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31話

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「なんで回復ポーションを飲んでいるんですか?」

 と将来を不安視していると、安藤さんはオークから一切ダメージを負っていないのに回復をしていることに気づいた。

 回復ポーションの味は飲み物としてそこそこ美味しく、普段から愛飲している人が居るという噂は聞いたことがあるが、ダンジョンに潜っている際に飲むという話は聞いたことが無い。

「ああ、グレートオークとの戦闘で電気を身に纏ったからね。それのダメージを回復しているんだ」

「あれってダメージあるんですね」

「そりゃあそうだよ。いくら自分の魔法とはいえ、自分の体に電撃を当てているんだから」

「なら電撃なしの方が良かったのでは……?」

 別にそんな危険な行動をしなくても余裕で倒せていたと思うんですが。

「経費で合法的に回復ポーションを飲むためだよ。いやあ、回復ポーションはやっぱり美味しいねえ」

「愛飲家だったんですね……」

 噂の愛飲家が今回の試験官だったよ。本当に居るんだそんな人。

「ってことで今日はたくさん自傷攻撃をするけど、全く気にしないでね」

「分かりました」

 それから安藤さんは敵を見かける度に全身に何かを纏って戦い、回復ポーションを美味しそうに飲んでいた。



 そして安藤さんのリュックに入っていた回復ポーションがほとんど尽きたタイミングでボス部屋の目の前に辿り着いた。

「じゃあ中に入ったら一人で戦ってね。本当にヤバそうだったら加勢に入るけど、その時は当然試験は不合格だから」

「はい」

 俺たちは直前に試験内容をざっくりと確認したのち、ボス部屋の中に入った。


 中で待ち受けていたのはグレートソードオーク。

 剣を持ったグレートオークで、剣術を身に着けている中々に厄介なモンスターだ。

 剣術自体はCランクの探索者と比べると劣るが、パワーがあるため正面から剣で立ち向かった場合、オークの方が勝つと思われる。

 俺は拳だけで戦うので猶更正面からの戦闘は避け、不意打ちとかをしたいのだが、

『グオオオオ!!!!』

 このボス部屋の構造上、こんな感じで入った瞬間にオークに気づかれてしまうので1対1でその戦法を選ぶのは不可能である。


 まあ、俺の場合オーク以上に攻撃力はあるので普通に正面から戦えるんですけどね。

 というわけで俺は剣を構えているオークに対して正面から特攻する。

「はあっ!!!」

 流石に安藤さん並みのスピードでは動けないのでオークには余裕で見切られており、迎撃の為に上段から剣を振り下ろしてきた。

「ふんっ!!!」

 俺はその剣に対して自らの拳をぶつけた。

 すると当然俺の拳は痛んだが、オークの剣の方もダメージは甚大だったようで、いともたやすく破壊が完了してしまった。


『グオッ!?ガアアア!!!!』

 剣が唐突に破壊されたされたため、一瞬戸惑いを見せるグレートオークだったが、意外とすぐに持ち直して今度は拳で殴りかかってきた。


「せいっ!!!」

 ただの拳となると速度の見切りは非常に簡単で、俺は全て攻撃をかわしてカウンターを決められた。

『ガアアアア!!!!』

 痛みのあまり悲鳴を上げるオーク。

 俺は倒すために構わず追撃を重ねる。

 すると、最後にオークは断末魔を上げ、一切動かなくなった。これで完全に勝利である。

「終わりました」

「やたら早かったですね…… しかも武器は一切使用せず徒手格闘だけで倒し切った。もしかしてBランクを受けなかっただけで結構レベル高かったりします?」

 安藤さんに報告すると、俺の戦いぶりを見てかなり驚いている様子だった。

「ちょっとだけですけどね。ランクを上げる暇が無かっただけでBランクの人とずっとBランクダンジョンに潜っていましたし」

「あー、結構あるあるな話らしいですしね。Bランクの人が一人でも居ればBランクダンジョンに潜れるらしいですし。でもそれならどうして今回ランクを上げようとしたんですか?」

「年齢とかの問題で色々面倒な事が起こりまして。全部誤解なんですけど、一瞬退学にさせられかけました。で、これ以上面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだということで昇格を目指す運びになりました」

「確かに如月さんは結構若いですもんね。退学ってことは大学生ですか?」

「いや、高校生です」

「え!?!?高校生!?!?その年齢でBランク!?!?」

「はい」

「ええええええ!?!?!?!?」

 安藤さんは今日一の驚きを見せてくれた。

「色々助けてもらったおかげですけどね」

「それでも滅茶苦茶凄いですよ。なんなら今の高校生の中だとダントツでトップじゃないですか?」

「いや、上は一応いますね。卯月杏奈さんは同い年で既にBランクですし」

「最近の高校生はレベルが高いですね…… つい最近まではCランクどころかDランクでも高校生ならトップを張れていた気がするんですけどね……」

「俺もそうだと思うんですけどね……」

 杏奈さんもそうだけど、弥生も健太も強くなるスピードがおかしすぎる。Cランクになるのってかなり大変な事なんですよ。

「如月さん、他人事のように言っていますけどあなたもですからね」

「あっ、そうですね……」

 3人とは違って強くなった理由に明確な根拠があったけど、何も知らない人から見たら3人と全く同じだよね。

「とりあえず、帰って報告をしましょうか」

「はい」

 ダンジョンから出た後、役所にて正式にBランクに昇格するための手続きをした。



 無事Bランクの資格を得たので、杏奈さんに報告するべく帰宅した。
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