31 / 87
31話
しおりを挟む
「なんで回復ポーションを飲んでいるんですか?」
と将来を不安視していると、安藤さんはオークから一切ダメージを負っていないのに回復をしていることに気づいた。
回復ポーションの味は飲み物としてそこそこ美味しく、普段から愛飲している人が居るという噂は聞いたことがあるが、ダンジョンに潜っている際に飲むという話は聞いたことが無い。
「ああ、グレートオークとの戦闘で電気を身に纏ったからね。それのダメージを回復しているんだ」
「あれってダメージあるんですね」
「そりゃあそうだよ。いくら自分の魔法とはいえ、自分の体に電撃を当てているんだから」
「なら電撃なしの方が良かったのでは……?」
別にそんな危険な行動をしなくても余裕で倒せていたと思うんですが。
「経費で合法的に回復ポーションを飲むためだよ。いやあ、回復ポーションはやっぱり美味しいねえ」
「愛飲家だったんですね……」
噂の愛飲家が今回の試験官だったよ。本当に居るんだそんな人。
「ってことで今日はたくさん自傷攻撃をするけど、全く気にしないでね」
「分かりました」
それから安藤さんは敵を見かける度に全身に何かを纏って戦い、回復ポーションを美味しそうに飲んでいた。
そして安藤さんのリュックに入っていた回復ポーションがほとんど尽きたタイミングでボス部屋の目の前に辿り着いた。
「じゃあ中に入ったら一人で戦ってね。本当にヤバそうだったら加勢に入るけど、その時は当然試験は不合格だから」
「はい」
俺たちは直前に試験内容をざっくりと確認したのち、ボス部屋の中に入った。
中で待ち受けていたのはグレートソードオーク。
剣を持ったグレートオークで、剣術を身に着けている中々に厄介なモンスターだ。
剣術自体はCランクの探索者と比べると劣るが、パワーがあるため正面から剣で立ち向かった場合、オークの方が勝つと思われる。
俺は拳だけで戦うので猶更正面からの戦闘は避け、不意打ちとかをしたいのだが、
『グオオオオ!!!!』
このボス部屋の構造上、こんな感じで入った瞬間にオークに気づかれてしまうので1対1でその戦法を選ぶのは不可能である。
まあ、俺の場合オーク以上に攻撃力はあるので普通に正面から戦えるんですけどね。
というわけで俺は剣を構えているオークに対して正面から特攻する。
「はあっ!!!」
流石に安藤さん並みのスピードでは動けないのでオークには余裕で見切られており、迎撃の為に上段から剣を振り下ろしてきた。
「ふんっ!!!」
俺はその剣に対して自らの拳をぶつけた。
すると当然俺の拳は痛んだが、オークの剣の方もダメージは甚大だったようで、いともたやすく破壊が完了してしまった。
『グオッ!?ガアアア!!!!』
剣が唐突に破壊されたされたため、一瞬戸惑いを見せるグレートオークだったが、意外とすぐに持ち直して今度は拳で殴りかかってきた。
「せいっ!!!」
ただの拳となると速度の見切りは非常に簡単で、俺は全て攻撃をかわしてカウンターを決められた。
『ガアアアア!!!!』
痛みのあまり悲鳴を上げるオーク。
俺は倒すために構わず追撃を重ねる。
すると、最後にオークは断末魔を上げ、一切動かなくなった。これで完全に勝利である。
「終わりました」
「やたら早かったですね…… しかも武器は一切使用せず徒手格闘だけで倒し切った。もしかしてBランクを受けなかっただけで結構レベル高かったりします?」
安藤さんに報告すると、俺の戦いぶりを見てかなり驚いている様子だった。
「ちょっとだけですけどね。ランクを上げる暇が無かっただけでBランクの人とずっとBランクダンジョンに潜っていましたし」
「あー、結構あるあるな話らしいですしね。Bランクの人が一人でも居ればBランクダンジョンに潜れるらしいですし。でもそれならどうして今回ランクを上げようとしたんですか?」
「年齢とかの問題で色々面倒な事が起こりまして。全部誤解なんですけど、一瞬退学にさせられかけました。で、これ以上面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだということで昇格を目指す運びになりました」
「確かに如月さんは結構若いですもんね。退学ってことは大学生ですか?」
「いや、高校生です」
「え!?!?高校生!?!?その年齢でBランク!?!?」
「はい」
「ええええええ!?!?!?!?」
安藤さんは今日一の驚きを見せてくれた。
「色々助けてもらったおかげですけどね」
「それでも滅茶苦茶凄いですよ。なんなら今の高校生の中だとダントツでトップじゃないですか?」
「いや、上は一応いますね。卯月杏奈さんは同い年で既にBランクですし」
「最近の高校生はレベルが高いですね…… つい最近まではCランクどころかDランクでも高校生ならトップを張れていた気がするんですけどね……」
「俺もそうだと思うんですけどね……」
杏奈さんもそうだけど、弥生も健太も強くなるスピードがおかしすぎる。Cランクになるのってかなり大変な事なんですよ。
「如月さん、他人事のように言っていますけどあなたもですからね」
「あっ、そうですね……」
3人とは違って強くなった理由に明確な根拠があったけど、何も知らない人から見たら3人と全く同じだよね。
「とりあえず、帰って報告をしましょうか」
「はい」
ダンジョンから出た後、役所にて正式にBランクに昇格するための手続きをした。
無事Bランクの資格を得たので、杏奈さんに報告するべく帰宅した。
と将来を不安視していると、安藤さんはオークから一切ダメージを負っていないのに回復をしていることに気づいた。
回復ポーションの味は飲み物としてそこそこ美味しく、普段から愛飲している人が居るという噂は聞いたことがあるが、ダンジョンに潜っている際に飲むという話は聞いたことが無い。
