜて飲むのよ。エナジードリンクと違って副作用は一切ない上に効果は比べ物にならないほど高い。あなたも効果は分かっているでしょう?」
「確かにあれは凄かったなあ……」
全く寝てないし、ずっと動き続けていて疲れ果てるはずだったのに、エリクサー入りコーヒーを飲んだら全てが吹っ飛んで元気になっていた。
「エリクサー1本でそれを200本以上作れるのよ。そう考えると価値がわかるかしら?」
「確かに……200本なら……」
一本でそれだけの元気が得られると考えたら安い方なのかもしれない。
「まあ、今回作る飲料だと100本行かない可能性もあるけれど」
「杏奈さん!?!?」
100本行かないってことは1本当たり50万の飲料ってことですよね。何に使うのかなそんな飲料。
「流石に全部は使わないから安心しなさい。半分は予備よ」
「5本も使うんですか……?」
「そうね。とりあえずそのくらいを予定しているわ。ただ私たちの頑張りしだいでは数は減っていくけど」
「よくわからないけど頑張ります」
頑張って減らすごとに5000万浮くんだ。そりゃあ全力を尽くすしかないじゃないか。
それから数分後、店員が店の奥から厳重な箱に入ったエリクサーを10本持ってきたので、杏奈さんは他の飲料とまとめて会計を済ませ、収納シートにしまった。
「スキル解放のきっかけになるかもしれないから持ちなさい。帰るわよ」
「分かったよ」
杏奈さんから荷物を受け取り、俺たちは家まで帰った。
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