「ああ、グレートオークとの戦闘で電気を身に纏ったからね。それのダメージを回復しているんだ」
「あれってダメージあるんですね」
「そりゃあそうだよ。いくら自分の魔法とはいえ、自分の体に電撃を当てているんだから」
「なら電撃なしの方が良かったのでは……?」
別にそんな危険な行動をしなくても余裕で倒せていたと思うんですが。
「経費で合法的に回復ポーションを飲むためだよ。いやあ、回復ポーションはやっぱり美味しいねえ」
「愛飲家だったんですね……」
噂の愛飲家が今回の試験官だったよ。本当に居るんだそんな人。
「ってことで今日はたくさん自傷攻撃をするけど、全く気にしないでね」
「分かりました」
それから安藤さんは敵を見かける度に全身に何かを纏って戦い、回復ポーションを美味しそうに飲んでいた。
そして安藤さんのリュックに入っていた回復ポーションがほとんど尽きたタイミングでボス部屋の目の前に辿り着いた。
「じゃあ中に入ったら一人で戦ってね。本当にヤバそうだったら加勢に入るけど、その時は当然試験は不合格だから」
「はい」
俺たちは直前に試験内容をざっくりと確認したのち、ボス部屋の中に入った。
中で待ち受けていたのはグレートソードオーク。
剣を持ったグレートオークで、剣術を身に着けている中々に厄介なモンスターだ。
剣術自体はCランクの探索者と比べると劣るが、パワーがあるため正面から剣で立ち向かった場合、オークの方が勝つと思われる。
俺は拳だけで戦うので猶更正面からの戦闘は避け、不意打ちとかをしたいのだが、
『グオオオオ!!!!』
このボス部屋の構造上、こんな感じで入った瞬間にオークに気づかれてしまうので1対1でその戦法を選ぶのは不可能である。
まあ、俺の場合オーク以上に攻撃力はあるので普通に正面から戦えるんですけどね。
というわけで俺は剣を構えているオークに対して正面から特攻する。
「はあっ!!!」
流石に安藤さん並みのスピードでは動けないのでオークには余裕で見切られており、迎撃の為に上段から剣を振り下ろしてきた。
「ふんっ!!!」
俺はその剣に対して自らの拳をぶつけた。
すると当然俺の拳は痛んだが、オークの剣の方もダメージは甚大だったようで、いともたやすく破壊が完了してしまった。
『グオッ!?ガアアア!!!!』
剣が唐突に破壊されたされたため、一瞬戸惑いを見せるグレートオークだったが、意外とすぐに持ち直して今度は拳で殴りかかってきた。
「せいっ!!!」
ただの拳となると速度の見切りは非常に簡単で、俺は全て攻撃をかわしてカウンターを決められた。
『ガアアアア!!!!』
痛みのあまり悲鳴を上げるオーク。
俺は倒すために構わず追撃を重ねる。
すると、最後にオークは断末魔を上げ、一切動かなくなった。これで完全に勝利である。
「終わりました」
「やたら早かったですね…… しかも武器は一切使用せず徒手格闘だけで倒し切った。もしかしてBランクを受けなかっただけで結構レベル高かったりします?」
安藤さんに報告すると、俺の戦いぶりを見てかなり驚いている様子だった。
「ちょっとだけですけどね。ランクを上げる暇が無かっただけでBランクの人とずっとBランクダンジョンに潜っていましたし」
「あー、結構あるあるな話らしいですしね。Bランクの人が一人でも居ればBランクダンジョンに潜れるらしいですし。でもそれならどうして今回ランクを上げようとしたんですか?」
「年齢とかの問題で色々面倒な事が起こりまして。全部誤解なんですけど、一瞬退学にさせられかけました。で、これ以上面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだということで昇格を目指す運びになりました」
「確かに如月さんは結構若いですもんね。退学ってことは大学生ですか?」
「いや、高校生です」
「え!?!?高校生!?!?その年齢でBランク!?!?」
「はい」
「ええええええ!?!?!?!?」
安藤さんは今日一の驚きを見せてくれた。
「色々助けてもらったおかげですけどね」
「それでも滅茶苦茶凄いですよ。なんなら今の高校生の中だとダントツでトップじゃないですか?」
「いや、上は一応いますね。卯月杏奈さんは同い年で既にBランクですし」
「最近の高校生はレベルが高いですね…… つい最近まではCランクどころかDランクでも高校生ならトップを張れていた気がするんですけどね……」
「俺もそうだと思うんですけどね……」
杏奈さんもそうだけど、弥生も健太も強くなるスピードがおかしすぎる。Cランクになるのってかなり大変な事なんですよ。
「如月さん、他人事のように言っていますけどあなたもですからね」
「あっ、そうですね……」
3人とは違って強くなった理由に明確な根拠があったけど、何も知らない人から見たら3人と全く同じだよね。
「とりあえず、帰って報告をしましょうか」
「はい」
ダンジョンから出た後、役所にて正式にBランクに昇格するための手続きをした。
無事Bランクの資格を得たので、杏奈さんに報告するべく帰宅した。
20
お気に入りに追加
216
あなたにおすすめの小説
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
1000年生きてる気功の達人異世界に行って神になる
まったりー
ファンタジー
主人公は気功を極め人間の限界を超えた強さを持っていた、更に大気中の気を集め若返ることも出来た、それによって1000年以上の月日を過ごし普通にひっそりと暮らしていた。
そんなある時、教師として新任で向かった学校のクラスが異世界召喚され、別の世界に行ってしまった、そこで主人公が色々します。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる